プログレスMS-17ロシア語: Прогресс МC-17、ロシア製造番号466、NASAではプログレス78Pと呼称)は、国際宇宙ステーション(ISS)への再補給のためにロスコスモスが打ち上げるプログレス補給船。これはプログレス宇宙機の169回目の飛行となる。

プログレスMS-17
Progress MS-17 approaches the ISS (1) (cropped).jpg
ISSに接近するプログレスMS-17
名称Прогресс МC-17
Progress-78P (NASA)
任務種別ISS再補給
運用者ロスコスモス
COSPAR ID2021-057A
SATCAT №48869
ウェブサイトhttps://www.roscosmos.ru/
任務期間179日間(予定)
196日 and 12時間(継続中)
特性
宇宙機プログレスMS-17
宇宙機種別プログレスMS
製造者RCSエネルギア
打ち上げ時重量7000 kg
ペイロード時重量2439 kg
任務開始
打ち上げ日2021年6月29日23時27分20秒 UTC[1][2][3]
ロケットソユーズ2.1a
打上げ場所バイコヌール宇宙基地31番射点
任務終了
廃棄種別軌道離脱(予定)
減衰日2021年11月24日
軌道特性
参照座標地球周回軌道
体制低軌道
傾斜角51.65°
ISSのドッキング(捕捉)
ドッキング ポイスク天頂
ドッキング(捕捉)日 2021年7月2日 00:59分 UTC
分離日 2021年10月20日 23:42 UTC
ドッキング時間 110日 22時間 43分
ISS(配置換え)のドッキング(捕捉)
ドッキング ナウカ天底
ドッキング(捕捉)日 2021年10月22日 04:21:07 UTC[4]
分離日 2021年11月24日(予定)
ドッキング時間 81日 and 7時間 (継続中)
輸送
重量2439 kg
加圧1509 kg
燃料470 kg
ガスカーゴ40.5 kg
水カーゴ420 kg
プログレスISS再補給

来歴編集

プログレスMSはプログレスMをもとに航法装置を強化した無人輸送機。この強化されたバリエーションは2015年12月21日に初めて打ち上げられた。このバージョンでは以下の強化が施されている:[5][6][7][8]

  • 人工衛星を展開可能な新しい外部コンパートメント。それぞれのコンパートメントは4個までの発射コンテナーを搭載することができる。プログレスMS-03で初めて搭載された。
  • ドッキングおよび密閉機構の電気モーターの予備システムの追加による強化された冗長性
  • 貨物コンパートメントへのパネル追加による微小隕石防護力の増強
  • ロシアのルーチ中継衛星とのリンク機能によって、地上局の視野外でもテレメトリーと制御が可能に
  • 地上局による軌道決定の必要なしに状況ベクトルおよび軌道パラメーターの決定を可能にするGNSS自律航法
  • 宇宙ステーションとの直接無線データ交換機能によるリアルタイムの相対ナヴィゲーション
  • ドッキング操作のための強化されたTV視野を可能する新しいディジタル無線システム
  • 統合コマンド・テレメトリー・システム(UCTS)によるウクライナ製のChezara Kvant-V無線システムおよびアンテナ・フィーダー・システムの置き換え
  • クルスAからクルスNAディジタル・システムへの置き換え

打ち上げと最初のドッキング編集

2021年6月29日にバイコヌール宇宙基地31番射点からISSにむけてプログレスMS-17を搭載したソユーズ2.1aが打ち上げられた[3]。プログレスMS-17は、2021年7月2日ににISSロシア軌道セグメント(ROS)に自動的にドッキングし、ナウカ・モジュール天底側にあるロシア軌道セグメントの別のポートに愛ドッキングする2021年10月21日末まで滞在した。

背景と映画撮影編集

2021年5月14日、ロシア省庁間委員会は2021年から2023年のISSのメインおよび予備クルーの構成を認可した[9]。アントン・シュカプレロフ宇宙飛行士(コマンダー)および映画Vyzov(挑戦)のクルー(女優のユリア・ペレシルドおよび監督のクリム・シペンコ英語版)がソユーズMS-19でISSへと向かうことになった。撮影はロスコスモスチャンネル1およびイエロー、ブラック・アンド・ホワイトロシア語版スタジオの合弁事業である[10][11]。医療委員会を通過した後で選ばれた代替案はニュー・ドラマ・シアターの女優アリョーナ・モルドヴィナと監督のアレクセイ・ドゥディン[12]およびコマンダーのオレッグ・アルテミエフである[13]。2021年5月24日から乗組員はガガーリン宇宙飛行士訓練センターで訓練を受けていた[14]。7月23日、一次クルーはソコル宇宙服を着用して、ソユーズのレプリカ内部での4時間のシミュレーションに参加し[15]、バックアップクルーも同じ訓練を完了した。コマンダーのオレッグ・アルテミエフ英語版によれば、2人のバックアップの宇宙飛行参加者の能力は目覚ましいものがあるとのことである[16]。2021年7月30日、宇宙船の打ち上げ前準備が開始された[17]。2021年8月31日、医療委員会はメインと予備の双方のクルーは宇宙飛行に向けて健康上の問題がないことを発表した[18]

