ブルベのスタート風景。ブリーフィング中
長時間におよぶブルベでは夜間走行が伴う

ブルベ:Brevets)とは、タイムや順位には拘らず、制限時間内での完走を認定するロングライドサイクリングイベント[1][2]。管轄する組織やルールによって様々なものがあり「ブルベ」とはフランス語で「認定」を意味する[2]。イギリスやオーストラリアでは、オダックス英語版フランス語版ドイツ語版ポルトガル語版(Audax)という呼称も用いられる。

ACP(Audax Club Parisien)が規定するBRM(Brevets de Ranndonneurs Mondiaux)というブルベが最も有名であるが、他にも Union des Audax Français(UAF)が規定するBrevet UAF(BUAF)など、様々のブルベが存在する。

目次

概要編集

各チェックポイントでのチェックの例とチェックポイントとして使用されるコンビニ

参加者は事前に公表されている通常200kmから1400kmのルートに従って走行し、指定されたPCと呼ばれるチェックポイント[注釈 1]を通過してゴールを目指す[3]。タイムは計測されるが、順位は公表されない[4]。制限時間は、努力は要するものの無理のない、おおよそ平均時速15km程度で走れるように設定されている[5]。途中で休憩したり、宿泊したり、観光したり、寄り道をするのも自由であるが、チェックポイントには通過時間が設定されており、それよりも遅くても速くても認定を受けることは出来ない。チェックポイントの通過証明には、コンビニエンスストアのレシートや、地名が記された看板の写真などが使用される[6]

規定の距離を制限時間内に走るなどの基準をクリアするとコース完走の認定を受けることができ、認定を受けるとフランスより認定メダルを任意で購入する事が出来る[1]。メダルのデザインはPBPに合わせて、4年毎に変更される[3]。また体力の問題やマシントラブルなど何らかの理由で棄権する場合は「DNF」[注釈 2]を宣言できるが、その場合も主催者による回収はないので、自力で何らかの手段を取って帰宅する必要がある[7]。走行中の事故や受傷についても自己責任となり、主催者は基本的にボランティアでイベント開催に関する責任は負わない[8]。そのため参加費用も安価に設定されている[8]

スタートする時間は通常指定されており、通常その時間より30分以内にスタートできない場合は非認定となる[3]。スタートに先立ち車検も実施され、安全装備などの点検が実施されるが[3]、通年設定されたパーマネントコースでは、スタート時間が任意のこともある。

スピードを競う必要がないので、体力だけでなく、途中の仮眠の取り方や、機材の使いこなしなど、知力と経験も重要な要素となる[9][10]。夜間の走行や過酷な環境での走行、睡魔との闘いなど、非日常を楽しむことができ、そこにブルベの魅力があるとされる[9][11]

組織と用語編集

  • RM(ランドヌール・モンディオ) - ブルベの世界組織
  • ACP(オダックス・クラブ・パリジャン) - パリの自転車組織、BRMを創設。RM加盟組織。PBPを開催。
    • BRM(ブルベ・ド・ランドヌール・モンディオ) - ACPが規定するブルベ
  • AJ(オダックス・ジャパン) - RM加盟組織。ACPが定めたBRMを日本で開催し、ACPが認定を行う。実際は日本各地の支部集合体であり、BRMも各地方のクラブが実施している。

日本でのブルベ編集

2016年現在は、オダックス・クラブ・パリジャンからの委任によりオダックス・ジャパン(Audax Japan)が日本でのブルベを統括している[12]。ACPやAJの認定ブルベ以外にも、類似のルールにより実施されているブルベもある。

