フレイムヘイズ
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フレイムヘイズは、高橋弥七郎のライトノベル作品『灼眼のシャナ』及びそれを原作とする同名の漫画・アニメ・コンピュータゲームに登場する架空の異能者の総称である。この項目ではその概要と、『灼眼のシャナ』に登場するフレイムヘイズ達について記載する。
概要 編集
強い力を持つ“紅世の徒”である“紅世の王”と契約し異能を得た元人間と、その『器』の中で休眠する“王”の、二人で一人を指す総称(ただし作中では、『器』である元人間のみを示す用例も見られる)。呼び名の由来は、契約の際に人間が幻視するこの世と“紅世”の狭間の光景「炎の揺らぎ(flame haze)」からきている。
その姓は、(特にヨーロッパ出身者に)音楽家由来のものが多い。
誕生の由来 編集
“紅世の徒”がこの世において“存在の力”を浪費すると、世界に歪みが生じる(灼眼のシャナ#“存在の力”に関する概念参照)。これに気付いた一部の“紅世の王”達は、この歪みが累積するとこの世と“紅世”の双方に何らかの大災厄が起きると予測し、自らはこの世に歪みを生じさせることなく、歪みを生む同胞達を止める手段を模索した。その結果、誕生したのがフレイムヘイズである。
なお“存在の力”を浪費する“徒”のほとんどは、世界に歪みが生じるという認識はあるものの、それらの歪みがこの世や“紅世”に及ぼす影響については無関心であり考慮することもない。この世に及ぼす影響について関心を持つ(ごく少数の)“徒”も、「この世と“紅世”に必ずしも災厄が訪れるとは限らない、それらの予想は根拠が曖昧で、“存在の力”を使うことへの過剰反応に過ぎない」と考える者が多い。
契約 編集
フレイムヘイズの誕生の際には、契約と呼ばれる儀式を執り行う必要がある。これは“紅世”において神を呼ぶ儀式『神威召喚』を応用したもので、この世の人間と契約を望む“紅世の王”が主体となって執り行う。
契約の前段階として、人間が何らかの理由で(フレイムヘイズを作る場合は“紅世の徒”やフレイムヘイズに関する)抱いた強い感情を、“紅世”にいる“紅世の王”が感知する必要があり、“王”が人間の存在を捉えると両者の間で次元を超えた会話が可能となる。
“紅世の王”が感知した人間に、異能を与える代償として「人間としての過去・現在・未来の全て」が失われることを提示し、人間側がそれに同意すると「強制力を持つ約束」である契約が成立する。契約が成立すると、契約者である人間の「人間としての過去・現在・未来の“存在の力”(=運命)」を全て「召喚」の代償として失わせ、この世の時空に空白を作る。その空白を『器』に見立て、「召喚」により『器』の中に転移した“王”が、契約により『器』の中に固定されることでフレイムヘイズは誕生する。作中では「人間の身の内に“紅世の王”が入った」と表現されることが多いが、フレイムヘイズの肉体そのものは通常の人間と同じであり、“存在の力”が人間ではなく契約した“王”のものに挿げ変わった状態である。
「人間としての運命」を失い、『運命という名の器』に“紅世の王”を宿した人間は、人間としての因果や法則から切り離されるため、人間であった時の周囲との関係性を失うと同時に、肉体的な不老と無限の寿命を得る。すなわち、この世に在りながらこの世の法則に捉われない存在となる。また『器』に“王”を宿したことによる、圧倒的な存在感と“徒”同様の独特な違和感を放つようになる。
なお、通常の人間の『器』は強大な“紅世の王”を納めるには小さすぎるため、契約の際に“王”は『器』の内に収まるべく自らの一部を休眠させる必要がある。何らかの理由で休眠が破れると、『器』は中の“王”により破壊されフレイムヘイズは爆死する。
多くの“紅世の王”は、“徒”に恨みを持つ「復讐者」を選んで契約する。その理由として、憤怒と憎悪が最も強力な感情の一つであること、復讐という目的は人間に全てを捨てさせること、などが作中で挙げられている。古い時代には“徒”に恨みを持つ人間も多く、“王”も有能な人間を選んで契約できたが、封絶が普及した現代では“徒”への恨みを持つ人間が減少し、基本的に契約者を選ぶ余裕はなくなっている。作中で出てきた“王”は契約相手を異性にしていることが多い。また、契約には人間の強い感情が必要なために若年者が契約する傾向が強く、老人のフレイムヘイズは珍しい。ちなみに、契約の経緯はフレイムヘイズにとって根深い心の傷であることが多く、契約の経緯や人間時代の過去について本人が語らないことは訊ねないのが礼儀とされる。
『器』となっているフレイムヘイズが死ぬと自動的に契約が解除されるほか、フレイムヘイズか“紅世の王”の片方が望めば、任意で契約を破棄できる。また作中の描写から、精神崩壊により「契約し続ける意志」を失った場合にも契約が解けることが確認できる。 契約が解けた場合、『器』であるフレイムヘイズは肉体が砕け散り消滅、“存在の力”を喰われた人間が消滅した場合と同様に、存在の痕跡が消え周囲の人々からも(“存在の力”を感じ取れる者を除いて)忘れられる。 一方、契約していた“王”は『器』を失っても死なず、この世に放り出される。通常はそのまま“紅世”への帰途に付くが、使命の完遂や契約者の仇討ちなどのため、残された力でこの世へ顕現して戦うこともある。しかし“王”単独でこの世に顕現し「続ける」には、人間の“存在の力”の摂取が欠かせない(すなわち、この世の“存在の力”を消費し世界の歪みを生むことになる)ため、顕現した“王”は一時的な活性の後に燃え尽きて死亡するのが通例である。
能力 編集
“紅世の王”と契約しフレイムヘイズとなった(元)人間は、『器』に見合った分の“存在の力”と、“存在の力”を感じ操る能力を手に入れる。つまり、『器』が大きければ、それに比例した大きな力を持つフレイムヘイズが生まれる。そのため、才能のある人物や王族など、この世に及ぼす影響の大きい人物ほど、強いフレイムヘイズになる可能性が高い。しかし実際の『器』の大きさは契約を終えないと測れないため、契約前の才能や身分はフレイムヘイズの強さを保証するものではない。また親や(将来生まれる)子などの血縁がこの世に強い影響力を持つ(ことになる)人物も、大きな『器』を持つことが示唆されている。
“存在の力”を感じ操る能力は、あくまで(元)人間のフレイムヘイズが後天的に得た能力なので、使いこなすには経験や鍛練が必要となる。フレイムヘイズの多くは“徒”から襲撃されている最中に契約するため、その場をしのいだ後に支援組織である「外界宿(アウトロー)」と接触し、先輩フレイムヘイズの指導下で基礎訓練を受ける模様。大抵のフレイムヘイズは“存在の力”を用いて、身体能力の強化、契約した“紅世の王”が生来持っている能力の具現化、一般的な、あるいは固有の「自在法」の行使、宝具へのエネルギー供給などを行い、それらを駆使して戦う。また、フレイムヘイズの中の“王”は、契約している限り『召喚され続けている』状態にあり、その“存在の力”の量は一定量で固定されるため、戦闘などにより“存在の力”を消耗しても時間経過により回復する。
フレイムヘイズは「人間としての全て」を失っているため、肉体的に成長する事も老化する事も決して無く、基本的に契約時の肉体を保ち続ける。ただし、残しておきたいと強く思った傷跡が残る、長かった髪を切ったままにしておくなど、フレイムヘイズになった後で容姿が変化した例もある。その性質上、自然死しないという意味では「不死」と言えるが、外的要因による負傷は受け、致命傷や失血による死亡も有り得る。ただしフレイムヘイズとしての強さに比例する、人間の域を遥かに越えた治癒能力や耐久能力を持っており、表面的な軽傷はもちろん、腕が千切れるなどの肉体的な欠損も時間を掛ければ元に戻り、なおかつ傷跡も全く残らない。胸部に致命傷を負ってもすぐには死なず、“存在の力”と時間が十分にあれば完治するが、首を切断されるなど頭部の致命傷については、明確な描写がなく不明。
また、食事や睡眠などの生理行動は厳密には必要なく、それらの行動は人間であった時の行動や嗜好を習慣的に継続しているに過ぎない。汚れも『清めの炎』と呼ばれる自在法を用いる事で浄化できるため、風呂に入るなどの文化的な行動も同様である。しかし、そうした習慣を継続することには、精神は「人間」のままであるフレイムヘイズの精神を安定させ保つ意味があり、フレイムヘイズが実際に不眠不休で行動することは極めて稀である。なお肉体が成長も老化もせず「人間としての経験」も積まないため、フレイムヘイズの精神的成長は通常の人間より遅い。
一部のフレイムヘイズは、フレイムヘイズとしての真価を発揮する際、日常時とは異なる外見になる。こうした外見の変化はほとんどの場合、武器や防具(となる宝具や神器)の装着や形状変化に伴うものだが、武器や防具を問わず本人の外見が変化するフレイムヘイズや、外見の変化(の描写)が特にないフレイムヘイズも存在する。防具の装着は『弔詞の詠み手』(『トーガ』)や『儀装の駆り手』(瓦礫の巨人)、武器の形状変化は『万条の仕手』(“ペルソナ”)や『極光の射手』(“ゾリャー”)、本人の外見変化は『炎髪灼眼の討ち手』(炎髪灼眼)、本人の形状変化は『剣花の薙ぎ手』(『捨身剣醒』)などで見られる。また、物理的な武器や防具とは異なる「フレイムヘイズとしての力」を纏う『震威の結い手』(紫電)や『魑勢の牽き手』(使い魔とした小生物)のような者もいる。
使命 編集
フレイムヘイズは「この世と“紅世”のバランスを守る」ことを目的として生み出され、その主な手段として人間の“存在の力”を浪費し「歪み」を生み出す“徒”を討滅している。ただし、生じた「歪み」を探し出して行動を起こすため、基本的に後手に回る宿命にある。また、「歪み」を生み出さない(極めて稀な)“徒”とは、共闘することもある。
彼らの多くは、“徒”によって全てを奪われ、命をも失う瀬戸際で強い感情を抱き契約に至るため、“徒”への復讐心を直接的な原動力としている。「この世と“紅世”のバランスを守る」のは「契約している“王”が抱く使命」であり、フレイムヘイズ自身にとっては行為の正当化のための後付けでしかない。そのため敵対する“徒”の多くは、「この世と“紅世”のバランスを守る」ために同胞を殺そうとする“紅世の王”に利用されることを指して、フレイムヘイズを『同胞殺しの道具』や『討滅の道具』などと揶揄する。なおフレイムヘイズは「復讐者」が圧倒的多数であるものの、少数ながら復讐以外の理由で契約する者も存在する。また、当初は復讐のために契約したフレイムヘイズでも、長い年月を経ることで復讐心が薄れ、使命に生きるようになる場合もある。
「復讐」という行動原理から、フレイムヘイズは古来より独立独歩の気風が強く、他者と協力するのも「自身の目的を果たすための一時的な共闘」であることが多い。 また「不老」の能力と併せて、一定の場所に長期間滞在することは少ない。
復讐を終えたフレイムヘイズの末路は様々で、精根尽きて自殺同然に戦死する、自ら契約を解除し消滅する、“王”に見限られて契約を破棄される、と言った者も少なくない。ただし必ずしも死亡するとは限らず、そのままフレイムヘイズとして活動し続けたり、活動を休止(事実上の引退)して各地を放浪したり、「外界宿」や個人グループを介して他のフレイムヘイズのサポートに回ったり、また規模の大きい局地的な「歪み」を正す「調律師」として行動したりする者もいる。
神器 編集
フレイムヘイズと契約し、その『器』に休眠している“紅世の王”の意思を、この世に表出させるための道具。常に身に着けていなくても問題は無く、契約者もしくは“王”のどちらかが望めば、離れていても即座に契約者の下に神器を出現させる事もできる。破壊された場合も、相応の“存在の力”を使えば修復は可能。また、神器無しの状態でも、契約しているフレイムヘイズとなら会話可能である。
フレイムヘイズと契約している“王”の感覚器とも言え、振動や物理的衝撃のみならず、視覚や聴覚も“王”に伝える。神器を通じて発声も可能。また“王”が自身の意思で、ある程度神器を動かすことや自在法を使うことは可能(本型の神器を開閉し光を放つ、短剣型の神器を鞘から出し入れするなど)。神器によっては、“王”の意識を表出する以外の特殊能力を持つものもある(様々な物体を収納可能な“グリモア”、形状を自在に変化させる“ペルソナ”など)。
形状は契約の際に決定され、形状は戦闘に用いられない装身具(ペンダント、指輪、飾り紐など)である事もあれば、戦闘にも使われる実用的な道具(本、仮面、鏃など)であることもあり、人それぞれである。
ちなみにフレイムヘイズが代替わりした場合、神器名と機能は変わらず、形状が異なっても共通する外見的特徴を持つ模様。
称号 編集
フレイムヘイズは、契約している“紅世の王”および各人の特性に応じた固有の「フレイムヘイズとしての呼び名」を持つ。例えば“天壌の劫火”アラストールと契約しているフレイムヘイズの称号は必ず『炎髪灼眼の討ち手』であり、“天壌の劫火”アラストールの契約者であれば代替わりしても同じ称号となる。
称号は“紅世の徒”にとって真名に相当するものと思われ、“徒”はフレイムヘイズ個人を通常、称号で呼ぶ。
全ての称号は『○○の××手』で統一されている。なお、これはそれぞれの“王”と最初に契約した人物が自ら名乗り、後続がそれを受け継ぐ形になる。
関連組織 編集
一人一党の気質が多いフレイムヘイズは集団行動を取る事自体稀であるが、フレイムヘイズに関わりの深い集団や組織も数少ないながら存在する。
外界宿 編集
アウトローと読む。フレイムヘイズに移動の手配や資金提供などの便宜を図るための施設。より具体的には「壁一面の地図・海図と、一定範囲内の気配を隠す宝具『テッセラ』が設置された場所」と定義される。また、それらの施設を運営する組織も『外界宿』と呼ばれる。
かつては復讐を成し遂げたか変わり者のフレイムヘイズが独自に運営する溜まり場・隠れ家のような役割の施設に過ぎなかったが、19世紀後半より『愁夢の吹き手』ドレル・クーベリックが積極的に整備・拡大し、フレイムヘイズを総合的に支援する一大組織に成長させた。また正確な開始時期は不明だが、20世紀初頭には契約したてのフレイムヘイズに一定の教育や基礎訓練を施す場として機能しているらしい描写も見られる。
代表的な外界宿は『ドレル・パーティ』、『モンテベルディのコーロ』、『傀輪会』、[故崖窟]などである。
フレイムヘイズ兵団(16世紀) 編集
強力な“紅世の徒”の大集団[とむらいの鐘]に対抗するために結成された、フレイムヘイズの集団。総大将は『震威の結い手』ゾフィー・サバリッシュ。副将は『極光の射手』カール・ベルワルド。
15世紀末~16世紀初頭に起こった対[とむらいの鐘]戦(通称『大戦』)の際に、最初の『フレイムヘイズ兵団』が結成された。『大戦』では多くの犠牲を出しながらも[とむらいの鐘]を壊滅させて勝利した。
フレイムヘイズ兵団(21世紀) 編集
世界最大の“紅世の徒”の大組織[仮装舞踏会]との全面戦争に当たって、外界宿が世界中から精鋭四千余名を糾合して編成した戦闘集団。総司令官は、旧兵団と同じくゾフィー・サバリッシュ。副官は『姿影の派し手』フランソワ・オーリック。幕僚長に『犀渠の護り手』ザムエル・デマンティウスを据える。
ユーラシア大陸東西に侵攻する[仮装舞踏会]外界宿征討軍の軍勢を日本とルーマニアで外界宿が受け止めている間に、フレイムヘイズ兵団は手薄になった『星黎殿』に侵攻し、創造神“祭礼の蛇”復活阻止と、移動要塞『星黎殿』の占拠または重要施設の破壊を戦略目標として掲げていた。しかし“祭礼の蛇”神体の復活・帰還を阻止することが出来ず、また“祭礼の蛇”坂井悠二による二度の大命宣布でフレイムヘイズたちが使命を見失って壊乱し、組織として崩壊。最後は“千変”シュドナイの指揮による掃討戦によって、全兵力の八割という史上最大の損害を出して敗退した。
フレイムヘイズの一覧 編集
ここでは、異能者であるフレイムヘイズと共に、フレイムヘイズと契約し異能を与え、彼らと一心同体(もしくは二心同体)である“紅世の王”も併せて紹介する。なお、称号とは、契約している“王”とフレイムヘイズの能力を表す「“王”と一心同体の存在であるフレイムヘイズ」としての呼び名である。契約している“王”によって決定され、器であるフレイムヘイズが死亡し代替わりしても、その“王”のフレイムヘイズに対する称号が変わる事は無い。
担当声優はアニメ版 / 『電撃hp』で誌上通販された2004年のドラマCDの順。1人しか記載されていない場合は特記無い限りアニメ版のキャストとする。
フレイムヘイズの一覧表 編集
契約している王 | 称号 | フレイムヘイズ | 神器 | 炎の色 | 所属勢力・役職・その他の情報etc. |
---|---|---|---|---|---|
アラストール |
シャナ (『贄殿遮那』のフレイムヘイズ) |
コキュートス (ペンダント型) |
紅蓮 | - | |
マティルダ・サントメール | コキュートス (指輪型) |
- | |||
マルコシアス |
マージョリー・ドー | グリモア (巨大な本型) |
群青色 | 自在師 | |
ティアマトー |
ヴィルヘルミナ・カルメル | ペルソナ (現在はヘッドドレス型。過去は額の飾り紐型。 両者共に戦闘時は仮面に変化) |
桜色 | - | |
ベヘモット |
カムシン・ネブハーウ | サービア (飾り紐型) |
褐色 | 最古のフレイムヘイズ 調律師 | |
ハルファス |
ドレル・クーベリック | ブンシェルルーテ (ステッキ型) |
薄い オレンジ色 |
外界宿『ドレル・パーティー』主宰者 幕僚団『クーベリックのオーケストラ』指揮者 | |
ウートレンニャヤ ヴェチェールニャヤ |
カール・ベルワルド | ゾリャー (鏃型) |
オーロラ | - | |
キアラ・トスカナ | ゾリャー (二個一組の鏃型の髪飾り) |
- | |||
タケミカヅチ |
ゾフィー・サバリッシュ | ドンナー (蒼い十字の星型) |
眩い紫電 | 対[とむらいの鐘]、対[仮装舞踏会]フレイムヘイズ兵団総司令官 | |
アシズ |
ティス | 無名の金環 | 青 | - | |
ウァラク |
ユーリイ・フヴォイカ | ゴベルラ (短剣型) |
丹色 | - | |
ケツアルコアトル |
イーストエッジ | テオトル (浮き彫りを施した石のメダル型) |
青磁色 | 『大地の四神』 | |
“環回の角”ハーゲンティ | 殊態の揺り手 | アレックス | コルタナ(剣型) | 支子色 | - |
“截の猛狼”ガルー | 憑皮の舁き手 | ドゥニ | リュパン(マント型) | 木賊色 | - |
ギゾー |
サーレ・ハビヒツブルグ | レンゲ、ザイテ (二丁一組の木製の十字操具型) |
菫色 | - | |
カイム |
クロード・テイラー | ソアラー (左を向いた鷲のバッジ型) |
空色 | [革正団]サラカエル一派 | |
帝鴻 |
虞軒 | 昆吾 (直剣型) |
紅梅色 | 『傀輪会』所属兼上海会戦総司令官 | |
センティア |
ピエトロ・モンテヴェルディ | ゴローザ (懐中時計型) |
マリンブルー | - | |
クエレブレ |
セシリア・ロドリーゴ | エスピナ (牙を並べたペンダント型) |
柳色 | - | |
“利鋭の暗流”ノート | クレメンス・ロット | マーニ(ランプ型) | 消炭色 | - | |
バラル |
レベッカ・リード | クルワッハ (金色のブレスレット型) |
桃色 | - | |
ブリギッド |
アーネスト・フリーダー | アンブロシア (胸に挿した洒落た小ぶりの造花型) |
鳶色 | 東京外界宿総本部司令官 | |
グローガッハ |
フランソワ・オーリック | スプレット (大きな壺型) |
紫苑色 | - | |
ジルニトラ |
ザムエル・デマンティウス | ターボル (親指大の銀杯型) |
薄墨色 | 対[仮装舞踏会]フレイムヘイズ兵団幕僚長 | |
トラロック |
センターヒル | テオトル (角ばった石のメダル型) |
瑠璃色 | 『大地の四神』 | |
“叢倚の領袖”ジェヴォーナ | 従佐の指し手 | パウラ・クレツキー | ロカトール(縦笛型) | 胡桃色 | - |
“勘破の眼睛”フェイ | 枢機の向き手 | ボード | フォッセ(聖遺物箱型) | セレスト | - |
“祛邪の刻屈”オオヤマクイ | 理法の裁ち手 | ヤマベ | 身口意(独鈷杵型) | 今様色 | - |
“長柯の腕”ルグ | ジョージ | フラガラック(剣型) | 狐色 | - | |
“闊遠の謡”カリオペ | 誑欺の吐き手 | ファーディ | ディスグレイス(帽子型) | 東雲色 | - |
“訓議の天牛”ザガン | 替移の接ぎ手 | アーヴィング | ルテニアン(コイン型) | ワインレッド | - |
“突軼の戟”窮奇 | 強毅の処し手 | 季重 | 建木(槍型) | 鬱金色 | 『傀輪会』所属 |
“賢哲の鑑”白澤 | 精微の解き手 | 范勲 | 丹陽(盾型) | 生成色 | 『傀輪会』所属 |
“生阜の抱擁”ケレス | 蘇活の撫し手 | アルマ | フォルテー(スカーフ型) | 朽葉色 | - |
“紀律の按拍”ダジボーグ | 攪和の打ち手 | グリンカ | プーハチ(眼鏡型) | 雌黄 | - |
ヴォーダン |
ヒルデガルド | フリズスキャルヴ (真っ赤な宝石をあしらったブローチ型) |
薔薇色 | - | |
“曠野の手綱” | ナム | 名付けず(手綱型) | 若草色 | - | |
テスカトリポカ |
サウスバレイ | テオトル (尖った石のメダル型) |
