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ピスタチオ(英:Pistachio、学名:Pistacia vera)は、ウルシ科カイノキ属の落葉高木。およびそれから採ったナッツ

ピスタチオ
Pistacio vera Kerman 2.jpg
ピスタチオ
保全状況評価[1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 NT.svg
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類II Eurosids II
: ムクロジ目 Sapindales
: ウルシ科 Anacardiaceae
: カイノキ属 Pistacia
: ピスタチオ P. vera
学名
Pistacia vera L. (1753)
和名
ふすだしゅう
英名
Pistachio

特徴編集

は、漢字楷書体で知られるカイノキ(楷)と同じカイノキ属である。雌雄異株であり、受粉の良否が収穫量を大きく左右する[2]

主に乾燥した土地で育ち、一定の塩害のある場所でも生育する。しかし、十分な日照と排水が必要。

木は高さ10mほどに成長する。落葉性の奇数羽状複葉、10-20cmほどになる。長径3cmほどの楕円形の殻果は、成熟すると、裂開果と呼ばれる一辺が裂けた独特の形状となり、熟すと落木する。この形状から、現代中国語では「開心果」(カイシングオ、kāixīnguǒ)と称する。

産地編集

原産は古代トルコ、ペルシャなどの地中海沿岸であり、農耕文明の初期以来、この地に自生していた原種を食用に栽培してきた。一部のアラブ系、アルメニア系、トルコ系などの人達のみに親しまれてきた。その後、植物愛好家が種子をローマに持ち込み、ヨーロッパに広がった[2]。主な生産地はイランアメリカトルコシリアなどであり、現在の生産量はイランが世界一である。中国では新疆ウイグル自治区が主産地。

国別ピスタチオ生産量 (トン)[3]
国名 2005年 2006年 2007年 2008年
  イラン 229,657 250,000 315,500 192,269
  アメリカ 128,367 107,955 188,696 126,100
  トルコ 60,000 110,000 73,416 120,113
  シリア 44,642 73,183 52,066 52,600
  中国 34,000 36,000 38,000 40,000
  ギリシャ 8,847 8,233 8,148 8,100
  アフガニスタン 2,457 2,457 ? 3,600 2,500
  チュニジア 2,000 2,700 2,500 2,500
  イタリア 2,719 1,024 2,782 2,000
  キルギス 300 500 800 800
ピスタチオ(raw)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 2,352 kJ (562 kcal)
27.51 g
糖類 7.66 g
食物繊維 10.3 g
45.39 g
飽和脂肪酸 5.556 g
トランス脂肪酸 0 g
一価不飽和 23.82 g
多価不飽和 13.744 g
20.27 g
トリプトファン 0.271 g
トレオニン 0.667 g
イソロイシン 0.893 g
ロイシン 1.542 g
リシン 1.142 g
メチオニン 0.335 g
シスチン 0.355 g
フェニルアラニン 1.054 g
チロシン 0.412 g
バリン 1.23 g
アルギニン 2.012 g
ヒスチジン 0.503 g
アラニン 0.914 g
アスパラギン酸 1.803 g
グルタミン酸 3.79 g
グリシン 0.946 g
プロリン 0.805 g
セリン 1.216 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(2%)
249 μg
1405 μg
チアミン (B1)
(76%)
0.87 mg
リボフラビン (B2)
(13%)
0.16 mg
ナイアシン (B3)
(9%)
1.3 mg
パントテン酸 (B5)
(10%)
0.52 mg
ビタミンB6
(131%)
1.7 mg
葉酸 (B9)
(13%)
51 μg
ビタミンB12
(0%)
0 μg
ビタミンC
(7%)
5.6 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(15%)
2.3 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(22%)
1025 mg
カルシウム
(11%)
105 mg
マグネシウム
(34%)
121 mg
リン
(70%)
490 mg
鉄分
(30%)
3.92 mg
亜鉛
(23%)
2.2 mg
マンガン
(57%)
1.2 mg
セレン
(10%)
7 μg
他の成分
水分 3.91 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
(100g中)の主な脂肪酸の種類[4]
項目 分量(g)
脂肪 45.39
飽和脂肪酸 5.556
一価不飽和脂肪酸 23.82
16:1(パルミトレイン酸 0.473
18:1(オレイン酸 23.174
多価不飽和脂肪酸 13.744
18:2(リノール酸 13.485
18:3(α-リノレン酸 0.259

