ブルボンの封印』(ブルボンのふういん)は、藤本ひとみの歴史小説。新潮社より1992年12月に刊行された。

フランスで語り継がれる鉄仮面伝説とルイ14世の双子説を新たに解釈している。

主な登場人物編集

  • マリエール・ボス − 薬剤師の養女。肩に謎の焼き印があるため、周囲から避けられている。
  • ジェームズ・ド・ラ・クローシュ − マリエールの幼なじみで高潔な美青年。自分の出生に疑問を持っている。
  • ルイ − フランス王ルイ14世。実在の人物。
  • マノン・ボス − 母の浮気を父に告げ口したため、母子とも家庭内暴力を受け居場所がなくなる。ジェームズを慕う。
  • アドリアン・モーリス・ド・ノアール - ルイの側近

あらすじ編集

17世紀半ばのフランス。捨て子を修道院へ運ぶ男は、突然若い女に突き飛ばされ、ジュール・マザランの馬車に轢かれ男は死亡する。事故現場には、拘束され死亡していた乳児と、なぜか健康そうで百合紋に「マリエール」と肩に焼印をされた女の乳児が遺された。臨終の床のフランス国王ルイ13世の密命を受け先を急ぐマザランは、乳児たちを拾い集め、ジェームズと言う5歳の少年が暮らす屋敷を訪れる。マリエールは、高貴だが孤独に暮らすジェームズにとって初めて出会った子供であり、国王の密命通りジェームズがチャネル諸島ジャージィ島(英国領だがフランス語圏)のカターレット家に身を寄せる際に、乳母のペロネッタとマリエールを同行させることを希望する。

カターレット家では、当主と亡命中のチャールズ王子の二人は淫蕩であり、イングランド生まれの夫人と娘は敬虔な新教徒であった。そのはざまに置かれたジェームズは相反する教育を受けながらも高貴さを失わず、マリエールもまた清純で美しい少女に成長していた。ある日、二人とペロネッタの実娘(マリエールの義妹):マノンは、ペロネッタがカターレット家当主(ジェームズの義父)と不倫する姿を目撃してしまう。強いショックを受けた姉妹に、ジェームズは二人を赦し誰にも言わないよう諭す。マリエールはジェームズの教えに従ったが、多感な少女だったマノンは父親に告げ口をしてしまい、以来、母子ともに家庭内暴力を受け居場所を失う。マノンはいかがわしい店に出入りし、毒薬の知識も身につけていく。養女だったため暴力を逃れたマリエールも、肩の焼印が原因で人間関係に悩むようになる。ジェームズは、肖像画などから自分がイングランド王なのではないかと疑念を持つようになる。当時のイングランドは清教徒革命により国王が処刑され、混乱状態にあった。

ジェームズはやがてガーンジィ島の大学へ留学し、4年後に帰島しマリエールと再会した。二人は互いにほのかな恋心を抱くが、突如としてル・テリエを筆頭としたフランスの追手がジェームズの元に迫る。直ちに逃走したジェームズをマリエールは匿う。清らかで情熱的な口づけを交わすとともに、ジェームズは「もし自分がイングランドの王なら、神に与えられた義務を果たし、そして必ずマリエールを王妃にする」と誓う。ジェームズは海を泳いでフランス本土に渡り、さらにイングランド本土へ逃がれ、またマリエールも自分の出自とジェームズを追ってフランスへ渡るのだった。一方のマノンも、二重スパイとして彼を追う役目を担い、ジェームズを執拗に狙う。

その途上、マリエールは病に倒れたルイという青年と出会う。ジェームズと瓜二つの彼こそがルイ14世であり、若い側近のアドリアン・モーリスとフランソワ・ミシェルは、宰相ジュール・マザランニコラ・フーケに公私とも支配され、放蕩生活を送るルイが真の王として覚醒することを願っていた。ルイを治療したことがきっかけで、マリエールはアドリアンの保護下で教育を受けて読み書きを習い、自分の出生の秘密に迫っていく。一方、ルイもまたマリエールを愛するようになる。その最中、ジェームズの遺書と遺品が届けられた。ジェームズはマノンと最後の日々を過ごし、マノンが自分の身代わりになって障害を負った負い目から肉体関係を持ち、彼女を妊娠させていた。実は全てはマノンの計画であり、彼の妻になるという夢を果たそうとする。ジェームズの死を知ったマリエールは絶望し、ついにルイの愛妾となることを決意する。ルイはマリエールに溺れ、スペイン出身の王妃マリー・テレーズを粗雑に扱い、スペインとの外交問題になりかける。またマリエールもルイにジェームズの姿を重ね思い悩んでいた。

マリエールは自分の実家ピカルディ家の謎を解くため、実父アントワーヌが携わった毒殺事件を追跡する。その途上、囚人たちの悲惨な待遇を知り、そして下級貴族出身の軍人ド・ヴォーバンと知り合ったことで、社会制度や福祉に対する関心を持つようになっていく。ヴォーバンは父の親友であり、マリエールに鍵を託した女囚が乳児だった彼女を救った元女中であり、その鍵は建築家でもあるヴォーバンが親友夫妻のために作った隠し扉を開けるものだと教える。マリエールは自分の肩の焼印の意味を悟り、ついに両親を無実の罪で死に追いやった者を知る。それが、ニコラ・フーケだった。フーケは政敵を殺害するために毒薬を入手したが、アントワーヌを懐柔できないと知ると、マザランの助力を得て夫妻に無実の罪を着せ処刑させていた。

一方、落命していなかったジェームズは、自らがルイ14世の兄で、正当な王位継承者であることを知る。フーケや、イングランド国王となった幼馴染チャールズ2世の協力を得るが、それはフランスを英国へ割譲し、他を共和国として分割する陰謀であることを察知し、フランスへ帰還する。

 
監獄の鉄仮面

ルイと側近たちは、フーケの失脚を決心し、1661年8月、フーケの開催した豪勢なパーティに向かう。そこにジェームズが現れる。かくして出生以来初めて兄:ジェームズと弟:ルイが再会する。マリエールは彼らに飲み物を用意し、そのうち一つにマノンの助言を得てジェームズのための栄養剤を入れた。それを飲み終えた途端、ジェームズとルイがその場で衣装を交換していたことが明らかになる。さらにルイは倒れ意識不明となる。その瞬間、ジェームズがルイとして名乗り出て、アドリアンも追随する。かくして真の国王による親政が開始されたのだった。劇的な出来事に茫然となったマリエールが厨房へ戻ると、マノンがジェームズの子を宿したままこと切れていた。幼いころから愛情を求め続け、愛するジェームズがフランス国王になろうとした瞬間に彼の記憶を奪った上マリエールも毒殺しようと図り、全てを独占したと信じ死んだマノンに深い悲哀を禁じ得ないのだった。

しばらく後、ピカルディ家を再興し貴族としての務めを見出したマリエールの元を、ルイ14世となったジェームズが忍んでやって来た「やり直せないだろうか」と。そこにはジャージィ島で過去に迷った日々の面影で無く、本来の居場所での未来があった。他方、北イタリアのフランス領ピニェーロの監獄には顔を覆われ、丁重な扱いを受ける囚人がいた。人々は彼のことを「鉄仮面」と呼んだ。

関連作品編集

舞台編集

1993年宝塚歌劇団が舞台化した。

漫画編集

森川久美が漫画化。角川書店あすかコミックスDXから全3巻で発売。講談社漫画文庫から全2巻で発売。

関連項目編集