プロレタリア美術

プロレタリア美術(proletarian art)は、政治活動の一環として、「労働」をテーマとして革命の芸術を目指す共産主義系の美術運動である。

日本のプロレタリア美術編集

日本においては、「大正期新興美術運動」と呼ばれる美術運動が、内部の政治的意識の対立などが原因で終息した後、1920年代半ばから1934年にかけて「プロレタリア美術運動」と呼ばれる美術の創作活動があった[1][2]

1929年、矢部友衛を中心に、諸団体の統合により「日本プロレタリア美術家同盟」(ヤップ)が結成され、柳瀬正夢岡本唐貴などの芸術家が活躍した。ロシア・ソ連のリアリズム絵画に影響された岡本唐貴は、プロレタリア美術運動の理論的な主導者であった[2]。彼は自身の著書において、プロレタリア美術を「第一、プロレタリアートの手をもつて造られた美術である。第二、そしてプロレタリアートに依つて見られる美術である。」と定義している[3]

1928年から1932年にかけて、デモなど政治的な活動を描いたリアリズム絵画や、思想を表現したポスターや漫画などプロパガンダ的な作品が、プロレタリア美術展覧会において数多く生み出された。この美術運動により、それまでの新興美術の過激な表現が薄まり、リアリズム絵画が至上とされた[2]

脚注編集

  1. ^ 山下・高岸 2014, p. 286.
  2. ^ a b c 山下・高岸 2014, p. 287.
  3. ^ 岡本『プロレタリア美術とは何か』

参考文献編集

  • 『プロレタリア美術とは何か』,岡本唐貴,アトリヱ社,1930
  • 山下裕二、高岸輝 『日本美術史』美術出版社、2014年4月20日。