IUCNレッドリストでは産地がアフガニスタン、イラン、トルクメニスタンのみに限られると見なされた上で近危急種(Near Threatened)と評価されているが、その理由は「果実の採集、家畜により食べられること、伐採により脅かされている」こととされている[1]

イタリア・シチリア島のピスタチオは2年に1度収穫される希少価値の高いものであることから、現地では盗難事件が今も後を絶たず、イタリア政府から警備を強化されている[5]

利用編集

 
食用に炒ったピスタチオナッツ

熟した種子を殻果ごと焙煎し、味をつけたものを食用とする。ピスタチオグリーンと呼ばれる緑色が残り、味は他のナッツ類と異なる独特の風味があり、「ナッツの女王」とも呼ばれる。また殻を割るパチンという音も心地よく、や茶請けとして用いられる。

傍ら、産地や製法(加工法)ごとに種子の風味(甘みやコクの差、粒の大きさと噛みごたえの違い)が異なるのもあって人々の評価も広めとなっている[6]

ナッツとして食べる他に、緑色を活かして、ペーストにして製菓材料に用いたり、ケーキクッキーの飾りつけに用いたりする。アイスクリームに混ぜ込むことも欧米では一般的。中東ではハルヴァと呼ばれるヌガーに似た菓子にも用いられる。料理では、パスタスープに用いるものがある。

生薬としては、種子を阿月渾子(あげつこんし)と称し、腎炎肝炎胃炎などに有効とされる。血中のLDLコレステロールを低減し、抗酸化物質を増やす作用もある[7]

一般にナッツの摂取は心血管疾患発症リスクを低下させることが知られている。アーモンドクルミ、ピスタチオの摂取は総コレステロール、LDL-コレステロールを低下させることが報告されているが、ピスタチオにおいては血圧降下作用も報告されている。[8]

安全性編集

他のウルシ科植物と同様にウルシオールが含まれており、その成分によるアレルギー反応を引き起こす可能性がある[9]ことから生の果実(種子)の取り扱いには慎重さを要する。

また、ピスタチオは果実そのものが低水分である上に脂肪含有率が高いことから自己発熱および自然発火する傾向があり、バルク・コンテナ内で不適切に保管すると火災発生することが知られている[要出典]。特に穀粒のものは加工後のものに比べてその割合も高めとなっている。現在、果実やその加工製品の火災事故の防止の為「油の染みた状態」の布類あるいは繊維状の材質の物品を貯蔵時に使用することが禁止されている[10][11]

脚注編集

  1. ^ a b Participants of the FFI/IUCN SSC Central Asian regional tree Red Listing workshop, Bishkek, Kyrgyzstan (11-13 July 2006) (2007). Pistacia vera. The IUCN Red List of Threatened Species 2007: e.T63497A12670823. doi:10.2305/IUCN.UK.2007.RLTS.T63497A12670823.en Downloaded on 01 January 2019.
  2. ^ a b ピスタチオナッツ”. ナッツ協会. 2015年11月15日閲覧。
  3. ^ Food and Agricultural commodities production”. 国際連合食糧農業機関. 2011年5月8日閲覧。
  4. ^ USDA
  5. ^ 警察が守るほど高級 シチリア産ピスタチオ、盗難との戦い”. BBCニュース (2019年5月20日). 2019年5月22日閲覧。
  6. ^ ピスタチオのおすすめ7選!【グラノーラ研究家に取材】”. マイナビニュース (2019年4月26日). 2019年5月22日閲覧。
  7. ^ Kay, Colin D; Sarah K Gebauer, Sheila G West and Penny M Kris-Etherton (1 April 2007). “Pistachios reduce serum oxidized LDL and increase serum antioxidant levels”. The FASEB Journal 21 (6): A1091-a. http://www.fasebj.org/cgi/content/meeting_abstract/21/6/A1091-a 2008年6月18日閲覧。. 
  8. ^ Diets containing pistachios reduce systolic blood pressure and peripheral vascular responses to stress in adults with dyslipdemia. West SG et al: Hypertension 60: 58-63, 2012.
  9. ^ Mabberley, D. J. (1993). The Plant Book. Cambridge: Cambridge Univ. Press. p. 27. ISBN 0-521-34060-8. 
  10. ^ Risk factor: self-heating/spontaneous combustion”. Container Handbook. Gesamtverband Deutsche Versicherungswirtschaft. 2019年5月22日閲覧。
  11. ^ Pistachio Nuts: Self-heating”. Transport Information Service. Gesamtverband Deutsche Versicherungswirtschaft. 2019年5月22日閲覧。