ヘルメス 450

ヘルメス 450(Hermes 450)は、イスラエルエルビット・システムズが開発した無人航空機(UAV)。

本項では、イギリス向けの改良型ウォッチキーパーについても記述する。

概要 編集

V字尾翼を持つ推進式のプロペラ機であるが、細い円筒形の胴体に短いアダプターを介して主翼を乗せるという、シンプルかつ独特な外見を持つ。エンジンにヴァンケルエンジンを採用しているのも特徴。離着陸には滑走路を使用する。派生型として、航続時間を延長したヘルメス 450LEが存在する。

主な想定用途はISTAR(情報収集・監視・偵察・目標捕捉)やELINT(電子情報収集)、COMINT(通信情報収集)で、武装化も検討されたことがあるものの実現したかどうかは確認されていない。しかし、レバノンシナイ半島で事故により墜落した機体とされる画像では、対戦車ミサイルの発射筒と思しき装備が増設されている[1][2]

操縦は高度に自動化されているため、オペレーターはセンサーの操作に集中でき1人での制御が可能。専用のUGCS(Universal Ground Control Station)には予備を含めて2台のコンソールがあるため、1つのUGCSから2機を同時に制御することも可能である。このUGCSは後に開発されたヘルメス 900とも互換性がある。

なお、名称の数字はkg単位の最大離陸重量を意味するものであるが、あくまでも機体規模の目安であり、本機の実際の最大離陸重量は500kgを超えている。

ウォッチキーパー 編集

 
飛行試験中のウォッチキーパー

イギリス陸軍は、砲兵隊向けの弾着観測・目標捕捉用UAVとして、ヘルメス 450をタレスUKが改良したウォッチキーパー WK450(Watchkeeper WK450)を導入している。外見はほとんど変わっていないが、天候に影響されずに地上の移動目標を探知できるよう、EO/IR(電子光学/赤外線)センサーと合成開口レーダーを組み合わせて装備している。機体は分解してコンテナに収容でき、地上管制ステーション(GCS)もコンテナ式になっているため、トラックで容易に展開することができる。

エルビット・システムズとタレスUKの合弁事業として設立された合弁会社U-Tacs(UAV Tactical Systems)が主契約社となり、2007年7月15日に54機を発注、2010年6月の就役を目指したが、初飛行が2010年4月14日にずれ込み、最終的に就役は2014年となった。このため、イギリス陸軍は繋ぎとしてベース機のヘルメス 450を緊急調達することとなった。

2014年にはアフガニスタンに送られて実戦投入されたが、翌年10月には「引き渡し済みである33機の大半は保管状態にあり、実戦使用されているのは数機で、訓練済みのオペレーターは6名のみ」と報じられている。

運用国 編集

 
運用国(青)
  アゼルバイジャン
  ボツワナ
  ブラジル
ブラジル空軍にてRQ-450の名称で運用。
  コロンビア
  クロアチア
  キプロス
  イギリス
ウォッチキーパーの他ヘルメス 450も運用しており、後者はH-450と呼ばれることもある。
  ジョージア
  北マケドニア
  メキシコ
  シンガポール
  イスラエル
イスラエル航空宇宙軍では"Zik"と呼称されている。
  アメリカ合衆国
アメリカ合衆国税関・国境警備局などで運用。

諸元(ヘルメス 450) 編集

  • 全長:6.1m
  • 全幅:10.5m
  • 最大離陸重量:550kg
  • エンジン:UAVエンジンズR802/902(W) ヴァンケルエンジン(52馬力)×1
  • 最大速度:176km/h
  • 運用高度:5,486m
  • 航続時間:17-20時間
  • 行動半径:300km
  • ペイロード:180kg

脚注 編集

参考文献 編集

外部リンク 編集