プラモ天才エスパー太郎

日本の連載漫画

プラモ天才エスパー太郎』(プラモてんさいエスパーたろう)は、斉藤栄一による日本漫画小学館の月刊漫画雑誌『月刊コロコロコミック』に1983年4月号から1984年8月号にかけて連載された。

プラモ天才エスパー太郎
ジャンル SF漫画、ホビー漫画
漫画
作者 斉藤栄一
出版社 小学館
掲載誌 月刊コロコロコミック
レーベル てんとう虫コミックス
発表期間 1983年4月号 - 1984年8月号
巻数 全3巻
テンプレート - ノート
ポータル 漫画

概要 編集

連載開始当時、ライバル誌の『コミックボンボン』でプラモデル漫画『プラモ狂四郎』(以下、『狂四郎』と略)が人気を博していたため、それに対抗し得るプラモ漫画として描かれた作品である。作者の斉藤がプラモを大の趣味としていることに加え、熱烈なSFファンだったこともあり、同じプラモ漫画でも『狂四郎』とは違った要素を盛り込むために『幻魔大戦』『七瀬ふたたび』といった作品をベースとして、超能力の要素が盛り込まれることとなった[1]

プラモ漫画ではあるが、当時の小学館が『超時空要塞マクロス』の掲載権を所有していたため[1]、本作で登場するプラモはマクロスをはじめ、ほとんどが「超時空シリーズ」のものである。

テーマに超能力を盛り込んだため、連載開始当初の『コロコロコミック』編集部が意図していたプラモ漫画とは異なる作品として仕上がってしまったが、プラモデルに対する読者からの反応は少なく、むしろ超能力作品として愛読する読者が多かったという。また、それまでにギャグを多く手がけていた斉藤が、初めて原作なしでのストーリー作品に取り組んだ作品であり、斉藤も非常に思い入れの深い作品と語っている[1]

単行本はてんとう虫コミックスレーベルで全3巻が発売されたが最終回と直前の2話が収録されなかった。後年になって未収録を追加した完全版がコミックパークの小学館オンデマンドコミックスから発売されたが、コミックパークが2022年9月20日をもってサービス終了[2]しており、同年10月より単行本基準収録の電子書籍版が各電子書籍配信サービスにて販売開始した。

作者の斉藤と『狂四郎』の作者のやまと虹一氏は同郷出身の友人同士であった[3]

あらすじ 編集

主人公・茂寺太郎をはじめとする少年少女たちが「エスパープラモ戦隊」を結成、プラモの中に入り込んで戦う「プラモイン」と呼ばれる超能力を駆使し、超能力の悪用を企む魔仁塔の野望に立ち向かう。

