ビバリー・クリアリー

アメリカ合衆国の児童文学作家

ビバリー・アトリー・クリアリーBeverly Atlee Cleary1916年4月12日 - 2021年3月25日)は、アメリカ合衆国児童文学作家小説家

ビバリー・クリアリー
Beverly Cleary
誕生 ビバリー・アトリー・ブン
Beverly Atlee Bunn
(1916-04-12) 1916年4月12日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
オレゴン州マクミンビル
死没 (2021-03-25) 2021年3月25日(104歳没)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
カリフォルニア州カーメル・バイ・ザ・シー
職業 児童文学作家小説家
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
活動期間 1950年 -
代表作 『ゆかいなヘンリーくん』シリーズ
主な受賞歴
デビュー作 『がんばれヘンリーくん』
パートナー クラレンス・T・クリアリー(1940年 - 2004年)
子供 2人
ウィキポータル 文学
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オレゴン州出身。カリフォルニア州ワシントン州にある大学で学ぶ。児童文学作家としてデビューする以前は司書として働いていた。著作は30作を超え、主に子ども向けの作品である。作品中には、ヘンリーとそのペットの犬・リブシー、友人のクインビー姉妹(ベアトリスとその妹のラモーナ)及びそのペットのネズミ・ラルフといった有名なキャラクターが登場する。1984年に『ヘンショーさんへの手紙』(Dear Mr. Henshaw)でニューベリー賞を受賞した。

なお、名前の表記は「ヘンリーくんシリーズ」では「ベバリイ・クリアリー」、その他では「ベバリー・クリアリー」や「B・クリアリー」など様々であるが、本項では「Beverly」の最も一般的な表記「ビバリー」で統一している。

略歴 編集

幼少期 編集

1916年4月12日に、オレゴン州ヤムヒル郡マクミンビルに生まれた。旧姓アトリー・ブン。5歳の頃、家族はオレゴン州ポートランドに移り住み、そこで小学校から高校までを過ごす。クリアリーはいわゆる「スロー・ラーナー」(学習発達の遅れた子供)であった。必修である読書への不満や1年生の時の担任に対する不信がその理由の一つである。3年生になって初めて読書に楽しみを見い出した。そのときに読んでいた作品はルーシー・フィッチ・パーキンスの『ほら穴のふたごの冒険、原題:The Dutch Twins』である。その後、自分が望む本を見つけることは滅多になかったものの、ビバリーは図書館に通い詰めになる。―まさに彼女らしい子供時代と言えよう[独自研究?]

作家として 編集

19歳(1934年)のとき、チャフィー大学に通うためにカリフォルニア州オンタリオに移り住み、大学で準学士号(A.A.)を取得する。同時期にオンタリオ市立図書館で臨時図書館員として働く。1938年カリフォルニア大学バークレー校国文学(英文学)学士号を取得した後、シアトルにあるワシントン大学図書館学を学び、1939年には司書の資格を得る。

正規職員の司書として最初に勤めたのはワシントン州ヤキマの図書館であり、そこで多くの子供たちに出会う。そこで出会った子供たちは、ビバリー自身が幼少期に探し求めていたような本を、同じように求めていた。それに応えるように、1950年にビバリーは処女作である『がんばれヘンリーくん』(原題:Henry Huggins)を出版する。1955年には、クインビー姉妹を初めて物語の中心に据えた小説『ビーザスといたずらラモーナ』(原題:Beezus and Ramona)を出版する。なお、ビーザス(ベアトリス)とラモーナは『ヘンリーくんシリーズ』(原題:Henry Huggins、第1作と同じ)に脇役としてしばしば登場し、シリーズ後半になると主人公はラモーナに移行した[1]

プライベート 編集

1940年、クラレンス・T・クリアリーと結婚する。その後一家はカリフォルニア州オークランドに移り住む。1955年、マリアンヌ・エリザベスとマルコム・ジェームスの双子の親となる。夫のクラレンスは2004年に亡くなり、その後はカリフォルニア州カーメルに居住していた。2021年3月25日、同地の高齢者養護施設にて死去した。104歳と驚異的な長寿であった[2]

彼女は生涯に『A Girl from Yamhill』と『My Own Two Feet』の2冊の自伝を著している。彼女の著作は20以上の国々、15の言語に翻訳され、世界中で親しまれている。

受賞・功績 編集

クリアリーは「ローラ・インガルス・ワイルダー賞」(1975年 ローラ・インガルス・ワイルダーを記念した賞)、『ラモーナとおかあさん』 で全米図書賞1981年)、『ヘンショーさんへの手紙』でニューベリー賞(1984年 18世紀イギリスで児童文学の刊行に功あったジョン・ニューベリーを記念)を受賞している。また2000年4月には、アメリカ文化に大きな功績を残したということから「アメリカ議会による生ける伝説賞」(Library of Congress Living Legends award)を「作家・芸術家部門」で受賞した。

