フィリダ・ロイド(Phyllida Lloyd, 1957年6月17日 - )は、イギリス出身の演出家・映画監督。『マンマ・ミーア! 』や『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』などの代表作でよく知られている。

フィリダ・ロイド
Phyllida Lloyd
生誕 フィリダ・ロイド
(1957-06-17) 1957年6月17日(66歳)
イギリス
職業 舞台・映画監督
活動期間 1997年 -
代表作マンマ・ミーア!
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
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経歴 編集

ロイドはイングランド西部の港湾都市であるブリストルで育つ[1]。1979年にバーミンガム大学を卒業した後、英国放送協会 (BBC) に5年間勤める。1985年、ロイドはニューウルジー・シアターでの見習いの演出家として英国アーツカウンシル奨学金を授与される。翌年ロイドはチェルトナムのエブリマンシアターの演出家として任命された。そして1989年にロンドンのオールド・ヴィック・シアターの演出家に任命され、そこでのロイドの『間違いの喜劇』は成功を収めた[2]

ロイドはマンチェスターのロイヤル・エクスチェンジ・シアターへと移り、そこで『冬物語』、『悪口学校』、『メディア』、また多大なる喝采を浴びたウォーレ・ショインカの『死と王の先導者』の演出を務めた[3][1]。1991年にロイドはロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでほとんど知られていなかった戯曲、トーマス・シャドウェルの『ヴァーチュオーゾ』でデビューした[1]。続いてアレクサンドル・オストロフスキーの『芸術家と賞賛』で成功を収めた[1]

また1992年にロイヤル・コート・シアターでのジョン・グェア『六次の隔たり』で初の商業的な成功を収め、ウエストエンドの劇場に移され上演された[1]。1994年 ロイヤル・ナショナル・シアターで批評家の意見が分かれた『ペリクリーズ』の製作も手がける[4]。 そしてロイヤル・コート・シアターでのテリー・ジョンスンの『ヒステリア』とドンマー・ウエアハウスでのベルトルト・ブレヒトクルト・ヴァイルの『三文オペラ』は世界的に賞賛される[1]

この時までにロイドの仕事はニコラス・ペインの注意を引き、オペラノースへ移籍した。オペラ演出家としての彼女のデビューのために、彼は少なくともイギリスでは無名であったエマニュエル・シャブリエの『エトワール』を上演するようロイドに持ちかけた。それからの彼女の作品には『ラ・ボエーム』、『グローリアーナ』、ルイジ・ケルビーニの 『メデア』、オペラ・ノースでの『アルバート・ヘリング』と『ピーター・グライムズ』、イングリッシュ・ナショナル・オペラウェールズ・ナショナル・オペラでの『カルメル派修道女の対話』、ジュゼッペ・ヴェルディの『マクベス』(オペラ・バスティーユロイヤル・オペラ・ハウス)、ポウル・ルーザスの『侍女の物語』の初演(マーガレット・アトウッドの小説を原作とする)、そして物議を醸したイングリッシュ・ナショナル・オペラでの『ニーベルングの指環』などが含まれる。そして彼女は国際的な賞であるエミー賞、FIPA d'Orとロイヤル・フィルハーモニック協会賞を受賞した。

ロイヤル・ナショナル・シアターでの最初の上演の賛否両論にもかかわらず、ロイドはウィリアム・コングリーヴの『世の習い』、『ペリクリーズ』、ジョー・オートンの『執事が見たもの』、『ミス・ブロディの青春』、そしてジョン・ウェブスターの『モルフィ公爵夫人』を再演し、賞賛された。

2001年にはロンドンのドンマー・ウエアハウスで『ボストンマリッジ』の演出をし、賞を受賞した。その他の最近の仕事には、詩人のピーター・オズワルドによって新しく翻訳されたフリードリヒ・フォン・シラーの『メアリー・ステュアート』が含まれ、ロンドンのドンマー・ウエアハウスで上演されたこの演目は、2009年春にロンドンのアポロ・シアターブロードウェイに移され上演された。

1999年、ロイドはABBAのミュージカルである『マンマ・ミーア!』の演出オファーを受ける。そしてこの作品はウエストエンドやブロードウェイのみならず世界中で大ヒットした。この作品は2008年に映画化され、ロイドの長編映画監督デビューとなった。2008年の終わりまでには、英国ボックス・オフィス史上最も興行収入をあげた映画として認定された[5]。この作品はまた、イギリスで最も売れたDVDとされている[6] 。2009年、ロイドは『メアリー・ステュアート』でトニー賞の演劇作品賞にノミネートされた。

また、イギリス首相マーガレット・サッチャーの伝記映画で、サッチャー役としてメリル・ストリープを起用した『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を監督した。この作品は2011年1月に製作が開始され、同年12月に公開された[7]

2012年より、ロイドは舞台の演出家としてオール・フィメール・キャストでシェイクスピアを上演する試みを行っている。2012年にドンマー・ウエアハウスで『ジュリアス・シーザー』、2015年にセント・アンズ・ウエアハウスで『ヘンリー四世』(第1部第2部)、2016年にニューヨーク・シェイクスピア・イン・ザ・パークにて『じゃじゃ馬ならし』を女優のみのキャストで上演している[8][9][10]