撮影機材はプログレスMS-17で打ち上げられた[19]

監督と女優は2021年10月17日にコマンダーのオレッグ・ノヴィツキーとともにソユーズMS-18で地球に帰還することが計画され、予定通り実施された[20]。ソユーズMS-18でISSに到着したピョートル・ドゥブロフ飛行士とマーク・ヴァンデ・ヘイ飛行士はシュカプレロフとともにソユーズMS-19で着陸予定である[21]。ソユーズMS-19は2022年3月28日に着陸する予定である[22]

反応編集

ロスコスモス長官のドミトリー・ロゴージンによれば、この映画は「ロスコスモスが、普通の2人の人を約3〜4ヶ月で飛行する準備をさせることができるかどうかを確認する実験」であり、科学および航空宇宙コミュティからは、彼らのフライトから訓練された宇宙飛行士を排除するとか、公金の悪用であるとか[23]、さらには非科学的な目的のためにステーションのリソースを使用することさえも違法であると反発されている。ロシアの検事総長、イゴール・クラスノフ英語版は、宇宙ステーションの資源の使用が違法であるかどうかの調査を開始した[24]。ロスコスモスの有人飛行部門の責任者セルゲイ・クリカレフはこのプロジェクトに反対して発言したことで地位を失ったと伝えられているが[25]、現役宇宙飛行士からの抗議で数日後に復帰した[14]

映画編集

クリム・シペンコは監督、オペレーター、アートディレクター、メークアップアーティストを兼任して、ISS船内で35分から40分の映画を撮影した。オレッグ・ノヴィツキーピョートル・ドゥブロフ英語版も映画に出演し[26]、ドゥブロフとマーク・T・ヴァンデ・ヘイ英語版が映画製作を援助した[27]。シュカプレロフも映画のいくつかのシーンに登場している[28]

2回目のドッキング編集

2021年2月3日、ロスコスモス長官のドミトリー・ロゴージンが議長を務めるロシア有人宇宙システム試験委員会は2021年および2022年第1四半期の最新のISSのスケジュールを承認した[2]

ズヴェズダ・モジュール後方側ポートの移送チャンバーでの空気漏れが見つかったために、ロスコスモスはプログレスMS-17輸送船のドッキング目標をポイスク・モジュール (MIM2)に変更した。 110日後、プログレスMS-17は2021年10月20日の23:42 UTCにドッキングを解除した。 起動条件がドッキングに適するまでの29時間を自動飛行し、2021年10月22日 04:21:07 UTCに新しく到着した「ナウカ」の天底側(地球側)ポートに再ドッキングした [4]

プログレス宇宙船は、ソユーズ宇宙船のような迅速な定期的な再配置ができないため、このように時間をかけて再配置が行われた。 これは、プログレスが目的地であるポートの主軸から伸びる狭い円錐形のゾーン(この場合は「ナウカ」の直下)に入ってからでないと安全に運用できないようになっているためである。 つまり、プログレスはステーションから離れてから、1日後くらいに自然にステーションに近づくようになっていた。 この方法は燃料消費量が少なくて済むが、ランデブーを完了させるためには、GLONASS衛星やGPS衛星から得られる航法信号と、移転先への最終接近のためのクア-NAランデブーシステムに頼る必要があった[29]

ロシア軌道セグメントの拡張編集

 
ナウカがドッキングした後のロシア軌道セグメントのコンピューター生成画像

2021年2月3日、ロスコスモス長官ドミトリー・ロゴージンが議長を勤める有人宇宙システムテスト委員会は2011年および2022年の最新のISSのスケジュールを承認した[2]

ズヴェズダ・サービス・モジュールの船尾側に接続された移送チャンバーに空気漏れが見つかったことから、ロスコスモスはプログレスMS-17補給船のドッキング目標をポイスク・モジュール(MRM2)へと変更した。ドッキングから147日後にプログレスMS-17はドッキングを解除し、新しく到着したナウカ天底側(地球向き)ポートに、2021年10月末に再ドッキングする予定である。

この移動はロスコスモスにプリチャル・モジュールによるロシア軌道セグメント拡張の次段階の準備を可能とする。現時点では2021年11月24日に予定されているプリチャル(プログレスM-UM)の打ち上げに先立って、プログレスMS-17は貨物船および有人船のドッキング専用に設計されたナウカのドッキング機構の特別拡張アダプターを伴ってナウカの天底側ポートからドッキング解除することになる。その結果、プリチャル・モジュールはナウカの再構成されたポートに能動ハイブリッド・ドッキング・ポートを使って2021年11月24日にドッキングすることが可能となる。これによって、プログレスMS-17とともに廃棄されるアダプターを介して利用可能であったよりも、広い通路が利用可能となる。

2020年8月の計画通りに進行すれば、プログレスMS-17は宇宙空間に179日とどまることになる[30]

貨物編集

プログレスMS-17宇宙機は、1509kgの与圧貨物を含む2493kgの貨物を搭載していた[1]