象牙色 | 『大地の四神』 | |
チャルチウィトリクエ |
ウェストショア | テオトル (波状輪郭をした石のメダル型) |
珊瑚色 | 『大地の四神』 | |
フィフィネラ |
ダン・ロジャース | B・S・I (万年筆型) |
涅色 | - | |
“爛班の炉”シャフレワル | 燿暉の選り手 | デデ | アルシアー (硬玉の耳飾り型) |
鴨羽色 | - |
相柳 |
劉陽 | 羽淵 (大刀型) |
露草色 | - | |
“異験の技工”ヨフィエル | ミカロユス・キュイ | 見えざる手 (筆型) |
感情により変化する茶色系 | - | |
スリュム |
ノーマン・パーセル | ヨークトル (マントの留め具型) |
錆浅葱色 | [パドゥーカ]指揮官 | |
ウィツィロポチトリ |
ノースエア | テオトル(丸に穴の開いた石のメダル型) | 金糸雀色 | 『大地の四神』の先師『宙の心臓』 |
主要フレイムヘイズ 編集
- シャナ [Shana]
- 声 - 釘宮理恵 / 堀江由衣
- 本編の主人公かつメインヒロイン、『炎髪灼眼の討ち手』という称号を持つフレイムヘイズ。
- 詳細は灼眼のシャナの登場人物#主要人物を参照。
- “天壌の劫火(てんじょうのごうか)”アラストール[Alastor]
- 声 - 江原正士 / 大塚明夫
- シャナと契約する“紅世の神”。“紅世”真正の魔神である。炎の色は紅蓮。
- 詳細は灼眼のシャナの登場人物#アラストールを参照。
- マージョリー・ドー [Margery Daw]
- 声 - 生天目仁美
- 『弔詞の詠み手(ちょうしのよみて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。初登場はII巻。戦闘面に特化した世界屈指の天才自在師で、すでに数百年を生き抜き、“紅世の徒”を無差別に殺すフレイムヘイズ屈指の「殺し屋」として知られる。“千変”シュドナイからは「殺戮の美姫」とも呼ばれていた。『四神』からの呼称は「怒れる獣」。
- 外見は栗色の髪をした欧州系、スタイル抜群の20代の美女。神器“グリモア”は画板ほどもある巨大な本型。
- 戦闘時にはずんぐりむっくりな獣型の炎の衣『トーガ』(アニメ版では群青の熊となった)を纏い、その場で思いついた即興詩を唱えて(主に戦闘に関する)自在法を即席で編み出し操る。この即興詩は『屠殺の即興詩』(アニメ版では『堵殺の即興詩』)と呼ばれる。過程より結果を重視するフレイムヘイズの間でも、彼女の能力は高く評価されている。しかし過程を省略して望む結果を導き出す「天才」であるため、逆に細かな自在法の構成の把握や分析は苦手。
- 典型的な「復讐者」のフレイムヘイズ。“紅世の徒”を憎むあまり、無差別に“徒”を殺すことを目的とし、そのためならフレイムヘイズの使命から逸脱することも少なくない。同業者であるフレイムヘイズ相手でも、邪魔者や気に入らない者には容赦しない凶暴性を持ち、“徒”はもちろん、時には同業者にも恐れられる。
- 本質的に激情家だが、戦闘思考は怜悧かつ大胆。熱くなってもその戦闘は短絡的にはならず、敵を殺すために最も効率の良い戦法と冷静な思考・状況判断を行い、勝機が薄ければ即時撤退を選択するといった明晰さも持つ。
- 日常的には大雑把でグータラで酒好き。酒癖は悪いが強くはなく、よく二日酔いに陥る。人生経験豊富で姐御肌のためか、他人の相談や愚痴の相手になることも多い。用途に応じた自在式を栞に込めて渡すと言った、(利便性も兼ねた)他者への気遣いもたびたび見られる。
- 佐藤啓作と田中栄太には「親分」として慕われており、彼女自身も二人を「子分」として扱い「厳しい思いやり」を見せる。頻繁に緒方真竹が相談にやってきている他、偶に吉田一美も相談を持ちかけている。ヴィルヘルミナとは飲み友達。かつてはザムエルに世話になった模様。
- 人間時代は(イギリス出身らしき描写が多々見られる)地位ある貴族の娘だったと思われるが(回想では一貫して名前が伏せられており、本名は不明)、家が没落したため復讐を誓っていた。その「自身の存在意義である復讐」を奪い去った、正体不明の銀色の炎の“徒”(“銀”と称される)への激しい憎悪から契約、執拗に探し続けていた(II巻、S巻『マイルストーン』より)。また人間時代に頼られては裏切られる経験を幾度も繰り返しており、面倒見の良い反面、面倒を見た相手に裏切られる虚しさも感じていた模様。
- 15~16世紀の対[とむらいの鐘]戦には参加していないが、この頃から既にフレイムヘイズとして活動していた。
- 20世紀初頭、対[革正団]戦争の最中にニューヨークを訪れ、“千変”シュドナイと交戦している(S巻『マイルストーン』)。
- 本編では5月初め、“屍拾い”ラミーを追って御崎市を訪れ、案内を頼んだ縁で佐藤啓作と田中栄太に慕われるようになった(II巻)。その後、御崎市での戦いを通して佐藤と田中を「守りたい」と思うようになり、初めて憎しみ以外で戦う理由を見出す(IV巻)。その後も“徒”の襲撃に備えて御崎市に滞在し続け、10月、遂に“銀”の手がかりを得る(XII巻)。しかし手がかりである「悠二が発した銀色の炎」を初めて見た際には我を失い、マルコシアスやヴィルヘルミナの制止も聞かず、激烈な戦闘を行った。その際の流れ弾で、封絶で静止した緒方を「壊し」てしまい、田中の心に影を落とす。
- 翌年1月初頭、佐藤を外界宿東京支部へと送り出した後、御崎市に襲来した“祭礼の蛇”坂井悠二から“銀”の正体を知らされ、復讐心を失い消滅の危機に陥るが、田中と吉田の呼びかけによって一命を取り留める(XVI巻)。以降は復讐に代わる自身の存在意義を見出すため、眠りながら佐藤の帰還を待ち続け(XVII巻)、彼の口付けで自身の気持ちを確かめ目を覚ます(XIX巻)。
- その後、対[仮装舞踏会]撤退戦に参じるべく佐藤と共に出立(XIX巻)。佐藤や他の外界宿の人間の構成員たちと共に『天道宮』で『引潮』作戦の準備を進めていたが、“祭礼の蛇”坂井悠二の大命宣布でフレイムヘイズ兵団が崩壊したと知ると、生き残ったフレイムヘイズたちを救出するため囮の一人として参戦、囮の『天道宮』に改変した多重の自在法の檻にシュドナイを閉じ込めた。この檻は三分持たずに破られたが迎えが来るまでの時間は稼ぎ、迎えに来たキアラの“ゾリャー”に牽引されシャナたちと共に戦場から離脱する(XX巻)。
- フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、シャナたちと共にニューヨークに移動する。『イーストエッジ外信』にて、シャナと『大地の三神』の交渉を脇に、サーレととある複雑な自在式の解体・走査をしていた(『大命詩篇』の分析と改変)。
- 御崎市決戦では、シャナの作戦の本命となる『大命詩編』のバックアップ書き換えを担当。[百鬼夜行]により『真宰社』内部へ密かに送り届けられ、秘密裏に『吟詠炉』を目指した(XXI巻)。『吟詠炉』内の『大命詩編』のバックアップを書き換えた後は、フィレスの言葉に自縄自縛していたヴィルヘルミナを説得し、シャナと合流。悠二やシュドナイと決戦に臨む(XXII巻)。
- 新世界『無何有鏡』完成後、フレイムヘイズの大半が新世界『無何有鏡』へ旅立つ中で、佐藤の存在とこの世に残る“徒”への対抗力、新世界『無何有鏡』との通信・往来方法の研究を理由にこの世への残留を表明し、御崎市に残ったシュドナイと死闘を開始。フレイムヘイズ何万人分もの力(“徒”たちがこの世に置いていった莫大な“存在の力”の一部)を使った一世一代の『屠殺の即興詩』によりシュドナイを討滅する(XXII巻)。
- 活動のための資金は株に投資することで得ているが、大元の資金は犯罪組織からかっぱらってきたものである模様(彼女に限らず、個人で活動するフレイムヘイズはシャナも含めて活動資金のほとんどを犯罪組織から強奪する事で得ているようである。ちなみに、シャナは香港で活動した時は香港マフィアの人員を殺害、香港ドルを強奪し、日本での活動資金はヤクザから奪い取っていた)。
- アニメでは第1期から登場。アニメ版の設定では身長173cm。
- 『屠殺の即興詞』は全て英語圏の童謡集『NURSERY RHYMES』(いわゆるマザー・グース)からの引用であり、「マージョリー・ドー」という人物もその一篇に登場する。
- “蹂躙の爪牙(じゅうりんのそうが)”マルコシアス [Marchosias]
- 声 - 岩田光央
- マージョリーと契約している男性の“紅世の王”。炎の色は群青色。
- 本性がこの世で顕現した場合、巨大な狼の姿となる。『四神』からの正確な呼称は不明だが「暴狼」と呼ばれている。
- 他の“紅世の徒”から「戦闘狂」と評される、無類の戦闘好き。マージョリーと契約しているのも、世界のバランスを守る使命感より、己の闘争心を満たす意義が強い。そのため、フレイムヘイズの使命を至上とする生真面目なアラストールとは、折りが合わない。一方で、世界の歪みを生む“徒”ではなくフレイムヘイズとして戦う、念を入れて戦いの下準備をする(ことを容認している)、“銀”の炎を見たマージョリーの暴走を制止しようとするなど、無謀で無闇な戦いは好まない面も見て取れる。
- 構築に手間のかかる自在式は“グリモア”に刻まれており、マージョリーがアドリブで唱える『屠殺の即興詩』に合った自在法を、マルコシアスが選び放つ(アニメ版では、マージョリーが見聞きした自在法が“グリモア”に刻まれていた)。また“グリモア”のページの間には、シャナの『夜笠』と同様に様々な物を「挟んで」収納する事ができる。
- 騒がしく無作法で下品な性格だが、表面的な乱暴さや軽薄さとは裏腹に仲間思いで情に厚い一面を持つ。しかし、その優しさを直接見せる相手は限られている。よく他人のセリフにツッこんではマージョリーに“グリモア”を叩かれて無理矢理黙らされる。ちなみにマージョリーのことはよく「我が○○なる~」と枕詞付きで呼ぶ(デフォルトは「我が麗しの酒杯(ゴブレット)」)。
- アニメでは第1期から登場。
- マルコシアスとはソロモン72柱の一柱である悪魔の名。また、魔術に関わるさまざま書物をグリモワ(Grimoire)という。
- ヴィルヘルミナ・カルメル[Wilhelmina Carmel]
- 声 - 伊藤静
- 『万条の仕手(ばんじょうのして)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。初登場はV巻、本編への登場はVIII巻から。『戦技無双の舞踏姫』の異名を持ち、対[とむらいの鐘]戦でも主力として活躍した「大戦の英雄」の一人。幼少期のシャナの育成に携わった育ての親の1人であり、いわば養育係。『四神』からの呼称は『嫋やかな舞』。
- 外見は20歳前後、人形のように端正な顔立ちで、鉄仮面のように無表情な欧州系の女性。日常的にメイド服を着用しており、それに合わせて神器“ペルソナ”も通常はヘッドドレス型。“ペルソナ”は、戦闘時には糸にばらけ、周縁に鬣のようなリボンが生え、狐を模した仮面型へと変化する。なお対[とむらいの鐘]戦当時は貴婦人風のドレス姿をしており、“ペルソナ”も合わせてティアラ型だった(これらの事から“ペルソナ”とは様々な形状へと姿を変える能力を持つ『糸』の神器ではないかと推測する者もいる)。また当時、リボンは肩の飾り紐から伸びていた。戦闘時の“ペルソナ”は、アニメ版第1期では顔の上半分、原作イラストおよびアニメ版第2期は顔全体を覆う形となっている。
- 直接的な破壊に関しては得手ではないが、非常に卓越した戦技の持ち主。戦闘時には“ペルソナ”から伸びた鬣のような無数のリボンを自在に操り多彩な技を駆使して闘う、フレイムヘイズ屈指の強者。特に近接戦闘に優れ、敵の力を受け流す投げ技を得意とする。リボンを体中に巻きつけ、気配を完全に絶つ白い大柄な形態(ジャンプスーツのような、と形容された)もある。
- 非戦闘面においても、情報操作や家事能力、土木工事や電子機器の扱いなどに秀でた有能かつ万能な女性だが、唯一料理が苦手で「得意料理が湯豆腐とサラダ」というレベルであり、自覚もあるので料理は全くしない。
- 非常に生真面目で堅苦しく、礼儀正しく義理堅い、ぶっきらぼうで融通の利かない超頑固な性格(本人にも自覚あり)。表面的には理路整然とし、常に理想的で模範的な人物として振舞う。語尾に「~であります」と付ける等妙に畏まった、古風な話し方をする。これは契約の際にティアマトーの口調を「フレイムヘイズの口調」と誤解して使い始めたもので、そのまま現在に至っている。
- その内実は非常に情け深く感情的で、他者への思い入れが激しく、またネガティヴ思考で落ち込みやすいうえに後々まで引きずることも多い。厳しい自己規定により己を律し、“ペルソナ”や無表情という「仮面」で頑なに隠そうとするが、表情以外の挙動に内面が如実に現れ「隠し事が下手」と評される。ただしそうした変化が常人に比べてごく僅かなため、平時の彼女を知らなければ挙動の変化に気づけない。ぶつ切りチーズを肴にワインを飲むのが密かな楽しみである。またオランダの郷土料理パンネンクックが好物。
- 周囲の視線や一般常識には無頓着。赤ん坊だったシャナを世話するようになって以降、TPOを問わず常にメイド服を着用しており、更に買い物の際には登山用ザックを背負うなどというアンバランスな格好から、周囲の注目を浴びることも多いが、当人は全く気にしていない。そうした性格のせいか、些細な点で誤解や勘違いしている(と分かる)描写も多く見られる。
- 幼少期のシャナにとって接していた唯一の「人間」だったため、料理下手な点、生真面目さ、一般常識への疎さなど、シャナの人格形成に多大な影響を与えている。シャナのメロンパン好きは、融通が利かず料理の苦手なヴィルヘルミナが「シャナが喜ぶ食べ物」として馬鹿の1つ覚えのように買い与えていた事による。メロンパンについてのシャナの考え方は彼女の受け売りである。また、シャナが持つ間違った一般知識も、概ね彼女が誤解して与えたもの。
- シャナを非常に愛しており、彼女のことを誇りに思っている。しかし、悠二と出会ったことで「理想的かつ完璧なフレイムヘイズ」が変わりつつあることを察知しており、2人の仲を良く思っていない。そのため、悠二が名づけた「シャナ」という名前も嫌っており、「シャナ」の名を口に出すことは全くなく、第三者にシャナのことを話すときにも「あの子」「あの方」「お嬢様」などと呼んでいた(この辺りは次第にシャナを「シャナ」と呼ぶようになったアラストールとは違うところである)。しかし、最終巻で新世界に旅立つ直前でシャナをようやく「シャナ」と呼ぶ。
- 御崎市に滞在するようになって以降、2人の仲を警戒する意味も兼ねて朝晩の鍛錬を監督している。その際は主に悠二の指導を担当し、シャナから文句をつけられない範囲で可能な限り、不公正かつ意図的な嫌がらせを行っている。
- 一方で、当初は悠二と共にシャナを歪める元凶と見做していた悠二の母・坂井千草には一目置くようになり、茶飲み友達兼子育てに関する相談(を持ちかける)役という間柄となった。
- 『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーとは飲み仲間で、その際よく彼女に愚痴をこぼす。
- 先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールとは無二の親友で、対[とむらいの鐘]戦では共に戦った。また[とむらいの鐘]の幹部“虹の翼”メリヒムに恋していたが、最後まで片思いであり、彼がシャナによって倒されて久しい現在でも、その想いを断ち切れないでいる。
- 『約束の二人』こと“彩飄”フィレスと『永遠の恋人』ヨーハンは命の恩人であり、2年ほど行動を共にした友人。
- 人間時代の経歴は不明だが、侍女に育てられた、マティルダや契約相手のティアマトーから「姫」と呼ばれるなどの描写から、高貴な出自であることが伺える。また自らの復讐ではなく、他者へ寄せる情で動くという、フレイムヘイズの中でも特異な存在。
- 15世紀末、メリヒムに出会い恋した後、彼が想いを寄せる先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダのことを探るため、行動を共にするようになる。しかし共に行動するうち「恋敵」と信頼関係を築き、いつしか無二の親友となっていた。
- その後、16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦において親友マティルダを失う(X巻)が、その時に交わした約束から、次代の『炎髪灼眼の討ち手』を育てるべく“天壌の劫火”アラストール、“虹の翼”メリヒム、契約相手の“夢幻の冠帯”ティアマトーと共に『天道宮』へと篭った。『炎髪灼眼の討ち手』候補者育成においては、候補者を選定し『天道宮』へ招き入れる、候補者の身の回りを世話する、『天道宮』だけでは賄えない候補者の食事や衣服、必要な知識を得るための道具や資料などを『天道宮』外部から調達するなどの活動を行っていた模様(V巻)。候補者のフレイムヘイズとしての最適な在り方を引き出すため、フレイムヘイズに対する先入観や固定観念を持たせないよう、候補者に対しては自身がフレイムヘイズであることを隠していた。また同様の理由で、候補者に先代マティルダの話を聞かせることもほとんどなかった模様。
- シャナがフレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』となった後は、自身もフレイムヘイズとしての活動を数百年ぶりに再開。世間一般には対[とむらいの鐘]戦で死亡したものと思われていたが、“甲鉄竜”イルヤンカの討滅など当時の活躍はある程度知られている(SII巻『ヤーニング』)。
- 本編開始の2年前、『无窮の聞き手』ピエトロ・モンテベルディの依頼を受け“徒”の運び屋[百鬼夜行]を追跡中、『約束の二人』を狙う“壊刃”サブラクにより重傷を負い、『約束の二人』に助けられる(SII巻『ヤーニング』)。そのまま『約束の二人』と行動を共にし、度重なるサブラクの奇襲を撃退していたが、本編開始直前に遂にサブラクの奇襲が成功、結果『約束の二人』と別離した。その後に香港で“愛染の兄妹”(ソラト&ティリエル)とその護衛である“千変”シュドナイと遭遇するが、シュドナイによって逃げられてしまう。
- 本編では7月の“探耽求究”ダンタリオンの襲来(VII巻)後、マージョリーからの要請を受けて事後処理のため御崎市を訪問、シャナ達と合流(VIII巻)。シャナへの(半ば身勝手な)思い入れと、『零時迷子』本来の持ち主である「友」“彩飄”フィレスとの友情から、“ミステス”坂井悠二の破壊に伴う『零時迷子』の無作為転移を強行しようとするが、周囲の説得により断念する(IX巻)。
- その後もシャナと共に御崎市の平井家に滞在し、『零時迷子』を探し当てやって来た“彩飄”フィレスとの友情を失った(XIII巻)一方、その原因となった“壊刃”サブラクの御崎市襲来を悠二の作戦とフレイムヘイズたちとの連携で撃退。しかし討滅直前にサブラクが宝具の力で逃走したことに気づけず、サブラクを討滅したものと思い込んでしまった(XIV巻)。
- 翌年1月初頭に襲来した“祭礼の蛇”坂井悠二にシャナを拉致され(XVI巻)、シャナ奪還作戦を計画。対[仮装舞踏会]戦を控え、誰の協力も得られずにいたが、実行直前に『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウと『輝爍の撒き手』レベッカ・リードの協力を得る(XVII巻)。
- 対[仮装舞踏会]戦では、カムシンやレベッカと三人にして六人で『天道宮』を通じて『星黎殿』へ侵入。カムシンとレベッカが陽動する間に、シャナ奪還のため『星黎殿』内部を探索する。そこで偶然再会した“屍拾い”ラミーの友誼により、無人となっていた『星黎殿』の中枢へ辿り着き、『星黎殿』を操作してフレイムヘイズ兵団を援護した。その後にシャナたちと合流、共に『神門』へと突入する(XVIII巻)。
- そして『神門』と“祭礼の蛇”神体を繋ぐ『詣道』の途中で待ち伏せていた“壊刃”サブラクと遭遇。“祭礼の蛇”神体帰還を阻止すべくシャナを先へ行かせ、自身はレベッカやカムシンと共にシャナへの追撃を阻むべく、サブラクと交戦。しかしサブラクを討滅したという思い込みと油断から、サブラクの新たな自在法『スティグマータ』に対処しきれず苦戦を強いられ、敗北は時間の問題という状況の中で時間稼ぎの死闘を演じる。そこへ復活した“祭礼の蛇”神体が現れ、サブラクが戦いを放棄したため、サブラクを両界の狭間に落とし、遂にサブラクとの決着をつける。そしてシャナと合流した後、『詣道』に漂う最古のフレイムヘイズたちの成れの果てたる色付く影たちの助力でその場を離脱し、“祭礼の蛇”神体たちより一足早く『神門』を抜けてこの世に帰還する(XIX巻)。
- その直後に帰還した“祭礼の蛇”坂井悠二の二度の大命宣布で兵団が総崩れになった為、生き残ったフレイムヘイズが撤退を終えるまで、シャナと共に囮としてシュドナイと相対する。無事に自らの役割を終えると、迎えに来た“ゾリャー”に牽引されシャナたちと共に戦場から離脱する(XX巻)。
- 半日後には、亡きセンターヒルから『大地の三神』へ伝言を託されたシャナと共にニューヨークの『イーストエッジ外信』へ赴く。シャナの決意の表明で『三神』の同行が決定すると、自身もシャナの作戦の成就に命を懸けることを固く誓う(XXI巻)。