日本のブルベの歴史編集

  • 1994年、関東在住の有志によってに設立された「ブルベ・ジャポン実行委員会」が設立される。これが日本のブルべの発祥となる[6][13]
  • 1995年、「ブルベ・ジャポン実行委員会」は、日本サイクリング協会の後援も受け「ルート・エヌ(日本)」という独自のブルベを実施した[6][13]。本州5ヵ所のコースが設けられたが、当時の距離は50km、100km、200kmの3種類であった[6]。「ブルベ・ジャポン実行委員会」はスターライトジャパンというサイクリングイベントの企画運営を行う個人事務所が設立に関わっており、ヨーロッパで開催されているブルベを日本に合わせたスタイルで導入しようとしたもので、自己責任・ノーサポートという原則はACPが規定したBRMと同じであるが、スタート日時が任意・途中の仮眠時間は走行時間から除外するという点が異なっていた[13]
  • 1996年、ブルベ・ジャポンが認定するコースは10コースに拡充された[13]
  • 1999年、カナダの団体から日本人がPBPに初参加した。2002年、日本からPBPへの参加を念頭においた公式のBRMが静岡県掛川市で開催され80名が参加した(距離は200km)[13]。この頃はキューシートもなく、当日現地でルートをマーカーで記載した1/25000の地図のコピーが渡されるというシステムであり、76名が認定を受けた[13]。2002年は32人がSRを取得した。
  • 2003年、日本から21人が初めてPBPにエントリー。これに先立って1999年PBPの視察や現地ACPやRM(ランドヌール・モンディオ)との情報交換、カナダ600kmBRMへの日本人参加者の繰りこみ等を行い、特別扱いで2002年のPBP参加が認められた[注釈 3]
  • 2004年、北海道で「RJ(ランドヌールジャポン)北海道」が設立される[4]。また横浜市に「RJ(ランドヌールジャポン)」が置かれた。その後、オダックス・ジャパンと改称する。
  • 2005年、日本で初の1000kmブルベが開催された[13]
  • 2009年、日本が開催ポイントで、世界二位のブルベ開催国となる。またオダックス埼玉が開催クラブ別で認定ポイント世界一のクラブと認定される。
  • 2013年、2014年の2年間日本が開催ポイントで、世界一位のブルベ開催国となる。
  • 2015年、日本が開催ポイントで、PBP開催年によるフランスでのブルベ人気の影響から世界二位のブルベ開催国に後退。翌2016年以降はアジアや南米のブルベ隆盛により徐々に地位が後退。
  • 2016年、一般社団法人化に伴いオダックス・ジャパンが「一般社団法人オダックス・ジャパン」となる。

装備編集

自転車
 
リカンベントでの参加
車種は、公道の走行に法的な問題がなく、人力のみを動力とするものであれば何でも良い[14]。殆どのサイクリストはロードバイクランドナーのようなツーリングバイクを使用するが、リカンベントベロモービルタンデム自転車による参加も見られる[3]
前照灯
夕方から明け方まで点灯可能なもので、走行距離が400km以上になる場合は2つ以上の設置が義務[14]
尾灯
夕方から明け方まで点灯可能で、常時点灯タイプのもの[15]
ベル
道路交通法においても、系車両に分類されることから装着が義務[16]
ヘルメット
400km以上の場合にはヘルメットに尾灯の装着も義務になり、車体の尾灯に関しては点滅は認められていないが、ヘルメットの尾灯の場合には点滅も認められている[17]
反射ベスト
すべての走者は反射ベスト、反射たすき、反射肩掛けベルトなど、前後の見えやすい位置に反射素材がついた同等のものを着用することが義務となる[17]

走行距離と認定編集

ACP管轄のBRMにおける距離ごとの制限時間は、次の通りである[5]

  • 200km:13.5時間
  • 300km:20時間
  • 400km:27時間
  • 600km:40時間
  • 1000km:75時間

伝統的なBRMの距離は200km、300km、400km、600kmである[3][9]

シューペル・ランドヌール編集

200km、300km、400km、600kmの4つの距離のBRMの認定を同一年に受けるとACPにより「シューペル・ランドヌール」(SR。フランス語。英語では「スーパーランドナー」)に認定される[18]。パリ・ブレスト・パリ(後述)に参加する為には、開催年の1-6月までに、「シューペル・ランドヌール」の認定を受けなけれなならない[18]

ランドヌール5000編集

4年間に合計5000kmの認定を受けるとACPによって「ランドヌール5000」(Randonneur 5000)に認定される[11]。5000kmの中には、フレッシュ、PBP、200-300-400-600-1000kmのBRMが、コンプリートで含まれている必要がある。2013年1月の時点で、世界で1961人が認定を受けている。うち71人が日本人である[11]