  • 与圧貨物: 1509 kg
  • 燃料: 470 kg
  • 酸素: 40.5 kg
  • 水: 420 kg

ドッキング解除と投棄編集

プログレスMS-17は2021年11月24日までステーションにドッキングしており、ゴミと、その翌日に打ち上げられるプログレスM-UMで運ばれてくるプリチャルのためにナウカの天底側ポートのドッキング・アダプターとともにステーションを離れ、南太平洋上で破壊されるように大気圏に再突入する予定である。

関連項目編集

脚注編集

  1. ^ a b Russia successfully launches space station resupply ship”. Spaceflight Now (2021年6月29日). 2021年6月30日閲覧。
  2. ^ a b c Zak, Anatoly (2021年2月9日). “ISS set for the Russian expansion”. RussianSpaceWeb.com. 2021年2月9日閲覧。
  3. ^ a b Launch Schedule - Progress 78P”. Spaceflight Now (2020年12月1日). 2020年12月2日閲覧。
  4. ^ a b Expedition 66 Thread”. NASASpaceFlight.com. p. 18 (2021年10月22日). 2021年10月22日閲覧。
  5. ^ Progress-MS 01-19”. Gunter's Space Page (2015年12月1日). 2020年10月3日閲覧。
  6. ^ Progress MS-17”. NASA (2021年2月10日). 2021年2月15日閲覧。   この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
  7. ^ Zak, Anatoly. “Progress-MS”. RussianSpaceWeb.com. 2020年10月3日閲覧。
  8. ^ Blau, Patrick (2015年12月1日). “Progress MS Spacecraft”. Spaceflight101.com. 2020年11月17日閲覧。
  9. ^ Космонавты готовятся к очередной экспедиции на МКС”. ЦПК им. Ю.А.Гагарина (2021年5月25日). 2021年5月25日閲覧。
  10. ^ Актриса и режиссер фильма «Вызов» полетят к МКС 5 октября”. ТАСС (2021年4月29日). 2021年4月30日閲覧。
  11. ^ Экспедиция МКС-65/66. План полёта”. Русский космос. p. 17 (2021年4月). 2021年8月6日閲覧。
  12. ^ Фильм «Вызов»: итоги медкомиссии”. Роскосмос (2021年5月13日). 2021年5月13日閲覧。
  13. ^ Носенкова С. (2021年4月). “В открытом космосе рекорды не самая хорошая вещь”. Русский космос. 2021年8月6日閲覧。
  14. ^ a b Russian Movie in Space Part 8” (2021年7月10日). 2021年7月25日閲覧。
  15. ^ У основного экипажа МКС-66 начались совместные тренировки” (2021年7月23日). 2021年7月23日閲覧。
  16. ^ The ISS-66 back-up crew were "launched" to the ISS, for the first time” (2021年7月29日). 2021年8月22日閲覧。
  17. ^ На Байконуре началась предполетная подготовка корабля «Союз МС-19»” (ロシア語) (2021年7月30日). 2021年8月7日閲覧。
  18. ^ Члены экипажей МКС-66 признаны годными к космическому полету” (ロシア語) (2021年8月31日). 2021年9月2日閲覧。
  19. ^ Equipment for shooting 1st movie in space delivered to ISS by Russian cargo spacecraft” (2021年7月2日). 2021年7月12日閲覧。
  20. ^ “国際宇宙ステーションで初の長編映画撮影を行っていたロシア映画班が無事に帰還”. Tech Crunch. (2021年10月18日). https://jp.techcrunch.com/2021/10/18/russian-film-crew-returns-from-iss/ 2021年10月18日閲覧。 
  21. ^ На МКС 10 человек”. Роскосмос (2021年4月9日). 2021年4月30日閲覧。
  22. ^ ISS: Expedition 67”. spacefacts.de (2021年6月15日). 2021年6月16日閲覧。
  23. ^ Russian actresses who will compete for trip to ISS identified” (2021年3月21日). 2021年7月25日閲覧。
  24. ^ Russia looks for actress to steal Tom Cruise space movie thunder” (2020年11月4日). 2021年7月25日閲覧。
  25. ^ СМИ: Космонавт Сергей Крикалев лишился должности в «Роскосмосе» после критики идеи съемок на МКС” (2021年6月13日). 2021年7月25日閲覧。
  26. ^ Создатели научно-просветительского проекта «Вызов» раскрыли некоторые секреты фильма” (ロシア語) (2021年7月31日). 2021年8月7日閲覧。
  27. ^ Russia to switch to year-long expeditions to orbital outpost, says Roscosmos chief” (2021年6月16日). 2021年7月12日閲覧。
  28. ^ Soyuz MS-19 | Soyuz 2.1a”. Everyday Astronaut (2021年10月1日). 2021年10月1日閲覧。
  29. ^ Zak, Anatoly (2021年2月9日). “Progress MS-17 lifts off to prepare Prichal module arrival”. RussianSpaceWeb.com. 2021年10月21日閲覧。
  30. ^ Zak, Anatoly (2020年10月10日). “Planned Russian space missions in 2021”. RussianSpaceWeb.com. 2020年10月13日閲覧。