- 御崎市決戦では“ゾリャー”に乗って儀式場である『真宰社』に到達、シャナと共に“祭礼の蛇”坂井悠二やシュドナイと交戦(XXI巻)。その最中、現れたフィレスに拒まれ、自縄自縛に陥ってやるべきことを見失いかけるも、マージョリーに諭され共にシャナと合流。戦いの最中、脱出したはずの吉田一美や『約束の二人』の危機を感知して再び自縄自縛に陥りかけるが、その心情を察したシャナに促されたことで真に自縄自縛から解放され、カムシンと共に吉田や[百鬼夜行]を守り抜く。新世界『無何有鏡』創造後は、『約束の二人』の遺言で二人の子供である『両界の嗣子』ユストゥスを託され、自らの手でユストゥスを育てることを決意。シャナたちに見送られながら、他のフレイムヘイズたちと共にユストゥスを抱いて『天道宮』で新世界『無何有鏡』へ旅立つ(XXII巻)。
- 新世界へ渡り来てから数年後に、新世界の日本の一地方都市で初めて坂井悠二に対面するが悠二への敵意は変わっておらず、悠二へ[真なる神託]との関りを問いただすなど厳しい態度をとるが、悠二に対する万が一の報酬として、会談後に立ち去りかけた悠二に『両界の嗣子』ユストゥスの姿を見せている(短編『クイディティ』)。
- アニメでは第1期から登場。第2期では、パリの外界宿でフィレスが『零時迷子』を探していることをカムシンから告げられる。その後、悠二とシャナにフィレスが『零時迷子』を探している事を伝えたが、悠二が初めて封絶に成功したときは留守にしていた為にその場にいなかった。アニメでもフィレス・ヨーハンら『約束の二人』とは友人関係にあったが、『零時迷子』が悠二に無作為転移した時には所用で離れていて行動を共にしていない。
- “夢幻の冠帯(むげんのかんたい)”ティアマトー [Tiamat]
- 声 - 渡辺明乃
- ヴィルヘルミナと契約している似た者同士の女性の“紅世の王”。炎の色は桜色。『寡言の大河』の異名を持つ。『四神』からの呼称は『流れる力』。
- 常に寡黙で、口を開いても端的な単語や5文字以内の言葉しか話さない。それゆえ、マルコシアスから「こいつに説明を求めても意味がない」と言われるほど。可能な限り言葉を削るため、四字熟語の台詞が多い。
- 結構薄情な性格で、ヴィルヘルミナから頭を叩かれること(その際の効果音は「ゴン」となる)で抗議されることも多いが、ヴィルヘルミナ同様シャナを愛している模様。また坂井悠二には、契約者同様に厳しい態度をとっている。
- 最終巻でヴィルヘルミナがシャナとアラストールに吉田と『約束の二人』の護衛を任された際、契約以来数百年ぶりに5文字以上の言葉を発する。ちなみにそれ以外で一番長いのは、V巻でウィネの攻撃を受けた際に発した「視界攪乱!右九十度修正!」というヴィルヘルミナへの警告であった。
- 新世界へ渡り来てから数年後も、坂井悠二に対する敵意は消えておらず、契約者同様に悠二に対して厳しい態度をとるが、渋々だが『両界の嗣子』ユストゥスの姿を悠二に見せることを許可する(短編『クイディティ』)。
- 普通に話す際は句読点なしで、まさに流れる大河の如く一気に内容を話す。契約の内容を説明した時もこの調子だったため、ヴィルヘルミナは内容を理解するのに一苦労した模様。ちなみに語尾は契約者同様「~であります」だが、こちらが本家である。
- バビロニア神話にはティアマトという女神が存在する。
- アニメでは第1期から登場。アニメの番外編「灼眼のシャナたん」「頂のへかてーたん」でも、無愛想寡黙なところは変わりないが、「焼肉定食」「豚肉万歳」と茶けたほか、声優の名前など言っていた。ヴィルヘルミナから「ティアマトーは難しい言葉を知っている。」と賞賛される一方で、「でも、(アニメだと)声だけでは分からない。」とアニメにおける難点を指摘されている。
その他のフレイムヘイズ 編集
- カムシン・ネブハーウ[Khamsin Nbh`w]
- 声 - 皆川純子
- 『儀装の駆り手(ぎそうのかりて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。初登場はVI巻。最古のフレイムヘイズの1人であり歴戦の古強者で、既に数千年の時を生きていた。そのため周りからは「爺さん」「ジジイ」「カムシン翁」などと呼ばれていた。『壊し屋』の異名で知られ、現代まで“紅世の徒”によってできた世界の歪みを修復できる、世界でも数少ない『調律師』の1人として活動していた。なおカムシンとは、アラビア語で「サハラ砂漠を吹き渡る熱風」を意味する。『四神』からの呼称は『聳える岩』。
- 見た目は10に満たないほどの少年で、これまでの戦いで負った傷が全身に残されていた(本来は消すことが出来るが、カムシンは他者との思い出としてわざと残している)。神器“サービア”は飾り紐型で、カムシンの左手に巻かれていた。また、布でグルグル巻きにした、身の丈の倍はある長く太い鉄棒型の宝具『メケスト』を担ぎ持ち歩いていた。フレイムヘイズであるが故の存在感と違和感、見た目の年齢と傷だらけの外見によるギャップは見る人間を怖がらせてしまうため、普段はフードを深く被っているが、それでも『メケスト』を担いでいることで目立っていた。御崎市を去り際、吉田一美から麦わら帽子をプレゼントされ、以降はフードの代わりにその麦わら帽子を被っていた模様。
- 戦闘の際には自在法『カデシュの心室』を核として、周囲に支点となる自在法『カデシュの血印』を配置し、それらをエネルギー流であるカデシュの血脈で結んで瓦礫を寄せ集めた巨大な『儀装』を纏う。その姿は瓦礫の巨人とも呼ばれる(アニメ1期では瓦礫の巨人を外部から操っている)。また『調律』の際は、『カデシュの血印』や『カデシュの心室』を応用している。
- 瓦礫の巨人は、右手に『メケスト』を柄として炎で瓦礫を鎖のように繋げた巨大な鞭を持ち、左手は『アテンの拳』と呼ばれる凄まじい破壊力を持ったロケットパンチになる。瓦礫の鞭を振り回し、遠心力で放った瓦礫から流星のように炎を噴出し、勢いを増加させて砲弾として撃ち込む『ラーの礫』や巨人の周囲に瓦礫を回転させながら放つ『セトの車輪』と呼ばれる技も持つ。どの攻撃も破壊力は極めて大きいが、動作は大雑把で命中精度は低い。こうした特性から大規模な破壊活動を得意としており、その荒々しい闘い方は歴戦の勇者をも恐れさせた。
- 『儀装』を用いない直接戦闘は不得手だが、カムシン自身も無双の怪力を持つ。フレイムヘイズの性質上、長寿は実力の証であり、最古のフレイムヘイズであるカムシンの戦闘力は現代でも名高い。
- 長い歳月のうちにフレイムヘイズとして精神が昇華した「シャナ以上に使命に純粋なフレイムヘイズ」。表面上は穏やかな少年だが、内面はかなり老練としている。感情に乏しく事務的で、冷淡に見られがちだが、自身の感情が表に出にくいだけで他者を思いやる気持ちや感情への理解は深い。しかし何よりフレイムヘイズの使命を優先するため、必要ならば他者が抱く感情を利用したり容赦なく切り捨てたりできる冷徹さも持ち併せる。本人の回想によると、かつては「相当、気の短い方」で現在は「恐らくは余程マシになっただろう」とのことだった。
- 喋り始めに「ああ」とつける癖があり、誰に対しても敬語で喋る。
- 中世の『大戦』には参加していないが、マティルダとは知己の仲。『大戦』最終決戦の数年前には、フレイムヘイズの駐屯地でゾフィーたちの会議に参加していた。その後はピエトロやヤマベと行動を共にしていた模様。
- 人間時代は「とある暑い国(北アフリカ)」の王子であった。幼少の頃、ある女性の“徒”と出会い交流するうち、“存在の力”を感じ取れるようになり、また彼女と愛し合うようになる。しかし「カムシンのため」に父王を喰らおうとした彼女と戦うことを選び、殺されそうになったところで契約した。以後逃げた“徒”を追い続け数百年後に再会、互いに愛し合いながら憎み合って戦い、壮絶な死闘の末に討滅した(VI巻、XVII巻より)。
- 最古のフレイムヘイズの一人として、数千年前に起きた“祭礼の蛇”を『久遠の陥穽』に放逐した『神殺し』の戦いにも、『棺の織手』ティスらと共に参戦していた。
- 本編では、大きな歪みを感知し『調律』のため7月に御崎市に現れた。その際、『調律』に必要な「その土地で生まれ育った人間」として吉田一美を選び、彼女が“紅世”と関わるきっかけを作った(VI巻)。その直後、襲来した“探耽求究”ダンタリオンの実験を、悠二やシャナ達と共闘して阻止した。このとき、悠二とシャナが佐藤や田中に正体を明かすきっかけにもなった。また悠二からは「絶対に好きになれない奴」とおもわれた(VII巻)。
- 翌年1月、フレイムヘイズ兵団の総指揮官『震威の結い手』ゾフィー・サバリッシュの依頼を受けて(XVI巻)御崎市を再訪。『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルによるシャナ奪還作戦を有益と判断し、協力を承諾する(XVII巻)。
- 対[仮装舞踏会]戦では、ヴィルヘルミナやレベッカと三人にして六人で『天道宮』を通じて『星黎殿』へ侵入。レベッカと共にシャナ奪還作戦の陽動を担当、シャナが幽閉から逃れるきっかけを作る。また『神門』と『秘匿の聖室』を守っていた『マグネシア』が消失した直後、『秘匿の聖室』を破壊し『神門』の存在をこの世に知らしめた。その後シャナたちと合流し、『神門』の正体や“祭礼の蛇”坂井悠二たちの居場所を知ると、緊急性の高さに勘付きシャナたちと共に『神門』に突入する(XVIII巻)。
- そして『神門』と“祭礼の蛇”神体を繋ぐ『詣道』の途中で待ち伏せていた“壊刃”サブラクと遭遇。“祭礼の蛇”神体帰還を阻止すべくシャナを先へ行かせ、自身はヴィルヘルミナやレベッカと共にシャナへの追撃を阻むべく、サブラクと交戦する。しかしサブラクの能力特性のため『儀装』の本領を発揮できず苦戦を強いられ、敗北は時間の問題という状況の中で時間稼ぎの死闘を演じる。そこへ復活した“祭礼の蛇”神体が現れ、サブラクが戦いを放棄したため、そのままサブラクを両界の狭間に落とし討滅した。そしてシャナと合流した後、『詣道』に漂う最古のフレイムヘイズたちの成れの果てたる色付く影の助力でその場を離脱し、“祭礼の蛇”神体たちより一足早く『神門』を抜けてこの世に帰還した(XIX巻)。なお『神門』を抜ける直前、助力してくれた色付く影の一人がかつての旧友(当人の形容するところの、「弾け躍る大太鼓」の契約者である「闇を撒く歌い手」)らしきことに気づき、密か微かに悲痛の表情を作った。
- 直後、この世に帰還した“祭礼の蛇”坂井悠二の大命宣布によってフレイムヘイズ兵団の敗北が決定的になると、兵団の撤退を援護すべく参戦。レベッカと共に“呻の連環”パイモンを討滅し、マージョリーに貰った囮の『天道宮』で敵軍を撹乱しながら戦場を脱出した(XX巻)。
- フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、ニューヨークでシャナたちと合流しており、シャナが『大地の三神』の同行を取り付けるのを見届けた。その後、飛行機で日本に移動する。御崎市決戦では、(はっきりとは描写されていないが)[百鬼夜行]に『真宰社』内部へ密かに侵入させてもらい、基部に『カデシュの血印』をマーキングして破砕、瓦礫の巨人を作り出した。これによって『真宰社』は倒壊寸前まで追い込まれるが、シュドナイが巨大化させた『神鉄如意』が芯柱として支えることで阻止される(XXI巻)。『約束の二人』と[百鬼夜行]の逃走の際に合流し、その護衛に当たるが、逃走用の“燐子”の車が消滅した為、押し寄せる多数の“徒”の前に盾として立ち塞がる。新世界『無何有鏡』の完成までその場を死守するも、『揮散の大圏』の一斉消滅によって半身を消失するなどダメージは激しく、愛し憎んだ“徒”を想いながらシャナや一美らに看取られ、「あぁ、麦わら帽子なくしてすみません」と言い忘れたことを心残りにしつつも消滅した(XXII巻)。
- アニメでは第1期から登場。“徒”に襲われないように=封絶内でも動けるようにと、神器“サービア”の飾り玉の1つを吉田一美に渡していた。アニメ第2期では、パリの外界宿でヴィルヘルミナにフィレスの生存と目的を告げた。
- “不抜の尖嶺(ふばつのせんれい)”ベヘモット[Behemoth]
- 声 - 宝亀克寿
- カムシンと契約している男性の“紅世の王”。炎の色は褐色。
- 枯れた老人のような穏やかな口調で話すがカムシンに劣らず事務的かつ冷徹な性格で、『逆転印章』発覚の際には、状況を早くに理解していれば、この世のバランスのために人間の犠牲を無視して御崎市を破壊していたとも発言している、「優しく見える非情」。「ふむ」と最初に言うのが口癖。
- 最終巻でカムシンが戦死したことで、“紅世”へ帰還した。そして、創造された新世界『無何有鏡』へ渡り来て、秩序派の“王”の一人としてシャナ(とアラストール)と再会した模様(外伝『ホープ』)。
- アニメでは第1期から登場。
- 類似の名に旧約聖書の悪魔ベヘモス(ベヒモス)がある。
- マティルダ・サントメール [Mathilde Saint-Omer]
- 声 - 岡村明美
- シャナの前にアラストールと契約していた女性のフレイムヘイズで、先代の『炎髪灼眼の討ち手』。V巻で存在が明かされ、X巻で登場。『炎髪灼眼の女丈夫』の異名を持つ。16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦当時、欧州にて名実共に「当代最強」と謳われたフレイムヘイズだったが、その最終決戦にて死亡した『大戦の英雄』の一人。
- 外見は20歳前後(X巻巻末のラフスケッチメモでは、千草より若く吉田より年長、というイメージらしい)の若い女性で、炎髪灼眼の姿となっていない時の、素の髪と瞳の色は不明(『Eternal Song』の描写では赤系統と見える)。神器“コキュートス”は、黒い宝石に金の輪を付けた左手中指にはめる大振りな指輪の形をしている。シャナのペンダント型の神器“コキュートス”もこれを参考にしている。『夜笠』はマント状。
- 優れた剣技の使い手であると同時に、アラストールの強大な力を自在に操る技量の持ち主。固有の自在法『騎士団(ナイツ)』で、数百の炎の軍勢を顕現させる事ができる。この炎の軍勢は一体一体が並みのフレイムヘイズと同等の力を持っており、マティルダの指揮に応じて戦う。その形状や用法に制限はないと思われ、槍衾や弓矢を持った腕だけなど部分的に顕現させたり、軍勢をそのまま爆発させたり、マティルダそっくりの姿を取らせたりできる。また、この能力の一端として自身が振るう大剣、盾、矛槍などの武具や、乗騎となる悍馬も炎で顕現させていた。この自在法は、マティルダにとっての討ち手としての強さのイメージが「武装した自身を戦闘に敵陣に斬り込む騎士の軍団」だったことから編み出されている。原作において、『ラビリントス』内で発動した際の描写では、文字通りの騎士の他に、鳥や獣、怪物まで混ぜた異形の軍団となっていたが、その後の場面では騎士のみが描写され、『Eternal song -遙かなる歌-』では騎士型以外は登場しなかった。この自在法はマティルダの知覚できる範囲内にしか展開できないため、その外からの不意打ちには対応できないという弱点がある(大抵の場合その部分はヴィルヘルミナがフォローすることで戦闘を成立させている)。
- ちなみに左利きらしく、右手には盾をつけている。
- 戦いに喜び(生きている快感)を見出す凛々しい女武人。戦いでは常に全力を尽くし、最善の手段であれば死をも辞さず、中途半端を何より嫌う。「フレイムヘイズとしての生き方」が、自身の追い求める最も理想的な生き方であった(人間としての在り方とフレイムヘイズという存在が一致していた)ことから、フレイムヘイズであることに至福を見出していた「変わり者」。当時の女性にしては淑女らしからぬじゃじゃ馬だが、周囲の者を惹きつける天性のカリスマの持ち主でもあった。
- 契約相手であり最大の理解者でもあるアラストールとは相思相愛の仲。また宿敵である“紅世の王”・“虹の翼”メリヒムにも愛されていたが、自身の愛を押し付けマティルダを理解しない彼に振り向くことはなかった。
- 親友のヴィルヘルミナなど、数多くの人の心に大きなものを遺した。彼女の「天下無敵の幸運を」という言葉は、数百年を経た現在もアラストールやヴィルヘルミナの心に残っている。
- 人間時代の詳しい経歴は不明だが、何らかの理由で処刑されそうになったらしい描写が見られる。また、その剣技や固有の自在法『騎士団』から、何らかの軍団の指揮官であった可能性が高いものの、真偽は不明。
- 討ち手となってからは東方で戦っていたが、15世紀末、[とむらいの鐘]が起こした『都喰らい』の直後、東方から駆けつけ敵将“戎君”フワワを討滅。“虹の翼”メリヒムや『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルと出会ったのも、この頃である。その後も先頭を切って[とむらいの鐘]と敵対し、フレイムヘイズの旗頭となってその結束に大きな役割を果たした。
- 16世紀初頭、ヴィルヘルミナと二人で[巌楹院]を含めた六つの“徒”の大組織を壊滅させた。『小夜啼鳥』争奪戦では宝具の奪取こそ許したものの、“天凍の倶”ニヌルタを討滅。対[とむらいの鐘]の決戦となった後の『大戦』においては、『都喰らい』で巨大な存在と化したアシズを討滅、『壮挙』を阻止するための打開案を求め焦っていたところに、アラストールからブロッケン要塞に乗り込んで“天破壌砕”を発動させ、顕現したアラストールがアシズを滅ぼすという提案を持ち出されてこれに乗り、ヴィルヘルミナと共にガヴィダの協力を取り付けて[とむらいの鐘]の拠点であるブロッケン要塞へ直接突撃。待ち構えていたメリヒムたちと対戦し辛くも勝利するが、チェルノボーグの不意打ちを受け致命傷を負う。満身創痍の身で“棺の織手”アシズと対峙し、彼の『壮挙』を阻止すべくアラストールを神威召喚、その顕現に耐えられず死亡した(X巻)。
- 幼少期のシャナは、フレイムヘイズとしての教育の都合上、彼女の素晴らしさや見事さなどは聞いていたものの、具体的に彼女がどんな戦い方をしていたかや、どうして亡くなったかは知らなかった。死因は契約直前にアラストールに聞かされ、その後に戦い方も御崎市でのフレイムヘイズの能力の上達で「参考」として聞かされるようになった。
- アニメ第1期および第3期で、ヴィルヘルミナの回想の中に登場。なお、0巻収録のパロディ「しんでれらのしゃな」にも台詞だけで出演している。
- ゾフィー・サバリッシュ[Sophie Sawallisch]
- 声 - 勝生真沙子
- 『震威の結い手(しんいのゆいて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。初登場はX巻。『肝っ玉母さん(ムッタークラージェ)』の異名を持つ。高い戦闘力を誇り、長い年月を現代まで生き延びる女傑で、16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦で活躍した「大戦の英雄」の一人。『四神』からの呼称は『天空の槌』。
- 40過ぎの丸顔の中年女性で、修道女の姿をしている(SII巻『ゾートロープ』を見る限り、剃髪はしていない)が、十字架は身に着けていない。神器“ドンナー”は蒼い十字の星型で、ゾフィーが被るベールの額に刺繍されている。
- 雷を操る。紫電をまとい敵に飛び蹴りを食らわせるほか、雷を推進力にした高速飛行(に近い大ジャンプ)も可能。長時間闘うことは出来ないものの、瞬発的な戦闘力は群を抜く。また、普通に手先から電撃を放って接近戦を行うことも可能。
- 軍の指揮官としても優れた戦略・戦術家で、対[とむらいの鐘]戦では戦力差を埋めるため近代兵器を用いた戦術や布陣などを指示し、一定の戦果を上げている。
- 肝っ玉母さん(ムッタークラージェ)の異名に違わない、厳しくも優しく思いやりのある面倒見の良い母親のような性格。基本的に穏やかでおおらかだが、優れた判断力や決断力で周囲を黙らせる押しの強さも持つ。一方で子供のような稚気も漂わせ、いたずら心から他人をからかうような言動も見られる。また、出撃やここ一番では「アーメン・ハレルヤ・この私」と「自分に願う」ための祈りを捧げるのが習慣。
- シャナが『天道宮』から旅立って最初に出会ったフレイムヘイズで、シャナが「師」と仰ぐ一人。先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダやヴィルヘルミナとも親交があった。
- 周囲からの信頼が厚く、対[とむらいの鐘]戦で兵団の総大将となっていたことからも、幅広い交友関係がある模様。当時「濫造」されたフレイムヘイズは「ゾフィーの子供たち」と称されている。後述のセシリアもこの一人。
- 人間時代には夫に二人の我が子を殺され(SII巻『ゾートロープ』より)、その他諸々の権力闘争を嫌って修道院に入ったという経歴を持つ元修道女(XIII巻より)。
- 16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦では総大将の任を満場一致で押し付けられ参戦、その策略でカール・ベルワルドに敵将“焚塵の関”ソカルを討滅させたほか、自らも出陣し敵将“巌凱”ウルリクムミを討滅した(X巻)。
- 20世紀初頭の対[革正団]戦争で、補佐役にして生涯の友たる二人のフレイムヘイズ(ドゥニとアレックス)を失い、その後は隠居同然の暮らしをしていた。
- 20世紀末、フレイムヘイズとなった直後のシャナと出会い、社会性に欠ける彼女に最低限の一般常識と女性のたしなみを教えた(SII巻『ゾートロープ』)。以降、直接顔を合わせる機会は少ないものの、外界宿を通じて手紙のやり取りをするなど交流が続いていた。