ランドヌール10000編集

ランドヌール5000の認定が設けられて50年を記念してACPによって創設された認定で、6年間で10000kmの距離を認定された方を特別表彰するもの。10000kmとして当てることができるサイクルイベントは、細かく取り決めがある。ただし、その期間内に下記の条件を満たす必要がある。
  • 200km、300km、400km、600km、1000kmの認定BRMを各2回以上出場し認定されていること(長距離のブルベを短距離のブルベの認定に充当することはできない)。
  • PBPの1200kmを走り認定されること(PBPは4年毎なので、6年間に開催される回数は1回ないし2回)。
  • Fleche Velocio(日本の場合は、Fleche Japon)に参加し認定されていること。
  • シューペル・ランドネ600のランドヌール部門の認定を受けていること。

その他のブルベ編集

フレッシュ編集

フレッシュは(フランス語:Flèche)「矢」を意味し、英語圏では「アローズ」という、チームで走行するブルベ。国によって細則が異なるが、日本では3台以上5台以下の自転車で出発し、24時間以内に360km以上を走行しなければならない。ゴールできた台数が3台未満だと、そのチームは失格となる。コースはチームによって自由に設定できるが、各チェックポイント間は最短距離で結ばなければならず、また22時間目から24時間目までの2時間で25km以上走行しなければならない。出発地点、スタート時間もまちまちであるが、ゴール地点は同じ地域に設定される。ゴール後に完走できたメンバーが集まり、再会を祝ったのがそもそもの始りであり、それに倣ってゴール後はパーティーが開催される。
Audax Japan : Fleche Japon 規定

シューペル・ランドネ600編集

Super Randonnées600(SR600)と呼ばれる常設(パーマネント)山岳ブルベ[8]。通年で設定されている全長600kmのコースを、好きな日時・時間に走行する事が出来る。コースには難易度を含めて設定の基準があり、主催者か考えたルートがACPによって認定される。獲得標高も10000m以上が要求される。50時間という制限時間が設けられている「ランドヌール部門」と、制限時間がない「ツーリスト部門」に分かれている[8]。スタート地点、チェックポイント、ゴールは無人であり、多くの場合はモニュメントと自転車を一緒の写真に撮るなどの指定された方法で通過の確認が行われる[8]

世界の著名ブルベ編集

パリ・ブレスト・パリ編集

略称:PBP。ブルベの最高峰とされ、世界最古のサイクリングイベントでもある[11]パリ - ブレスト間を往復する、4年に1度開催される1200kmのブルベ[18][11]。2015年は参加枠7000人に対して5000人あまりが参加した。また、このイベントの開催を記念して考案された同名の菓子も有名である。

ボストン・モントリオール・ボストン編集

略称:BMB。ボストン - モントリオール間の1200kmの往復コースで、北アメリカにおけるPBPに相当するイベントと認識されることもある。PBP開催年を除き、毎年実施されていたが2007年以降開催されていない。

ゴールドラッシュランドナー編集

略称:GRR。北米で開催されるいくつかの1200km級ブルベのひとつ。カリフォルニア州デイビスから北上する往復コースで設定されている。参加資格やルールはPBPに準じる。

ディアゴナール編集

フランス全土の対角線にあたる9つのルートを制限時間内に走る長距離サイクリング。

ロンドン・エジンバラ・ロンドン英語版編集

略称:LEL。ロンドンエジンバラの間を5日間で往復する、1400kmのブルベ。4年に1度開催されるが、参加資格は特になく誰でも参加できる。イギリスでの開催なので、毎回寒冷や雨天など天候条件が過酷な事が多い。オダックス・イングランド(AUK)が1989年から開催している[19]。第5回となる2005年大会には306人が参加し、246人が完走した。

ミグリア(1001miglia)編集

イタリアで開催される長距離ブルベ。ミラノ郊外のネルヴィアーノを出発し、イタリア半島を南下しながら時計回りに、ディコマーノ540km、ボルセーナ871km、Castelnuovo1110km、ボックスリーグレ1480kmを経由してネルヴィアーノに戻る、全長1600km超のブルベ。1001は1001マイル(1611km)のこと。2012年は330名が参加した[20]

