ファイトケミカル

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  • フィトケミカル

ファイトケミカルまたはフィトケミカル: phytochemical)とは、植物中に存在する化合物であるとされる[1][2]。したがって1種類の化合物ではない。直訳すると「植物性化学物質[3]」であり、化学的には毒物を含めた、植物中の全ての化学物質を指す。一般的には「身体機能維持には必要とされず、健康に影響を与えるかもしれない植物由来の化合物」を意味する用語として使用されている[2]植物栄養素(しょくぶつえいようそ、: phytonutrient)とも呼ばれる。

果物野菜マメ全粒粉ナッツなどを豊富に含む食事の健康への良い効果を支持する証拠は充分にあるが、この効果が植物由来の特定の栄養素つまりファイトケミカルに由来するかどうかについての証拠は限られている[2][4]。つまり、多くのファイトケミカルが健康効果の証明はされていない。

本項ではこの物質のことをファイトケミカルで統一して使用する。

概要編集

ファイトケミカルは古くから薬として用いられてきた。ヒポクラテスは風邪への対処としてヤナギの葉を処方している。現代に入り、ヤナギの樹皮から抗炎症作用を有するサリシンが単離され、アスピリンの開発へと繋った。また、重要な抗がん剤であるパクリタキセル(タキソール)もセイヨウイチイの木から発見されたファイトケミカルの1つである。[要出典]

またファイトケミカルは毒物幻覚剤としても利用された歴史を持つ、ベラドンナトロパンアルカロイドは毒矢に利用された[5]

ファイトケミカルは必須栄養素とは異なり、通常の代謝には必要ではなく、摂取しなくとも欠乏症が起こることはない。広義の意味では、植物由来の化合物や栄養素を指す。[要出典]

ファイトケミカルの中には果物や野菜の色素である化合物もあり、例えばルテインはトウモロコシの黄色、リコピンはトマトの赤、カロテンはニンジンのオレンジ色、アントシアニンはブルーベリーの青色の色素である。共役系の広がりなどの効果により、光の吸収帯が可視光にできた結果として、色素としての役割を果たせている。また、これらの色素の一部は抗酸化剤としても用いられ、抗酸化物質として作用する物もある。

ファイトケミカルの中には、発がん性を示す物もあれば、抗発がん性 (en:Anticarcinogen) を示す物もある。疫学的研究により、果物や野菜に含まれるファイトケミカルはがんの危険性を減少させるという証拠が得られている。しかし、喫煙者がβ-カロテンを多量に摂取した場合はがんのリスクが増すことが示されており、これはβ-カロテンの分解生成物が血漿中のビタミンAを減少させ、喫煙によって誘発される肺の細胞の増殖を悪化させるためではないかと考えられている。[要出典]

かつてアメリカ国立癌研究所 (NCI) によって2000万ドルの予算でがんを予防するために、ファイトケミカルを特定して加工食品に加える目的で、デザイナーフーズ計画 (designer foods project) が開始された[6]。デザイナーフーズ計画では、がんに有効性のあると考えられる野菜類が40種類ほど公開された。その後、デザイナーフーズ計画はなくなった[7]

ファイトケミカルは非常に多種の化学物質を指す言葉であるから。アリストロキア酸など発がんの性のあるものや、パクリタキセルなどの抗がん剤として利用されるものも含まれる[8][9]

分類と作用編集

ファイトケミカルの分類と含有される一般的な植物

分類 名称 含まれる植物 機能・効果
ポリフェノール フラボノイド(色素) アントシアニン ブドウ黒米ブルーベリー 抗酸化作用
イソフラボン 大豆など 更年期障害改善・骨粗鬆症予防
フェニルプロパノイド セサミノール ゴマなど 抗酸化作用・動脈硬化予防
シゲトン類 クルクミン ウコンなど 抗酸化作用・抗炎症作用・肝機能改善
有機硫黄化合物 イソチオシアネート スルフォラファン ブロッコリースプラウトなど 抗酸化作用・解毒作用・がん予防
システインスルホキシド メチルシステインスルホキシド ニンニクなど 解毒作用・免疫力向上
スルフィン アリシン ニンニクなど 抗酸化作用・動脈硬化予防
テルペノイド 非栄養系カロテノイド類(色素) ルテイン ホウレンソウなど 抗酸化作用
リコペン トマトスイカなど 抗酸化作用
モノテルペン(香気成分) リモネン 柑橘類 抗酸化作用・抗アレルギー作用
ステロイド フィトステロール 植物油 コレステロール減少
糖関連化合物 多糖 β-グルカン キノコ 免疫力向上
配糖体 サポニン 類・穀物ハーブ
長鎖アルキルフェノール誘導体(辛味成分) カプサイシン トウガラシ 体熱生産作用
ギンゲロール ショウガ 体熱生産作用

出典編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 「野菜350g」は本当にカラダにいいの…?食生活のウソホント”. FRIDAYデジタル (2020年7月16日). 2020年11月27日閲覧。
  2. ^ a b c Micronutrient Information Center, Linus Pauling Instituteat Oregon State University. “Phytochemicals”. 2011年6月28日閲覧。
  3. ^ 臨床研究情報センター(2011)「PDQがん用語辞書」,<http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/dictionary/detail.jsp>2018年3月11日アクセス.
  4. ^ Fruits and Veggies, More Matters”. Centers for Disease Control and Prevention, US Department of Health and Human Services (2010年). 2011年6月28日閲覧。
  5. ^ Michael (1998). Alkaloids : biochemistry, ecology, and medicinal applications. New York: Plenum Press. p. 20. ISBN 0-306-45465-3.
  6. ^ Brody, Jane E. (1991年2月19日). “Fortified Foods Could Fight Off Cancer”. The New York Times. http://www.nytimes.com/1991/02/19/science/fortified-foods-could-fight-off-cancer.html 2011年6月28日閲覧。 
  7. ^ Christine Theisen (2001). “What Ever Happened To . . . Looking Back 10 Years”. JNCI Journal of the National Cancer Institute 93 (14): 1049-1050. PMID 11459863. http://jnci.oxfordjournals.org/cgi/content/full/93/14/1049. 
  8. ^ Molyneux, RJ; Lee, ST; Gardner, DR; Panter, KE; James, LF (2007). "Phytochemicals: the good, the bad and the ugly?". Phytochemistry. 68 (22–24): 2973–85. doi:10.1016/j.phytochem.2007.09.004. PMID 17950388.
  9. ^ Iwasaki, S (April 1998). "Natural organic compounds that affect to microtubule functions". Yakugaku Zasshi. 118 (4): 112–26. PMID 9564789.

関連項目編集

外部リンク編集