FIA フォーミュラE選手権 (FIA Formula E Championship、フォーミュライー、FE)は化石燃料を使用しない電気自動車フォーミュラカーによるレース。俗に「電気自動車のF1」などと紹介される。2014年9月から開催されている。

フォーミュラE
Formula E Logo.png
カテゴリ シングルシーター
国・地域 国際
開始年 2014-15
ドライバー 24 (2019-20)
チーム 12 (2019-20)
コンストラクター ダラーラ/スパーク
エンジン
サプライヤー
日産自動車
アウディ
DSオートモビルズ
マヒンドラ
ペンスキー
ジャガー
BMW
メルセデス
ポルシェ
タイヤ
サプライヤー
ミシュラン
ドライバーズ
チャンピオン
ポルトガルの旗 アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ
DS・テチーター
チーム
チャンピオン
中華人民共和国の旗 DS・テチーター
公式サイト FIAFormulaE.com
Motorsport current event.svg 現在のシーズン

概要編集

 
アプト・スポーツラインのフォーミュラEチーム(2015年、ベルリン)

2012年8月27日、国際自動車連盟 (FIA) がシリーズ設立を発表した[1]。フォーミュラEホールディング (FEH) がシリーズを運営し、同社CEOにはスペインの実業家アレハンドロ・アガグ英語版[2] が就任した。都市部の大気汚染対策となる電気自動車の普及促進を狙い、レースは世界各地の大都市や有名リゾート地の市街地コースで行なわれる[3][4]。シリーズは秋に開幕し、年をまたいで年間10戦程度が行なわれる。世界選手権ではないため、各イベントはグランプリ(GP)ではなくe-Prix(イープリ)と呼ばれる。

運営の効率化やチーム運営費用の削減などの目的もあり、レースの本部及び各チームのファクトリーは全てドニントンパークに集約されており、2014年1月に建物がオープンした[5]。またこの関係から、マシンテストは当初全てドニントンにて行われていた。ただし商業面の担当部門はロンドン市内にオフィスを構える[5]

初年度の2014 - 15年は「スパーク・ルノー・SRT 01E (Spark-Renault SRT_01E) 」と呼ばれる専用マシンを用いたワンメイクレースとして実施される。2015 - 16年はシャシーはワンメイクとなるものの、パワートレインについてはチーム独自に製造・改良することが認められる。搭載バッテリーの充電量に限度があるため、ドライバー1名あたり2台のマシンを使用し、レース中にピットで乗り換えなければならない[6]。なお2018 - 2019シーズンからは乗り換えが無くなり、ドライバーは1台のマシンで完走することが求められるようになる[7]。将来的には停車中にワイヤレス充電するシステムや、コース上の給電レーンを走行してワイヤレス充電する「ダイナミック・チャージング」の導入を目指している[8][9]

また、ワイヤレス給電などのテクニカルパートナーとしてクアルコムと契約を結んでいるほか[10]、物流面ではDHLと契約し、同社が全面的にマシン等の機材輸送を担当する[11]。2017 - 2018シーズンからはオフィシャルアパレルパートナーにヒューゴ・ボスがついているほか[12]、同シーズン途中よりABBグループがシリーズ全体の冠スポンサーとなった[13]

オフィシャルカーはフォーミュラE公式パートナーのBMWが供給、セーフティーカーi8を2台とオフィシャルカーにi3を2台の計4台が供給される。なお、セーフティーカー(正式名称はクアルコム・セーフティーカー)のドライバーは、長年WTCCでセーフティーカーのドライバーを務めるブルーノ・コレイアが務める。

またサポートレースとして、人工知能が操る自動運転車によるレース『ロボレース』の計画が進んでいる。フォーミュラEと同じコースで、60分間のレースを行う。全10チームの参加を想定しており、各チーム2台ずつ、合計20台の無人レーシングカーが参戦する。この内1チームは、世界中から自動運転関連技術のエキスパートを集めた混成チームとなる予定[14]

