パヴロフス・ドッグ (Pavlov's Dog)は、1972年にミズーリ州セントルイスにて結成された1970年代に活躍したプログレッシブ・ロックAORバンドである。

パヴロフス・ドッグ
Pavlov's Dog
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ミズーリ州セントルイス
ジャンル プログレッシブ・ロック
AOR
活動期間 1972年1977年
1990年
レーベル ABC
コロムビア
Telectro
メンバー デイヴィッド・サーカンプ
マンフレッド・プロッツ
アビー・ハインツ・スタイリング
アマンダ・マッコイ
リック・スタイリング
サラ・サーカンプ
旧メンバー

マイク・サフロン
ダグ・レイバーン
リック・ストックトン
デイヴィッド・ハミルトン
シーグフリード・カーヴァー
スティーヴ・レヴィン
スティーヴ・スコーフィナ
レイ・スクルト
ロイヤル・ロビンス
ビル・フランコ
ランディ・ヘトレイジ
トム・ニクソン
ニック・スルーター
カーク・サーキシャン
デイヴィッド・カーンズ

アンドレア・ヤング
マイケル・マケルヴェイン
ティモシー・ダッジョン
ネイサン・ジャトコ

概要 編集

活動初期と解散 編集

パヴロフス・ドッグは、ボーカリストのデイヴィッド・サーカンプ、ギタリストのスティーヴ・レヴィン、キーボードのデイヴィッド・ハミルトンとダグ・レイバーン、ベーシストのリック・ストックトン、ドラマーのマイク・サフロン、ヴァイオリニストのシーグフリード・カーヴァー(出生名・リチャード・ナドラー)で結成された。 レヴィンはその年のうちにバンドを去り、スティーヴ・スコーフィナ(元REOスピードワゴン)が加入した。 バンドのデビュー・アルバム『禁じられた掟』がリリースされると、今度はカーヴァーがバンドを去った。セカンド・アルバム『条件反射』(1976年)のために、トム・ニクソン(ギター)がラインナップに加えられた。その後、ハミルトンが脱退し、キーボード専任の交代メンバーは長いこと空席となる。イエスキング・クリムゾンに在籍していたドラマー、ビル・ブルーフォードは、サフロンの不在のためにこのアルバムでドラムを演奏した。サフロンはアルバム・スリーブに記名されず、バンドを永久に去ることとなり、代わりにカーク・サーキシャンが加入した。 このラインナップは、1977年の解散まで続いた。

『禁じられた掟』は1975年にABCから短い期間リリースされたが、その後すぐにコロムビアによって再リリースされた。その結果、両方のバージョンがほぼ同時に店頭に並ぶことになった。このアルバムは、ブルー・オイスター・カルト初期のプロデューサーとして成功を収めたサンディ・パールマンとマレー・クルーグマンによってプロデュースされた。彼らのセカンド・アルバム『条件反射』は1976年にコロムビアから発表された。ジャズ・サックス奏者のマイケル・ブレッカーロキシー・ミュージックアンディ・マッケイを含む、多くのゲスト・アーティストがこのアルバムに貢献した。

バンドは1977年に3枚目のアルバムを録音したが、最初の2枚のアルバムの売れ行きが悪かったためコロムビアにリリースを拒否され、バンドの解散を早めることとなる。3枚目のアルバムは、盗まれたマスターテープを元に限定版と銘打って、1980年代になってついにブートレグとして世に出た。それはパヴロフス・ドッグの名前ではなく、セントルイス・ハウンズ(The St. Louis Hounds)名義でリリースされた。2007年にドイツのレーベル、ロックヴィル・ミュージックによって『ハズ・エニィワン・ヒア・シーン・ジークフリード?』として正式にリリースされている。その際に1970年代からの未発表曲10曲をボーナストラックとして加え、リマスタリングもされた。ドイツのレーベルTRCは『Third』のタイトルでアルバムを再発したが、このバージョンにはボーナストラックは含まれていない。

