パンデュールIIドイツ語: Pandur II)とは、オーストリアシュタイアー・ダイムラー・プフ(Steyr Daimler Puch)が、パンデュールIの後継として設計開発したモジュラー構造式の多目的装甲車装輪装甲車)である。

パンデュールII
チェコ陸軍のパンデュールII
基礎データ
全長 7.02 m
全幅 2.67 m
全高 1.85 m
重量 22 t
乗員数 2名 + 兵員12名(APC仕様)
装甲・武装
装甲 mm
主武装 105mm低圧砲砲塔まで搭載可能
機動力
速度 105 km/h
エンジン 直列6気筒ターボチャージャー付き液冷ディーゼル
445 hp
懸架・駆動 6x6 , 8x8
行動距離 700 km
出力重量比 hp/t
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概要 編集

パンデュールIIの最大の改良点は、6輪式から8輪式に変更したことにより車内容積を増大させたことであるが、従来型と同じ6輪式モデルも存在する。車体の防御力は7.62mm徹甲弾から14.5mm徹甲弾の直撃にも耐えられるが、注文に応じて増加装甲を取り付けることも可能である。

運転席は車体前部左側に付いており、運転手は3基のペリスコープによって前面視界を確保するが、うち一つを暗視装置に付け替えることもできる。歩兵戦闘車としての運用を前提に砲塔を搭載しても6名の兵員を乗車させることができるが、砲塔を外して装甲兵員輸送車とした場合は12名の兵員を乗車させることが可能である。

パンデュールIIはC-130ハーキュリーズ輸送機に搭載しての空輸が可能なように設計されている。

武装については、オーストリアとスペインが共同開発したASCOD装軌式多目的装甲車両用のものを始めとして、各種の砲塔やRWS、ピントルマウントを装着することが可能である。

派生型 編集

ポルトガル 編集

 
ポルトガル陸軍のパンデュールII兵員輸送車型。
12.7mm重機関銃を装備し、兵員11名が搭乗可能。
  • 装甲兵員輸送車(陸軍:10輌)
12.7mm重機関銃を装備し、兵員9名が搭乗可能。6輪型か?
  • 装甲救急車(陸軍:12輌、海兵隊:2輌)
 
パンデュールII歩兵戦闘車型(左)
Steyr SP 30砲塔に30mm機関砲を装備、兵員5~7名が搭乗可能。
  • 機動砲車両(陸軍:30輌)
105mm砲を砲塔に搭載
  • 対戦車車両(陸軍:20輌)
  • 自走迫撃砲(陸軍:31輌、海兵隊:2輌)
120mm迫撃砲を装備。射程6マイル、連射速度10発/分、乗員5~6名。
  • 指揮車(陸軍:24輌、海兵隊:3輌)
  • 装甲回収整備車(陸軍:9輌、海兵隊:1輌)
  • NBC偵察車(陸軍:2輌)
  • 戦闘工兵車(陸軍:9輌)
  • 通信車(陸軍:9輌)
  • 監視車(陸軍:4輌)

チェコ 編集

 
チェコ陸軍のパンデュールII。砲塔部分のRCWS-30 RWSに注目
パンデュールII CZ

チェコ陸軍仕様。車体の左右と後部にカメラを搭載し、車長の援助なしで細かい機動が行えるようになった他、車体にラファエル社製の増加装甲(ポルトガル軍の車体にはシュタイアー製の増加装甲)を張り付けて14.5mm弾の直撃にも耐えられるようし、車底を逆V字型にするなど、細かい改良がおこなわれている。

武装は30mm ATK Mk 44 ブッシュマスター II チェーンガン1門(弾薬:榴弾140発と徹甲弾60発)と同軸の7.62mm機関銃1挺(弾丸460発)、2発のスパイク LR対戦車ミサイルであり、それらは全てラファエル社製のRCWS-30 RWSに搭載している。この他にも、車体後部上面に2基の3連装76mm煙幕弾発射器を搭載している。

必要に応じて、RWSをRCWS-30の派生形であるミニ・サムソン RCWSに変更したり、RWSを外して120mm迫撃砲を搭載することも可能。チェコ陸軍はRCWS-30とミニ・サムソンを93基ずつ(14基のRCWS-30はスパイクLRランチャーを搭載せず)購入する予定。

派生型
  • KBVP (kolové bojové vozidlo pěchoty)
基本型の歩兵戦闘車仕様。72輌を発注。
  • KBV-Pz (průzkumné kolové bojové vozidlo)
戦場監視レーダーを搭載した偵察仕様。16輌を発注。
  • KOT-VOV (kolový obrněný transportér - velitelské obrněné vozidlo)
指揮通信車。11輌を発注。
  • KOT-Zdr (kolový obrněný transportér zdravotnický)
戦場救急車。4輌を発注。
  • KOT-Ž (kolový obrněný transportér ženijní)
戦闘工兵車。4輌を発注。

採用国 編集

 
採用国
128輌の導入を計画
OT-64 SKOTの後継として107輌の導入を計画
試験用に1輌のみを受領
陸軍233輌、海兵隊20輌の合計253輌を受領
陸軍の新型装甲兵員輸送車/歩兵戦闘車の後継候補の一つ(競合出品は、パトリアAMVピラーニャIII)として、選定トライアルの最中。
陸軍が、イスラエルのエルビット・システムズ開発、105mm戦車砲搭載の火力支援車型「サブラ(Sabrah)英語版」10両を採用[1][注釈 1]

パンデュールIを制式採用したスロベニアに対しても、部分的改良と構成部品の55%を現地生産させる条件での売り込みが図られていたが、スロベニア陸軍はフィンランド製のパトリアAMVを制式採用した。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ サブラには同じ105mm砲をASCOD歩兵戦闘車に搭載した軽戦車バージョンも存在し、こちらもフィリピン陸軍で16両採用

出典 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集