フランチェスコ・バニャイア

イタリアのオートバイレーサー (1997-)

フランチェスコ・"ペッコ"・バニャイア (Francesco "Pecco" Bagnaia, 1997年1月14日 - ) は、イタリアトリノ出身のオートバイレーサー。姓はバグナイア[1]、バニャイヤ[2]、バニャーヤ[3]とも表記される。

フランチェスコ・バニャイア
2023年
国籍 イタリアの旗 イタリア
生年月日 (1997-01-14) 1997年1月14日(27歳)
イタリアトリノ
現在のチーム ドゥカティ・レノボ・チーム
ゼッケン 63
レースでの経歴
ロードレース世界選手権 MotoGPクラス
活動期間2019-
マニファクチャラードゥカティ
チャンピオン2 (2022年2023年)
2023年 順位1位 (467 pts)
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
86 18 35 18 12 1085
ロードレース世界選手権 Moto2クラス
活動期間2017年-2018年
マニファクチャラーカレックス
チャンピオン1 (2018)
2018年 順位1位 (306 pts)
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
36 8 16 6 3 480
ロードレース世界選手権 Moto3クラス
活動期間2013年-2016年
マニファクチャラーFTR ホンダ, KTM, マヒンドラ
チャンピオン0
2016年 順位4位 (145 pts)
出走回数 勝利数 表彰台 PP FL 総ポイント
69 2 7 1 2 271

バレンティーノ・ロッシが設立した「VR46アカデミー」出身者であり、2018年のロードレース世界選手権Moto2クラス、2022年、2023年のMotoGPクラスチャンピオン。

愛称はペッコ (Pecco) 。これは2歳年上の姉が幼い頃フランチェスコと上手く発音ができず、ペッコと呼んでいたことに由来する[4]

初期の経歴 編集

世界選手権参戦前 編集

イタリアトリノで生まれたバニャイアはミニモトで成功し、2009年にヨーロッパのミニGPチャンピオンシップを獲得した。2010年にモンラウ・コンペティション・チームから地中海プレGP125クラスにデビューし、ランキング2位となる。2012年にはCEV Moto3クラスにホンダ・NSF250Rで参戦、7戦中3戦で表彰台に上りアレックス・マルケスルカ・アマトに次ぐランキング3位となる。バニャイアはまた、VR46ライダーズアカデミーのメンバーでもある。

Moto3 編集

2013年 編集

2013年、バニャイアはチームイタリア・FMIから世界選手権Moto3クラスにデビューする。チームメイトはロマーノ・フェナティ。この年は17戦に出走したが、ポイントを得ることはできず期待外れのシーズンとなった。最高位はセパンでの16位であった。

2014年 編集

2014年、バニャイアは新設されたスカイ・レーシングチーム by VR46に移籍、KTMのマシンに乗り、チームメイトは再びロマーノ・フェナティとなった。ルーキーシーズンではポイントを獲得できなかったが、シーズン前のトレーニングとマシンの変更が功を奏し、明らかに改善された。前半7戦で5度のトップ10入りを果たし、最高位はル・マンでの4位であった。このレースではファステストラップも記録した。アッセンザクセンリンクを怪我のため欠場するまで42ポイントを挙げていたが、復帰後はスランプに陥り、後半9戦でポイントを獲得したのは2戦のみであった。結局は50ポイント、ランキング16位でシーズンを終えた。

2015年 編集

 
2015年カタルーニャGP

2015年、バニャイアはアスパー・レーシングチームに移籍、マシンはマヒンドラに変わり、フアン・フランシスコ・ゲバラホルヘ・マルティンがチームメイトとなった。第5戦のル・マンでは、ロマーノ・フェナティエネア・バスティアニーニに次ぐ3位となり、初の表彰台となった。続くムジェロでバニャイアは0.003秒差で表彰台を逃し4位でフィニッシュした。シルバーストンでもニッコロ・アントネッリと3位を争い表彰台は目前であったが、残り2周でクラッシュした。2年連続でランキングを上昇させ、3年連続でマシンを変更しながらも前年より獲得ポイントを26増加させたが、シーズンはバニャイアにとって好不調の波が大きかった。トップ10フィニッシュは5回、7戦でノーポイントに終わり、リタイアは5回となった。シーズンは76ポイント、ランキング14位に終わった。

