フィジカルトレーニング

フィズィカル・トレーニングPhysical Training)とは、体力の強化と健康状態を維持する目的で実施する身体活動の一種である[1]。「運動」、「エクササイズ」Physical Exercise)とも呼ばれる。

身体活動に励む兵士

種類編集

一般的には以下の3つに大別される。

運動の利点編集

世界保健機関は、運動はうつ病を予防し、精神面での健康(メンタルヘルス)にも有益な効果がある、と発表している[2]

2021年1月にハーヴァード大学医学部が発表した研究結果によれば、強度の激しい運動は、精神面と体力の測定でより良い結果をもたらしたが、寿命を延ばす効果も、心血管疾患や癌を防ぐ効果も無かった[3]

運動の難点編集

24週間、毎日ウォーキングを続けることで体に及ぼす影響について調べる実験が行われた。歩数はそれぞれ10000歩、12500歩、15000歩であった。結果は、徐脂肪体重は増えたが脂肪も増加し、体重は全く減らなかった。研究者らは、「ウォーキングには、体重の増加・脂肪の増加を防ぐ効果は見られなかった」と結論付けている[4]

イングランドの医師、ジョン・ブリッファ(John Briffa)は「有酸素運動では筋肉は増えない」「有酸素運動に体重を減らす効果は無い」と明言している[5]

ジョギングを普及させたことで知られるジム・フィックス(Jim Fixx)は、自身がジョギングに励んでいる最中に心臓発作を起こして倒れ、そのまま死亡しており[6]、運動は身体や臓器に負担をかける。

ジョギングの最中およびジョギングを終えた直後に冠状動脈性心臓病(Coronary Heart Disease)で死亡する例は決して珍しいものではない[7][8][9]。精良な運動能力が運動中の死亡事故から身体を保護することを示す証拠は無い[10]

走っている最中に死亡した40歳以上の人間の死因の多くは冠状動脈性心臓病である。10年間で22 - 176km、週に平均で53kmの距離を走っていた40 - 53歳(平均年齢46歳)の5人の白人ランナーが走行中に突然死し、その部検によれば、ランナーとして走るようになる前に心臓病を患っていた者は1人もいなかった[11]

体育館にてトレッドミルを使って走っていた57歳の男性が、その最中に突然死亡した。彼の死因は「虚血性心疾患」(Ischemic Heart Disease)であった。研究者らは「身体活動を不定期に行う人は、そうでない人に比べて突然死の危険が高い」「極端な身体活動は、たとえ以前にその症状が無かったとしても、心臓に致命的な結果をもたらす可能性がある」と報告している[12]

ケープタウン大学の教授で運動生理学スポーツ医学の専門家、ティム・ノークス(Tim Noakes)は、運動中の突然死について、「50歳以上の人は、あらゆる種類の運動を開始する前に、心血管の診断を受ける必要がある。50歳未満の人でも、突然死した人物の家族歴について面談を行い、心血管疾患の症状とその臨床徴候についての診断を受ける必要がある」「肥大型心筋症を患っている場合、運動中に死亡する危険が高くなる」「アスリートたちは運動中の心臓病の発症を予防できるとは限らない」と書いている[13]

運動していても、炭水化物を食べている限り高血糖は防げず(高血糖を惹き起こす最も一般的な原因は炭水化物の摂取にある[14])、インスリン感受性は運動を終えた途端に低下する(インスリン抵抗性が高くなる)[15]。インスリン抵抗性は運動では防げない。

「インスリン感受性が低い」ということは、「インスリン抵抗性が高い」(インスリンの効き目が悪い)状態を意味する[16]

度が過ぎる運動はミトコンドリア(Mitochondria)の機能障害を惹き起こし、耐糖能(Glucose Tolerance, 上昇した血糖値を下げる、血糖値を正常に保つ能力)も低下させてしまう[17]

ロンドン生まれの葬儀屋、ウィリアム・バンティング(William Banting)は、自身が太り過ぎていたことに悩んでおり、体重を減らす目的でテムズ川で毎朝ボートを漕ぎ続けた。彼の腕の筋力は強化されたが、それに伴って猛烈な食欲が湧き、体重は減るどころかますます増えていった。医師であり、友人でもあったウィリアム・ハーヴィー(William Harvey)はバンティングに「運動を止めなさい」と助言し、炭水化物を制限する食事法を教えた。この食事法に従ったバンティングは大幅に体重を減らしただけでなく、身体の不調も回復していった[18]1863年、バンティングは、減量に成功した食事法や、減量にあたって試しては失敗を続けてきた方法をまとめた『Letter on Corpulence, Addressed to the Public』(『市民に宛てた、肥満についての書簡』)を出版した。バンティングはこの書簡の中で、「減量に対して何の効果も無い方法」の1つとして「食べる量を減らして運動量を増やす」を挙げている。