1970年代後半にバンドが解散したとき、サーカンプは元フェアポート・コンヴェンションのメンバー、イアン・マシューズとHi-Fiというバンドに取り組んでいたが、死んでいるのではないかと噂された[1]シアトルに移り住み、このグループはクラブ・シーンで成功を収め、1981年に5曲入りライブ12インチEP「Hi-Fiデモンストレーション・レコード」を、1983年にスタジオ・アルバム『Moods for Mallards』を、そしてクリスマス・シングル「It's Almost Christmas」を録音した。これらのレコードはFirst American Recordsでリリースされ、発売は太平洋北西地域に限られていた[2]

再編と音楽への復帰 編集

1990年にサーカンプとレイバーンはバンドを再編し、米国のレーベルTelectro Recordsからアルバム『彷徨える大国』を録音・発表した。TRCが1990年代後半にブートレグで発売した後、2007年にロックヴィル・ミュージックによって世界的に再リリースされた。スコーフィナは、このアルバムのいくつかのセッションで演奏した。

2004年6月26日、クラシック・ラインナップ(カーヴァーを除く)をフィーチャーした再会コンサートがセントルイスで開催された。そして2005年、サーカンプとサフロンに、サーカンプの妻サラ(ボーカル、ギター)、リード・ギタリストのレイ・スクルト、キーボーディストのロイヤル・ロビンス、ベーシストのティム・ダッジョン、ヴァイオリニストのアンドレア・ヤングというメンバーで再編。このラインナップは、2005年から2006年にかけてヨーロッパを回り、2006年、オランダのArrow Rock Festivalにて54,000人の前で演奏した。

2006年のツアーの後、スクルト、ロビンス、ダッジョンが交代し、デイヴィッド・サーカンプ(ボーカル、ギター)、マイク・サフロン(ドラム)、サラ・サーカンプ(ボーカル、ギター)、"ボンゴ"ビル・コステロ(メロトロン)、ビル・フランコ(リード・ギター)、デイヴィッド・カーン(ベース)、マイケル・マケルヴェイン(キーボード)、アンドレア・ヤング(ヴァイオリン)という新編成となった。このラインナップは2007年に2回のツアーを行った。3月にはギリシャクレタ島での最初のツアーも行った。夏にヨーロッパ・ツアーを行い、ベルギーのヴェルヴィエにあるライブ会場 Spirit of 66では、ベルク・ヘルツベルク・フェスティバル 2007ドイツ語版(25,000人来場)のヘッドライナーとして演奏した。同じ頃、ロックヴィル・ミュージックからサーカンプのソロ・アルバム『Dancing on the Edge of a Teacup』(2007年)がリリースされた。ベルク・ヘルツベルクでの演奏は撮影・録音されていたが、ブートレグ以外の形式でリリースされていない。

2008年、デイヴィッド・カーンズ、ビル・フランコ、マイケル・マケルヴェイン、アンドレア・ヤングは、以前からの約束(カーンズとフランコはアンソニー・ゴメスとの演奏、ヤングはReverse Cowgirlsとの演奏、マケルヴェインは大学で音楽研究を終える)のためバンドに戻ることができなかった。サーカンプは、フィル・ゴメス(キーボード)、ランディ・ヘトレイジ(リード・ギター)、アビー・ハインツ・スタイリング(ヴァイオリン)を雇い、パヴロフス・ドッグのオリジナル・メンバー、ダグ・レイバーンがベースを弾けるよう調整した。このラインナップは、2008年にヨーロッパ全土で再びツアーを行い、ウッドストック・フェスティバル・イン・2008(5,000人)と同様に多くの会場で演奏を行った。

