フサアンコウ科学名Chaunacidae)は、アンコウ目に所属する魚類の分類群()の一つ。ミドリフサアンコウなど、底生性深海魚を中心に2属22種が含まれる[1]

フサアンコウ科
フサアンコウ属の1種 Chaunax stigmaeus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目[1] Acanthopterygii
: アンコウ目 Lophiiformes
亜目 : フサアンコウ亜目 Chaunacoidei
: フサアンコウ科 Chaunacidae
英名
Coffinfishes, Sea toads
下位分類
本文参照

分布・生態 編集

フサアンコウ科の魚類はすべて海水魚で、太平洋インド洋大西洋など世界中の深海に幅広く分布する[1]。水深90mから2,000mにかけての大陸斜面海山を主な生息範囲とし[1]、日本近海からは少なくとも1属3種が報告されている[2][3][4]

特徴的なずんぐりした体型は遊泳には不向きで、岩礁および砂泥の海底でじっとしている姿がしばしば観察される[2][3]。誘引突起を利用した待ち伏せ型の捕食を行うとみられるが[3]、その他の生活史についてはほとんどわかっていない。日本では底引き網延縄によって漁獲され、味醂干し鍋料理などに利用される[3]

形態 編集

 
フサアンコウ属の1種(Chaunax pictus)。風船のような丸い体と細長い尾柄部が本科魚類の特徴である

丸みを帯びた球状の体型をもち、皮膚は風船のようにぶよぶよとして柔軟性が高い[5]。ピンクやオレンジ、あるいは赤色を基調とした体色の種が多く、体長は最大種で35cmほどになる[1]。体表はトゲ状あるいは細長い糸状の突起によって覆われる[5]。口は斜め上向きでほとんど垂直となり、顎・鋤骨口蓋骨に微小な歯を備える[5]

アンコウ目の魚類に共通した特徴として、背鰭の第1棘条に由来する誘引突起をもつが、他の棘条は欠いている[1]。頭部にはU字状のくぼみが存在し、誘引突起および擬餌状体を収納することができる[5]。背鰭および臀鰭の軟条はそれぞれ10-12本・5-7本で、腹鰭は小さく1棘4軟条からなる[5]。胸鰭はやや大きく腕のような形状をもつが[5]、近縁のアカグツ科ほどには発達していない。の開口部は胸鰭基底の後方に位置する[1]

分類 編集

フサアンコウ科は単独でフサアンコウ亜目 Chaunacoidei を構成し、Nelson(2016)の体系において2属22種が認められている[1]カエルアンコウなどを含むカエルアンコウ亜目の仲間から本科を経て、アカグツ科(アカグツ亜目)へと形態の特化が進んだものとみられている[6]

 
ホンフサアンコウ Chaunax fimbriatus(フサアンコウ属)。日本近海にも分布する、魚食性の強い種[3]
 
Chaunacops 属の1種(C. coloratus)。明るい色調の体色は本科魚類の特徴で、個体差による変異も大きい

出典・脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h 『Fishes of the World Fifth Edition』 p.511
  2. ^ a b 『潜水調査船が観た深海生物』 pp.370-371
  3. ^ a b c d e 『日本の海水魚』 pp.142-143
  4. ^ 『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 pp.543,1885
  5. ^ a b c d e f Chaunacidae”. FishBase. 2016年7月21日閲覧。
  6. ^ 『日本の海水魚』 pp.144-145
  7. ^ C. penicillatusシノニムである可能性が指摘されている(『日本産魚類検索 全種の同定 第三版』 p.1885)
  8. ^ 『三重県沖で採集された斑紋を欠く日本初記録のフサアンコウ属魚類』(日本魚類学会『魚類学雑誌』2020年67巻2号 p.203-207)
  9. ^ Bathychaunax は本属のシノニムである(FishBaseによる)。

参考文献 編集

外部リンク 編集