ヒディムバ: हिडिम्ब, Hiḍimba)は、インド神話に登場するラークシャサである。ヒディムバーの兄[1][2]パーンダヴァ5王子のビーマに殺された。

神話 編集

御前試合の後、パーンダヴァはドゥルヨーダナの罠に気づいて脱出した。そしてある森にやって来たところで疲れ果て、眠り込んだ。この森のシャーラ樹の大木はヒディムバの住処であり、彼らが森にやって来るとヒディムバは人間の臭いを嗅ぎつけて、妹のヒディムバーに何者がやって来たのかを調べ、食料とするために殺して来るよう命じた。ところが休んでいるパーンダヴァのところにやって来たヒディムバーは、1人だけ眠らずにいるビーマに一目で恋してしまった[3]

ヒディムバは妹がなかなか帰って来ないことに苛立ち、パーンダヴァのところにやって来た。そして妹の裏切りを発見して怒り狂った。ヒディムバはビーマとその家族に加えて妹をも殺そうと考えた。ヒディムバはビーマに飛びかかり、激しい格闘を繰り広げたが[4]、目を覚ましたアルジュナがビーマを急かすと、ビーマは怒り、持ち上げたヒディムバを地面に叩きつけて殺した。死の間際、ヒディムバは森中に響き渡る大声で叫び、羽交い絞めにされて背骨を折られた[5]。ヒディムバの死後、ヒディムバーはビーマと結ばれ、ガトートカチャを生んだ[6][1][2]

脚注 編集

  1. ^ a b 『インド神話伝説辞典』p.277「ヒディムバ」の項。
  2. ^ a b 『インド神話伝説辞典』p.277-278「ヒディムバー」の項。
  3. ^ 『マハーバーラタ』1巻139章1-13。
  4. ^ 『マハーバーラタ』1巻141章。
  5. ^ 『マハーバーラタ』1巻142章。
  6. ^ 『マハーバーラタ』1巻143章。

参考文献 編集

  • 『原典訳 マハーバーラタ2』上村勝彦訳、ちくま学芸文庫、2002年。ISBN 978-4480086020 
  • 菅沼晃編 編『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年。ISBN 978-4490101911