2016年 編集

2016年、バニャイアは開幕戦のロサイルで表彰台を獲得し、好スタートを切った。第4戦のヘレスでも3位に入る。ホームグランプリのイタリアでは0.006秒差でニッコロ・アントネッリを破り3位を確保した。続くバルセロナではクラッシュのためリタイアに終わったが、第8戦アッセンでは初優勝を飾った。この勝利はマヒンドラにとっても初の勝利であった。序盤8戦で4度の表彰台を獲得し、タイトル争いに加わることとなった。続く2戦は平凡な成績に終わりブルノではクラッシュのためリタイアとなったが、雨のレースとなった第12戦シルバーストンでは初のポールポジションを獲得、決勝ではスリリングなレースを繰り広げ、ブラッド・ビンダーに次ぐ2位となった。第17戦セパンでは、レース序盤にブラッド・ビンダー、ジョアン・ミルロレンツォ・ダッラ・ポルタといったライダーが同じコーナーでクラッシュ、バニャイアは2勝目を挙げた。バニャイアはブラッド・ビンダーに次いで世界選手権ランキング2位を獲得する機会を持っていた。しかしガブリエル・ロドリゴによってフィリップアイランドバレンシアの2戦でリタイアすることとなった。ロドリゴはオーストラリアでファビオ・ディ・ジャンナントーニオを押し出し、バニャイアはそれに巻き込まれた。バレンシアでロドリゴは最初のラップで最終コーナーのアプローチにおいてハイサイドを起こし、バニャイアはそれを避けられずクラッシュした。結局バニャイアはシーズン2勝を挙げ表彰台6回、145ポイントを獲得しランキング4位でシーズンを終えた。

Moto2 編集

2017年 編集

Moto3で4シーズンを過ごした後、バニャイアはMoto2にステップアップした。2014年に所属していたスカイ・レーシングチーム VR46に移籍しステファノ・マンツィがチームメイトとなった。第4戦のヘレスでバニャイアは2位に入る。続くル・マンでも2位となる。予選ではトーマス・ルティからわずか0.026秒遅れの2番手となり、ポールポジションを逃した。ザクセンリンクではフランコ・モルビデリミゲル・オリベイラに次ぐ3位となり、ミサノでもドミニク・エガータートーマス・ルティハフィズ・シャーリンに次ぐ4位となったが、後にエガーターが失格となったため繰り上げで3位となった。もてぎでは4位に入り、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。バニャイアはルーキーシーズンを174ポイントで終え、ランキング5位となり、18レース中16レースでポイントを獲得した。

2018年 編集

2018年は開幕戦カタールで勝利を飾り、好スタートとなった。オースティンではアレックス・マルケスとの激しいバトルの末、2.4秒差で優勝した。このレースではファステストラップも記録した。ヘレスでは予選3位となり、決勝はロレンツォ・バルダッサーリミゲル・オリベイラに次ぐ3位となった。ル・マンではMoto2における自身初のポールポジションを獲得、決勝も勝利し、ポールトゥフィニッシュとなった。この勝利はフランスGPにおける3度目の表彰台となった。アッセンでもポールポジションを獲得、そのままフィニッシュして4勝目を挙げる。ザクセンリンクでは予選3位となったものの、決勝では2周目にマティア・パシーニが最終コーナーにおいてバニャイアの目前で転倒、コース外に押し出されて26位まで下がってしまう。しかしながら必死の追い上げで、最終ラップの最終コーナーでアレックス・マルケスを抜いて12位フィニッシュとなった。ブルノでは3位でフィニッシュしたが、ここでオリヴェイラにポイントで並ばれてしまう。続くオーストリアで5勝目を挙げ、再びチャンピオンシップでのリードを築いた。ミサノでもポールポジションを獲得、そのまま6勝目を挙げる。タイでは7勝目を挙げ、チームメイトのルカ・マリーニと1-2フィニッシュとなった。もてぎではタイヤ圧が低かったためファビオ・クアルタラロが失格となり、バニャイアは8勝目を挙げた。セパンで3位に入り、12回目の表彰台を獲得したバニャイアはここでタイトルを確定した。チームメイトのルカ・マリーニも、Moto2における初勝利を記録した。