シリーズ開始以来、シーズン6までは世界選手権大会ではなかったが、2020年に開幕するシーズン7より国際自動車連盟(FIA)主催の世界選手権大会として開催されることが発表された[15]。これにより、FIA フォーミュラ1世界選手権(F1)、FIA 世界ラリー選手権(WRC) FIA 世界耐久選手権(WEC)、FIA 世界ラリークロス選手権(World RX)、CIK-FIA 世界カート選手権と同等のレーシングカテゴリとなる。

レギュレーション編集

特に記載がない限り、フォーミュラE公式サイト[16]、FIAプレスリリース[17][18] より。

  • 選手権はドライバー部門とチーム部門がある。ドライバー部門は全成績が対象。2014-15シーズンで適用されていた年間成績のうち最も成績が悪かった1戦を切り捨てる有効ポイント制は廃止された。チーム部門も同じく全成績が対象となる。
  • ポイントは1位から10位まで順に25-18-15-12-10-8-6-4-2-1ポイント。ポールポジション3ポイント、ファステストラップ1ポイント(シーズン2までは2ポイント)、グループ予選最速1ポイント(2019 – 2020シーズンから)。
    • ファステストラップについては、2016 - 2017シーズンにおいて、ファステストラップを記録したドライバーが、全戦において入賞圏外もしくはリタイアしたドライバーであった為、2017 - 2018シーズンよりトップ10の中で最速タイムを記録したドライバーにポイントが付与されることになった。
  • レースは基本的に土曜日[19] のワンデイイベント。
    • 練習走行は1回のみ、60分。
    • 予選は55分。ただし走行時間は40分。5台ごとにグループとなり計4グループに分かれて行う。各グループで10分間タイム計測を行う。練習走行のタイム順に1台ずつ出走し、最大4周まで(アタックラップは2周)。2015 - 2016シーズンからは各グループの走行時間が6分間に短縮される一方で、予選上位5位(2018 – 19シーズンより6位までに拡大)までの車によるスーパーポール方式のタイムアタックが行われる[20]
    • 決勝レースは最大で60分(2018 – 19シーズンよりタイムレース制となり、45分レースに縮小)。フォーメーションラップを行わず[21]、原則としてスターティンググリッドから2列下がったダミーグリッドについた後[22]、スターティンググリッドに移動してからスタンディングスタートでレースが開始される。
  • レース中にマシン乗換えのための最低1回のピットストップが義務付けられる。
    • 乗り換え前と後の2台のカーナンバーを異なる色にする。
    • 時間制限が設定されており、ガレージ内での乗り換え作業は50秒以上かけなければならず、ピットインからピットアウトまでのトータルタイムも指定秒数(レース毎に指定)以上をかけなければならない。(2017 - 2018シーズンをもって廃止。またこのシーズンはトータルタイムの制限がなかった)
  • タイヤがパンクした場合を除き、マシン乗り換え時にタイヤ交換作業は行なえない。
  • 練習走行と予選ではパワーユニットの最大出力 (200kW/270bhp) を使用可(2018-19シーズンより250kW)。決勝レース中はセーブモード(初年度は150kW/202.5 bhp、2年目,3年目は170kW、4年目は180kW、5年目より200kW)に制限される。
  • SNS上の人気投票で選ばれたドライバー3名(2018 - 19シーズンより5名に拡大)に、レース中エキストラパワーの使用を認める「Fan Boost(ファン・ブースト)」制度を採用。
    • 初年度はレース中5秒間だけ最大出力を180kW/243bhpに上げることが出来る[23]。2年目から4年目までは乗換え後のレース後半に1回のみ、180kWから200kWの範囲内で100kJのエネルギーが使える(秒数制限はなし)。5年目からはレース後半23分を経過してから1回のみ使用可能。
    • ファン投票の締切り期限は、初年度はレース開始まで、2015 - 16年からはレーススタート6分後まで。
  • シーズン2018年12月より、アクティベーションゾーンを通過することで、数分間最大出力の上限が上昇する「Attack Mode(アタック・モード)」をスイッチ操作で使用できる。このアタックモードは規定回数使用しなければならない。
  • 参戦するには最低でも国際B級ライセンスを持った上でFIAからeLicenceを取得する必要がある。
  • 1シーズンにつき、各ドライバーは車毎にモーター・バッテリーパック・ギアボックスの使用は1つまで。
  • 1イベントにつき、最大で5つの前輪用タイヤと5つの後輪用タイヤが使用できる。
  • 1チームに於いて車のオペレーションスタッフは12名まで。
  • セーフティカー手順はFIA標準に従う。
  • 公式以外のテストは認めない。
  • 2016年より、ドライバー部門のシリーズチャンピオンはスーパーライセンスの発給資格を得る[24]

