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一端を動力車(写真奥の電気機関車)、もう一端を制御車(手前)とした編成
DBインターシティ
両端を動力車とした準動力集中方式の編成
FNCSTGV Atlantique

プッシュプル列車(プッシュプルれっしゃ)は、鉄道動力集中方式の列車において、機関車制御車を配して前後双方向に走行可能とした列車である。編成の一端を無動力の制御車としたものと、両端を機関車または動力車としたものがある。

制御車を先頭に運転する際は、最後尾の機関車・動力車を遠隔制御して推進する形となる。機関車交換や機回しを解消し、折り返しの時間を短縮する利点がある。ドイツ語圏ではこの形態をヴェンデツーク(Wendezug)と呼ぶ。

準動力集中式の列車では、両端を動力車とする方式がTGVICE 1アセラ・エクスプレスで、片側に制御車を有する方式がICE 2SJ2000でそれぞれ採用例がある。

各国の事例編集

 
メトラ(アメリカ合衆国)
 
レイルジェット(オーストリア)
 
ZSSK 951系電車(スロバキア)

アメリカ合衆国編集

通勤鉄道ではNJトランジットバージニア急行鉄道メトラニューメキシコ・レイルランナー・エキスプレスカルトレインメトロリンクコースターなど、複数の鉄道で機関車・制御客車によるプッシュプル列車が運行される。これは1950年代末にシカゴ・ノースウェスタン鉄道(現:メトラ)で通勤列車の合理化の一環として導入されたもので[1]、当初は脱線を心配する向きもあったものの、結果的には杞憂に終わり[1]、各地の通勤鉄道に広まったものである。

アムトラックではパシフィック・サーフライナーアムトラック・カスケーズキーストーン・サービスなどの都市間列車で採用されている。特にキーストーン・サービスでは110 mph (180 km/h)という高速で運転されている[2]

カナダ編集

アメリカ合衆国同様通勤鉄道での採用例があり、トロントGOトランジットモントリオールモントリオール大都市圏交通局バンクーバーウエストコーストエクスプレスで見られる。

イギリス編集

高速列車では、インターシティー125で両端に客室のない動力車を置いた方式を採用する。インターシティー225では電気機関車と反対側に無動力の制御荷物車を配している。

オーストリア編集

都市近郊列車や地域輸送列車のほか、都市間列車のレイルジェットで採用されている。

ドイツ編集

地域列車、Sバーン、都市間列車で主に見られる。

スロバキア編集

国鉄系旅客列車運行事業者の鉄道企業体スロバキア(ZSSK)が2011年チェコ・シュコダトランスポーテーション製の381形交直流電気機関車と、381形または263形交流電気機関車によるプッシュプル運転用2階建て客車の同社製951系電車(951形二等制御客車および051形二等付随客車、3電気方式に対応しておりZSSKでは電気車に分類)を導入し、ブラチスラヴァ中央駅を中心とした近郊列車で運用中。

台湾編集

 
PP自強号(台湾)

台湾鉄路管理局E1000型電車自強号として運行されている。両端が客室のない動力車によるプッシュプル方式であることから、他の型式と区別する際に英語の短縮形を接頭語にした「PP自強」、その意訳で「推垃式自強号」と呼ばれることが多い。

日本編集

 
大井川鉄道井川線(日本)
 
石北本線の貨物列車

大井川鐵道井川線では、1991年のアプト区間開業より全列車が機関車と制御客車によるプッシュプル運転を行っている[3]。観光列車では比較的広く見られ、嵯峨野観光鉄道、JR北海道のノロッコ号、JR西日本の奥出雲おろち号がこの方式を採用する。 和田岬線では1991年まで運行された客車列車で行われていた。

両端に動力車を組成するプッシュプル列車の例として石北本線の貨物列車が上がることがあるが、この場合、二両の機関車は本務機と後補機の関係である。機関士(運転士)もそれぞれの機関車に一人ずつ乗務しており、遠隔操作総括制御を用いること無く、双方の機関士(運転士)がそれぞれの機関車を操縦している。このため、本来の意味のプッシュプル方式には当たらない。

同線でこのような運転方法がとられている理由は、急勾配と急曲線が連続する北見峠常紋峠重連運転に比べ空転に対処しやすく[4]、さらに遠軽駅で列車の進行方向が逆になる際の機回しが省略できることによる。

群馬県内の信越本線で定期的に運転されている客車の旅を楽しむ列車も、折返し駅横川転車台機回し線がないため、同様の運転方法をとっている。

脚注編集

  1. ^ a b 沢野周一; 星晃 (1962). 写真で楽しむ世界の鉄道 アメリカ 1. 交友社. pp. 113-114. 
  2. ^ Amtrak National Railroad Passenger Corporation. “The Keystone Corridor”. 2015年10月15日閲覧。
  3. ^ 和田洋『客車の迷宮』、交通新聞社、2016年、67頁、ISBN 978-4330656168
  4. ^ 特に、各軸が機械的に連動しており、1軸ごとの再粘着制御が出来ない液体式ディーゼル機関車で顕著。

関連項目編集