クリアリーが幼少期に暮らしていたマルトノマ郡立図書館のハリウッド分室には、著作『ヘンリーくんシリーズ』の舞台であるクリキタット通り地図が、ロビーに飾られている。また、クリアリーの愛すべきキャラクター「ヘンリー・ハギンズ」とその飼い犬「リブシー」(日本語訳ではアバラー。リブシーはRibsyで“肋骨みたいな”の意)、そして「ラモーナ・ジェラルディン・クインビー」の彫像をオレゴン州ポートランドのグラントパークで見ることができる。2008年6月、ハリウッドとファーンウッドにキャンパスを持つ8年制学校(元は過去に2つの学校が合併して出来た学校である)が公式に「ビバリー・クリアリー・スクール」という名称に変更された。尚、クリアリーは現在自身の名を冠するその学校、ファーンウッド初等中学校(5・6・中1・中2)に通っていた。

2004年、ワシントン大学情報学課程がクリアリーの図書館学への功績を称え、「児童・生徒のためのビバリー・クリアリー寄付講座」を開設する基金を創設した。2008年、ワシントン大学は、同大学において最も名誉ある賞の「校友栄誉賞」の次期受賞者を同大学の卒業生であるクリアリーに決定したと発表した。

カリフォルニア大学バークレー校にもまた、クリアリーの名を冠するが存在する。

作品一覧 編集

「ゆかいなヘンリーくんシリーズ」(新シリーズ14作)
当初からのシリーズ 新版発売時に追加
『がんばれヘンリーくん』 『ラモーナとおとうさん』
『ヘンリーくんとアバラー』 『ラモーナとおかあさん』
『ヘンリーくんとビーザス』 続編
『ビーザスといたずらラモーナ』 『ラモーナ、八歳になる』
『ヘンリーくんと新聞配達』 『ラモーナとあたらしい家族』
『ヘンリーくんと秘密クラブ』 『ラモーナ、明日へ』
『アバラーのぼうけん』
『ラモーナは豆台風』
『ゆうかんな女の子ラモーナ』

作品一覧を参照するに当たり、以下の点に注意されたい。

  1. 邦訳版が出版されているもののみ列挙した。邦訳版が出版されていないものの詳細等については英語版ウィキペディアを参照されたい。
  2. 発行年月は全て邦訳版(初版)が発行された年月である。
  3. 初版発行年の古いものは多くが再版(改訂新版・重版等)されている(初版と新版、重版のISBNが相違するものもある)。
  4. 邦訳版「ゆかいなヘンリーくんシリーズ」は当初は下記の9作品のみであったが、「新しい世界の童話シリーズ」の『ラモーナと○○』の2作品の改訂新版が発売された際に、それぞれが同シリーズに追加された。また『ラモーナと○○』が発売されてから20年近く経過した2001年には続編が出版され始め、現在はそれらも含め同シリーズは全部で14作となっている(右表を参照されたい)。なおこれらの作品は、原作においては上記本文にもあるように全て「ヘンリーとその周りの人々の日常」を描いた同一シリーズである。

ゆかいなヘンリーくんシリーズ 編集

(以上松岡享子訳、なお、NHKで「わんぱく天使」のタイトルでドラマ化されている[4]。)

新しい世界の童話シリーズ 編集

  • 『ひとりっ子エレンと親友』(学習研究社、1977年12月、ISBN 978-4051046637
  • 『いたずらっ子オーチス』(学習研究社、1980年11月、ISBN 978-4051046774
  • 『ラモーナとおとうさん』(学習研究社、1982年12月、ISBN 978-4051046910
  • 『ラモーナとおかあさん』(学習研究社、1983年12月、ISBN 978-4050048311

(以上松岡享子訳)

ゆかいなヘンリーくんシリーズ続編 編集

(以上松岡享子訳)

あかね世界の文学シリーズ 編集

その他 編集

脚注 編集

  1. ^ 基本図書を読む20『がんばれヘンリーくん』ベバリイ・クリアリー(2015年11月30日)、本のこまど、株式会社ヴィアックス図書館事業本部テクニカルサポート室、2017年12月16日閲覧。
  2. ^ “Beverly Cleary, beloved and prolific author of children’s books, dies at 104” (英語). Los Angels Times. (2021年3月26日). https://www.latimes.com/obituaries/story/2021-03-26/beverly-cleary-childrens-author-obituary 2021年3月27日閲覧。 
  3. ^ Beverly, 1916-, Cleary; 享子, 松岡; 明, 1938-, 横山 (1967). がんばれヘンリーくん. 東京: 学習研究社. https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000818678-00 
  4. ^ NHK. “わんぱく天使|番組|NHKアーカイブス”. わんぱく天使|番組|NHKアーカイブス. 2023年11月12日閲覧。

外部リンク 編集