マシン編集

第1世代編集

 
スパーク・ルノー・SRT 01E
 
ミシュラン製全天候型18インチタイヤ
 
シーズン3以降の新型フロントウィング

2013年9月のフランクフルトモーターショーで「スパーク・ルノー・SRT_01E」が披露された[6]。設計はスパーク・レーシング・テクノロジー[25] が担当し、パワートレイン全体を監修するテクニカルパートナーにルノーが就き、後述する主なサプライヤーから供給される各種コンポーネントを統括する[26]。開発ドライバーにはルーカス・ディ・グラッシ[27]佐藤琢磨[28]が起用される。

動力性能的にはF3マシンと同等レベル[23]。0–100 km/h加速は2.9秒、市街地コースのため最高速度は225km/h程度に抑えられる(いずれも想定値)。市販EVは変速機非搭載(最終減速のみ)だが、フォーミュラEでは4段ギアボックスを搭載する[23]

シャシーは、F1などのオープンホイールカーのレースで常に憂慮されるタイヤ同士の接触を原因とする車体が宙に舞うクラッシュを極力防ぐための工夫が凝らされている。フロントウィングの翼端板は正面から見た時にフロントタイヤのトレッド面を完全に覆う形状となっている他、サイドポンツーン後部はリアタイヤ前部のトレッド面を、さらにリアウイング下部と一体になったバンパーがリアタイヤ後部のトレッド面を覆い、トレッド面同士の接触を防ぐ構造になっている。また、コクピット両側には翼断面形状のクラッシャブルストラクチャーが取り付けられている。

ミシュランが供給するタイヤは18インチの溝入り全天候型タイヤとなり、1イベントにつき1台のマシンが使用可能なタイヤは1.5セット(6本)に限られる[29]

初年度は実質ワンメイクレースとなったが、2年目からはパワートレイン(モーター+インバータ+ギアボックス+冷却システム)について各チームの独自開発が認められており、ルノーやアウディなどが参入している[30]。モーターは2基まで、ギアボックスは6速まで選択可能であり、横置き・縦置きのレイアウトも自由。将来的にはシャシーの独自開発も認められる方針である。バッテリーに関しては参戦費用の高騰につながる懸念から、当面は共通化を維持する方針である[31]

3年目の2016 - 2017シーズンからは、上下2段構造のフロントウィングが導入された。これは空力的効果というよりも、フォーミュラEの先進性を外観上でも強調するための施策である[32]

第2世代編集

 
Gen2マシン

5年目の2018 - 2019シーズンからは新たに「Gen2」と呼ばれる新型シャシーが投入され、2021 - 2022シーズンまでの4シーズンに渡って使用される予定である[33]。前年までのシャシーとの相違点は下記の通り。