サイエンス・ジャーナリストゲアリー・タウブス(Gary Taubes)は、「減量が目標であり、あなたの健康と生活がそれに左右されるとしても、『1年半の間毎日努力を続ければ、脂肪を5ポンド(約2.3㎏)減らせるかもしれない』と言われたら、あなたは26マイル(42km)を走れるようになるための訓練をするだろうか?」と問いかけている[19]

メイヨー・クリニック(Mayo Clinic)の医師で、肥満と糖尿病の専門家であったラッセル・ワイルダー(Russell Wilder)は、1932年に行った講演で以下のように述べた。

「肥満患者は、ベッドの上で安静にしていることで、より早く体重を減らせる。一方で、激しい身体活動は減量の速度を低下させる」「運動を続ければ続けるほどより多くの脂肪が消費されるはずであり、減量もそれに比例するはずだ、という患者の理屈は一見正しいように見えるが、体重計が何の進歩も示していないのを見て、患者は落胆する」[19]

ワイルダーは、「運動すれば減量できる」「座りっぱなしの生活を送っていると太る」「食べ過ぎるから太る」といった考え方を「幼稚」として退けていた。

減食と運動は無意味編集

1990年代初期、アメリカ国立衛生研究所(The National Institutes of Health)は、『The Women's Health Initiative』(『女性の健康構想』)と題した、約10億ドルに及ぶ研究を行った[20][21]。このとき、「低脂肪の食事で心臓病や癌を本当に予防できるか」という研究も同時に行われた。5万人近くの女性を登録し、そのうち19541人を無作為に選んだ。研究は1993年に開始し、8年間続けられた。研究者たちは、参加した女性たちに対し、果物・野菜・全粒穀物・食物繊維が豊富なもの・脂肪が少ないもの・・・これらを優先的に食べるよう指示した。この食事を続けるにあたり、女性たちは定期的にカウンセリングを受けた[22]。脂肪の摂取量については、摂取カロリーのうちの38%から20%に減らすことを目標とし、参加した女性たちについて、体重の増減、コレステロールの数値、脳卒中、心臓発作、乳癌、直腸癌、その他の心血管疾患を発症するかどうかについても調べた[22]。毎日の食事の摂取カロリーは360kcal分減らし、少ない量を食べ続けた。参加した女性たちは「少なく食べるように」「脂肪が少ないものを食べるように」「運動するように」という指示も与えられ、減食と運動を忠実にこなし続けた[19]

この生活を8年間続けた結果、女性たちは(実験開始前と比べて)1人あたり平均で約1kg体重が減ったが、その腰回りは膨らんだ[19]。この事実が意味するところは、「彼女らの身体から減ったのは脂肪ではなく、筋肉である」ということである。また、研究者たちは「脂肪分の少ない食事は、心疾患、癌、その他の病気を予防できなかった」とも報告している。脂肪の摂取量が少ない食事には、乳癌、心臓病、脳卒中の発症リスクを下げる効果も、閉経後の女性の結腸直腸癌のリスクを下げる効果も一切無かった[23]。彼女らが受けたカウンセリングおよび食事の意味として、意識的か無意識的かを問わず、「少なく食べるよう心掛けた」ことである[19]。「消費カロリーが摂取カロリーを上回れば体重は減る」のが本当であるのなら、この試験に参加した女性たちが太った理由が説明できなくなる。脂肪は1kgにつき、約7000kcalのエネルギーに相当する。彼女らが、毎日の食事の摂取カロリーを360kcal減らしていたのなら、実験を開始して3週間で約1kgの脂肪が減っていたはずであり、1年続ければ約16㎏の脂肪が減る計算になる。試験開始の時点で、参加した女性たちの半数は肥満体であり、大多数は少なくとも過体重であった[19]。研究者たちは、「低脂肪食は乳癌を患うリスクを下げるだろう」と考え、栄養士たちは「脂肪の摂取量について、目標の数値である20%まで下げれば、低脂肪食の効果が明白になった可能性がある」と述べた[22]。8年間かけて行われたこの研究結果はアメリカ医師会雑誌(『Journal of the American Medical Association』)に掲載された。『女性の健康構想』の研究結果が示しているのは、「癌や心血管疾患を防ぐという目的において、低脂肪食には何の効果も無い」ということである[22]