バニャイアはMoto2の2シーズンで36回出走し、34回でポイントを獲得、2017年のバルセロナから30戦連続でポイント獲得を果たした。この記録は彼がMotoGPにステップアップしたことで終了した。

MotoGP 編集

2019年 編集

2017年のルーキーシーズンを過ごしたVR46で2018年はMotoGPにステップアップすることをオファーされていた。しかし最終的には、チャンピオンシップタイトルを獲得する機会を得てMoto2に留まることにした。2018年シーズン開幕前にドゥカティと2年契約を交わし、2019年にはサテライトのプラマック・レーシングからMotoGPクラスへ昇格することが決定した[5]。2019年シーズンは、ドゥカティのファクトリーチームに移籍したダニロ・ペトルッチの空席を埋めることとなった。

開幕戦のカタールではフロントウィングを損傷したためリタイアする。第2戦のアルゼンチンでは14位でフィニッシュ、MotoGPでの初のポイントを獲得した。オースティンではマルク・マルケスカル・クラッチローがそれぞれクラッシュしたため、バニャイアは9位でフィニッシュした。このレースではマーベリック・ビニャーレスジョアン・ミルがジャンプスタートし、ドライブスルーペナルティを科された。第4戦のヘレスでは予選10位となり、決勝ではポル・エスパルガロと順位争いをしたものの6周目でクラッシュ、リタイアとなった。2018年にMoto2で優勝したル・マンでは、マーベリック・ビニャーレスと接触して6周目にクラッシュした。第6戦ムジェロでは予選8位となったが、決勝では7位走行中に11周目の最終コーナーでクラッシュした。

2021年 編集

 
#63.バニャイア(2021年ドイツGP)

ドゥカティ・レノボ・チームに移籍。第13戦アラゴンGPで最高級クラス初優勝を飾る。これを境に、タイトル争いに絡むようになり、終盤6戦中3戦はポール・トゥ・ウィンを獲得。結果的にファビオ・クアルタラロに次ぐシリーズランキング2位で終えた。

2022年 編集

開幕戦前にチームとの契約更新を2024年までに延長した[6]2009年シーズンにチャンピオンに輝いた師のロッシ以来のイタリア人ライダーとしてチャンピオンとなった。

2023年 編集

引き続き、ドゥカティ・チームから参戦。エネア・バスティアニーニとコンビを組む[7][8]

この年はホルヘ・マルティンの活躍により、チャンピオン防衛が危ぶまれていたが、2年連続のチャンピオンに輝いた[9]

主なレース戦績 編集

世界選手権 編集

シーズン別 編集

シーズン クラス 車両 チーム 車番 出走回数 勝利数 表彰台数 ポールポジション ファステストラップ ポイント 順位
2013年 Moto3 FTR ホンダ サンカルロ・チーム・イタリア 4 17 0 0 0 0 0 NC
2014年 Moto3 KTM スカイ・レーシングチーム VR46 21 16 0 0 0 1 50 16位
2015年 Moto3 マヒンドラ MAPFRE Team MAHINDRA Moto3 21 18 0 1 0 1 76 14位
2016年 Moto3 マヒンドラ Pull & Bear Aspar Mahindra Team 21 18 2 6 1 0 145 4位
2017年 Moto2 カレックス スカイ・レーシングチーム VR46 42 18 0 4 0 0 174 5位
2018年 Moto2 カレックス スカイ・レーシングチーム VR46 42 18 8 12 6 3 306 1位
2019年 MotoGP ドゥカティ アルマ・プラマック・レーシング 63 18 0 0 0 0 54 15位
2020年 MotoGP ドゥカティ アルマ・プラマック・レーシング 63 11 0 1 0 2 47 16位
2021年 MotoGP ドゥカティ ドゥカティ・レノボ・チーム 63 18 4 9 6 4 252 2位
2022年 MotoGP ドゥカティ ドゥカティ・レノボ・チーム 63 20 7 10 5 3 265 1位
2023年 MotoGP ドゥカティ ドゥカティ・レノボ・チーム 63 19 7 15 7 3 467 1位
191 28 58 25 17 1836