  1. 前後のタイヤを完全に覆うボディワークを装着する。そのため「Formula」と名は冠しているが、フォーミュラーカーの定義からははずれている。
  2. バッテリーが見直され、小型化・大容量化が図られている。電力量は約2倍(28kWh→54kWh)に増え、レース途中でマシンを乗り換える必要がなくなっている。最大出力は250kW(レース時200kW)、最高速は280km/hに上昇。
  3. フォーミュラ1同様、コックピットに頭部保護デバイスのHaloが装着される。LEDが内蔵されており、アタックモードやファンブースト使用時にはLEDが発光、観客が視覚的にブーストを使用したことが分かるようになっている。
  4. リアウィングが廃止され、左右のリアホイールハウス上に小型のウィングレットが装着される。ウィングの廃止によって損なわれるリアのダウンフォースは、従来よりも巨大化されたリアディフューザーで得る。
  5. 後輪の回生ブレーキに自動調整機能(ブレーキ・バイ・ワイヤ)の使用が認められる。

第1世代と同じく、3年目にアップデート版の「Gen2 EVO」が公開された。Gen2が接触に強く、その結果ペナルティが多数出され裁量基準に議論が巻き起こったため、Gen2 EVOはより”接触に弱い“仕様に修正された[34]。フロントはタイヤを覆うパーツがなくなり、「コ」の字型のフロントウィングを装着。リアの小型ウィングレットの形状も変更され、ドライバーシート後方から車体後部まで続くシャークフィンが追加された。7年目の2020 - 2021シーズンから導入される予定だったが、新型コロナウイルス (COVID-19) の世界的流行の影響で2021 - 2022シーズンに延期された[35]

主なサプライヤー編集

歴代チャンピオン編集

シーズン ドライバーズ・チャンピオン チームズ・チャンピオン
ドライバー 所属チーム 車番 マシン チーム マシン
2014年-15年   ネルソン・ピケJr.   チャイナ・レーシング
→NEXTEV TCR(登録名変更)
99 スパーク・ルノー・SRT 01E   e.dams・ルノー スパーク・ルノー・SRT 01E
2015年-16年   セバスチャン・ブエミ   ルノー・e.dams 9 ルノー・Z.E 15   ルノー・e.dams ルノー・Z.E 15
2016年-17年   ルーカス・ディ・グラッシ   アプト・シェフラー・アウディ・スポート 11 アプト・シェフラー・FE02   ルノー・e.dams ルノー・Z.E 16
2017年-18年   ジャン=エリック・ベルニュ   テチーター 25 ルノー・Z.E.17   アウディ・スポーツ・アプト・シェフラー アウディ・e-tron FE04
2018年-19年   ジャン=エリック・ベルニュ   DS・テチーター 25 DS E-Tense FE 19   DS・テチーター DS E-Tense FE 19
2019年-20年   アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ   DS・テチーター 13 DS E-Tense FE 20   DS・テチーター DS E-Tense FE 20