主な登場人物 編集

エスパープラモ戦隊 編集

茂寺 太郎(もでら たろう)
主人公。小学5年生。信五が実家の模型店の看板としてフルスクラッチした1/25バルキリーVF-1Jにプラモインする。タイトルの「プラモ天才」に反して組み上げたバルキリーを「ボロキリー」と言われるほどプラモ製作技術はさっぱりだが、プラモ製作中の集中力は超人的と言え、これが強力なプラモイン能力に繋がっている。成長力に長け、戦いを重ねるたびにサイコキネシステレポート透視など次々に新能力に開眼してゆく。この1/25バルキリー自体は本来変形可能なフルスクラッチモデルなのだが、太郎は当初バルキリーが可変戦闘機であるという基本設定すら知らなかった。変形できることを知ってからも超能力が未熟だったうちはバトロイド形態のみで戦っていたが、作中で超能力の成長と共にバトロイドバルキリーをガウォーク、ファイターへ変形させる能力を会得した。終盤では長らく愛機としていたバルキリーが遂に破壊され、最終回では『サザンクロス』に登場するポール中尉のアーミング・ダブレットの改造モデルで最終決戦に臨む。
高橋 信五(たかはし しんご)
中学2年生。実家が「たかはしモケイ」というプラモ店のために各種プラモの知識に詳しく、最年長ということもあって戦隊のリーダー格である。プラモ改造を得意とする[4]。かつては魔仁塔と親友同士だった。愛機は1/72デストロイド・スパルタン
落合 耕也(おちあい こうや)
小学6年生。戦隊の頭脳とも言え、ジオラマ製作の名手でもある[4]。また、テレポート能力の持ち主でもある[4]。愛機は1/100デストロイド・トマホーク
泉 佳子(いずみ けいこ)
プラモ戦隊の紅一点。小学5年生。太郎と同学年だが、クラスは別。体力的にプラモイン能力はやや劣るが、テレパシー能力を持ち[4]、相手の心を読んで攻撃をかわすなどの活躍を見せる。愛機は1/144ファイターバルキリーVF-1J(ミリア専用機)。
泉 健市(いずみ けんいち)
佳子の弟で、小学1年生。まだ幼いのでプラモイン能力は未熟だが、予知能力、透視能力を持ち[4]、魔仁塔の来襲を予知することもできる。愛機は1/200デストロイド・ディフェンダー
雲野 大吉(うんの だいきち)
魔仁塔の通う中学の柔道部の主将。彼のプラモ仲間でもあり、超能力者でもある。魔仁塔から渡された強化リングでプラモイン能力に目覚めた。好戦的な性格が災いし、魔仁塔に刺客に仕立て上げられて太郎と戦うが、魔仁塔の卑怯さを知り、持ち前の正義感ゆえ彼と袂を分かち、太郎たちの味方となる。愛機は『オーガス』に登場するナイキック

魔仁塔と仲間たち 編集

魔仁塔 烈(まにとう れつ)
プラモイン能力を始めとするあらゆる超能力に長けるが[4]、その能力を使って世間を混乱に陥れようとしている。1人で同時に複数のプラモにプラモインできる他、サイコキネシスで手を触れずして一度に多くのプラモを一瞬で組み上げることもできる。実家は「プラモスーパー マニトウ」という大型プラモ店。当初の愛機はフルスクラッチで自作した1/20グラージリガードだったが、後にはオリジナルの改造プラモ等も使うようになる。最終回ではプラモイン能力が衰え始めているときに、無理やりプラモインして限界まで戦った結果、謎の消滅を遂げ、その姿を消す。
黒田 実(くろだ みのる)
太郎のクラスメイトで、彼も超能力を持つ。佳子に恋心を抱いていたことから、佳子と行動を共にする太郎に嫉妬。そこを魔仁塔につけこまれ、強化リングでプラモイン能力を仕込まれて太郎への刺客として差し向けられる。使用機はクァドラン・ロー、バルキリーVF-1S、スーパーバルキリー、約2mの巨大リガード等、作戦に応じて様々。後に魔仁塔に捨て駒同然に利用されていたことに気付き、転校という形で魔仁塔や太郎たちのもとから姿を消す。
阿朱良 走司(あしゅら そうじ)
魔仁塔の従弟。サッカーチームの一員で、コンクリートをも砕くシュート力を持つ。プラモイン能力の持ち主でもあり、サッカーチーム全員を催眠術にかけて強制的に無数のプラモにプラモインさせるという荒業で、太郎たちに挑む。主に『オーガス』のイシュキックを使う。人型に変形できるよう改造してある。
阿朱良 吹雪(あしゅら ふぶき)
走司の妹。新体操の使い手。彼女もまたプラモイン能力の持ち主。『サザンクロス』ラーナ少尉のアーミング・ダブレットにプラモイン。素早い動きと幻を見せる超能力で太郎を翻弄し、ついに太郎のバルキリーを分解(タイムオーバー)に追い込む。そのエネルギー暴走による爆発に自身も巻き込まれてしまうが、新型のプラモにプラモインしていたことが幸いして耐え抜き、初めて太郎への勝利を宣言した。そのプラモ性能に太郎も考えを改め、バルキリー以外のプラモを使い始めるきっかけとなった。