2009年にはダグ・レイバーンは復帰できず、リック・スタイリングがベース担当となった。また、フィル・ゴメスとランディ・ヘトレイジも復帰しなかった。ビル・フランコがリード・ギターを担当し、ニック・スルーターがキーボードとメロトロンのパートを担うようになり、8人から7人にラインナップを減らした。このラインナップは、2009年から2012年までヨーロッパをツアーし、ベルギーのヴェルヴィエで行われたフィエスタ・シティ・フェスティバル・イン・2012など、今までになく最も幅広いツアーを行うこととなった。ステージは、伝説のブルース・ブラザーズ・バンド(スティーヴ・クロッパー、 "ブルー"ルー・マリーニ、ドナルド・"ダック"・ダンほか)と共有した。この期間中、パヴロフス・ドッグは2009年に2つのショー(アウクスブルクカールスルーエでのライブ。後者は撮影も)を録音した。アウクスブルクでのショーはアルバム『猛犬注意! -ライヴ・イン・ヨーロッパ』としてリリースされた。2010年にはスタジオ・アルバム『エコー&ブー』もリリースされた。

ビル・フランコは2013年5月にバンドを脱退し、オーディション後、アマンダ・マッコイがリード・ギター担当となった。パヴロフス・ドッグは2013年に再びヨーロッパをツアーした。1976年に録音されたパヴロフス・ドッグの3枚目となるずだったスタジオ・アルバム『ハズ・エニィワン・ヒア・シーン・ジークフリード?』が、2007年、2011年および2012年のラインナップによるバンドのライブ音源をボーナストラックとして追加し、公式リリースされた。2014年にはパヴロフス・ドッグのツアーはなかったが、デイヴィッドとサラ・サーカンプはイギリスとドイツで簡単なアコースティック・ツアーを行った。この間、ニック・スルーターがバンドを脱退し、オーディションの後、ネイサン・ジャトコが2015年のヨーロッパ・ツアーからキーボードで参加した。

その間、1973年にイリノイ州ペキンで録音されたデモのコレクションである『ザ・ペキン・テープス』が、マスターテープを元にまとめられ、2014年にロックヴィル・レコードからリリースされた。ABCが『禁じられた掟』を録音することにし、そのデモからの数曲が再録音されるまで、この音源をバンドの公式デビュー・アルバムにすることが考えられていた。スタジオが燃えてしまったときにテープも失われたため、生き残っていた私有コピーが発見されるまで、適切なアルバムはリリースされなかった[3]

ジークフリード・カーヴァーは2009年5月30日に死亡した。60歳だった[4]。ダグ・レイバーンは2012年9月21日に死亡した[5]。ストックトンは2015年2月17日に死亡した[6]。現在のバンドの鍵盤奏者、ネイサン・ジャトコは、2018年1月17日に自殺した[7]

2018年12月、8年ぶりのアルバム『Prodigal Dreamer』が発表された[8] 。また、この頃、初来日公演を行う予定だったが、諸般の都合により中止となっている[9]

バンド・メンバー 編集

現在のメンバー 編集

  • デイヴィッド・サーカンプ(David Surkamp) - ボーカルギター (1972年-1977年、1990年、2004年、2005年-現在)
  • マンフレッド・プロッツ(Manfred Plotz) - ドラム (2015年-現在)
  • アビー・ハインツ・スタイリング(Abbie Hainz Steiling) - ヴァイオリンマンドリン (2008年-現在)
  • アマンダ・マッコイ(Amanda McCoy) - リード・ギター (2013年-現在)
  • リック・スタイリング(Rick Steiling) - ベース (2009年、2011年-現在)
  • サラ・サーカンプ(Sara Surkamp) - ボーカル、ギター (2005年-現在)