主なシリーズ参戦ドライバー編集

ドライバー 参戦年 主な成績 F1参戦歴
  ジャック・ヴィルヌーヴ 2015 2015-16年20位 1996-2006(ウィリアムズBARルノーザウバーBMWザウバー
  ヤルノ・トゥルーリ 2014-2015 2014-15年20位、2015-16年NC 1997-2011(ミナルディプロストジョーダン、ルノー、トヨタロータス
  ステファン・サラザン 2014-2018 2014-15年14位、2015-16年6位、2016-17年10位、2017-18年22位 1999(ミナルディ)
  ニック・ハイドフェルド 2014-2018 2014-15年12位、2015-16年10位、2016-17年7位、2017-18年11位 2000-2011(プロスト、ザウバー、ジョーダン、ウィリアムズ、BMWザウバー、ルノー)
  フェリペ・マッサ 2018-2020 2018-19年15位、2019-20年22位 2002, 2004-2017(ザウバー、フェラーリ、ウィリアムズ)
  佐藤琢磨 2014 2014-15年24位 2002-2008(ジョーダン、BAR、スーパーアグリ
  ジャスティン・ウィルソン 2015 2014-15年25位 2003(ミナルディ、ジャガー
  ヴィタントニオ・リウッツィ 2014-2015 2014-15年23位、2015-16年NC 2005-2007, 2009-2011(レッドブルトロ・ロッソフォース・インディアHRT
  スコット・スピード 2015 2014-15年15位 2006-2007(トロ・ロッソ)
  フランク・モンタニー 2014 2014-15年16位 2006(スーパーアグリ)
  山本左近 2015 2014-15年35位 2006-2007, 2010(スーパーアグリ、スパイカー、HRT)
  ネルソン・ピケJr. 2014-2019 2014-15年チャンピオン、2015-16年15位、2016-17年11位、2017-18年9位、2018-19年22位 2008-2009(ルノー)
  セバスチャン・ブエミ 2014- 2014-15年2位、2015-16年チャンピオン、2016-17年2位、2017-18年4位、2018-19年2位、2019-20年4位 2009-2011(トロ・ロッソ)
  ハイメ・アルグエルスアリ 2014-2015 2014-15年13位 2009-2011(トロ・ロッソ)
  小林可夢偉 2017 2017-18年24位 2009-2012, 2014(トヨタ、ザウバー、ケータハム
  カルン・チャンドック 2014-2015 2014-15年17位 2010-2011(HRT、ロータス)
  ブルーノ・セナ 2014-2016 2014-15年10位、2015-16年11位 2010-2012(HRT、ルノー、ウィリアムズ)
  ルーカス・ディ・グラッシ 2014- 2014-15年3位、2015-16年2位、2016-17年チャンピオン、2017-18年2位、2018-19年3位、2019-20年6位 2010(ヴァージン
  ジェローム・ダンブロシオ 2014- 2014-15年4位、2015-16年5位、2016-17年18位、2017-18年14位、2018-19年11位、2019-20年16位 2011-2012(ヴァージン、ロータス
  ジャン=エリック・ベルニュ 2014- 2014-15年7位、2015-16年9位、2016-17年5位、2017-18年チャンピオン、2018-19年チャンピオン、2019-20年3位 2012-2014(トロ・ロッソ)
  シャルル・ピック 2014-2015 2014-15年18位 2012-2013(マルシャ、ケータハム)
  エステバン・グティエレス 2017 2016-17年22位 2013-2014, 2016(ザウバー、ハース
  アンドレ・ロッテラー 2017- 2017-18年8位、2018-19年8位、2019-20年8位 2014(ケータハム)
  フェリペ・ナッセ 2019 2018-19年24位 2015-2016(ザウバー)
  パスカル・ウェーレイン 2019-2020 2018-19年12位、2019-20年18位 2016-2017(マノー、ザウバー)
  ストフェル・バンドーン 2018- 2018-19年16位、2019-20年2位 2016-2018(マクラーレン
  ピエール・ガスリー 2017 2016-17年16位 2017-(トロ・ロッソ、レッドブル)
  ブレンドン・ハートレイ 2019-2020 2019-20年23位 2017-2018(トロ・ロッソ)

評価と反応編集

マシンがF3レベルであることや4年目までマシンの乗換が必須であること、エンジン音がなく静かなためレース中にBGMが流されるといった既存のモータースポーツとは違うルール・環境のため、批判的な意見もある。1年目の頃にはF1関係者から「チーズ(くだらないもの)だね」(セバスチャン・ベッテル[36]「これはモータースポーツではない」(ニキ・ラウダ[37] と酷評されていた。また、レース運営も安定してきた2018年になっても、ルイス・ハミルトンは環境問題の観点からフォーミュラEの取り組みは評価しているものの[38]、「少なくとも、僕の時代には、ある程度の音を発生するV型エンジン的なものを搭載して燃料で走るクルマがあり続けて欲しいよ」とコメント[39]しており、スポット参戦したこともあるジャック・ビルヌーブも「誰も電気自動車でのレースを見たいとは思わないよ」とコメント[40]し、多くのF1ドライバーが電気自動車のレースへ参戦することには消極的である。一方でかつてF1に参戦し、今はフォーミュラEへ参戦中のヴァージン・レーシングリチャード・ブランソンは、2年目の頃に「2020年代にはF1に代わりフォーミュラEがトップシリーズとなる」というコメントをしている[41]