フィルモグラフィ 編集

映画 編集

作品 詳細
2008 マンマ・ミーア! レンブラント最優秀国際映画賞
英国映画テレビ芸術アカデミー作品賞ノミネート
アマンダ優秀外国映画賞ノミネート
2011 マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 アカデミー賞: 主演女優賞 (メリル・ストリープ)

観客賞受賞

2020 サンドラの小さな家  兼製作総指揮

受賞・顕彰 編集

オックスフォード大学はフィリダ・ロイドを2006年にキャメロン・マッキントッシュ・コンテンポラリー・シアター客員教授に任命した[11]。同じ年に彼女はブリストル大学名誉学位を与えられた[12] 。ロイドはオープンリー・レズビアンであり、2008年に『インデペンデント』紙で、イギリスの最も影響力のある101人のゲイとレズビアンのうちの一人に選ばれ[13][14]、2010年には同リストで昨年の7位から順位を落として22位にランク付けされた[15]。2010年、新たにロイドは大英帝国勲章 (CBE) を授与された[16]。2009年にはバーミンガム大学で名誉学位である文学博士の称号が与えられている[17]

部門 作品名 結果 特記
2021 トニー賞 ミュージカル演出賞 ティナ
Tina - The Tina Turner Musical
ノミネート [18][19]
2012 ヨーロッパ映画賞 観客賞 マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙
The Iron Lady
ノミネート [20]
2009 英国アカデミー賞 英国作品賞 マンマ・ミーア!
Mamma Mia!
ノミネート [21]
2009 トニー賞 演劇演出賞 メアリー・スチュアート
Mary Stuart
ノミネート [22][23]

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f Gabriella Giannachi and Mary Luckhurst, ed., On Directing: Interviews with Directors (Macmillan, 2014), p. 55.
  2. ^ David Benedict "Arts: Together wherever we go", The Independent, 29 April 2011
  3. ^ "Death and the Kings Horseman", Royal Exchange Theatre website
  4. ^ See Pericles at the Royal National Theatre by Melissa Gibson, in Pericles: Critical Essays (Shakespeare Criticism, Volume 23)
  5. ^ Irvine, Chris (2008年10月30日). “Mamma Mia becomes highest grossing British film”. The Telegraph. 2009年1月1日閲覧。
  6. ^ Mamma Mia! tops all-time DVD list”. BBC News (2009年1月1日). 2009年1月1日閲覧。
  7. ^ Catherine Shoard "Meryl Streep's Margaret Thatcher revealed in first still from The Iron Lady", The Guardian, 8 February 2011
  8. ^ Michael Billington (2012年1月10日). “Julius Caesar – review”. The Guardian. 2016年7月5日閲覧。
  9. ^ Henry IV”. St Ann's Warehouse. 2016年7月5日閲覧。
  10. ^ Katie Van-Syckle (2016年5月24日). “Phyllida Lloyd Reveals Challenges of Bringing All-Female ‘Taming of the Shrew’ to Central Park”. Variety. 2016年7月5日閲覧。
  11. ^ Phyllida Lloyd named Cameron Mackintosh Visiting Professor”. University of Oxford (2006年1月19日). 2008年4月20日閲覧。
  12. ^ Honorary Graduates”. University of Bristol (2006年7月31日). 2008年4月20日閲覧。
  13. ^ Tuck, Andrew (2006年7月2日). “Gay Power: The pink list”. The Independent (London: Independent News & Media). オリジナルの2008年1月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080107115957/http://news.independent.co.uk/uk/this_britain/article1153578.ece 2008年4月20日閲覧。 
  14. ^ Diane Anderson-Minshall (2012年2月13日). “Another Iron Lady on Chronicling the Original”. Advocate. http://www.advocate.com/print-issue/spectator/2012/02/13/two-iron-ladies  2016年7月5日閲覧。 
  15. ^ “The IoS Pink List 2010”. The Independent on Sunday (London: Independent Print Limited). (2010年8月1日). http://www.independent.co.uk/news/people/news/the-iiosi-pink-list-2010-2040472.html 2011年9月11日閲覧。 
  16. ^ "No. 59282". The London Gazette (Supplement) (英語). 31 December 2009. p. 7.
  17. ^ University of Birmingham”. thecompleteuniversityguide.co.uk. 2016年5月26日閲覧。
  18. ^ September 26, Jessica Derschowitz Updated. “Tony Awards 2021: See the full list of winners” (英語). EW.com. 2023年1月5日閲覧。
  19. ^ Woerner, Meredith (2021年9月26日). “Tony Awards: The Full List Of Winners” (英語). Variety. 2023年1月5日閲覧。
  20. ^ The Iron Lady” (英語). europeanfilmawards.eu. 2023年1月5日閲覧。
  21. ^ 2009 Film Outstanding British Film | BAFTA Awards”. awards.bafta.org. 2023年1月5日閲覧。
  22. ^ agencies, Staff and (2009年5月5日). “Billy Elliot musical dominates Broadway's Tony award shortlist” (英語). the Guardian. 2023年1月5日閲覧。
  23. ^ Stage,AP, Andrew Salomon Back (2009年5月5日). “‘Billy Elliot’ scores 15 Tony noms” (英語). The Hollywood Reporter. 2023年1月5日閲覧。

関連文献 編集

外部リンク 編集