- 本編開始後も隠居中であったが、8月頃に世界の外界宿を主導していたドレル・クーベリックと彼の率いる幕僚団『クーベリックのオーケストラ』(VIII巻)、同じく重要な外界宿の顔役であったピエトロ・モンテベルディと彼の主宰する運行管理者『モンテベルデイのコーロ』、その他の世界各地の主要な外界宿が相次いで失われたため、生き残った幹部から、10月頃に外界宿の指導者として半ば無理やり招聘された(XIII巻より)。
- しかし、ドレルを失った外界宿ではフレイムヘイズ側と人間側の内部対立が起きていたため、その指導力を発揮できず、主要外界宿の喪失を食い止められずにいた。翌年1月、日本を除いた東アジア管区のほぼ全てのフレイムヘイズを喪失、襲撃者の正体が[仮装舞踏会]と確定し未曾有の危機に陥ったことで、ようやく外界宿組織の全権を掌握(XVI巻)。対[仮装舞踏会]戦に向け、全世界から残存する精鋭の討ち手らを召集し、再び「フレイムヘイズ兵団」を編成する(XVII巻)。
- 対[仮装舞踏会]戦では、発信者不明の電文とその検証により[仮装舞踏会]の本拠地『星黎殿』の位置を特定するという幸運を得て、[仮装舞踏会]主力軍の「敵戦力を事前に削ぐ陽動作戦」を逆手に取り、四千余名にものぼる兵団を自ら率いて、守備が手薄になった『星黎殿』への大規模強襲降下作戦を敢行。『星黎殿』至近への降下までは成功したものの、『星黎殿』直衛軍の予想以上の反撃によって進撃は思うように進まず、戦況は膠着状態に陥った(XVIII巻)。
- その後『星黎殿』の墜落とシャナの『神門』突入前の宣布にも助けられ、苦闘の末に『星黎殿』直衛軍を突破、同軍総司令官“淼渺吏”デカラビアを討滅したが、直後に[仮装舞踏会]主力軍が到着し戦局が悪化。打開のためにシャナたちの犠牲を承知で『神門』破壊に及ぶも、死亡したと思われたフェコルーの『マグネシア』に阻まれ失敗(XIX巻)。更に帰還した“祭礼の蛇”坂井悠二が行った2度の大命宣布を止められず、兵団が総崩れになる最悪の結果を招いてしまう。その後は残存兵力の大多数を『天道宮』に撤退させ、自身は囮の『天道宮』を伴って随伴する討ち手たちと共に戦場を脱出した(XX巻)。
- フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、チューリヒ外界宿総本部に帰還。敗戦と“祭礼の蛇”が宣布した『大命』によって外界宿幹部が混乱し不毛な論戦を続ける中、総司令官として沈黙を守ったまま同席し続ける(XXI巻)。その後、御崎市決戦の報とシャナの表明文がチューリヒ総本部に届いたことで、総司令官の立場からシャナ個人の作戦に協力し、外界宿幹部が作戦へ干渉するのを防ぐ囮役であったことが発覚、総司令官職を罷免され、隠居生活に戻った(XXII巻)。
- アニメでは第3期に登場。
- “払の雷剣(ふつのらいけん)”タケミカヅチ[Takemikazuchi]
- 声 - 野島裕史
- ゾフィーと契約している古き男性の“紅世の王”。炎の色は眩い紫電。
- 古来より両界を行き来している歴戦の勇士であり、明哲な知恵者でもある。常に冷静で取りすましており、丁寧な口調ながら、的確すぎる故に辛辣な印象を与える。通称が和風なのは、かつて日本で(現在の契約者、ゾフィー・サバリッシュ以前のフレイムヘイズと)契約した際のものを使っているためである。『四神』からの呼称は『静かな稲妻』。太古の“祭礼の蛇”との戦いにも、カムシンに『稲妻の剣士』と形容された当時の契約者と共に参戦した。
- アニメでは第3期に登場。
- 日本神話の雷神にタケミカヅチがいる。神器名の「ドンナー」はドイツ語で雷鳴の意味。
- アレックス[Alex]
- 『殊態の揺り手(しゅたいのゆりて)』の称号を持つフレイムヘイズで、ゾフィー・サバリッシュの補佐役で生涯の友。16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦にも幕僚として共に参加した(X巻)。ぞんざいな口調で話す小男。神器“コルタナ”は剣型。20世紀前半の対[革正団]戦争で戦死した。
- 対[とむらいの鐘]戦を描いた外伝コミック『Eternal song -遙かなる歌-』によると、ドゥニと共に「充電期間」中のゾフィーを護衛していたとのことだった。
- “環回の角(かんかいのつの)”ハーゲンティ
- アレックスと契約していた“紅世の王”。炎の色は支子色。
- 20世紀前半の対[革正団]戦争でアレックスが戦死したことで、“紅世”へ帰還したと思われる。
- ソロモン72柱の悪魔の一柱にハーゲンティという同名の悪魔がいる。
- ドゥニ[Denis]
- 『憑皮の舁き手(ひょうひのかきて)』の称号を持つフレイムヘイズで、ゾフィー・サバリッシュの補佐役で生涯の友。16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦にも幕僚として共に参加した(X巻)。丁寧な口調で話す背の高い男。神器“リュパン”はマント型。20世紀前半の対[革正団]戦争で戦死した。
- 対[とむらいの鐘]戦を描いた外伝コミック『Eternal song -遙かなる歌-』によると、アレックスと共に「充電期間」中のゾフィーを護衛していたとのことだった。
- カール・ベルワルド[Karl Berwald]
- 『極光の射手(きょっこうのいて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。X巻に登場。単独での高速戦・乱戦では屈指の強さを誇る、数百年を生きた強力な歴戦のフレイムヘイズ。フレイムヘイズによくみられる傲慢な性格で、人に従うことを嫌う。倒した“徒”の数ならマティルダやヴィルヘルミナをも上回った。
- 外見は気の強そうな青年。
- 巨大な鏃型の神器“ゾリャー”に乗り、その両脇から展開する極光の翼を流星に変えて放つ『グリペンの咆』と『ドラケンの哮』が最大の攻撃。対[とむらいの鐘]戦を描いた外伝コミック『Eternal song -遙かなる歌-』では、二代目のキアラと同様に極光の弓矢を使う場面も見られた。
- 『まずはブチ当ってから対処する』という戦闘スタイルで“紅世の王”を含めた数々の敵との戦闘を勝ち抜いてきた。高い実力のためか警戒心は薄く、慎重とは言い難い。『Eternal song -遙かなる歌-』での訓練場面では「我が部隊に必要なのはただ一つ、突撃だ!」とまで豪語していた。
- 人間時代は「北の国(北欧?)」の公子であり、女たらしで傲慢でせっかちであった。生まれて初めて本気で恋したフレイムヘイズの自在師を“紅世の王”に殺された怒りから契約した(XV巻より)。
- 16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦では、その性格や実力から兵団の副将に任命され、開戦直後に敵将“焚塵の関”ソカルを討滅する功を挙げた。しかし集団戦の経験が乏しかったうえに指揮官としての自覚がなく、自身のみで戦況を変えられるという慢心から、敵の戦略に嵌り兵団から引き離され孤立。“千変”シュドナイとの一騎討ちとなり、予想を遥かに上回るシュドナイの戦闘力に対処できず、死亡した(X巻)。
- “破暁の先駆(はぎょうのせんく)”ウートレンニャヤ / “夕暮の後塵(せきぼのこうじん)”ヴェチェールニャヤ[Outrenniaia/Vetcherniaia]
- 声 - 葉山いくみ
- 双子の女性の“紅世の王”だが、2人として存在している訳ではなく、1つの体に2つの意思が存在している一心同体の姉妹という他に類を見ない形の“王”(人間で言うと二重人格に近い)。炎の色はオーロラ。『四神』からの呼称は『翻る双面』。
- 彼女たちと契約した『極光の射手』最強の自在法『グリペンの咆』と『ドラケンの哮』は、破壊力において、メリヒムの『虹天剣』にこそ及ばないものの、連射や誘導など応用が自在に利き、近距離での直接攻撃も可能。この自在法を“ゾリャー”に乗っての高い機動力を生かした高速戦闘と併せる事で、近遠問わずに戦う事も可能という、汎用性に非常に長ける強力な討ち手となりうる。
- ウートレンニャヤは艶っぽい女性の声、ヴェチェールニャヤは軽くはしゃいだ少女の声をしている。自身の炎の色であるオーロラ色の美しさを認めた相手と契約する、契約者であるカールやキアラを誇る発言が多いなど、揃って自負心が強い。
- 契約者であるカールともども浅慮な性格で、カールの強さを誇りに思う余りに油断し、オルゴンの策に嵌りつつあった彼の失策を咎めるどころか一緒に楽しんでいた。それが仇となり、カールと共にシュドナイの『神鉄如意』に潰されて“紅世”へ帰還した。
- その後、19世紀末に再びフレイムヘイズとして、二代目『極光の射手』キアラ・トスカナと再契約した。咎める事無く暴れさせた事でカールを死なせてしまった事を後悔しており、キアラは大事に育てている。同性であるためか、キアラを「女性として」かばう発言もしばしば見られる。
- アニメでは第3期に登場。
- スラヴ神話に夜明けのオーロラ、夕暮れのオーロラをそれぞれ司る同名の神が存在する。神器名の「ゾリャー」は二人の神に共通する名で、オーロラを意味する。
- フランソワ・オーリック[François Auric]
- 声 - 松岡禎丞
- 『姿影の派し手(しえいのはして)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。現代の『大戦』ではフレイムヘイズ陣営の総司令官ゾフィー・サバリッシュの副官を務めていた。名前はX巻で登場していたが、本人の登場はXVII巻からである。
- 長髪で目元を覆った細身の青年。探検家のようなサファリルックに多くのポーチを腰に下げ、大きな壷型の神器“スプレット”を背負うという奇抜な格好をしている。
- 水を操る能力を持ち、川や水脈や雪等を利用した遠距離への干渉と探知、遠話に加え、ある一定の範囲内の天候の制御まで行う事ができる。さらに、その天候操作という技術に関連して、各種データを元にした、人間の科学力では為しえない精度での天候予測まで行える。
- やや落ち着きのない慌て者で、契約相手の“布置の霊泉”グローガッハによく突っ込まれる。対[仮装舞踏会]戦において無名のフレイムヘイズと同様の反応をたびたび見せており、作中では比較的「平凡」なフレイムヘイズである模様。
- 本編登場以前の経歴は不明だが、対[とむらいの鐘]戦時から生き延びており、X巻の終盤に名前だけ登場している。その後は、時期は不明だが外界宿に長年勤めていた模様。
- 本編では、対[仮装舞踏会]戦でゾフィーの副官を務め(XVII巻)、持ち前の正確な天候予測で『星黎殿』強襲降下作戦のタイムスケジュール立案に尽力し、降下成功の一翼を担った。降下後はゾフィーと共に進軍し、その優れた探知能力で兵団全体の侵攻を補助する(XVIII巻)。戦況の膠着後も探知能力で周辺地域を警戒し続け、“淼渺吏”デカラビア討滅直後に西部方面主力軍と南方防衛線の部隊の接近をいち早く感知、戦況の悪化に動揺する。更に『朧天震』が発生し、“祭礼の蛇”神体の帰還が近いことを察知したゾフィーが『神門』の破壊を決断した際には、驚きを隠せなかった(XIX巻)。しかし『神門』が破壊されなかったことと、帰還した“祭礼の蛇”坂井悠二の大命宣布に激しく動揺し、2度目の宣布で完全にパニック状態に陥ってしまう。その後、ゾフィーに張り倒され正気を取り戻すと、救出された数百人の討ち手たちと共に『天道宮』へ撤退した(XX巻)。
- フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、ゾフィーの副官として彼女と共にチューリヒ外界宿総本部へ帰還、その立場を利用して密かにシャナたちへ情報を提供しつつ、幹部会議の場で不毛な論戦を悄然と聞いていた(XXI巻)。その後、ゾフィーの罷免と共に副官を解任された(XXII巻)。以後の動向は明らかでないが、グローガッハが「高みの見物」と言っており、新世界『無何有鏡』完成後もこの世に残った(XXII巻)。
- シャナたちが新世界へ旅立った後は、ダンたちと共にこの世(旧世界)の外界宿で残務処理を行っている(外伝『フューチャー』)。
- アニメでは第3期に登場。
- ティス[Tis]
- 『棺の織手(ひつぎのおりて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。カムシンは「金環頂く乙女」と形容した。
- 蒼い髪をした少女。神器は頭に嵌める金の輪型の“無名の金環”。戦闘時にはこれが天使の環のように浮き上がり、背中に光の翼が現出する。
- アシズの能力である閉鎖空間『清なる棺』を対象の体の各部に個別出現させ、分割・爆砕するという戦法を使う。本編登場時には既に亡くなっており、戦闘シーンは『Eternal song -遙かなる歌-』におけるアシズの回想で描かれたのみである。
- 最古のフレイムヘイズの1人で、“祭礼の蛇”を『久遠の陥穽』に放逐した『神殺し』の戦いにも参加していた。信心深い少女で、契約している“冥奥の環”アシズを「天の使い」と崇め慕っていた。遥か昔、最初期のフレイムヘイズたちを率いて数多の“紅世の徒”の組織を壊滅させた強力な討ち手だったが、“徒”と戦い、力を使い果たしたところに、その力を恐れた人間の裏切りと凶刃を受け、非業の死を遂げた。その後は力尽きた討ち手の宿命として消滅するはずだったが、“王”として顕現したアシズによってその体は『清なる棺』へと保存され、ブロッケン要塞「首塔」の中枢部に安置されていた。『壮挙』に当たって『小夜啼鳥』に起動させた『大命詩篇』によって存在の一部を分解され、アシズの存在の一部と共に『両界の嗣子』へと変換されて行ったが、最終局面において顕現したアラストールにより、『大命詩篇』や『両界の嗣子』ごと握り砕かれた。
- アシズを深く強く恋い慕っており、彼女が死に際に遺した夢がアシズを『壮挙』への道へと歩ませた。
- アニメでは第3期に、アラストールの回想の中でアシズと共に姿だけ登場した。
- 初期設定は「アシズの契約者」であること以外にほとんど存在せず、文章のイメージを許にいとうのいぢ氏がビジュアル化したという経緯がある。
- “冥奥の環(めいおうのかん)”アシズ[Asiz]
- ティスと契約していた男性の“紅世の王”。炎の色は青。
- フレイムヘイズのシステムが誕生した最初期の頃に、両界のバランスを守るという使命に燃えてこの世へと渡って来た。しかし、契約者ティスの死と共にフレイムヘイズから離反する。詳細は[とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)]を参照の事。
- アニメでは第3期に、アラストールの回想の中でティスと共に姿だけ登場した。
- キアラ・トスカナ[Chiara Toscana]
- 声 - 茅野愛衣
- カール・ベルワルドに続く二代目『極光の射手(きょっこうのいて)』である、女性のフレイムヘイズ。初登場はXV巻。『四神』からの呼称は『閃く矢』。
- 見た目は15歳程度のおさげ髪の少女。神器“ゾリャー”は、通常は二個一組の鏃型の髪飾りだが、『極光の射手』真の力を発揮する際には合体して、人間が乗れるほど巨大な鏃型となる。
- 『極光の射手』の真の力を振るえない頃は、二個の“ゾリャー”を両端にした極光の弓を作り出し、そこから極光の矢を放つ戦闘スタイルであった。真の力を発揮する際には、先代のカール同様“ゾリャー”を駆って『グリペンの咆』と『ドラケンの哮』を放つ。
- 優しく生真面目なしっかり者だが、やや口うるさく世話焼きな面も見られる。契約してそれなりの期間が経つが、精神年齢も少女のままに近い。
- “絢の羂挂”ギゾーのフレイムヘイズ『鬼功の繰り手』サーレ・ハビヒツブルグを師匠としており、彼らを強く慕っている。サーレの手を握ると心が落ち着く。
- 19世紀末、早くに母をなくし父一人娘一人の家庭で育つ。父が“徒”に殺される間際に契約したが、見えたオーロラの美しさに見惚れて父を見殺してしまったため、自身の炎の色であるオーロラ色の極光に強烈な自己嫌悪と罪悪感を抱いてしまう。こうしたトラウマから、契約したての頃は事あるごとに暴走していたが、サーレとギゾーに暴走を押さえ込まれて以降、彼らを師匠と慕うようになる。彼らと行動を共にすることで落ち着きを取り戻し、『極光の射手』の真の力を使えないまま戦歴を重ねていった。
- 契約から約10年後の1901年、ハワイ共和国ホノルルの外界宿(アウトロー)再建のために、サーレたちと共にハワイを訪問。現地で活動する[革正団]サラカエル一派との戦いを通じてトラウマを克服し、『極光の射手』の真価を発揮して[革正団]サラカエル一派の活動を阻止した(XV巻)。
- 現在ではサーレと恋人同士になっており、本人たちは隠しているらしいが、息の合ったコンビネーション以上に痴話喧嘩やペアルックを着るなど、傍目にもそうと分かるほど仲が良い模様。
- 本編では対[仮装舞踏会]戦に向けてフレイムヘイズ兵団に加わり、サーレと共に『犀渠の護り手』ザムエル・デマンティウスの代理として総本部のチューリヒへ来たが、痴話喧嘩で逃げたサーレを追って地中海のあたりに出向く(XVII巻)。サーレと合流後は追撃部隊の先鋒として、本拠地『星黎殿』への撤退を急ぐ[仮装舞踏会]ギリシア方面軍・エジプト方面軍との戦闘に参加した(XIX巻)。その後は輸送機で主戦場に向かう途中、“祭礼の蛇”坂井悠二の大命宣布を聞かされフレイムヘイズ兵団の敗北を悟らされるも、自身の役目を果たす為に戦い続ける事を決断、動揺するサーレを立ち直らせた。その後、サーレと共にマージョリーの誘導標識によって高速で中国南西部の戦場に接近し、『グリペンの咆』『ドラケンの哮』、そして“ゾリャー”の突撃でシュドナイに不意打ちを加えた後、シャナとヴィルヘルミナとマージョリーを拾い上げて戦場から離脱して香港へと向かった(XX巻)。
- フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、飛行機でニューヨークに移動する。そして、J・F・ケネディ空港でシャナと共に到着したサウスバレイとウェストショアを出迎える。その後、『イーストエッジ外信』でシャナが『大地の三神』の同行を取り付けるのを見届けた。御崎市決戦では、“ゾリャー”にシャナとヴィルヘルミナとサーレを乗せて、南方から高速で突入する。守備隊のオセが操る幻術に取り巻かれるが、シャナの一撃により難なく突破して『真宰社』へ到達する。そして、頂上に向かうシャナとヴィルヘルミナと別れて、『真宰社』防衛機構である数十体の鉄巨人とマモンを相手に空中戦に入った(XXI巻)。
- その後、ダンタリオン討滅に逸るサーレをたしなめて、“ゾリャー”で『真宰社』を周回しながら、サーレのダンタリオンへの逆撃の罠を作る支援をした。それが成功し、唖然となるマモンに致命傷となる一撃を与えたが、突如湧き上がった『ダイモーン』の靄の前に、追撃はできなかった。新世界『無何有鏡』が創造された後は、『天道宮』をシャナたちの元まで誘導してきた。その後、サーレたちと共に新世界へ旅立った(XXII巻)。
- 新世界へ渡り来た後は、“紅世”に関する記憶や知識が再現されなかったことで混乱する新世界の外界宿の再編成の為に、暫定首班の座に就任させられたサーレの助手として、チューリヒで書類仕事に忙殺されている。しかし、時折仕事から逃げ出したサーレを追っては捕まえて連れ戻しているなど、相変わらずである模様(外伝『ホープ』)。
- アニメでは第3期に登場。
- サーレ・ハビヒツブルグ[Seere Habichtsburg]
- 声 - 松本忍
- 『鬼功の繰り手(きこうのくりて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。本人の初登場はXV巻だが、名前や称号はそれ以前から登場している。数々の武功を挙げた歴戦のフレイムヘイズで、人形使いとして有名。
- ひょろ長い体格のガンマン風の装いで、見た目は30歳前後。神器は二丁一組の“レンゲ”と“ザイテ”で、十字型の手板(操作板)型。
- 戦闘時には、“レンゲ”と“ザイテ”から不可視の力の糸を出し、この糸に繋いだあらゆる物を操る。単なる瓦礫を“燐子”の攻撃も受け止める強固な人形へと変えたり、海水から巨人を作り出す、相手の自在法そのものに糸を繋ぎ操るなど、サーレの技巧と合わさって強力な力を発揮する。
- 一見不真面目で飄々としているが、その実したたかな性格。契約した経緯から通常のフレイムヘイズのような「復讐心」は持ち合わせていないが、フレイムヘイズである自身の役目は心得ている(「日々に飯を喰らうがごとく平然と」使命を果たしている)。
- 「弟子」のフレイムヘイズ『極光の射手』キアラ・トスカナに対しては、口下手でデリカシーには欠けているものの、師匠として、また仲間として大切にしている。
- また「教授」こと“探耽求究”ダンタリオンはある意味で「恩人」であり、生みの親という事で「親父殿」と呼び、特段恨みは持っていない模様。しかし最終決戦では「アンタみたいに極め付きに危険な奴を向こうにはやれない」と叫んだようにその在り様や行動を危険視しており、フレイムヘイズとして彼の企みを何度も邪魔しており、ダンタリオンからは『停滞不敏の失敗作』として嫌われていた。誰もが関わりを避けるダンタリオンに積極的に関わるという意味では、まぎれもなく「変人」。
- 人間時代は大道芸人であり、親方やパトロンである貴族達から見捨てられ食い詰めていたところを、“探耽求究”ダンタリオンに勧誘され、生き延びるために彼の「実験材料」となった。その後『強制契約実験』によってフレイムヘイズとなり、他の被害者がフレイムヘイズの自覚を持たず次々に亡くなる中、フレイムヘイズとして戦い続ける極めて特異な存在となる。かつての正式名称は『我学の結晶エクスペリメント13261-合体無敵超人』だが、本人達は恥ずかしいネーミングという事で嫌がっている。