ただ、そういう批判が出てしまう理由もあった。2016 - 2017シーズンまでは、バッテリー消費量の関係から決勝で完走を優先すれば全速力での走行は困難になる(逆に言えば全速力で走行すれば完走できない)という問題があった(その対策としてマシンの乗換が行われていた面もある)。また、このシーズンまでは「決勝でファステストラップを記録したドライバー」にポイントが与えられるルールであったため、レース序盤のアクシデント等で上位進出が絶望的になったドライバーが完走を諦めファステストラップ狙いで全速アタックを行うケースもよく見られた。特にシリーズ初期の最終戦のドライバーズチャンピオン争いもファステストラップの2ポイントを巡って激しい争いが発生し、この2ポイントが明暗を分けた[42][43]。このため2017 - 2018シーズンからは「レース上位10名のうちファステストラップを出した者」にポイントが与えられるようレギュレーションが改められた。

また、電気自動車であることから、マシントラブルの原因は電気系統に係わる箇所が大半となり、燃費と同語彙で「電費」やガス欠と同語彙で「電欠」など特徴的な言い回しも散見[44]される。そのうち、バッテリーの発熱が問題となることが多く、小林可夢偉によれば「ファンブーストを使うとバッテリーの温度が上がって後で大変なことになる」[45]「発熱によりリアブレーキの回生システムがシャットダウンすることがあり、そうなると突然ブレーキが効かなくなる」[46] などが起きている。そのため、タイヤ戦略などのレースコンディションより、バッテリーの状況でレースが決まってしまうことが課題となっている。一方で、速度だけでなく伝送されたバッテリー残量も公開されるため、車体の現状が実況に反映されるなどのメリットもあった。

チーム側は当初プライベーター中心だったものの、シーズン2からパワートレインの開発が自由化されたことで、自動車メーカーが関与するワークスチームへの移行が進んでいる。そのうえ、フォルクスワーゲンのディーゼル排気不正問題が発覚し、2040年代までに内燃機関自動車の販売を禁止する法案がヨーロッパ各国で可決されるなど[47]、自動車産業の環境問題への取り組みが注目される中で、フォーミュラEはローコストにEV開発をアピールできる場として期待されている[48][49]。ルノーに続いてDSオートモビル(シトロエン)、ヴェンチュリーZF)、マヒンドラジャガーアウディ[50]BMW[51]など多くの自動車メーカーが開発自由化を機に参戦している。また、新興EVメーカーのNIOの参戦など、モータースポーツの参戦経験のない自動車メーカーが参戦するなど活気を見せている。また、DTMの一角を担っていたメルセデス・ベンツ[52]、2014年からWECで猛威を振るったポルシェがそれぞれ前述のカテゴリーから撤退する代わりにフォーミュラEへの参戦を表明し、両者2019-2020シーズンから参戦している。ヨーロッパのメーカーに比べると日米のメーカーの出足は鈍いが、日本では日産が2018-2019年シーズンからの参戦を表明[53]し、ホンダも検討中と噂されている[54][55]。そのため、独自色が生まれつつあり、2020年にはFIA公認の世界選手権へ昇格したため、「電気自動車の最高峰のレース」という地位を事実上確立し、注目は集めているものの、多くのドライバーは同カテゴリーよりF1を目指していることには変わりなく、それを表すかのように若手のステップアップ先として機能しているとは言えず、実際、ドライバーの顔ぶれを見ると、F1でシートを失ったドライバーの転戦先となってしまっている面があり[56]、どこか中途半端な存在になってしまっている。