参考編集

  1. ^ Diversity Of Sport: non-destructive evaluation. Paris: UNESCO: Encyclopedia of Life Support Systems. (2011). pp. 462–91. ISBN 978-5-89317-227-0 
  2. ^ mhGAP Intervention Guide for mental, neurological and substance use disorders in non-specialized health settings (2 ed.), 世界保健機関, (2016), ISBN 9789241549790, http://www.who.int/mental_health/mhgap/mhGAP_intervention_guide_02/en/ 
  3. ^ Publishing, Harvard Health. “Harder workout intensity may not increase your longevity”. Harvard Health. 2020年12月31日閲覧。
  4. ^ The Impact of Step Recommendations on Body Composition and Physical Activity Patterns in College Freshman Women: A Randomized TrialBruce W Bailey, Ciera L Bartholomew, Caleb Summerhays, Landon Deru, Sharla Compton, Larry A Tucker, James D LeCheminant, Joseph Hick. PMID 31885908 doi:10.1155/2019/4036825
  5. ^ Briffa, John (2012). Escape the Diet Trap. Fourth Estate. ISBN 978-0007447763 
  6. ^ Gross, Jane (1984年7月22日). “James F. Fixx Dies Jogging; Author on Running was 52”. New York Times. https://www.nytimes.com/1984/07/22/obituaries/james-f-fixx-dies-jogging-author-on-running-was-52.html 2015年8月13日閲覧。 
  7. ^ Sudden cardiac death during first-time jogging PMID 28373621 doi:10.2152/jmi.64.184
  8. ^ Nontraumatic death in joggers. A series of 30 patients at autopsy PMID 6211977 doi:10.1016/0002-9343(82)90845-2
  9. ^ Sudden death of a young man during a sponsored jogging event PMID 6931330
  10. ^ Death During Jogging or Running A Study of 18 CasesPaul D. Thompson, MD; Michael P. Stern, MD; Paul Williams, MS; et alKirk Duncan, MD; William L. Haskell, PhD; Peter D. Wood, DSc. JAMA. 1979;242(12):1265-1267. doi:10.1001/jama.1979.03300120019016
  11. ^ Sudden death while running in conditioned runners aged 40 years or over
  12. ^ Sudden cardiac death: the dark side of exercise! doi: 10.15761/CDM.1000110
  13. ^ SUDDEN DEATH AND EXERCISETimothy D. Noakes, Physiology, University of Cape Town Medical School. Observatory 7925, South Africa. Reference: Noakes, T.D. Sudden death and exercise. In: Encyclopedia of Sports Medicine and Science, T.D. Fahey (Editor). Internet Society for Sport Science: https://www.sportsci.org/jour/9804/tdn.html 8 Nov 1998. Reviewer: George D. Swanson, Physical Education and Exercise Science, California State University, Chico, CA, USA.
  14. ^ Effect of high carbohydrate intake on hyperglycemia, islet function, and plasma lipoproteins in NIDDMA Garg, S M Grundy, M Koffler. PMID 1468287 doi:10.2337/diacare.15.11.1572
  15. ^ Blood Glucose Levels of Subelite Athletes During 6 Days of Free LivingFelicity Thomas, Chris G Pretty, Thomas Desaive, J Geoffrey Chase. PMID 27301981 doi:10.1177/1932296816648344
  16. ^ Dr. Frank Aieta, ND (2019年10月13日). “How You Can Optimize It for Better Health”. ruled.me. 2021年3月18日閲覧。
  17. ^ Excessive exercise training causes mitochondrial functional impairment and decreases glucose tolerance in healthy volunteersMikael Flockhart, Lina C.Nilsson, Senna Tais, Björn Ekblom, William Apró, Filip J. Larsen
  18. ^ Groves, PhD, Barry (2002年). “WILLIAM BANTING: The Father of the Low-Carbohydrate Diet”. Second Opinions. 2007年12月26日閲覧。
  19. ^ a b c d e f Taubes, Gary (2010). Why We Get Fat. New York City: Alfred A. Knopf. ISBN 978-0-307-27270-6 
  20. ^ About WHI”. whi.org. 2019年10月28日閲覧。
  21. ^ Women's Health Initiative (WHI)”. clinicaltrials.gov (2016年4月15日). 2019年10月28日閲覧。
  22. ^ a b c d Low-Fat Diet Not a Cure-All”. hsph.harvard.edu. The Harvard T.H. Chan School of Public Health (2006年2月9日). 2020年9月13日閲覧。
  23. ^ News from the Women’s Health Initiative: Reducing Total Fat Intake May Have Small Effect on Risk of Breast Cancer, No Effect on Risk of Colorectal Cancer, Heart Disease, or Stroke”. nih.gov. The National Institutes of Health (2006年2月7日). 2020年9月13日閲覧。