- 1901年、ハワイ共和国ホノルルの外界宿(アウトロー)再建のために、キアラたちと共に同地へ派遣され、そこで[革正団]“征遼の睟”サラカエル一派と戦いを繰り広げた(XV巻)。
- 本編では対[仮装舞踏会]戦に向けてフレイムヘイズ兵団に加わり、キアラと共に『犀渠の護り手』ザムエル・デマンティウスの代理として総本部のチューリヒへ来たが、痴話喧嘩で地中海のあたりへ逃げ出した(XVII巻)。キアラと合流後は追撃部隊の指揮官として、本拠地『星黎殿』への撤退を急ぐ[仮装舞踏会]ギリシア方面軍・エジプト方面軍との戦闘に参加した(XIX巻)。しかし、主戦場に向かう途上の輸送機内で“祭礼の蛇”坂井悠二の『大命』宣布に自身も気付かずに平常心を失う。キアラの励ましで何とか立ち直ると、彼女と共に高速で中国南西部の戦場に飛来して不可視の糸でシャナたちを拾い上げて撤退を援護し、シャナたちと共に戦場を脱出する(XX巻)。
- フレイムヘイズ兵団が大敗した半日後には、香港を経由してニューヨークで『大地の三神』と合流する。そして、シャナが彼らの同行を取り付ける間は、マージョリーと共にとある巨大で複雑な自在式の解体・走査を行っていた。御崎市決戦では、キアラの“ゾリャー”にシャナやヴィルヘルミナと同乗して、南方から高速で突入する。守備隊のオセが操る幻術に取り巻かれるが、シャナの一撃により難なく突破し、『真宰社』へ到達する。そして、頂上へ向かうシャナとヴィルヘルミナと別れて、教授が操る『真宰社』防衛機構である数十体の鉄巨人の攻略にかかる(XXI巻)。その後、苦戦しながらも遂に“探耽求究”ダンタリオンを討滅した。そして新世界『無何有鏡』が完成した後、キアラたちと共に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。
- 新世界へ渡り来た後は、混乱する新世界の外界宿の暫定首班に就任させられて、チューリヒで外界宿の再編成を行っているが、時折逃げ出しては助手になったキアラに連れ戻されている模様。また、抜け出した際にヴィルヘルミナに依頼されて、『両界の嗣子』ユストゥスが行う自在式構築に対する制御術式を一通り見繕ったりもした模様(外伝『ホープ』)。
- 名前の綴りは『灼眼のシャナノ全テ 完』より。フレイムヘイズとしては例外的に、悪魔の名を持っている模様。
- アニメでは第3期に登場。
- 虞軒(ぐけん)
- 声 - 慶長佑香
- 『剣花の薙ぎ手(けんかのなぎて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。XVI巻に登場。「東洋屈指の使い手」と謳われた強力なフレイムヘイズ。
- 玲瓏な美貌のスーツ姿の女性で、腰に巻いた紅梅色の帯に直剣型の神器“昆吾”を絡めている。
- “昆吾”を中核に全身を紅梅色の高熱の霞へと変化させ、“昆吾”での神速の刺突・斬撃や霞による攻撃や離脱など、変幻自在に戦う戦闘形態『捨身剣醒(しゃしんけんせい)』を持つ。回転させた“昆吾”に合わせて霞を回転鋸状に纏わせ、突撃して引き裂く攻撃が『捨身剣醒』の奥義である。
- (日本を除く)東アジアの外界宿を統べる人間の秘密結社『傀輪会』に所属する。ゾフィーとヴィルヘルミナの知己でもあった。
- “千変”シュドナイを古い通名の蚩尤(しゆう)と呼ぶ、古参のフレイムヘイズ。
- 世界各地で外界宿が襲撃される中、ドレル死亡の余波で混乱に陥った欧州外界宿への不信感から、『傀輪会』が独断で「謎の外界宿襲撃者」殲滅作戦を計画、その全兵権を預かり、集団戦に長けた東アジアのほぼ全てのフレイムヘイズを集めて総力軍を結成。しかし敵の思惑に嵌り、謎の外界宿襲撃者(=[仮装舞踏会])を上海外界宿総本部に誘き出し迎え撃ったため、一晩も持たずに総員殲滅されるという完敗を喫する。最期は、長年自分を慕っていた『傀輪会』の大老・項辛に引導を渡した後、敵軍を率いる“千変”シュドナイとの一騎討ちに敗れ、死亡した(XVI巻)。
- アニメでは第3期に登場。
- アーネスト・フリーダー[Ernest Flieder]
- 声 - 浜田賢二
- 『骸軀の換え手(がいくのかえて)』の称号を持つ強力な男性のフレイムヘイズ。本人の初登場はXVII巻。現在は東京外界宿の幹部となっている。何故か姓の「フリーダー」と呼ばれるのを好む。
- 金髪を短く刈った、眉目秀麗な長身の男性。神器“アンブロシア”は洒落た小ぶりの造花型。
- 土中に自在に潜って姿を隠しながら、自分の姿を精巧に模した土人形を数十体作り出す。人形は触れられると鉄鋲を撒いて爆発し、それによって攻撃する。本体の能力は身体の硬度変換であり、全身の衣服や造花までも硬化させられる。
- 常に冷静沈着で指揮官としては優秀だが、小細工を弄する狡猾な策士的性格の持ち主。
- [仮装舞踏会]の巡回士“驀地祲”リベザルとは旧知の間柄。
- 20世紀初頭に起こったハワイ諸島奪還時は制圧部隊の一員であった(XV巻より)。
- 本編では対[仮装舞踏会]戦を間近に控えた1月、単独行動を決意した『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルをフレイムヘイズ兵団へ引き込むため姑息な策を弄するが失敗、逆に東京外界宿の指揮官『輝爍の撒き手』レベッカ・リードの離反を招く。その後は兵団の総指揮官『震威の結い手』ゾフィー・サバリッシュの承諾を得て、東京総本部の指揮権を引き継いだ(XVII巻)。
- 対[仮装舞踏会]戦では、東部防衛線司令官として[仮装舞踏会]東部方面主力軍を迎え撃つ。敵将“驀地祲”リベザルの巧みな指揮と圧倒的な戦闘力により、わずか半日で陥落寸前まで追い詰められるが、本拠地防衛のため[仮装舞踏会]軍が撤退し始めたお陰で、辛うじて防衛に成功する(XVIII巻)。
- 二月の全世界の“徒”による日本大侵攻を前に、副司令オルメスとの協議の末に日本外界宿の構成員たちを連れて、日本から撤退した(XXI巻)。その後はゾフィーの要請を受け“笑謔の聘”ロフォカレの行方を捜索、天山山脈で接触する。そしてロフォカレに導きの神への“神託”を要請するものの、導きの神の特性から受け入れられず、ロフォカレによる導きの神の神意召喚“嘯飛吟声”に立ち会うこととなった(XXII巻)。
- シャナたちが新世界へ旅立った後は、この世(旧世界)の外界宿チューリヒ総本部に詰めて、日々勤めに精励している(外伝『フューチャー』)。
- アニメでは第3期に登場。
- レベッカ・リード[Rebecca Reed]
- 声 - 桑島法子
- 『輝爍の撒き手(きしゃくのまきて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。名前や称号は以前から登場していたが、本人の初登場はXVII巻。「爆弾女」「バカ爆弾」「利かん坊」「暴れ馬」「爆弾魔」などと呼ばれているが、百戦錬磨の強力なフレイムヘイズ。
- ショートヘアで細身の美人だが、目つきが悪く、ドスの効いた雰囲気を漂わせる。イラストでは歯がサメのようにギザギザに描かれている。神器“クルワッハ”は閉じた目の意匠が施された金色のブレスレット型で、レベッカの右手にはめられている。この“クルワッハ”の意匠の瞼は開閉できる。
- 着弾すると炸裂する光球状の自在法を使う他、“クルワッハ”の目から放たれる光線を当てた場所に現れ収束・爆発する瞳の紋章など、『爆弾』と称される自在法の使い手。一端は消えるが、効果範囲内の侵入者を探知し任意で爆破可能な閉じた瞳の紋章である爆弾の自在法『地雷』も使用する。掌から凄まじい光と音を発生させる、目くらましの自在法『爆閃』も使用する(外伝『ローカス』)。他に瞳の紋章を盾としたり、瞳を閉じることで周囲の爆発のエネルギーを取り込み自分の攻撃に利用する事も可能。全力で戦う際には“クルワッハ”を胸の前に浮かべ、瞳の紋章を展開する。自身の爆発から身を守るため、“クルワッハ”は常に鎧として機能しており、爆破の力に応じて防御力も上下する。“クルワッハ”自体のある部分が最も防御力が高い。
- こうした自身の能力を応用し、敵の攻撃を自身の爆破で相殺したり、敵の攻撃を取り込み爆弾の破壊力を上げたり、爆弾を小さく分裂させての広範囲を爆破したり、隠した紋章を時間差攻撃に利用したりといった技も持つ。
- 女性だが、一人称は「オレ」で乱暴な男性のような口調と性格の持ち主。気が短く大雑把で好戦的で、事あるごとにすぐに爆破を行うなど、一見するとその言動は物騒で乱暴で無計画だが、周囲の状況を的確に判断し対応する冷静さを併せ持ち、決して単純な猪武者ではない。他者への配慮や指導力にも優れ、当人は向いていないとしているが、部隊や組織のリーダーにもたびたび抜擢されている。好きな音楽はジャズ。またネーミングセンスが皆無に等しく、自在法につける名前は機能から拾ったそのままのものが大半。
- “壊刃”サブラクとの交戦経験があり、サブラクをして「歯応えがあった」と評された程の凄腕。
- ヴィルヘルミナやマージョリーとも旧知の仲で、御崎市を訪れる以前のシャナとも一度、戦いを共にした間柄。シャナのことを当時のシャナの自称から『贄殿の』という渾名で呼んでいる。『教授』ことダンタリオンの実験に巻き込まれてひどい目に遭わされた事があるらしく、彼の名前を聞いただけで顔が引きつっていた。新米当時の『極光の射手』キアラ・トスカナには、フレイムヘイズとしての精神の成長に関して助言を与えていた。
- 19世紀末期から20世紀初頭までは、ピエトロに頼まれフリーダーと共に海魔(クラーケン)達からハワイ諸島を奪還する制圧部隊のリーダーを務めていた(XV巻より)。
- 現在は東京外界宿の総指揮官となっていたが、1月に対[仮装舞踏会]戦に向けフレイムヘイズ兵団の一員として『震威の結い手』ゾフィー・サバリッシュの召集を受けていた。しかし、『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルの参戦を目論んだ『骸軀の換え手』アーネスト・フリーダーの姑息な策略を火種に外界宿の面々と(意図的に)決裂、旧友ヴィルヘルミナのシャナ奪還作戦に同行する(XVII巻)。その際「人質」となっていた佐藤啓作を助け、彼や『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーへの配慮も見せた。
- 対[仮装舞踏会]戦では、ヴィルヘルミナやカムシンと三人にして六人で『天道宮』を通じて『星黎殿』へ侵入。カムシンと共にシャナ奪還作戦の陽動を担当、『星黎殿』内部で守備隊指揮官“哮呼の狻猊”プルソンと一騎討ちになる。激しい攻防の末に重傷を負い、殺される寸前で奇跡的な幸運によりプルソンを討滅。シャナ達と合流して危機を脱し、未だ体を起こすことも出来ない状態ながらも、シャナ達と共に『神門』へ突入する(XVIII巻)。
- そして負傷から回復した頃、『神門』と“祭礼の蛇”神体を繋ぐ『詣道』の途中で待ち伏せていた“壊刃”サブラクと遭遇。“祭礼の蛇”神体帰還を阻止すべくシャナを先へ行かせ、自身はヴィルヘルミナやカムシンと共にシャナへの追撃を阻むべく、サブラクと交戦する。しかし『詣道』という場所やサブラクの入念な対策から苦戦を強いられ、新たな対策を講ずることもできないまま、敗北は時間の問題という状況の中で時間稼ぎの死闘を演じる。そこへ復活した“祭礼の蛇”神体が現れ、サブラクが戦いを放棄したため、そのままサブラクを両界の狭間に落とし討滅した。そしてシャナと合流した後、『詣道』に漂う最古のフレイムヘイズたちの成れの果てたる色付く影の助力でその場を離脱し、“祭礼の蛇”神体たちより一足早く『神門』を抜けてこの世に帰還した(XIX巻)。
- しかし、その直後に帰還した“祭礼の蛇”坂井悠二の大命宣布によって敗北が決定的となり、『引潮』作戦に移行して南方の出城でカムシンと共に“呻の連環”パイモンを討滅するが、二度目の宣布によってフレイムヘイズ兵団が総崩れになった為、合流したマージョリーに貰った自在式の栞で囮の『天道宮』を作りだして撤退戦を援護し、随伴する討ち手たちと共に南東に脱出した(XX巻)。
- フレイムヘイズ兵団が大敗した後は、シャナたちとは合流せず別行動を取っており、兵団の生き残りが隠れ潜む『天道宮』を分捕る為に動いていた(XXI巻)。その役割は新世界『無何有鏡』を“徒”の無制限な楽園にしないため、新世界『無何有鏡』で抑止力となるフレイムヘイズを集めてくることであり、新世界『無何有鏡』完成後は集めたフレイムヘイズ1225名と共に『天道宮』に乗って御崎市に到着し、ヴィルヘルミナたちと共に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。
- 新世界へ渡り来てから一年後の春、『天道宮』を訪れてヴィルヘルミナと『両界の嗣子』ユストゥスの様子を見ながら話をしていると、やってきたシャナと再会し、新世界の外界宿の再編成について語り合った(外伝『ホープ』)。
- アニメでは第3期に登場。回想にて、ヴィルヘルミナと2人で砂漠らしき場所を旅する場面も描かれた。
- ザムエル・デマンティウス[Samuel Demantius]
- 声 - 野島昭生
- 『犀渠の護り手(さいきょのもりて)』の称号を持つ強力な男性のフレイムヘイズ。「孤児(シロッツィ)」の異名を持つ。『四神』からの呼称は「巌の盾」。
- 将校のような帽子を被りオーバーコートに皮手袋を着けた、左顔面に大きな傷のある隻眼の壮年の男。神器“ターボル”は親指大の銀杯型。中世では鉄兜に鎖帷子という、当時の兵士の格好をしていた。
- 即座に城や橋などを建造し優位な地歩を文字通り築く『ジシュカの丘』という自在法を持ち、これによって戦場の最前線に前哨陣地を作り出せる。また、産み出された城砦には他のフレイムヘイズの力を蓄える性質があり、それらの力を自在法『ジクムントの門』で攻撃や防御に使う事が可能である。更に守りの切り札として、様々な武器が内蔵された石の戦車を産み出す自在法『車両要塞(ヴァーゲンブルク)』を行使する。
- これら集団戦に特化した能力と人間時代の経験から、一人一党気質のフレイムヘイズの中にあって、集団戦に長ける異質の人材。千軍万馬の卓越した将帥であり、広く高い視点から戦いを見る「変人」として知られていた。16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦や20世紀初頭の対[革正団]戦争において、組織編制や人員の結集、物資調達などの面で貢献し、多大な実績を上げている。単独での戦闘の際は『ジシュカの丘』を用いて地形を変化させる、あるいは建造物を設営して敵を閉じ込め、その隙に攻撃を加える、という戦法を使う。
- 軍人という経歴故か、非常に堅苦しい性格の持ち主。
- “淼渺吏”デカラビアとは、長年に渡る宿敵であった。
- 人間時代は、傭兵として戦争に明け暮れていた。異名や神器の名称、自在法の名称、また「皇帝や十字軍を相手にしていた」という発言をしており、15世紀前半に起きたフス戦争の関係者だった。その死の間際、自分達の戦いがベルペオルに管理された一種の代理戦争『君主の遊戯』の下にあった事を知らされ、激しい怒りを覚えてフレイムヘイズとなった。
- かつての欧州で集団を率いて多くの功績を挙げており、対[とむらいの鐘]戦ではフレイムヘイズ兵団に貢献したが、諸事情により本人は戦場には出ていない。『大戦』最終決戦の数年前には、フレイムヘイズ兵団の駐屯地でゾフィーたちの作戦会議に参加していた(『君主の遊戯』が絡んでいた)。
- 本編では対[仮装舞踏会]戦で、フレイムヘイズ兵団総司令部の幕僚長となり、兵団の編成を任される(XVII巻)。その後ゾフィー率いる『星黎殿』への大規模強襲降下作戦に加わり、殆ど無謀な突撃の先頭に立って常にはない猛攻を加えた結果、敵陣深くに出城を築くも、『星黎殿』直衛軍の驚異的な手強さの前に完全に足止めされ、そこから全く前進できずにいた(XVIII巻)。
- その後『星黎殿』の墜落とシャナの『神門』突入前の宣布に助けられたこともあり、橋梁を築き自ら部隊を率いて『星黎殿』へ突撃、『星黎殿』直衛軍を陽動しゾフィーの対デカラビア戦を援護した。しかし、デカラビア討滅直後にハボリム率いる西部方面主力軍が『星黎殿』至近に到着し、フレイムヘイズ兵団に猛攻撃を加えるが、ザムエルはその窮地の中でも、ハボリムお抱えの大筒型“燐子”たちの橋梁への砲撃を咄嗟に防御壁を築いて防ぎ、さらに新たな前線基地を築くなどの奮戦ぶりを見せる(XIX巻)。だが、“祭礼の蛇”坂井悠二の『大命』宣布で再び戦局が逆転、撤退戦をシャナとヴィルヘルミナと共に行うも、2度目の宣布で兵団が総崩れになった為、城砦を捨ててシャナ達と共に後退する。その後、撤退するフレイムヘイズの目印となる石塔を立ててセンターヒルと共に兵団の殿となり、押し寄せてくる“徒”を引き付ける役目を果たした後に戦死した(XX巻)。なお、最後まで戦い続けたのは、意地や使命感ではなく「他にすべきことが思いつかなかった」という理由であった。
- アニメでは第3期に登場。
- ヒルデガルド[Hildegard]
- 声 - 斉藤佑圭
- 『昏鴉の御し手(こんあのぎょして)』の称号を持つ強力な女性のフレイムヘイズ。「昏(くら)き淑女」の異名を持つ。初登場はXVIII巻。
- 黒い喪服を常に身に付けている貴婦人で、顔は黒いベールで覆われている。ブローチ型の神器“フリズスキャルヴ”には真っ赤な宝石があしらわれている。
- 影を自在に操る自在法『瞑目の夜景』を使う。遠隔から自由に影を操作し、攻撃や補助を行う。多くは味方を鎧わせる形で使っている。攻撃の際は、影を人間大のワタリガラス型に変化させ、それを小さな烏型の弾丸に分裂させて飛び散らせ、攻撃する。
- 上品であしらいの上手い性格。全体を見て戦況を冷静に分析する明晰さや、ヴィルヘルミナを案じる思い遣りを見せる。
- ヴィルヘルミナの知己の1人である討ち手で、他の知己であるピエトロやレベッカからは「ヒルダ」という愛称で呼ばれている。“煬煽”ハボリムとは因縁浅からぬ関係である模様。
- 本編登場以前の経歴は不明だが、少なくとも16世紀初頭の対[とむらいの鐘]戦当時は既にフレイムヘイズとして活動していたと思われる。現代ではフレイムヘイズの中でも重鎮とされる立場になっている模様(XVII巻)。
- 本編では、ヴィルヘルミナからのシャナ奪還作戦への参加協力要請に、[仮装舞踏会]への警戒網を統括する立場に任ぜられたため参加できないと断りの返信をしたが、別紙にて戦況についての詳細な見立てを記して可能な限りの援護をし、日本に居るレベッカにヴィルヘルミナのフォローを頼む(XVII巻)。
- 対[仮装舞踏会]戦では、西部防衛線司令官に任命され、外界宿アンドレイ要塞の塞主として指揮を執り、ハボリム率いる[仮装舞踏会]西部方面主力軍を迎え撃つ。ダンの自在法『プレスキット』の効果をもって最初から長期戦を狙って徹底した篭城戦を行い、わずか半日という短時間で西部方面主力軍が撤退を始めたため、危なげなく防衛に成功する(XVIII巻)。
- アンドレイ要塞攻防戦後は要塞の防衛堅守を果たし、チューリヒ外界宿総本部に帰還する。“祭礼の蛇”の大命宣布で不毛な論戦を続ける上層部の会議に出席し、ヴォーダンともども無言のまま辟易していた(XXI巻)。
- しかし、シャナ一派からの作戦計画書が届いたことによる真相の暴露によって、それがゾフィーの行動面・情報面での実働部隊への密かな支援だったと知ると、総司令官職を解任されたゾフィーを賞賛した(XXII巻)。
- シャナたちが新世界へ旅立った後は、この世に残った“徒”たちを始末する為の捜索の指揮官になっている(外伝『フューチャー』)。
- アニメでは第3期に登場。
- ダン・ロジャース[Dan Rogers]
- 『具象の組み手(ぐしょうのくみて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。XVIII巻に登場。
- 見た目は、腕まくりしたワイシャツに、くたびれたズボンをはいた中年男性。神器“B.S.I”は万年筆型。
- 頼りない言動が目立つが、れっきとした強力な討ち手。
- “B.S.I”でサインをした物を強化する形質強化の自在法『プレスキット』を使う。
- アンドレイ要塞攻防戦を「ドレル爺さんの復仇戦」と意気込んでいることから、ドレルには世話になった模様。
- 外界宿の構成員から討ち手となった、齢百に満たない新しいフレイムヘイズ。ハボリムはアンドレイ要塞攻防戦まで、ダンと『プレスキット』に見覚えが無かったことから、20世紀初頭の対[革正団]戦以降に契約したフレイムヘイズと推測していた。
- 本編では、対[仮装舞踏会]戦の西部防衛線幕僚長に任命され、アンドレイ要塞の篭城戦を支える要として、司令官であるヒルデガルドと共に立て篭もり、ハボリム率いる[仮装舞踏会]西部方面主力軍を迎え撃つ。『プレスキット』で要塞と城壁を強化して持ち堪え、わずか半日で西部方面主力軍が撤退を始めたため、危なげなく防衛に成功した(XVIII巻)。
- シャナたちが新世界へ旅立った後は、フランソワたちと共にこの世(旧世界)の外界宿で残務処理を行っている(外伝『フューチャー』)。
- アニメでは第3期に、姿のみ登場した。
- “弄巧の摽(ろうこうのひょう)”フィフィネラ[Fifinella]
- ダン・ロジャースと契約している女性の“紅世の王”。炎の色は涅色。
- 「俺」という一人称を使ってキビキビとした男口調で話す“王”。ハボリムとは、ダン以前の契約者との間で交戦経験がある。
- アニメでは第3期に、意思を表出させる神器だけ登場した。