PAP編集

オーストラリアパースアルバニー間を往復する1200kmのブルベ。4年毎に開催されている。

MGM編集

スペインで4年に1度開催される1200kmブルベ。Madrid-Gijon-Madridの言葉の通り、マドリード-ヒホンとの間を往復する。エントリーにはSRの取得が必要[21]

ロッキーマウンテン1200km編集

カナダで開催される1200kmブルベで、PBPに倣って1996年から4年に1回開催される。BC Randonneurs Cycling Clubが運営する。84時間と90時間のカテゴリーがあり、2012年は125人の参加枠に対して112人が参加した。エントリーには満たすべき基準が定められている。カナダは高速道路に自転車走行可能なので、高速道路も走るブルベ。コース中2000m級の峠を2つ超えるが、コースがわかりやすく難易度は低いとされる。景色も良いことで有名。

特記事項編集

  • 2015年4月、宇都宮、前橋、高崎、水戸の4市自治体共同で、日本初の自治体主催のブルベが開催された[2]。宇都宮市長の挨拶の後、水戸市長の合図で244人の参加者が400km先のゴールを目指した[2]。チェックポイントとしては、各市の名産食品を準備した公的施設が「おもてなしポイント」として指定された[2]
  • AJは主にACPが規定してBRMを開催するが、BRMではないブルベももちろん開催されている。

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ フランス発祥なのでPoint de Controle、つまりPCと略される
  2. ^ Did Not Finish、完走せずの意味。
  3. ^ 当時ACP自体に新規参加のルールが規定されていなかったため。特別扱いとは言え同年のSR資格取得は必要とされた

出典編集

  1. ^ a b ランドヌール Vol.1 P.8
  2. ^ a b c d e 銀輪、躍る北関東400キロ 4市に休憩地、名産を堪能 “ブルベ”走行会 /群馬県 朝日新聞 2015.05.24 東京地方版/群馬 27頁 群馬全県 写図有(全1,180字)
  3. ^ a b c d e f ランドヌール Vol.1
  4. ^ a b 長距離走るサイクリング競技*「ブルベ」の魅力広めたい*有志が愛好団体設立*11、12日300キロ走行しPR 2004.09.03 北海道新聞 朝刊地方 31頁 札C(全730字)
  5. ^ a b ランドヌール Vol.1 P.9
  6. ^ a b c d 自転車の長距離ツーリングに認定制度が発足 時間は参加者が自己申告 読売新聞 1995.10.27 東京朝刊 21頁 写有(全1,236字)
  7. ^ ランドヌール Vol.4 P.11
  8. ^ a b c d e ランドヌール Vol.4 P.5
  9. ^ a b c 潮流 報道部長・下山克彦 「ブルベ」の魔力 2014年08月14日 中国新聞 朝刊 広場(全748字)
  10. ^ ランドヌール Vol.4 PP.14-18
  11. ^ a b c d e サイクリングで長距離走破 4年5000キロ世界認定 三田の弓場さん 日本では71人のみ 神戸新聞 2013年02月26日 朝刊 30頁 淡路W(全792字)
  12. ^ ランドヌール Vol.1 P.10
  13. ^ a b c d e f g シクロツーリスト Vol.6 P.76
  14. ^ a b ランドヌール Vol.3 P.8
  15. ^ ランドヌール Vol.3 P.16
  16. ^ ランドヌール Vol.3 P.18
  17. ^ a b ランドヌール Vol.3 P.42
  18. ^ a b c ランドヌール Vol.1 P.11
  19. ^ Tony Farrelly (2009年4月22日). “London-Edinburgh-London: Britain's toughest bike ride needs your help!”. road.cc. 2016年1月4日閲覧。
  20. ^ 1001miglia 公式ページの参加リスト
  21. ^ MGMの公式ページ

参考文献編集

関連項目編集

  • ろんぐらいだぁす! - 主人公の目標がフレッシュ参加。他にも作中でブルベの様子が描写されている。

外部リンク編集