他にも、スーパーライセンスポイントの関係上、同カテゴリーに参戦することは一種のリスクがある。

そもそも、2018年までは少しでも早くスーパーライセンスを獲得するため、他のカデゴリーであるF2(旧GP2)やスーパーフォーミュラインディカー、WEC等の掛け持ちしつつ、スーパーライセンスポイントの条件である40ポイント越えを合算して目指すことが主流であった。 そんななか、フォーミュラEの価値を高めることを企図したのか、2016年からドライバー部門のシリーズチャンピオンはスーパーライセンスの発給資格を得るようになった。そのため、同カテゴリー専門で参戦する価値が生まれたものの、F2(GP2)のように年間トップ3に入ればスーパーライセンスの発給資格を得られるわけではなく、最終戦の結果次第ではF1デビューできないという課題がある。2018年のF2の年間トップ3を例にすれば、1位ジョージ・ラッセル、2位ランド・ノリス、3位アレクサンダー・アルボンという結果となり、規定により3人はスーパーライセンスの条件を満たし、2019年からF1デビューを果たすこととなった。だが、フォーミュラEの場合、条件を満たせるのはラッセルのみであり、他の2人は年間2位や3位でもライセンスポイントの大量獲得はできるものの、それ単独でスーパーライセンスの発給資格を得られるわけではなく、有効期限3年間で得たポイントを合算した結果次第という条件付きとなる。

ところが2018年までは各カテゴリーごとの年間成績で得たポイントを合算し40ポイントを超えていれば、1年でスーパーライセンスの発給資格を得ることが可能であったが、2019年からスーパーライセンスポイントの割り当てが変更により、合算が廃止され、最もポイントが高いカテゴリーのみ対象にするという方針へ変更されたため、そのポイントを1年で達成する難易度が上がること(F2参戦者以外は最短でも2年必要となった)となり、掛け持ちして参戦するほうがデメリット[57]となってしまい、各カテゴリーごとに専門的な性格が強まることになったものの、スーパーライセンスを獲得するための難易度はさらに向上することとなった。そのため、F2の年間トップ3は有効期限3年間の間はスーパーライセンスの発給資格を保持できるものの、彼らも含め年間成績次第では、スーパーライセンスの発給資格を失ったり、逆に遠のく可能性もある。また、F2チャンピオンは「卒業」と見なされ翌年以降の参戦もほぼ不可能にあるが、逆に言えばそれ以外のドライバーは参戦の継続は可能なため、来季のF2のシートを確保できているのであれば、フォーミュラEへあえて転向するメリットが存在せず、その関係上で若手の参戦率が上がらない状況が続いている。

放送局編集

国際放送編集

2013年8月にFOX SPORTSがテレビ放映権を獲得しており[58]、同社が国際的なマルチメディア展開を担当する。 日本ではFOXスポーツ&エンターテイメントが2014 - 15年の全戦をレースの翌火曜日夜に録画中継していたが、1シーズン限りで終了した。

日本国内編集

現在編集

J SPORTS編集

2017 - 18年シーズン以降、J SPORTSが全戦を生中継を中心に放送している[59][60]

コメンタリー(J SPORTS)編集
実況
解説
BSフジ編集

無料放送のBSフジが、2019 - 20年シーズン全戦のハイライト放送を行う[61]