- イギリスやアメリカやカナダの軍隊に伝わる不可視の女妖精に、フィフィネラという名前がある。
- ミカロユス・キュイ[Mikalojus Cui]
- 『興趣の描き手(きょうしゅのかきて)』の称号を持つフレイムヘイズ。その存在は以前から示唆されていたが、XXII巻にて初登場(ただし声のみ)。神器は筆型の“見えざる手”。
- 病的な顔立ちの男。調子外れな甲高い声が特徴で、文章の最後の言葉を繰り返すように相手に問いかける、独特な口調の持ち主。
- その能力は、「石に木を書けば石が燃える」「雪に剣を書けば雪で木が切れる」といったように、振るう絵筆によって物体の色彩と特性を自在に変化させることである。独自の自在法として、擬似世界として描いた風景の中に対象を誘導し、閉じ込める自在法『パラシオスの小路』を使う。
- その発想の奇抜さと好戦的な性格は、リベザルをして万事慎重にならざるを得ない程に危険な模様。当人は画家としての腕前にかなり自信があるようだが、契約している“王”ヨフィエルには厳しく批評されている。
- [仮装舞踏会]との戦争では、その能力によって谷川連峰と奥利根山塊の風景にフレイムヘイズたちを同化させて潜伏し、『星黎殿』への帰途にあったリベザル率いる[仮装舞踏会]東部方面主力軍の進行を遅らせた。
- シャナが御崎市にやって来る前に出会った数人のフレイムヘイズの一人で、シャナからは『乱暴絵描き』と呼称されていた。
- 御崎市での決戦に前後し、事前に張り巡らせていた『パラシオスの小路』で天山山脈を南下していたロフォカレを捕捉し、その場所へ向かっていた(XXII巻)。
- シャナたちが新世界へ旅立った後は、何も考えずにフラフラ放浪している(外伝『フューチャー』)。
- 第3期アニメでは名前だけ語られた。
外界宿の管理者 編集
- ドレル・クーベリック[Drell Kubeli'k]
- 『愁夢の吹き手(しゅうむのふきて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。登場はVIII巻。直接的な戦闘力は欠けるものの、外界宿(アウトロー)の運営に優れた手腕を発揮し、戦闘以外で初めて名を馳せた『外界宿の革命児』。老いた外見と近代的な思考から『若きご老体』『若え爺さん』などと呼ばれる場面もある。『四神』からの呼称は『幻の涙』。
- フレイムヘイズには珍しく、外見(契約時の年齢)は年老いている。神器“ブンシェルルーテ”はステッキ型。
- スイスのチューリヒを拠点に、世界中の外界宿をフレイムヘイズの支援組織として主導する人物。欧州の要である外界宿『ドレル・パーティ』を運営し、『ドレル・パーティ』の中枢である幕僚団『クーベリックのオーケストラ』(組織の運営と財務、情報と統制、戦略部門を担っていた)の指揮者として、他のフレイムヘイズの活動を影から支えていた。
- 比較的近代になってから契約したため、集団で“徒”を討滅するという「若い」考え方を持つ。古来から独立独歩だったフレイムヘイズたちに組織化や情報交換の重要性を浸透させ、企業・財団の経営によって資金援助を行い、それまでただの溜まり場・隠れ家でしかなかった外界宿を本格的な『支援施設』にまで発展させた。更に「この世の本当のこと」を知らない人間をも組織運営に組み入れ運営を効率化、その規模を拡大させていった。ごく僅かながら、組織運営を通じ「この世の本当のこと」に触れた人間から新たなフレイムヘイズが誕生する、という思わぬ副次的効果も生まれていた。
- ドレル自身のフレイムヘイズとしての能力は『幻術』。作中では自身と同じ姿の幻影を生み出している。
- 常に穏やかで落ち着いており、冷静な判断力と優れた分析力を備えている。また自身の意志を貫く強固さと、正しいと思ったら決して諦めない粘り強さを持ち合わせる。他のフレイムヘイズと異なり人間時代に豊富な社会経験を積んでおり、フレイムヘイズとしては「若い」ものの「人間」としては老成した精神の持ち主。
- マージョリーから「フォン・クーベリック」と呼ばれており、ドイツ語圏出身と思われる(なお、彼の活動拠点であるチューリヒはドイツ語圏)。
- 約200年前、老齢ながら仇討ちのために契約した。契約直後からフレイムヘイズ同士の相互扶助を訴えるが誰にも聞き入れられず、仇討ちを成した後「厄介者を黙らせる手段」として外界宿の運営を任されるようになった。その後、その優れた経営手腕で、各地で独立運営されていた外界宿同士の連絡網を作って実績を上げ、他のフレイムヘイズからも徐々に認められていった。またフレイムヘイズの活動に必須の資金面と交通面において、それらを援助するための組織を立ち上げ、社会性に乏しいフレイムヘイズを支援する体制を整えた(S巻『マイルストーン』より)。
- 本編では、[仮面舞踏会]の作戦により“千変”シュドナイに『ドレル・パーティ』ごと襲撃され、かろうじて自身一人だけ脱出。勝てないことも逃げられないことも悟りながらシュドナイと戦い敗北、死亡した(VIII巻)。外界宿の一部機能は壊滅を免れたものの、中枢組織と指導者を失った影響で世界中の外界宿は大混乱に陥り、フレイムヘイズ側と人間側との内部対立を引き起こす事態にまで発展した。
- アニメでは第2期に登場。原作と登場する時期が異なり、また建物ごと粉砕されシュドナイに抗戦することもなく死亡した。
- “虚の色森(きょのしきしん)”ハルファス[Halphas]
- ドレルと契約している女性の“紅世の王”。炎の色は薄いオレンジ色。
- 落ち着きがなくやや子供っぽい性格。ドレルと、ドレルが築いた『ドレル・パーティ』を大事に思っていたようで、侮辱されると「ムキー!」と怒っていた。契約者のドレルをシュドナイに砕かれたが、ドレルが死亡前に言い聞かせたため、契約者の仇討ちのための顕現は行わずに“紅世”へ帰還した(VIII巻)。
- 新世界が創造された後に、新世界が創造されるまで“紅世”で尻込みしていた“王”たちを説得して、新世界へ渡らせている模様(外伝『ホープ』)。新世界が創造されてから数年後も、ウィツィロポチトリと共に“紅世”に残って、新世界の秩序維持の意義を説いている模様(外伝『ローカス』)。
- ソロモン72柱の1柱である悪魔の名にハルファスがある。
- ピエトロ・モンテベルディ[Pietro Monteverdi]
- 声 - 川田紳司(ドラマCD)
- 『无窮の聞き手(むきゅうのききて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。名前は以前からたびたび登場しているが、本人の初登場はSII巻『ヤーニング』。
- 黒髪と口元の髭を整えた垂れ目の美男子。薄紫の上下スーツ、黒地に赤線のストライプシャツ、細い銀ラメのネクタイと靴という、常軌を逸した服装を見事に着こなす伊達男である。神器“ゴローザ”は懐中時計型。
- イタリアのジェノヴァを拠点に、フレイムヘイズの交通支援を全世界規模で統括する人物。数十名から成る運行管理者集団『モンテベルディのコーロ』を主宰する。
- 初対面の女性には必ず口説き文句から始める、陽気で気さくな性格であり、契約する“王”センティアのことを「僕のおふくろ」と呼ぶ。
- マティルダは『明朗明敏』と形容していたが、マージョリーやレベッカからは『馬鹿』呼ばわりされていた。シャナからは『お喋り男』と形容されていた。
- 明確な描写はないが、その役割から交友関係はかなり広いと思われる。しかし女性を口説いては失敗し、懲りずに次の口説き方を予告するため、女性陣からは一様に警戒されていた模様。
- 詳細は明らかでないが、数百年前には自身の復讐を遂げ、同様の仲間を集めて『コーロ』を主宰し、後進の指導と地中海の船の手配を引き受ける顔役となっていた模様。『大戦』最終決戦の数年前には、フレイムヘイズの駐屯地でマティルダを口説いていたが無視された。その後はカムシンやヤマベと行動を共にしていた模様。近代になりドレル・クーベリックが外界宿を組織化した際に、『コーロ』も外界宿の一部門として組織に組み入れられ、活動規模も全世界へと拡大した。『コーロ』自体が元々扶助組織としての性質を持っていたことや、陽気で気さくな者の集まりであったことから、「後輩」であるドレルの下に就くことにも特に不満や抵抗はなかった模様(SII巻『ヤーニング』より)。
- 19世紀末期から20世紀初頭にかけて太平洋海域での活動を活発化した海魔(クラーケン)たちに対し、外界宿に強い影響力を持つ『クーベリックのオーケストラ』と結束、対処に当たっていた(XV巻より)。それと前後する時期、20世紀前半にヨーロッパで勃発した対[革正団]戦争では最も忙しかった模様。
- 本編開始の二年前、ヴィルヘルミナを『コーロ』へ招待し、“徒”の運び屋グループ[百鬼夜行]が中央アジアに密かに確立していた輸送ルートの襲撃と当面の断絶を依頼した(SII巻『ヤーニング』)。その後に、ゾフィー・サバリッシュの紹介状を持ってやって来た『贄殿遮那』のフレイムヘイズ(=シャナ)に、オーストリアの森に陣取っていた“紅世の王”オオナムチの討滅を依頼した(外伝『ヴァージャー』)。
- ドレル率いる幕僚団『クーベリックのオーケストラ』壊滅からやや遅れて、『コーロ』ごと[仮装舞踏会]に殲滅された模様。
- “珠漣の清韻(しゅれんのせいいん)”センティア[Sentia]
- 声 - 堀越真己(ドラマCD)
- ピエトロ・モンテベルディと契約している女性の“紅世の王”。炎の色はマリンブルー。
- 明るくも野太い声で話す“王”。ピエトロからは「僕のおふくろ」と呼ばれており、大らかな母親のような性格をしている。新世界で人化した姿は、野太い声と恰幅の良さが見事とすら思える中年女性。
- ドレルが戦死してからやや遅れて、[仮装舞踏会]の攻勢によってピエトロも戦死したことで、“紅世”へ帰還した模様(XII巻)。
- シャナたちが新世界へ旅立った後、新世界へ渡り来て秩序派の“王”の一人として活動しており、混沌期に大活躍だったシャナと坂井悠二をレベッカに対して褒めていた模様(外伝『ホープ』)。新世界へ渡り来てから数年後の初夏には、新世界のイタリアのジェノヴァで中立のスタンスを保つ外界宿『ピエトロの食堂』の店主として、シャナとベルペオルの顔合わせの場を提供し、『色盗人』への対策などの協議にも立ち会っている(短編『クイディティ』)。
- ローマ神話の神の一柱に、小さい子供に意識・認識を齎す(もたらす)同名の女神が登場する。
- ナム
- 『玉紋の騎手(ぎょくもんのきしゅ)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。神器は名前のない手綱型。
- 中央アジアの外界宿[故崖窟]の管理者で、[故崖窟]は中央アジアの重要拠点の一つであった模様。
- 顔や手足を包帯で、全身を衣服で覆い、一切の肌を見せない小柄な女性と言う、飛び抜けて謎めいた人物。知己の者たちからは、気のいい老婆の討ち手だと思われていた。またナムと契約していた“王”の真名・通称・能力は伏せられ、また“王”自身は喋るところを三千余年は見せなかった模様。
- ピエトロや[百鬼夜行]のパラからは「親愛なるナム婆さん」、ヴィルヘルミナ・カルメルからは「ナム婆様」と呼ばれていた。フィレスと『永遠の恋人』ヨーハンら『約束の二人』とも親しくしていた模様。
- その正体は、太古の『大縛鎖』創造の儀式阻止の戦いに参戦し、カムシンからは『手綱打つ少女』と形容された少女のフレイムヘイズ。その戦いでナム本人はイルヤンカと交戦の末に戦死するが、その瞬間に創造神“祭礼の蛇”が両界の狭間に引きずり込まれたため、その余波で、分解する体から遊離したナムの意思総体だけが巻き込まれて両界の狭間に引き込まれ、ナムの体が抜け殻としてこの世に残った。以後、空っぽのナムの体を契約した“王”である“曠野の手綱”が神器である手綱で覆い、動かしていた。なお、ナムの意思総体は『詣道』に出現した最古のフレイムヘイズたちの成れの果てである色付く影たちの中に混じっていた。外伝『フューチャー』でマージョリーが語っていた「狭間に意識総体を呑み込まれたのに契約を保ち得たフレイムヘイズ」とはナムのことである。
- 本編開始の二年前には、カシュガル近郊で消息を絶ったデデを捜索する為に出発する劉陽を見送った。
- XIV巻でのヴィルヘルミナの回想にて、ほぼ一年ぶりに訪れたという描写と廃墟の中に人間の白骨死体があった。本編開始の直前に、“壊刃”サブラクが『約束の二人』とヴィルヘルミナを誘い込むための罠として外界宿[故崖窟]を利用するために、正面から攻め込まれて外界宿ごと殲滅された。
- “曠野の手綱(こうやのたづな)”
- ナムと契約していた女性の“紅世の王”。炎の色は若草色。
- 三千余年もの間、通称を持たず、語る声を聞かれたこともない、謎めいた“王”。これも名前のない、手綱型の神器に意思を表出させていた模様。カムシンからは『風巻き奔る龍馬』と形容されていた。
- 本編開始の直前に、サブラクの襲撃によってナムの体と神器が破壊されたことで、“紅世”へ帰還したと思われる。新世界『無何有鏡』が創造された後、新世界へ渡り来て秩序派の“王”の一人として活動している。その数年後に、豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』で行われる『両界の嗣子』ユストゥスのお披露目の式典に参加しており、フレイムヘイズと秩序派が集まっているフロアのバーカウンターで忙しそうに駆け回っていた(外伝『ローカス』)。
大地の四神 編集
四人のネイティブ・アメリカンのフレイムヘイズで、彼らの「神」である“紅世の王”と契約した古代の神官たち(彼らの認識に従えば、本当の「四神」は契約した“王”であり、一般にそう呼ばれている契約者の方はあくまでも「神官」)。全員フレイムヘイズとしての適性を高めてから契約しており、アメリカ大陸を長年“徒”から守ってきた、いずれも非常に優れた強力な討ち手だが、19世紀後期の1863年、白人を中心としたヨーロッパ移民の「侵略」行為に立ち向かい、アメリカ合衆国で『内乱』を引き起こした。彼らを止めるためフレイムヘイズたちの大規模な同士討ちが始まり、その間に“徒”たちの跳梁跋扈を許す結果になったことから十数年後に矛を収めたが、護るべきものを“徒”ではなく「人間」に侵されているという事実から、世界を護る意欲を失った。こうした経緯により、現代まで南北アメリカ大陸主要四都市の外界宿でフレイムヘイズを支援するという消極的な協力にのみ留まっていた。なお“徒”からは「“徒”を殺し続けた挙句、討ち手にまで牙を剥いた『フレイムヘイズの悪徳そのもの』たる魔物」と認識されている。
フレイムヘイズや“王”を、『大地の四神』独自の呼称で呼ぶ(シャナなら『眩き炎』、アラストールなら『裁きの業』、キアラなら『閃く矢』といった具合である)。また、神器名が共通で“テオトル”なのも特徴。契約した“王”たちの真名には楽器が含まれていることや、当人の名に方角が含まれていること(先師が北)や、炎の色が全て宝飾品の色、フレイムヘイズとしての能力が「“存在の力”をこの世の何かに変換・還元する力」という共通点もある。また『四神』達は契約した“王”を「御憑神」と呼んでいる。『四神』自身もまた、互いを独自の呼称で呼ぶが、これは各々の自在法と戦闘スタイルを形容したものである。
他の誰とも違う、彼ら独自の論理によって行動する得意なタイプの討ち手だが、実は行動原理は“徒”のそれに通じるものがある。また契約した“王”達は、新たな神話が発生する度に通称を更新しており、かつての名前は不明。
本編では、対[仮装舞踏会]戦に関して揺れている『四神』らの代表として、センターヒルをフレイムヘイズ兵団に送り込んだ(XVII巻)。彼が参戦を決意し戦死した(XX巻)ことを知ると、残る『三神』もセンターヒルの遺志とシャナの決意に賛同して参戦。御崎市決戦において、狂乱状態となって御崎市へなだれ込む大量の“徒”をひたすら殺し続けた(XXI巻)。その真意は、シャナが提案し新世界『無何有鏡』に組み入れられた「人間を喰らえない」理を徹底周知させることであり、「今まで人間を喰らってきた“徒”を可能な限り殺す」ことで、今後の“徒”たちに「人を喰らう行為が禁忌である」という認識を植え付け、“徒”が人を喰らってきた歴史に終止符を打つこと(つまりは、「人を食らう“徒”が、それによって現れた討ち手たるフレイムヘイズに虐殺された」という事実を新世界に持ち込ませることで、「人を食らう事には意味がなく、行えば以前のような殺戮者が現れかねない、だからやめておこう」という流れを作り出すこと)であった(XXII巻)。
新世界『無何有鏡』完成後は、フレイムヘイズが無事に新世界『無何有鏡』へ渡れるかの「人体実験」に自ら志願し、フレイムヘイズとしては最初に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。
- イーストエッジ[EastEdge]
- 声 - 乃村健次
- 『星河の喚び手(せいがのよびて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。初登場はS巻『マイルストーン』、本編への登場はXXI巻から。『四神』としての呼称は『全ての星を見た男』。星空に似た空間を生み出して戦うことに由来する。ニューヨークで外界宿『イーストエッジ外信』を運営しており、また名目上は外界宿ニューヨーク総本部の本部長でもある。
- 中肉中背でいかつい面相のネイティブ・アメリカン。神器“テオトル”は浮き彫りを施した石のメダル型で、ベルトに下げている。
- 変換能力は「炎」。ケツアルコアトルと共に「歌う」という行為をトリガーとし、一定の空間内の光を上空に凝縮させることで満天の星と見える空間を生み出し、その光を流星雨として撃ち放ち爆砕させる自在法『夜の問い』を使用し、強力な広範囲攻撃を行う。この攻撃で死した者は、その固有の色の火の粉となって散るのではなく、その“存在の力”が尽きるまで青磁色の炎に変換・還元されて強制的に燃やされる。一発一発の威力は、雑兵レベルの“徒”でも全力で防御すれば凌ぐことが出来、リベザルほどの防御力があれば素で耐えられる程度でしかない。が、同時に無数作り出し、流れ落とすため、大抵の場合かわし切れず、防ぎ切れずに餌食となる。また特性上、光の多い昼間に使った方が威力が高くなる。さらに光を凝縮すると言う特性上、星が現れるのは空だけではなく地上近くなど高さも距離も問わず、敵の足元を巻き込む形で銀河を形成する、イーストエッジ自身の周囲に展開して格闘戦の助けとする、目くらましと短距離転移に使うなど応用性が高い。
- 心身ともに落ち着いており、物静かで表情も少ない。
- マージョリーとは飲み友達だが、かつて『内乱』の際に戦ったこともある。
- 1930年代に未熟なユーリイを世話していたが、ユーリイが心の内側に抱えている危うさに気付いており、戦いを禁じていた。対[革正団]戦でほとんどのフレイムヘイズが欧州に赴いている時に、ドレルからの手紙を持ってニューヨークにやって来たマージョリーにユーリイの教育を頼むが、結果として無駄に終わった(S巻『マイルストーン』)。
- 本編では、対[仮装舞踏会]戦について当面は慎重に事態の推移を窺うつもりであった(XVII巻)。
- 御崎市決戦では、市の東側から侵攻し流星雨によって御崎市の封絶外にいた“徒”たちを先だって殲滅した後に市内へ入り、オフィス街ごと“徒”を吹き飛ばしながら前進。御崎市駅舎に本陣を置くリベザルとピルソイン率いる東部守備隊との交戦に入った。その後に後背から遅れ来た膨大極まる数の外来の“徒”による攻撃を受けつつ、リベザルとの直接の交戦に移った(XXI巻)。
- その後もリベザル率いる“徒”の大軍勢を敵に回して戦い続け、新世界が創造されて戦火が収まるまで全くの無傷であった(彼と対戦したリベザルは片腕をなくしたが、後に再構成した)。そして、一旦河川敷に集まった後でサウスバレイ・ウェストショアと共に、フレイムヘイズとしては最初に新世界へ旅立った(XXII巻)。
- アニメでは第2期から登場。
- センターヒル[CenterHill]
- 声 - 仲野裕
- 『晧露の請い手(こうろのこいて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。初登場はXVII巻。『四神』としての呼称は『雨と渡り行く男』。豪雨の結界を張り、その中を瞬間移動することに由来する。
- 短躯ながら頑強な体つきをした、穏やかな初老の男。神器はイーストエッジと同じく、角ばった石のメダル型の“テオトル”で、腰のベルトに下げている。
- 変換能力は「植物」。広範囲に影響力を及ぼす雨の結界を張る自在法『トラロカン』を行使し、その中では圧倒的な戦闘力を発揮する。この『トラロカン』は遠話などの通信や『熒燎原』のような持続型の自在法を阻害・解除し、“存在の力”をこの世の植物に転化・変質させる。また、本人は『トラロカン』の中で短距離を転移移動できるほか、雨粒を弾丸として差し向け、攻撃することも可能。当人は転移移動で敵の眼前に現れ、不動のまま敵に掌底を当てるという攻撃を行う。これを受けた方は、「絶対に動かないもの」に激突したかのように撥ね飛ばされることになる。
- 『トラロカン』は広域に影響を及ぼす自在法としては破格の性能を持ち、討ち手として活動していた頃には『踏み入ってはならない戦鬼の庭』とまで恐れられていた。
- サウスバレイによると「戦が好きでも得意でもない」とのことだった。直接的な戦闘力は他の『三神』に比べれば低いものの、それでも通常のフレイムヘイズからすれば常識破りの実力を持つ。当人も肉弾戦闘能力は非常に高い。
- イーストエッジに比べれば気さくで、旧友のフレイムヘイズたちにも好意的である。
