フェニル酢酸メチル(フェニルさくさんメチル)は、化学式C9H10O2で表される酢酸エステルの一種である。メチルフェニルアセテートとも呼ばれる。

フェニル酢酸メチル
methyl phenylacetate
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識別情報
CAS登録番号 101-41-7 チェック
PubChem 7559
ChemSpider 7278 ×
UNII D4PDC41X96 ×
EC番号 202-940-9
MeSH C024906
バイルシュタイン 878795
特性
化学式 C9H10O2
モル質量 150.17 g mol−1
外観 無色ないし淡黄色の液体[1]
密度 1.055±0.060 g/cm3
融点

50 °C, 323 K, 122 °F

沸点

218 °C, 491 K, 424 °F

への溶解度 2070 mg/L
有機溶媒への溶解度 アルコールに可溶
グリセリンプロピレングリコールに不溶[2]
蒸気圧 17.3 Pa
磁化率 −92.73×10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.505±0.020 at 20 °C
危険性
NFPA 704
2
1
0
引火点 90.6 °C (195.1 °F; 363.8 K)
半数致死量 LD50 2.55g/kg(ラット、経口)[1]
関連する物質
関連する異性体 C9H10O2を参照
関連物質 フェニル酢酸
フェニル酢酸エチル
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

香料 編集

天然にはイチゴココアコーヒーから発見されている。ややジャスミン的なフローラルノートを持ち、ジャスミン・ローズオリエンタル調の調合香料にトップノートをもたらす。石鹸洗剤芳香剤にも使用されるほか、マスキング効果を持つことから家具や床用のワックスにも使われる。フレーバーとしては、イチゴ・モモチョコレートバニラおよびタバコに0.1~37ppm程使用される[1]

フェロモン 編集

林野庁森林総合研究所の研究により、木材となるスギヒノキに食害をもたらすカミキリムシの一種のスギノアカネトラカミキリに対する誘引性が確認された。これを応用し、市販の誘引トラップに使用されている[3]

製造 編集

工業的には、塩化ベンジルシアン化カリウムから得たシアン化ベンジルに、メタノール塩酸の混合液を加え、加水分解エステル化を同時に行うことにより製造される[4]

性質 編集

有機酸及び希酸には安定であるがアルカリに対しては不安定である[1]。日本の消防法では危険物第4類第三石油類に区分される[2]

脚注 編集

  1. ^ a b c d (印藤 2005, p. 650)
  2. ^ a b フェニル酢酸メチル”. 東京化成工業 (2018年10月4日). 2019年9月20日閲覧。
  3. ^ 雄の性フェロモンと花の匂いで雌を誘う」『研究の“森”から』第69巻、林野庁森林総合研究所、1998年11月27日、2019年9月20日閲覧 
  4. ^ (日本香料協会 1998, p. 233)

参考文献 編集

  • 印藤元一『合成香料 化学と商品知識』化学工業日報社、2005年。ISBN 4-87326-460-X 
  • 日本香料協会『香りの総合事典』朝倉書店、1998年12月10日。ISBN 4-254-25240-4