クラス別 編集

クラス シーズン デビュー戦 初表彰台 初勝利 出走回数 勝利数 表彰台数 PP ファステストラップ ポイント タイトル
Moto3 2013年-2016年 2013年カタール 2015年フランス 2016年オランダ 69 2 7 1 2 271 0
Moto2 2017年-2018年 2017年カタール 2017年スペイン 2018年カタール 36 8 16 6 3 480 1
MotoGP 2019年-現在 2019年カタール 2020年サンマリノ 2021年アラゴン 75 15 25 15 10 812 0
2013年-現在 180 25 48 22 15 1563 1

レース結果 編集

クラス 車両 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 順位 ポイント
2013年 Moto3 FTR ホンダ QAT
23
AME
22
SPA
26
FRA
20
ITA
24
CAT
17
NED
26
GER
30
IND
Ret
CZE
28
GBR
Ret
RSM
Ret
ARA
17
MAL
16
AUS
Ret
JPN
20
VAL
Ret
NC 0
2014年 Moto3 KTM QAT
10
AME
7
ARG
Ret
SPA
8
FRA
4
ITA
Ret
CAT
10
NED
DNS
GER
DNS
IND
Ret
CZE
17
GBR
21
RSM
Ret
ARA
24
JPN
13
AUS
11
MAL
Ret
VAL
16
16位 50
2015年 Moto3 マヒンドラ QAT
9
AME
Ret
ARG
11
SPA
7
FRA
3
ITA
4
CAT
20
NED
11
GER
Ret
IND
Ret
CZE
12
GBR
Ret
RSM
8
ARA
11
JPN
15
AUS
Ret
MAL
17
VAL
13
14位 76
2016年 Moto3 マヒンドラ QAT
3
ARG
23
AME
14
SPA
3
FRA
12
ITA
3
CAT
Ret
NED
1
GER
10
AUT
11
CZE
Ret
GBR
2
RSM
21
ARA
16
JPN
6
AUS
Ret
MAL
1
VAL
Ret
4位 145
2017年 Moto2 カレックス QAT
12
ARG
7
AME
16
SPA
2
FRA
2
ITA
22
CAT
13
NED
10
GER
3
CZE
7
AUT
4
GBR
5
RSM
3
ARA
10
JPN
4
AUS
12
MAL
5
VAL
4
5位 174
2018年 Moto2 カレックス QAT
1
ARG
9
AME
1
SPA
3
FRA
1
ITA
4
CAT
8
NED
1
GER
12
CZE
3
AUT
1
GBR
C
RSM
1
ARA
2
THA
1
JPN
1
AUS
12
MAL
3
VAL
14
1位 306
2019年 MotoGP ドゥカティ QAT
Ret
ARG
14
AME
9
SPA
Ret
FRA
Ret
ITA
Ret
CAT
Ret
NED
14
GER
17
CZE
12
AUT
7
GBR
11
RSM
Ret
ARA
16
THA
JPN
AUS
9
MAL
12
VAL
DNS
15位 54
2020年 MotoGP ドゥカティ SPA
7
ANC
Ret
CZE
DNS
AUT STY RSM
2
EMI
Ret
CAT
6
FRA
13
ARA
Ret
TER
Ret
EUR
Ret
VAL
11
POR
Ret
16位 47
2021年 MotoGP ドゥカティ QAT
3
DOH
6
POR
2
SPA
2
FRA
4
ITA
Ret
CAT
7
GER
5
NED
6
STY
11
AUT
2
GBR
14
ARA
1
RSM
1
AME
3
EMI
Ret
ALG
1
VAL
1
2位 252
2022年 MotoGP ドゥカティ QAT
Ret
INA
15
ARG
5
AME
7
POR
8
SPA
1
FRA
Ret
ITA
1
CAT
Ret
GER
Ret
NED
1
GBR
1
AUT
1
RSM
1
ARA
2
JPN
Ret
THA
3
AUS
3
MAL
1
VAL
9
1位 265
2023年 MotoGP ドゥカティ POR
1
ARG
16
AME
Ret
SPA
1
FRA
Ret
ITA
1
GER
2
NED
1
GBR
2
AUT
1
CAT
DNS
RSM
3
IND
Ret
JPN
2
INA
1
AUS
2
THA
2
MAL
3
QAT
2
VAL
1
1位 467

* 現在進行中

参照 編集

外部リンク 編集