- 本編では、対[仮装舞踏会]戦に関して揺れている『四神』らを代表して、『四神』らにとっての『神』である契約した“紅世の徒”、その“紅世の徒”の中の『神』である“祭礼の蛇”が何を為そうとしているのか、戦うべきかどうかを見定めるためフレイムヘイズ兵団に同行する。あくまでも『四神』らの行動の決断を促すための視察・傍観であり、当初はフレイムヘイズ側として参戦するつもりはなかった。しかし、友誼から助力はしたいと思ってもいた(XVII巻)。
- 対[仮装舞踏会]戦では戦闘に加わらず、ただの傍観者として兵団と共に『星黎殿』を目指した(XVIII巻)。しかし『星黎殿』直衛軍との戦闘が膠着、その間に戻ってきた[仮装舞踏会]西部方面主力軍と挟まれる形となり、兵団が窮地に陥った。そこで戦場からいち早く単独脱出するようゾフィーに勧められるものの、彼女の思惑(=万が一の場合は自分に代わって指揮を引き継いでほしい=兵団に協力して欲しい)に気づいており、未だ“祭礼の蛇”の真意を見定めていないため、その申し出を断って後方基地に留まった(XIX巻)。その直後に“祭礼の蛇”神体が帰還し『大命』の具体的な内容が宣布されると、それを絶対に受け入れられないものと判断し、“祭礼の蛇”との戦いを決断。兵団が崩壊する中、生き残ったフレイムヘイズ達に『世界』の実像を諭して戦う気力と意義を取り戻させた。その後はザムエルと共に兵団の殿となり、『トラロカン』でハボリムの『熒燎原』を無効化しつつフレイムヘイズ達の撤退を援護した。シュドナイに貫かれて片腕を失いながら、最後に残ったシャナたちが脱出する中、彼女らを無事脱出させるため自ら戦場に残ることを選び、ザムエルが死亡した十分後に“千変”シュドナイに討たれて戦死した(XX巻)。
- アニメでは第3期に登場。
- “殊寵の鼓(しゅちょうのつづみ)”トラロック[Tlaloc]
- 声 - 長谷川芳明
- センターヒルと契約している男性の“紅世の王”。炎の色は瑠璃色。
- 涼やかな青年の声で話す男性の“王”。XX巻の終盤でセンターヒルが戦死すると、“紅世”へ帰還した。そして創造された新世界へ渡り来て、秩序派の“王”の一人として活動している(『灼眼のシャナノ全テ 完』)。新世界が創造されてから数年後に、外界宿からの要請で『両界の嗣子』ユストゥスのお披露目の式典が行われる豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』の戦闘指揮所に座すベルペオルを、イーストエッジとサウスバレイとウェストショアと共に『大地の四神』の一人としてベルペオルの背後から監視する(外伝『ローカス』)。
- アニメでは第3期に登場。
- アステカ神話には、トラロックという雨と雷の神が登場する。
- サウスバレイ[SouthValley]
- 声 - 梶裕貴
- 『群魔の召し手(ぐんまのめして)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。初登場はXXI巻。『四神』としての呼称は『死者の道を指す男』。無数の「亡者」を指揮して戦うスタイルに由来する。南北アメリカ大陸の主要四都市の外界宿の管理者の一人である。
- 見た目は山高帽とポンチョを纏った、細く尖った体格と容貌をした二十歳に満たない少年。左足は簡素な作りの義足となっている。神器“テオトル”は尖った石のメダル型。
- 変換能力は「土」。戦闘では、黄金の仮面を付けた人や動物など様々な形を模した、「亡者」と呼ばれる大作りな土人形を無数に召喚して戦わせる自在法『パチャクチ』を使用する。亡者は整然とした隊伍や精緻な集団行動などはまるで取らず、ただひたすら敵に襲い掛かると、仮面の口で相手を「捕食」する。そして喰らった“存在の力”を土と黄金に変換・還元し、その分だけ肥え太り、一定以上まで太ると分裂・増殖していく。また、亡者を人間の体に潜りこませて操ると言ったことも可能。サウスバレイ自身は黄金の輿に乗ったまま、それを亡者たちに担がせ、亡者の軍勢と共に行進する。なおこの「亡者」は飛行することも可能。
- 『パチャクチ』本来の力は、「亡者」を他者や物体に取り付かせ、それを媒介に行動を統御・掌握することにある。
- 何かというと「ははははは!」と作り物の高笑いをしながら話す癖があり、カラッとした性格だが、戦いを面白がり一般人の前でも亡者を使うなど無遠慮な面も持つ。しかし笑顔が作る皺は深く、時折得体の知れない雰囲気を覗かせる。『四神』の中で唯一「聖人君子とは言えない男」。
- 現代の対[仮装舞踏会]戦に対しては、当面は戦う相手を見極める構えであった(XVII巻)。
- 御崎市決戦では、亡者の軍勢を繰り出して西方の住宅地から侵攻し御崎市の封絶外にいた“徒”たちを亡者たちに食い散らせ、追い立てながら前進。御崎高校に本陣を置き、いち早く外来の“徒”流入の混乱を収めたハボリム率いる西部守備隊との交戦に入った。その後に後背から遅れ来た膨大極まる数の外来の“徒”による攻撃を受け、初めて自身の力を以ってしても捌き切れない数の敵に相対し、その飽和攻撃の前に徐々に亡者の軍勢を削られていった(XXI巻)。
- しかしそれさえも予定通りで、ハボリムが流入させる外来の“徒”たちを容赦なく討滅し続けた。そして新世界が創造されて戦火が収まってからは、一旦河川敷に集まった後でイーストエッジとウェストショアと共に、フレイムヘイズとしては最初に新世界へ旅立った(XXII巻)。
- 新世界へ渡り来てから一年後の春までの間に、シャナと再会して新世界の外界宿の再編成が軌道に乗り始めたことを伝えた模様(外伝『ホープ』)。「枷から逃れるために右足を引きちぎった王子」と形容されていたが、義足は左足である。
- アニメでは第3期に登場。
- ウェストショア[WestShore]
- 声 - 高橋美佳子
- 『滄波の振り手(そうはのふりて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。初登場はXXI巻。『四神』としての呼称は『波濤の先に踊る女』。水を自在に操り、踊ることでそれらを行使するスタイルが由来。南北アメリカ大陸の主要四都市の外界宿の管理者の一人である。なお、他の3人と異なり経営者としてのセンスはなかった模様。
- 年齢不詳の麗容な黒髪の女性。神器“テオトル”は波状輪郭をした石のメダル型。
- 変換能力は「水」。水を自在に操り、水に捕らわれた者の“存在の力”を水に変換・還元する自在法『セドナの舞』を使用する。大津波で相手を飲み込み捕らえる他にも、水で形作ったアザラシや鮭などの魚による直接攻撃なども行える。水の波で相手を捕らえて身動きを取れなくした後に、まず“紅世”に帰る様に説得を試みるという、非常に珍しい戦法を基本としている。この水は相手の炎弾や自在法の“存在の力”をも水へと変換して封じる為、水から出る術の無い“徒”はやむなく“紅世”に帰ることを余儀なくされ、それでも帰らぬ者は水に変換して討滅する。
- 常に大人しく穏やかで、嬉しくて泣き、悲しんで泣き、“徒”に怯えて泣くなど、何かにつけよく泣く性格。ただし、これは有利不利など状況を問わず変わらないため、対峙する相手は逆に違和感から来る危機意識を喚起されることになる。振る舞いは弱々しく、“存在の力”による周囲への影響力も相まって他者から異常なまでに気遣われるが、対峙した“獰暴の鞍”オロバスの奇襲すら鋭い蹴り技で軽くあしらうほどの技量を持つ優れた戦士でもある。
- 現代の対[仮装舞踏会]戦に対しては、悲嘆に暮れるばかりであった(XVII巻)。
- 御崎市決戦では、真南川の川面を歩いて北方から侵攻し御崎市の封絶外にいた“徒”たちを追い散らしながら前進。井之上原田鉄橋にてオロバスとレライエ率いる北部守備隊との交戦に入った。その後に後背から遅れ来た膨大極まる数の外来の“徒”による攻撃を受け、従来の説得戦法もままならずにその対処にかかり切りになっていたところ、オロバスとレライエの奇襲を危うくかわし、直接の交戦に移った(XXI巻)。
- 流入してきた無数の“徒”たちを全く寄せ付けない強さを見せ付けながらも、前進しないまま“徒”たちを討滅し続けた。新世界が創造されて戦火が収まった後、一旦河川敷に集まった後でイーストエッジとサウスバレイと共に、フレイムヘイズとしては最初に新世界へ旅立った(XXII巻)。
- アニメでは第3期に登場。
- “清漂の鈴(せいひょうのすず)”チャルチウィトリクエ[Chalciuhtlicue]
- 声 - 山下百合恵
- ウェストショアと契約している“紅世の王”。炎の色は珊瑚色。
- 穏やかな声で話す女性の“王”。
- アニメでは第3期に登場。
- アステカ神話にチャルチウィトリクエという同名の水の女神が登場する。
外伝に登場したフレイムヘイズ 編集
- ユーリイ・フヴォイカ[Yuri Chvojka]
- 声 - 三瓶由布子
- 『魑勢の牽き手(ちせいのひきて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。S巻『マイルストーン』に登場。
- 気弱さと生真面目さを半々に含んだ、サイズの合わない大きな眼鏡を掛けた10代半ばの少年。神器“ゴベルラ”は古風な短剣型。
- 小動物や虫などの生物を使い魔として支配し、伝声や監視、計測に使役し、またそれらの力の奔流を竜巻の様に立ち上がらせ、攻撃と防御を行う自在法『隷群』を使うが、未熟なため、大雑把かつ小規模な物しか使えない。
- 契約してまだ1年余りという日の浅さから、性格は普通の少年そのものだった。
- 契約時の戦いで復讐相手を討滅したため“徒”への復讐心を持っておらず、大事な人を守れなかった後悔と生き続ける意味を失った無意識の虚無感だけを抱えている。そのため「誰かを守りたい」と言う「フレイムヘイズに不要な善意」を持ち、またフレイムヘイズが「戦い続けるため」に必要な「生への渇望」を持ち合わせていない。
- 元はウクライナ移民で、15歳のときアメリカへ向かう移民船の航海上で海魔(クラーケン)ラハブに襲われ、死の淵で契約し仇のラハブを討った。その後アメリカに渡り、外界宿『イーストエッジ外信』で働きながらフレイムヘイズの基礎教育を受けていた。当人は「誰かを守るため」の戦いを望んでいたが、他者のために簡単に命を捨てかねないその危うさを感じとったイーストエッジから戦いを禁じられていた。
- 1930年代のマンハッタンで『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーと邂逅する。参戦を禁止されながら、“穿徹の洞”アナベルグと彼を護衛する“千変”シュドナイとの戦いに、マージョリーを助けるため参戦。アナベルグの相手を引き受け討滅したが、シュドナイに追い詰められたマージョリーを守るべく、無謀を承知でシュドナイへ突撃、シュドナイの一撃と戦闘の余波に巻き込まれて死亡した(S巻『マイルストーン』)。
- 尊敬するフレイムヘイズとして『弔詞の詠み手』マージョリー・ドーや先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメール、二代目『極光の射手』キアラ・トスカナと『鬼功の繰り手』サーレ・ハビヒツブルグ、『輝爍の撒き手』レベッカ・リードや『理法の裁ち手』ヤマベを挙げていた。
- アニメでは第2期に登場。
- “虺蜴の帥(きえきのすい)”ウァラク[Valac]
- 声 - 山川琴美
- ユーリイ・フヴォイカと契約していた女性の“紅世の王”。炎の色は丹色。
- 会話の際、ときおり短剣型神器“ゴベルラ”の鯉口を鳴らす。常に気だるそうな口調だが、何だかんだ言いつつ己の契約者たるユーリイを気遣い見守る優しい性格。ユーリイの前にも契約者がいたが、全員復讐鬼で討ち死にした模様。カムシンには「生命の竜巻」と形容され、太古の“祭礼の蛇”との戦いにも、「虫愛づる姫君」と形容された当時の契約者と共に参戦した模様。
- 1930年代にユーリイが戦死したことで、“紅世”へ帰還した(外伝『マイルストーン』)。
- 新世界『無何有鏡』が創造された後、新世界へ渡り来た秩序派の“王”の一人として活動しており、シャナと出会って日本にいる[マカベアの兄弟]の構成員たちを、とある古びた陸上競技場におびき出す手引きをした模様(外伝『ホープ』)。新世界が創造されてから数年後、『両界の嗣子』ユストゥスのお披露目の式典が行われる豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』のラウンジフロアで、美貌も盛装もかなぐり捨ててだらしなく寝そべっている姿を、サーレたちに目撃されている(外伝『ローカス』)。
- アニメでは第2期に登場。
- ソロモン72柱の悪魔の一体にウァラクがいる。
- クロード・テイラー[Claude Taylor]
- 『空裏の裂き手(くうりのさきて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。XV巻に登場。
- 頑強な外見の中年男性。神器“ソアラー”は左を向いた鷲のバッジ型。
- 『空裏の裂き手』の力の象徴である空色の衣『サックコート』を纏い、鷲の翼や頭、鉤爪を顕し戦う空中戦や格闘戦ではトップクラスの強力な討ち手。1863年に勃発した『内乱』外界宿サイドの東軍に所属し、カンザスの戦いで名を挙げてカンザス~セントルイス方面の哨戒網を統括するなどの活躍したようだが、19世紀末期にはフレイムヘイズの本来の使命から離れて[革正団]としてフレイムヘイズと敵対していた。
- 元は妻子と平和に暮らす平凡な農夫だったが、息子の結婚式に現れた“紅世の王”に息子とその嫁を喰われ、その怒りから契約した。フレイムヘイズとして強く生まれた事と『約束の二人』などの協力者を得た幸運で、わずか数年で仇敵の“王”を討滅するが、短期に復讐を遂げたためフレイムヘイズの使命に対する実感をほとんど持てなかった。
- 復讐を遂げた後は、人間時代への未練から、契約で絆を失い赤の他人となっていた妻と娘の元へ逃げ戻る。そして妻や娘との関係を再度構築するが、その中で自らの愚かさを自覚する。やがて耐え切れず、妻に自分がかつて夫だったことと「この世の本当の事」を教え、使えば命を失う宝具『ヒラルダ』を渡し逃走。自身の愚かしい過去から逃れるため、世界を変える思想を持った集団[革正団]の一員となった。
- しかしキアラやサーレ、宝具『ヒラルダ』を使った妻から依頼を受けた『約束の二人』に[革正団]の計画を阻止され、妻の遺言を聞くと、自らフレイムヘイズの契約を解除して死亡した。
- 息子を失った事実を認められずフレイムヘイズへ「逃げ」、フレイムヘイズの使命感を持てず捨てたはずの妻子へ「逃げ」、妻子を通じて自身の愚かさを知り[革正団]へ「逃げ」、自身の家族を重ね合わせた[革正団]の同志ハリエット・スミスの行く末から「逃げ」、最期まで逃げ続けた。
- “觜距の鎧仗(しきょのがいじょう)”カイム[Caim]
- クロード・テイラーと契約していた男性の“紅世の王”。炎の色は空色。
- かなり口が悪く、契約者のクロードを「腰抜け」とよく罵っていた。クロードがフレイムヘイズの使命から離れた後も彼と共に行動していた理由は明確ではないが、使命から離れたクロードに付き合っていたのは曰く、彼の力が惜しかったからとの事。
- 1901年にクロードが契約を解除したことで、“紅世”へ帰還した。新世界が創造された後、新世界へ渡り来て新たな契約者と再契約して、新世界最初のフレイムヘイズ『空裏の裂き手』となったことが判明する。なお、『両界の嗣子』ユストゥスのお披露目の式典が行われる豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』には、贖罪で“徒”を殺すクズには晴れの舞台は相応しくないとウートレンニャヤたちに語っていた模様で、豪華客船『ロード・オブ・ザ・シーズ』には来ていない(外伝『ローカス』)。
- 『ゴエティア』においては53番目に記述されるソロモン72柱の悪魔の一体にカイムがいる。
- セシリア・ロドリーゴ[Cecilia Rodrigo]
- 『荊扉の編み手(けいひのあみて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。外伝『ヴァージャー』に登場。
- 容姿は褐色の長髪をした20歳前後の女性。髪と同じ褐色のジャケットとスカートを纏い、似合わない真っ白な獣毛の襟巻きを巻いているため『襟巻きさん』と渾名される。神器は牙を並べたペンダント型の“エスピナ”。
- 心が弱く感情的で、思慮が浅い自分勝手な性格をしている。クレメンスの関すること以外はどうでもいいと考えており、シャナからは『偏執狂』と形容されていた。
- 戦闘力は低いが、防御に特化した討ち手で、形質強化を行う防御系の自在法『アルカサル』を使用するが、設置までに時間がかかる。
- 『大戦』の頃に大量に粗製濫造された討ち手たち「ゾフィーの子供たち」の1人。『大戦』では、わけもわからぬ危機感のまま後方で戦い、『大戦』終結後も目的はなく、心の弱さから軽侮されて1人で行く道に迷っていたところを『大戦』で知り合った『戈伏の衝き手』クレメンス・ロットに声をかけられ、旅の相棒となる。クレメンスが攻撃を、彼女が防御を担当するコンビネーションで数多の“徒”を討滅した様子。自分に手を差し伸べ行路を示してくれたクレメンスを妄信的に慕っていた。真っ白な襟巻きもクレメンスから贈られた物で、とても大切にしており、襟巻きに触ろうとした者を怒鳴りつける程である。
- ある時クレメンスから故郷の話を聞かされ、それに強い関心を抱くが、彼が全てを話してくれない事に哀しみを覚える。その思いは『ヴァージャー』より1年前、クレメンスが殺された際に弾け、その思慕からクレメンスが故郷に遺した品を入手しようとオーストリアの森に埋もれた廃村に向かう。しかし幾度も交戦しクレメンスを殺した“紅世の王”“皁彦士”オオナムチに阻まれ、クレメンスの遺品をオオナムチに横取りされると思い深い怒りを覚えたセシリアだが、独力ではオオナムチを突破できず、そこで遺品を手に入れる為に足止めとなる討ち手を欲して外界宿へ救援要請を行う。結果、四度の派遣でやってきた五人の討ち手たちは全てセシリアが『アルカサル』を設置し終える前にオオナムチに殺害された。
- そして五度目の派遣でやってきた『贄殿遮那』のフレイムヘイズ(=シャナ)を、見た目通りの若輩者と侮って怒りを露わにするが、オオナムチとの最初の接触でシャナが炎髪灼眼の姿を表したことから彼女が『炎髪灼眼の討ち手』だと気付いた。そしてシャナとの2度目の探索時、彼女とオオナムチが戦闘に突入したのを見計らって両者を『アルカサル』で形成した檻に閉じ込め、その隙にクレメンスの故郷である廃村に辿り着く。その狂喜のまま、クレメンスの遺品が入った木箱を見つけ駆け寄るが、それを止めようとしたシャナに襟巻きを掴まれ、命の危機に晒されている事にも気付かずシャナを突き飛ばす。それが命取りとなり、後ろから迫っていたオオナムチに胴を両断され、クレメンスの遺品を入手したと思い込んだまま、満足げな笑顔を浮かべながら遺品の正体も知らずに死亡した。
- クレメンス・ロット[Clemens Rott]
- 『戈伏の衝き手(かふくのつきて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。外伝『ヴァージャー』に登場。神器はランプ型の“マーニ”。
- 不可視不可知の力を自在に操る、攻撃に特化した討ち手。その能力故に集団戦には向いておらず、『大戦』では連絡将校を務めていた。
- かつて故郷であるオーストリアの村で妻と妻のお腹の中にいた子供を“徒”に喰われてしまい、その怒りからフレイムヘイズとして契約。妻子への手向けから、妻の名を刻んだ安産祈願の蝋細工を製作して故郷に残してきた。
- その後『大戦』で『荊扉の編み手』セシリア・ロドリーゴと知り合い、『大戦』終結後に、1人で行く道に迷っていたセシリアに声をかけて相棒とした。旅を続ける間にセシリアから慕われるようになり、ある時つい彼女に自分の故郷のことを少し話してしまい、すぐにそれを後悔する。その理由は、故郷に残した蝋細工をセシリアに決して見られたくない為であり、セシリアのことは大切に思っていた模様。
- そして外伝『ヴァージャー』の一年前、幾度も交戦してきた“皁彦士”オオナムチに致命傷を負わされてしまい、前述の後悔の念から敵であるオオナムチに、自分が故郷に残した蝋細工をセシリアに決して見せないで探して壊してほしいがセシリアは殺さないで欲しいと頼み込んで死亡した。
- かつてセシリアに真っ白な獣毛の襟巻きを贈り、彼女はそれをとても大切にしていたが、その襟巻きや遺品である蝋細工などを含めた彼女のクレメンスに対する思慕が、結果的にセシリアの命取りとなった。
- デデ[Dede]
- 『燿暉の選り手(ようきのえりて)』の称号を持つフレイムヘイズ。炎の色は鴨羽色。外伝『ジャグル』に登場。
- 外見は深緑の旅装を着た、大柄な中東系の男。神器は硬玉の耳飾り型の“アルシアー”。
- 身体の周囲に鴨羽色に輝く小楯を数十枚作り出し、宙に浮かぶそれを自在に操って攻撃・防御を行う。
- 本編開始の二年前に、外界宿[故崖窟]の近辺で『露刃の巻き手』劉陽とコンビを組んで、天山山脈で活動する[仮装舞踏会]の捜索を行っていたが、休息のためにカシュガルに向かった際に[百鬼夜行]のバスから降りた“戯睡郷”メアらと遭遇し、彼女を討滅しようとした。しかし、その前に偶然通りかかった“壊刃”サブラクの八つ当たりにより殺害された。
- 劉陽(りゅうよう)
- 『露刃の巻き手(ろじんのまきて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。外伝『ジャグル』に登場。