コメンタリー(BSフジ)編集
実況

過去編集

テレビ朝日編集

シリーズ創設時点では日本でのテレビ放映権は電通を経由してテレビ朝日が獲得しており、同社の保有する地上波・BS(BS朝日)・CS(テレ朝チャンネル)の3波を活用して2014 - 15年から2016 - 17年の3シーズンにおいて全戦生中継を行った[62]。当初の発表ではフリー走行はBS朝日、予選はテレ朝チャンネル、決勝レースは地上波のテレビ朝日にて放送されることしていた[63] が、この体制で放送されたのは2014 - 15年開幕戦の北京大会のみであり[64]、以降は決勝レースについてもBS朝日での放送となった。後に地上波ではレース後1週間後を目安として決勝レースの録画放送がされるようになった[65]。2015 - 16年は開幕戦から全セッションがCSのみでの生中継となり、BS朝日では開催数日後のハイライトのみとなった(地上波のハイライトはそのまま継続)。また、AbemaTVでテレビ中継と同内容のものを配信していた。2014 - 15年最終戦より、オンボードカメラ・ライブタイミング・車両の位置がインターネットでリアルタイムで見られる「ドライバーズカメラ[66]」を開始したものの、2015 - 16年シーズン第5戦のメキシコシティ大会までで更新がストップした。

シーズン開幕前にはBS朝日にて特集番組「『フォーミュラE』ってなんだ!?徹底ガイド」(2014年8月23日放送)も放送し、鈴木亜久里片山右京の対談、「日本勢(アムリン・アグリ)の参入」「女性ドライバーが活躍できるレース」などとフォーミュラEの魅力を紹介し生中継に対する気合が伺えていた[67]。しかし放送を重ねるに連れ、上記の通り放送規模の縮小で徐々に中継に対して消極的になっている状況が見えていた。

2014 - 2015年シーズンは、テレビ朝日系地上波(一部地域除く)にて総集編が放送された[68]

BS日テレ編集

無料放送のBS日テレが、2017 - 18年・2018 - 19年の2シーズン、全戦のハイライト放送を行った[69][70]

コメンタリー(BS日テレ)編集
実況
解説

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ "New FIA Formula E Championship". 国際自動車連盟.(2012年8月27日)2013年10月20日閲覧。
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  42. ^ 14-15シーズンではランキングトップのネルソン・ピケJr.と2位のセバスチャン・ブエミがチャンピオンを争う中、ブエミの出したファステストラップをピケJrのチームメイトであった伏兵オリバー・ターベイが更新してポイント獲得を阻止し、結果1ポイント差でピケJr.がチャンピオンを獲得した。もしターベイが更新していなければ、ブエミはファステストラップの2ポイントを得て逆転していた。
  43. ^ 15-16シーズンでは同点でチャンピオンを争うブエミとルーカス・ディ・グラッシが、1周目で接触し両者ともに完走が絶望的になったことからファステストラップ狙いの走行に切り替え、結果ブエミがファステストを出しそのタイムを誰も更新できなかったためチャンピオンに輝いた。
  44. ^ 開始当初は実況・解説がこの言い回しに苦笑するシーンが多々あった。
  45. ^ フォーミュラE開幕参戦の可夢偉「ファンブーストを使わなくても怒らないで」と珍要求 - オートスポーツ・2017年11月22日
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  53. ^ 厳密には2017-2018年シーズンまで参戦していたルノー・e.damsの枠を買い取った形だが、日産とルノーが提携している関係上、純粋な新規参入というよりはタイトルスポンサーの変更に近い。
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  63. ^ BS朝日によるハイライトの放送あり
  64. ^ 北京大会では決勝レースがセーフティカーの導入などで長引いたものの、中継延長時間の設定がなかった為、最終ラップ以降はBSでの中継となった。
  65. ^ テレビ朝日と一部系列局のみ放送
  66. ^ Formula E Driver's Camera
  67. ^ なお結果として、アムリン・アグリはシーズン2閉幕後にチームを売却、女性ドライバーはシーズン1早々に離脱(キャサリン・レッグは第2戦、ミケーラ・セルッティは第4戦まで)するなど放送内容とは逆の結果となった。
  68. ^ フォーミュラE総集編がテレ朝地上波で今晩放送 autosport web・2015年7月11日・2019年11月22日閲覧
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外部リンク編集