パラトープ: paratope)は、抗原結合部位(こうげんけつごうぶい、: antigen-binding site)とも呼ばれ、抗体抗原を認識して結合する部分である[1][2]。これは、抗体の抗原結合フラグメント英語版の先端にある小さな領域で、抗体の重鎖軽鎖の一部が含まれている[1][2]。各パラトープは、6つの相補性決定領域(軽鎖と重鎖からそれぞれ3つずつ)から構成されており、反平行βシートの折りたたみから伸びている[2]。Y字型の抗体の各アームの先端には、同一のパラトープがある[2]

パラトープが見られる部分を点線の円(左上)で囲った抗体の図。1. フラグメント抗原結合英語版(Fab) 2. 抗体結晶化可能領域(Fc) 3. 重鎖 4. 軽鎖 5. 抗体の可変領域。パラトープは、抗原と直接接触する鍵状の部分[1]。 6. ヒンジ領域

パラトープは、抗原のエピトープに結合して接触するB細胞受容体の部分を構成する[2]。1つのB細胞上のすべてのB細胞受容体は、同一のパラトープを持っている[2]。パラトープはその特有性により、1つのエピトープにのみ高親和性で結合することができ、その結果、各B細胞は1つのエピトープにしか応答できない。B細胞受容体のパラトープがその特異的なエピトープに結合することは、適応免疫応答の重要なステップである。

種間のパラトープの設計編集

パラトープのデザインや構造は、種によって大きく異なる。顎口上綱(顎のある脊椎動物)では、V(D)J遺伝子再構成により、数十億もの異なるパラトープが発生する可能性がある[3][4]。ただし、パラトープの量は、V、D、J各遺伝子の構成と抗体の構造によって制限を受ける[3]。そのため、多くの異なる種がこの制限を回避する方法を開発し、可能なパラトープの多様性を高めてきた。

牛では、非常に長い相補性決定領域がパラトープの多様化に不可欠な役割を果たしていると考えられている[3][5]。さらに、ニワトリもウサギの両方が、可能なパラトープの数を増やすために遺伝子変換を行っている[3]

参照項目編集

  1. ^ a b c “Paratope” (英語). Encyclopedia of Systems Biology. New York, NY: Springer. (2013). pp. 1632–1633. doi:10.1007/978-1-4419-9863-7_673. ISBN 978-1-4419-9863-7 
  2. ^ a b c d e f Kuby immunology (Eighth ed.). New York. (2019). ISBN 978-1-4641-8978-4. OCLC 1002672752 
  3. ^ a b c d “Structural and genetic diversity in antibody repertoires from diverse species”. Current Opinion in Structural Biology 33: 27–41. (August 2015). doi:10.1016/j.sbi.2015.06.002. PMC 7039331. PMID 26188469. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7039331/. 
  4. ^ “The origins of vertebrate adaptive immunity”. Nature Reviews. Immunology 10 (8): 543–53. (August 2010). doi:10.1038/nri2807. PMC 2919748. PMID 20651744. http://www.nature.com/articles/nri2807. 
  5. ^ “Reshaping antibody diversity”. Cell 153 (6): 1379–93. (June 2013). doi:10.1016/j.cell.2013.04.049. PMC 4007204. PMID 23746848. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4007204/.