フリーダイビング
フリーダイビング(英: freediving)とは、呼吸するための器材を使わないダイビングのうち、無呼吸状態で到達深度などを競う競技。アプネア(英: apnea, apnoea [ˈæpniə])とも呼ぶ。
特徴・定義編集
レクリエーションとして楽しむスノーケリング、スキンダイブとは異なり、器材を着けずに無呼吸状態において泳ぐ距離・潜る深度・無呼吸時間を競う競技をフリーダイビングと呼ぶ。
フリーダイビングは少なくとも3つの基本概念が、スキンダイビングやスノーケリングとは異なる。
- より長い無呼吸状態により、より深い深度・距離・時間を競う競技性。
- スポーツとしての身体的かつ精神的な達成感を強調する。
- スノーケラー、スキンダイバー、スキューバダイバー用の器材とは異なる器材を使う事もあり、使用方法も異なる。
競技種目編集
競技として以下のものがある。
◆プール種目
- スタティック・アプネア(STA)
- 呼吸を止め、水面に浮き、その時間を競う。世界記録は11分35秒[1]。
- ダイナミック・アプネア・フィン無し(DNF)
- 呼吸を止め、フィンをつけること無く泳ぎ、水平に何メートル潜水できるかを競う。
- ダイナミック・アプネア・フィン有り(DYN)
- 呼吸を止め、フィンをつけて泳ぎ、水平に何メートル潜水できるかを競う。
- ダイナミック・アプネア・バイフィン有り(DYNB)
- 呼吸を止め、バイフィンをつけて泳ぎ、水平に何メートル潜水できるかを競う。
- モノフィンの様な両足を同時に動かすを生差が禁止されている。
- ◆海洋種目
- コンスタント・ウェイト・フィン有り(CWT)
- 呼吸を止め、フィンをつけて自身の泳力だけで垂直に何メートル潜れるかを競う。
- 潜水中、ウェイトの量を変えてはならない。
- またガイドロープをつたって潜降、浮上してはならない。
- コンスタント・ウェイト・バイフィン有り(CWTB)
- 呼吸を止め、バイフィンをつけて自身の泳力だけで垂直に何メートル潜れるかを競う。
- 潜水中、ウェイトの量を変えてはならない。
- またガイドロープをつたって潜降、浮上してはならない。
- モノフィンの様な両足を同時に動かすを生差が禁止されている。
- コンスタント・ウェイト・フィン無し(CNF)
- 呼吸を止め、フィンをつけることなく自身の泳力だけで垂直に何メートル潜れるかを競う。
- 潜水中、ウェイトの量を変えてはならない。
- またガイドロープをつたって潜降、浮上してはならない。
- フリー・イマージョン(FIM)
- 呼吸を止め、フィンを装着せずにガイドロープをつたって垂直に何メートル潜れるかを競う。
- 潜水中、ウェイトの量を変えてはならない。
- ヴァリアブル・ウェイト(VWT)
- ザボーラという乗り物に乗って潜降し、ロープを手繰って浮上する、或いはフィンで漕いで浮上する。潜水中、ウェイトの量を変えても良く、主に、細心部分にウェイトを含む機材から離脱して浮上する。
- ノー・リミッツ(NLT)
- ザボーラという乗り物に乗って潜降し、浮上する。浮上にエアリフトなどを使用しても良い。
- また浮上にガイドロープをつたってたり、フィンで漕いで浮上してよい。
フリーダイビングの生理学編集
一般的に息を止めて深くまで潜ると肺が締め付けられ、スクイズ(スクイーズ)と呼ばれる障害が発生する。肺にスクイズが発生した場合、胸壁から肺が剥離し、非可逆的な損傷を受ける。このため過去には、人間が息をこらえて潜る理論的な限界水深は30数メートル程度と言われていた。しかし、ジャック・マイヨールが1976年に-100mの素潜りに成功。2007年6月現在のノー・リミッツでの最高記録はHerbert Nitsch ハーバート・ニッチ(オーストリア)の-214mである。現在では、閉息大深度潜水時には、水圧により腹部の内臓が横隔膜ごと肺の方向に押し上げられ、肺のスクイズを防ぎ、肺ならびに周辺組織の不可逆的損傷を防いでいることが、明らかになっている。より深度を深めるためのテクニックとして、主に、安全かつ安定的な耳抜きのテクニックが考案されている。
■ブラックアウト(BO)
限界を超える息こらえにより、極度の酸欠状態に陥り、気絶する現象。実は気絶して脳の働きを停止させることにより酸素消費を抑え、死を回避しようとする人間の体の自発的な防衛行動であり、本来はありがたい現象。呼吸できる環境になり適切な対処が行われれば、普通は数秒から30秒程で意識が回復する。ただしそれ以上意識が戻らない場合は、後遺障害や命の危険にさらされます。
■サンバ・LMC (Loss of Motor Control)
限界に近い息こらえにより、体の動作が意識的にコントロールできなくなる現象のこと。つまり、BOの一歩手前の状態。呼吸しようと思ってもうまくいかなかったり、筋肉がガクガクと痙攣する。これらの状況がブラジルのサンバ踊りに似ていることからサンバと呼ばれる。数秒で回復する事もあれば、そのままBOする可能性もある。浮上して、気道の確保を怠った場合は、数秒後にサンバになる可能性が高い。大会等ではサンバではなくLMC(運動制御の喪失)と言われているそうです。
■スクイズ
■スクイーズ
息を止めて深くまで潜るときに、体内と体外の気圧差で発生し、呼吸器・口腔・鼻腔・副鼻腔などの体内に空気を含む器官の表面に外傷が発生する現象のこと。例えば、耳が痛くなったり、マスクが締め付けられたり、肺が締め付けられたりする中で発生する。深く潜る場合にはこれが大きな問題となる。出血を伴う場合がある。
■耳抜き・サイナス抜き
耳抜きは知っていると思いますが、サイナス(副鼻腔)抜きは初めて聴く言葉かもしれません。隙間がある以上、外部の圧力の変化に合わせて気圧を調節する必要あり。耳抜きは中耳及び内耳の耳腔内圧と外圧を同じにするための動作。サイナス抜きとは、頭蓋骨前面の副鼻腔群内圧を外圧と同じにする動作。大深度(特に40m以上)の潜水時には、横隔膜の力により肺から気圧を送ることができなくなるため、舌を含む口腔のテクニックを用いた耳抜きが求められる。
フリーダイビング団体編集
世界中で、教育機会の提供、協議会の主催、ルールの管理などを行う、主なフリーダイビング団体
著名な選手・関係者編集
- ジャック・マイヨール
- エンゾ・マイオルカ
- ウンベルト・ペリザリ(Umberto Pelizzari)
- アンドレア・ズッカリ(Andrea Zuccari)
- ハーバート・ニッチ(Herbert Nitsch)
- ナタリア・モルチャノバ(Natalia Molchanova)
- アレクセイ・モルチャノフ(Alexey Molchanov)
- ウィリアム・トリュブリッジ(William Trubridge)
- サラ・キャンベル
- ピピン・フェレーラス
- マーティン・ステパネク
- 篠宮龍三
- 富永直之
- 大島俊
- 松元恵
- HANAKO(廣瀬花子)
- 岡本(平井)美鈴
- 福田朋夏
- 高樹沙耶
- 団長安田
- 春日俊彰
- 野久保直樹
- 高木唯
- 木下紗佑里
- 石田美弥子
- 大井慎也
- 原哲夫
脚注編集
関連項目編集
- 潜水#映画 - 関連映画