用語 編集

プラモイン
本作で重要な要素となる架空の超能力。超能力者がプラモデルの中に入り込み、それを自由自在に動かすことができる。プラモインにはプラモの設定が忠実に反映され、複座式なら2人同時に1つのプラモにプラモインしたり、銃火器などの武器を持つロボットや戦闘機にプラモインすれば、実際にそれらの武器を使用することもできる。だが、戦いには武器よりは運動能力が重要視され、柔道プロレスサッカー技などが有効とされる。製作手順を誤ったプラモや出来の悪いプラモにはプラモインできない。また、頭痛腹痛等の体調不良に陥るとエスパー能力とプラモイン能力が低下するなどの特徴がある。大きなプラモ、複雑な構造のプラモにプラモインするためには、それだけ強力な超能力が必要とされる[4]。また、プラモイン能力は大人になるほど弱まる性質があり、信五と魔仁塔は中学生で既に能力が衰え始めている様子。
1/25バルキリー
信五がフルスクラッチで製作したプラモデル。これだけのスケールのプラモにプラモインするには余程強力な超能力が必要となるが、信五が太郎に偶然出会った際、彼の秘められた能力を見抜いてこれを託した。以来、このバルキリーは太郎の愛機となり、彼はプラモ戦隊入りを果たすこととなった。アニメ『超時空要塞マクロス』での設定通り3形態に変形でき、専用のアーマードシステムを装着することでアーマード・バルキリーとなることもできる優れものである。
しかし太郎のエスパー能力が増すに伴い、エスパー能力がプラモの耐久力を超えるとバルキリーが分解してしまうという弱点が露見。中盤よりこれを補うため、各所をプラ板で補強し、さらに分解の危険性を察知するためのコンピューターが内蔵され、分解30秒前に頭部ゲージが点滅する等の改造が施された。改造バルキリーは全身に補強パーツが取り付けられたため、変形はバトロイド、ガウォークの2形態のみでファイター形態は変形不可能。そのため、空中戦では空を飛べるように改造された大吉のナイキックに苦戦を強いられていたが、ブースターユニットを換装することでバトロイド形態のまま空中戦が可能になった。
最終回直前ではストライクパックを装備したストライク改造バルキリーで吹雪のラーナ(アーミング・ダブレット)と戦うも、死闘の末ついに分解し、『サザンクロス』のアーミング・ダブレットに乗り換えることとなる。
超能力強化リング
プラモインするときに頭部にはめるヘッドバンド状の機械。プラモ戦隊では丸みのある共通デザインに統一されている様子だが、魔仁塔サイドは使用者によってディテールのデザインは様々である。大吉も当初は魔仁塔から渡されたものを使っていたが、太郎に味方するようになってからはプラモ戦隊の強化リングを使っている。作中では超能力がアップするとか、(超能力を持つ者が使えば)プラモインできるようになるなどと言われており、超能力を補助ないしは強化するアイテムである様子。プラモインする者は基本的にこれを身に付けているが、必ずしもプラモインに必須というわけではないようで、第1話では強化リングを持たぬ太郎が自力でプラモインに成功している。また、走司の集団催眠で強制的にプラモインさせられたサッカー部員たちは付けていなかった。終盤で太郎の超能力が強すぎてバルキリーが耐えられなくなってからも強化リングは使われつづけており、この時点でどのような役割があったのかについて作中で明確な説明は無かった。

脚注 編集

  1. ^ a b c 斉藤栄一他 著、渋谷直角 編『コロコロ爆伝!! 1977-2009 定本 『コロコロコミック』全史』飛鳥新社、2009年、245-247頁。ISBN 978-4-87031-914-1 
  2. ^ 「コミックパーク」サービス終了のお知らせ”. コンテンツワークス. 2023年9月24日閲覧。
  3. ^ 続・やまと屋ブログ堂  EX大衆 そう誰あろう…E、S君なる人物とはあの斉藤栄一氏なのだ…。
  4. ^ a b c d e f g 「プラモ秘密エスパー作戦」『月刊コロコロコミック』1983年5月号、小学館、1983年5月、3-7頁、雑誌 03809-5。 

関連項目 編集