旧メンバー 編集

  • マイク・サフロン(Mike Safron) - ドラム (1972年-1976年、2004年、2005年-2014年)
  • ダグ・レイバーン(Doug Rayburn) - キーボードフルートパーカッション (1972年-1977年、1990年、2004年、2005-2008年 ※2012年死去)
  • リック・ストックトン(Rick Stockton) - ベース (1972年-1977年、2004年 ※2015年死去)
  • デイヴィッド・ハミルトン(David Hamilton) - キーボード (1972年-1976年、2004年)
  • ジークフリード・カーヴァー(Siegfried Carver) - ヴァイオリン、ヴィオラ (1972年-1975年 ※2009年死去)
  • スティーヴ・レヴィン(Steve Levin) - リード・ギター (1972年)
  • スティーヴ・スコーフィナ(Steve Scorfina) - リード・ギター (1972年-1977年、2004年)
  • レイ・スクルト(Ray Schulte) - リード・ギター (2005年-2006年)
  • ロイヤル・ロビンス(Royal Robbins) - キーボード (2005年-2006年)
  • ビル・フランコ(Bill Franco) - リード・ギター (2006年-2007年、2009年-2013年)
  • ランディ・ヘトレイジ(Randy Hetlage) - リード・ギター (2008年)
  • トム・ニクソン(Tom Nickeson) - キーボード、ギター (1976年-1977年)
  • ニック・スルーター(Nick Schlueter) - キーボード (2009年-2013年)
  • カーク・サーキシャン(Kirk Sarkisian) - ドラム (1976年-1977年)
  • デイヴィッド・カーンズ(David Karns) - ベース (2006年-2007年)
  • アンドレア・ヤング(Andrea Young) - ヴァイオリン (2005年-2007年)
  • マイケル・マケルヴェイン(Michael McElvain) - キーボード (2007年)
  • ティモシー・ダッジョン(Timothy Duggen) - ベース (2005年-2006年)
  • ネイサン・ジャトコ(Nathan Jatcko) - キーボード (2015年-2018年 ※2018年死去)

ディスコグラフィ 編集

スタジオ・アルバム 編集

  • 『禁じられた掟』 - Pampered Menial (1975年)
  • 『条件反射』 - At the Sound of the Bell (1976年)
  • 『セント・ルイスの猟犬(サード)』 - Third (1977年)
  • 『ハズ・エニィワン・ヒア・シーン・ジークフリード?』 - Has Anyone Here Seen Siegfried? (1980年海賊版、2007年公式リリース)
  • 『彷徨える大国』 - Lost in America (1990年) ※旧邦題『ロスト・イン・アメリカ』
  • 『エコー&ブー』 - Echo & Boo (2010年)
  • 『ザ・ペキン・テープス』 - The Pekin Tapes (2014年)
  • Prodigal Dreamer (2018年)

ライブ・アルバム 編集

  • 『猛犬注意! -ライヴ・イン・ヨーロッパ』 - Live and Unleashed (2010年)
  • House Broken (2016年 DVD/CD)

シングル 編集

  • "Julia" (1975年)

関連項目 編集

  • 条件反射:バンド名の由来「パブロフの犬」実験についてを紹介。
  • イワン・パブロフ:バンド名の由来「パブロフの犬」実験を行った生理学者。

脚注 編集

  1. ^ PAVLOV`S DOG (founded in 1973)”. Rockville-music.com. 2018年1月20日閲覧。
  2. ^ Get Ready to ROCK! Review of CD album by Hi-Fi called The Complete Collection featuring Ian Matthews and David Surkamp”. Getreadytorock.com. 2018年1月20日閲覧。
  3. ^ Pavlov's Dog - The Pekin Tapes (recorded 1973)”. Rockville Music. 2018年5月27日閲覧。
  4. ^ MICHAEL D. SORKIN. “Richard Nadler Was Pavlov's dog violinist, became conservative activist”. Stltoday.com. 2018年1月20日閲覧。
  5. ^ Post from Pavlov's Dog on Douglas Rayburn's passing”. Facebook. 2012年10月3日閲覧。
  6. ^ Richard B. (Rick) Stockton's Obituary on St. Louis Post-Dispatch”. St. Louis Post-Dispatch. 2017年3月17日閲覧。
  7. ^ Hill, Daniel. “Nathan Jatcko Mourned by Friends and Fellow St. Louis Musicians”. Riverfronttimes.com. 2018年1月20日閲覧。
  8. ^ 米プログレ パヴロフス・ドッグが8年ぶりの新アルバム『Prodigal Dreamer』を12月発売」amass 2018年10月12日
  9. ^ パヴロフス・ドッグの来日公演が中止に」amass 2018年11月14日

外部リンク 編集