- 外見は精悍な顔立ちの偉丈夫で、スーツの腰には露草色の帯を巻いている。武器でもある神器は大刀型の『羽淵』。
- 震脚を行った場所から膨大な水を噴出させ操る自在法『巴字奔瀑』を使う。作り出された水は劉陽の意のままに動き、劉陽の移動の補助や、激流や九本の大蛇など自在に形を変えての直接攻撃に使われる他、この水が生む水煙の中の物体や“存在の力”の動きを感知し、劉陽に伝える効力もある。
- 本編開始の二年前に、外界宿[故崖窟]の近辺でフレイムヘイズ・デデとコンビを組んで、天山山脈で活動する[仮装舞踏会]の捜索を行っていたが、カシュガル近郊でデデの消息が途絶えたことで彼の死を知り、友の仇を討つためカシュガルを訪れる。そして仇である“壊刃”サブラクと遭遇。共にいた“戯睡郷”メアの『ゲマインデ』が夢の世界であることをすぐに見破り現実に復帰するが、デデ同様にサブラクに三十分足らずで殺害された。
- ノーマン・パーセル [Norman Purcell]
- 『氷霧の削ぎ手』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。外伝『ソロー』に登場。
- 外見は髭を生やした西洋系の白人で、『内乱』ではインディアン然とした身なりをしていた。神器はマントの留め具型の“ヨークトル”。
- 氷の斧を作り出す『アクス』、氷の槍を作り出す『ゲイル』、氷の分身を作り出して五人に増えて攻撃することができる『スペイキル』などの三つの自在法を行使した。中でも自在法『スペイキル』の最大の特徴は、作り出した分身は銃弾でも砕けて消え去るほどに脆いものの、敵がどういう順番で攻撃してこようと、自分自身は最後になるという点である。つまり五体の内に一体の本体と四体の分身がいるのではなく、最後の一体になるまでは本体はいなくなり全てが分身となる。
- 当初はアメリカの外界宿の重鎮であったが、17世紀~19世紀までの白人の新大陸侵略を看過したことで原住民が圧殺されていく様を悔いて、『内乱』が勃発すると『大地の四神』側の西軍に参加した。しかしその経歴のために信頼されず、フレイムヘイズとアメリカ原住民である人間の混成部隊[パドゥーカ]を率いての開拓村の襲撃やアメリカ軍の砦への攻撃といった、重要度の低い任務へと回された。任務の最中、ビリー・ホーキンの住んでいた開拓村を潰して彼の恨みを買い、それが結果的に“狩人”フリアグネの来襲へと繋がった。
- 1864年、とある狭隘地で[パドゥーカ]を待ち伏せしていたビリーとフリアグネと遭遇。部下たちを皆殺しにした二人に怒りを抱きながら交戦し、ビリーに致命傷を負わせるも戦闘の最中に作り出された宝具『トリガーハッピー』の最初の犠牲者となって爆死した。
名称のみ登場のフレイムヘイズ 編集
- パウラ・クレツキー[Paweła Klecki]
- 『従佐の指し手(じゅうさのさして)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は縦笛型の“ロカトール”。
- 『ドレル・パーティー』の構成員。名前からして女性だと思われる。『鬼功の繰り手』サーレ・ハビヒツブルグとは旧知の仲で、19世紀末期に契約して間もない『極光の射手』キアラ・トスカナの教育をサーレに頼んだ。シャナが御崎市に来る前に出会ったフレイムヘイズの一人で、シャナからは『弾き語り』と形容されていたが、この呼称はパウラの縦笛型神器“ロカトール”によるものと思われる。VIII巻でのドレル・パーティー壊滅の際に、同僚のボードと共にシュドナイが巨大化させた『神鉄如意』に押し潰されて死亡した。
- “叢倚の領袖(そういのりょうしゅう)”ジェヴォーナ
- パウラ・クレツキーと契約していた“紅世の王”。炎の色は胡桃色。
- VIII巻でパウラがボードと共にシュドナイに殺害されたことで、“紅世”へ帰還した。
- スラヴ神話における狩りの女神ジーヴィッカのポーランド名に同名がある。
- ボード
- 『枢機の向き手(すうきのむきて)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は聖遺物箱型の“フォッセ”。
- 『ドレル・パーティ』の構成員。VIII巻でのドレル・パーティー壊滅の際に、同僚のパウラ・クレツキーと共にシュドナイが巨大化させた『神鉄如意』に押し潰されて死亡した。
- “勘破の眼睛(かんぱのがんせい)”フェイ
- ボードと契約していた“紅世の王”。炎の色はセレスト。
- VIII巻でボードがパウラと共にシュドナイに殺害されたことで、“紅世”へ帰還した。
- アーサー王物語の登場するアーサー王の異母姉にモーガン・ル・フェイがいる。
- ヤマベ[Yamabe]
- 『理法の裁ち手(りほうのたちて)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は独鈷杵型の“身口意(しんくい)”。
- マティルダの知己の一人で、彼女からは『物事の窮理を探る』と形容された。『零時迷子』を作り出す前のヨーハンからは『窮理の探求者』と形容されていた。強力な討ち手であった模様。外伝『ヴァージャー』にて、クレメンス・ロットが“皁彦士”オオナムチとの戦いの最中にヤマベの名を呟いており、オオナムチとは宿敵同士であったが、『大戦』終結から1930年代までの間にオオナムチに敗北して死亡した。ユーリイ・フヴォイカからは、尊敬するフレイムヘイズの一人として称号が語られた。
- 姿とセリフは、漫画版『灼眼のシャナX Eternal song -遙かなる歌-』のみ登場。山伏の格好をした強面の壮年男性で、日本出身の討ち手。『大戦』最終決戦の数年前には、フレイムヘイズの駐屯地でのゾフィーたちの作戦会議に参加していた。その際、「戦えることを幸せだと感じる」マティルダの精神構造に深い興味を抱いていた。その後は、ピエトロやカムシンと行動を共にしていた模様。
- “祛邪の刻屈(きょじゃのこっくつ)”オオヤマクイ
- ヤマベと契約していた“紅世の王”。炎の色は今様色。
- 『大戦』終結から1930年代までの間に、ヤマベがオオナムチに敗れて戦死したことで、“紅世”へ帰還したと思われる。
- 日本神話の大きな山の所有者の神に大山咋神がいる。
- ジョージ[George]
- 『奔馳の抜き手(ほんちのぬきて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。神器は剣型の“フラガラック”。
- 19世紀末期のホノルル外界宿に居たフレイムヘイズの一人で、ファーディやアーヴィングやハリー・スミスやハリエット・スミスとは同僚にして友人同士であった。所持していた剣を友人たちに自慢していたが、その剣が“フラガラック”だと思われる。
- 1895年、友人であったハリー・スミスの裏切りによる[革正団]サラカエル一派襲撃の際に、一旦は難を逃れたが、裏切りへの怒りと悲しみからハリーを殺害し、その妹ハリエットも裏切り者だと勘違いして殺害しようとしたが、『空裏の裂き手』クロード・テイラーに強襲されて死亡した。
- “長柯の腕(ちょうかのかいな)”ルグ
- ジョージと契約していた“紅世の王”。炎の色は狐色。
- 1895年、ジョージがクロード・テイラーに殺害されたことで、“紅世”へ帰還したと思われる。
- ケルト神話の太陽神ルーの古名にルグがいる。
- ファーディ
- 『誑欺の吐き手(きょうぎのはきて)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は帽子型の“ディスグレイス”。
- 19世紀末期にホノルル外界宿にいたフレイムヘイズの一人で、ジョージやファーディやハリーやハリエットとは同僚にして友人同士であった。
- 1895年、友人であったハリーの手引きでホノルル外界宿が[革正団]サラカエル一派に襲撃された際に、アーヴィングと共に殺害された。
- アーヴィング
- 『替移の接ぎ手(たいいのつぎて)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器はコイン型の“ルテニアン”。
- 19世紀末期にホノルル外界宿にいたフレイムヘイズの一人で、ジョージやファーディやハリーやハリエットとは同僚にして友人同士であった。
- 1895年、友人であったハリーの手引きでホノルル外界宿が[革正団]サラカエル一派に襲撃された際に、ファーディと共に殺害された。
- “訓議の天牛(くんぎのてんぎゅう)”ザガン
- アーヴィングと契約していた“紅世の王”。炎の色はワインレッド。
- 1895年、アーヴィングが[革正団]サラカエル一派に殺害されたことで、“紅世”へ帰還したと思われる。
- ソロモン72柱の悪魔の1柱にザガンがいる。
- スミス[Smith]
- トマシーナ・スミスの夫で、ハリー・スミスとハリエット・スミスの父親。名前は不明。元はアメリカ西海岸の外界宿で働いていた人間の構成員だったが、19世紀後半の『内乱』で友人だったフレイムヘイズが落命した怒りと悲しみから契約しフレイムヘイズとなった。そして、トマシーナとハリーに自分が夫であり父親であったことを告げた後、戦いに赴き、間もなく戦死した。契約した“王”については一切不明。
- 季重(きちょう)
- 『強毅の処し手(きょうきのしょして)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は槍型の“建木”。
- 虞軒や笵勲と共に上海外界宿総本部での一大会戦に参加したフレイムヘイズの一人で、上海会戦の中で死亡した。本編開始の二年前には、天山山脈に侵入していた[仮装舞踏会]の捜索猟兵たちを探索するフレイムヘイズたちの指揮を取っていた模様。ゾフィーやヴィルヘルミナの知己であり、その死を驚かれ、惜しまれていたことから、強力な討ち手であったと思われる。
- 范勲(はんくん)
- 『精微の解き手(せいびのときて)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は盾型の“丹陽”。
- 虞軒や季重と共に上海外界宿総本部での一大会戦に参加したフレイムヘイズの一人で、上海会戦の中で篭城した上海総本部の地下から現れた“徒”と交戦、最後の力で岩盤を崩して地下道を塞ぎ、死亡した。
- アルマ[Alma]
- 『蘇活の撫し手(そかつのぶして)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器はスカーフ型の“フォルテー”。
- 女性のフレイムヘイズ。ヒルダやレベッカやヴィルヘルミナ同様、ピエトロ・モンテヴェルディに「決まり文句」で口説かれたことがある模様。SII巻でのピエトロの台詞から、ヴィルヘルミナとは知己である模様。現代まで生き残っているかは不明。
- “生阜の抱擁(せいふのほうよう)”ケレス
- アルマと契約している“紅世の王”。炎の色は朽葉色。
- ローマ神話に登場する豊穣神にケレースがいる。
- オルメス[Holmès]
- 『擒拿の捕り手(きんだのとりて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。神器は枷型の“タスラム”。
- [仮装舞踏会]との全面戦争において、外界宿東京総本部の副司令に任命されたフレイムヘイズ。フリーダーが東京総本部の第三司令室を放棄する際、司令部員たちに必要ならオルメスの指示を仰ぐようにと言っていることから、有能な指揮官である模様。
- 過去に、人間と組んで[宝石の一味]の頭目であるコヨーテと何度か交戦したことがある模様。
- 二月の全世界の“徒”の日本大侵攻を前に、司令官フリーダーとの協議の末に日本外界宿の構成員たちを連れて、日本から撤退した。
- その後、御崎市の隣の大戸市へやって来て佐藤啓作と共に監視班を勤めていたが、新世界が創造されて封絶が解除された後で佐藤啓作が田中栄太と電話している途中で、田中に「監視班に回された」と告げた佐藤に対して文句を言っていた。
- シャナたちが新世界へ旅立った後は、この世(旧世界)の東京総本部の幹部として働いている模様。
- グリンカ[Glinka]
- 『攪和の打ち手(かくわのぶちて)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は眼鏡型の“プーハチ”。
- 現代のフレイムヘイズ兵団に所属するフレイムヘイズ。フルネームなど、詳細は不明。
- [仮装舞踏会]との戦争では、地上に墜落した『星黎殿』に向かってフレイムヘイズ兵団が直衛軍の前線を突破した後に出くわした要塞守備兵の防衛線を、グリンカの所属する隊が突き崩しにかかった。その後の消息は不明。
- “紀律の按拍(きりつのあんぱく)”ダジボーグ
- グリンカと契約している“紅世の王”。炎の色は雌黄。
- スラヴ神話の太陽神にダジボーグがいる。
- ノースエア
- 『焦沙の敷き手(しょうさのしきて)』の称号を持つフレイムヘイズ。神器は丸に穴の開いた石のメダル型の“テオトル”。
- 『大地の四神』の先師であるフレイムヘイズで、最古のフレイムヘイズの一人。『大地の四神』からは『宙の心臓(そらのしんぞう)』、カムシンからは『大地の心臓の神官』と呼称されていた。
- ノースエアの変換能力は灰で、焼き尽くして消し灰にする。
- かつてカムシンやティスたちと共に、数千年前に『大縛鎖』で起きた創造神“祭礼の蛇”を両界の狭間に放逐した『神殺し』の戦いに参戦。創造神“祭礼の蛇”が秘法『久遠の陥穽』によって両界の狭間に放逐された際に、両界の狭間を直に見聞きしたことで、両界の狭間に嵐を巻き起こしている「世界の歪み」の真の発生原因を悟り、後に弟子である『大地の四神』に秘中の秘として伝えた。
- 西洋からアメリカ大陸にやって来た白人たちが入植を始めてから17世紀後半までの間に、弟子である『大地の四神』がアメリカ大陸に住む人々の変わりように悩み、教えを乞いに中米の地下水脈の流れる洞窟である『大地の心臓』を訪れた時には、精神の磨耗と衰微により、骨と皮だけのミイラ同然の状態になっており、最後の力を振り絞ってウィツィロポチトリと共に『四神』を諭したすぐ後に、精神の摩滅によって死亡した。
- “遍照の暈(へんしょうのかさ)”ウィツィロポチトリ
- ノースエアと契約していた“紅世の王”。カムシンからは『天空を制す黄金』と呼称されていた。丸に穴の開いた石のメダル型の神器“テオトル”に意思を表出させていた。炎の色は金糸雀色。
- ノースエアが一線を退いて以降も、契約解除の時を待ちながら彼と共にあった。西洋からアメリカ大陸にやって来た白人たちが入植を始めてから17世紀後半までの間に、ノースエアと共に『大地の四神』を諭し、直後にノースエアが精神の摩滅によって死亡したことで、“紅世”へ帰還した。新世界『無何有鏡』が創造された後、ハルファスと共に“紅世”に残って新世界の秩序維持の意義を説いている模様(外伝『ローカス』)。
- アステカ神話の太陽神にウィツィロポチトリという同名の神がいる。
“討滅の獄”に登場したフレイムヘイズ 編集
鎌池和馬による二次創作であり、下記の文はいずれも正式な設定の上に成り立った物かは不明。本編との展開に齟齬が見られ(カムシンが御崎市に立ち寄っているなど)、公式な内容ではない可能性が強いと思われていたが、XVI巻での吉田一美とカムシンの会話の内容から、公式外伝ではないことが確定した。
- シュルス・レルリス
- コミックス二巻の付属品、グリモア内小説“討滅の獄”にて登場。
- 『末路の語り手(まつろのかたりて)』という称号を持つフレイムヘイズ。
- 男性ということ以外、容姿に関する詳細は不明。復讐を目的とする「典型的なフレイムヘイズ」であり、“壊刃”サブラクへの復讐心を糧に討滅を続けていた。優れた自在師であり、過去の『大戦』そのものには参加していないが、その後の混乱を鎮める際には多大な功績をあげた。
- 御崎市のギリギリ外側、大戸でノトブルガの襲撃を受けて、自身の“存在の力”の破裂に怯え自在法を使えないまま、『レオナルドゥスの解放』によって貫かれ爆死する。
- ノトブルガ
- コミックス二巻の付属品、グリモア内小説“討滅の獄”にて登場。
- 『潜める追っ手(ひそめるおって)』という称号を持つフレイムヘイズ。
- フレイムヘイズを殺す討滅者。外見は幼い少女で、身長は140センチ前後で髪は金髪と茶髪が混じり合っている。透き通るような白色の肌で、顔立ちは端整。服装は黒一色で声は低い。
- 中世の『大戦』の前に名を馳せ、この世と“紅世”を行き来する自在法の研究を行っていた“紅世の王”を愛したが、その“王”が宝具『討滅の獄』により無理矢理人の身に封印・契約させられた為、それ以来彼の探索・解放を目的としている。
- 『討滅の獄』とは中世の『大戦』直後のフレイムヘイズ不足の最中、“探耽求究”ダンタリオンによって開発された宝具(ちなみに、この宝具は教授が他の“紅世の徒”から忌まれる遠因の一つであるとされる)。この世と“紅世”どちらに存在するかにかかわらず、“紅世の王”を普通の人間と強制的に契約させる効力がある。ただしこの方法で契約した“紅世の王”は契約した即席フレイムヘイズが契約を解くと言うまでは、たとえそのフレイムヘイズが死んでも“紅世”に帰ることはできず、消滅してしまう。また、顕現防止機能が備わっており、“王”はこの世に顕現することも不可能。
- 通常の契約とは違い、安易な覚悟で契約をする即席フレイムヘイズが“存在の力”を悪用し始める事件が多発したため、彼らを討滅する部隊が結成された。この時ノトブルガはカムシンと共に討伐組として戦っている。
- ノトブルガは元凶である『討滅の獄』を破壊するが、同様の方法で契約を行った他の即席フレイムヘイズの契約が解除されなかったため、フレイムヘイズをこじ開け中身を取り出すために神器『レオナルドゥスの解放』の改良を行う。
- 『レオナルドゥスの解放』には彼女が契約したラツィエルのものである、フレイムヘイズ殺しの能力の一端が備っており、鉄爪の音を聞き、輝きを目にしたフレイムヘイズの神器は壮絶に加圧され、神器からフレイムヘイズに対する“存在の力”の逆流が発生する。結果としてそのフレイムヘイズは「自己の“存在の力”を繰ることで自爆」するか、「破裂することに怯え“存在の力”を行使することができなくなり、その状態で攻撃を受け爆砕」するかの運命を辿る事になる(結果だけ見れば宝具『トリガーハッピー』と酷似)。また、契約した“紅世の王”の強制覚醒・解放も誘発する。フレイムヘイズにとっては最悪の能力であり、相手をすれば対処できず確実に敗北することになる。なお、この能力はノトブルガ自身には効果がない。
- また、愛する“紅世の王”に対して即席フレイムヘイズが最期に使用すると思われる、「“紅世”に返さない」「再顕現できない」といった封印機能を解除する自在法、『高貴な居場所(ノビリアクム)』の開発も行う。尚、『高貴な居場所』開発にノトブルガは500年の歳月をかけている。自在法の開発に成功したノトブルガは即座に探索を始め、片っ端からフレイムヘイズをこじ開けていき、わずか1週間で50人前後を殺害する。
- 事件の概要を外界宿で知り、実行者の使用した能力を推測したカムシンが、御崎市の坂井宅で神器に関する実験を行う(尚、この際神器内の“紅世の王”4人とその周辺人物の間で普段あまり見られない珍問答が繰り広げられる)。それを踏まえ、『フレイムヘイズではない“討ち手”』『封絶内を自由に動き回る』『並みの“徒”を超える“存在の力”を持つ』という条件を兼ね備えた、宝具『零時迷子』を宿す“ミステス”坂井悠二にノトブルガの確保を依頼。フレイムヘイズ達を助けるために、悠二はシャナ・マージョリー・ヴィルヘルミナ・カムシンそれぞれから宝具・自在式などを借り受け、ノトブルガと1人闘うことになった。
- そして、御崎市のギリギリ外側で始まった坂井悠二とノトブルガの戦いは、地力の違いから悠二が危機に陥るが、悠二の持ち前の機転によってノトブルガに一瞬の隙を作らせ、悠二がシャナから借り受けた『贄殿遮那』でノトブルガの胸を貫いて、戦闘不能状態となった。その直後、悠二に何故フレイムヘイズを討滅し続けたのかを問われたノトブルガはその理由を話し、自分の行為が既に“紅世の徒”と何ら変わらないと気付いていながら止められなかったと自嘲し、悠二にとどめを刺すよう暗に促すが、その直後に彼女と契約した“王”ラツィエルがノトブルガがまだ生きて封絶を維持できている状態にもかかわらず、ラツィエルの持つフレイムヘイズ殺しの力で内側から強引に、契約者ノトブルガの器を破壊して仇討ちの為の顕現を果たそうとして、ノトブルガは消滅の危機に陥るが、悠二が必死にラツィエルを説得して一命を取り留めた。
- “秘説の領域(ひせつのりょういき)”ラツィエル[Ratziel]
- ノトブルガと契約している“紅世の王”。炎の色は薄紅色。細い鎖によって形作られる鉄爪型神器『レオナルドゥスの解放』に意思を表出させている。低い男性の声で話し、フレイムヘイズ殺しの能力を持つ。
- 御崎市のギリギリ外側で始まった坂井悠二とノトブルガの戦いで、ノトブルガが戦闘不能になり悠二に暗にとどめを刺すよう促した直後に、悠二に語りかけてノトブルガがまだ生きている状態であるにもかかわらず、自身が持つフレイムヘイズ殺しの力でノトブルガを内側からこじ開けて、強制的な顕現を果たそうとした。それは、ノトブルガの行為を感情の波の無い言葉で言い当てるのとは裏腹に、契約者を思いやる性格からの行動であったが、悠二の必死の説得によって思い留まった。
- キリスト教・ユダヤ教で天界と地上における全ての秘密を知っているとされる天使ラジエルの別名がラツィエルである。