ペルメトリン(permethrin)は、合成ピレスロイド系殺虫剤の1種である。英語読みでパーメスリンとも呼ばれる。

ペルメトリン
識別情報
CAS登録番号 52645-53-1 チェック
PubChem 40326
ChemSpider 36845 チェック
UNII 509F88P9SZ チェック
DrugBank DB04930
KEGG C14388 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL1525 チェック
ATC分類 P03AC04,QP53AC04 (WHO)
特性
化学式 C21H20Cl2O3
モル質量 391.29 g mol−1
外観 無色結晶
密度 1.19 g/cm³, 固体
融点

34 °C, 307 K, 93 °F

沸点

200 °C, 473 K, 392 °F

への溶解度 5.5 x 10−3 ppm
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
主な危険性 肌と眼への刺激
肺へのダメージ
関連する物質
関連するピレスロイド ビフェントリン
デルタメトリン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

構造 編集

ペルメトリンの分子式は、C21H20Cl2O3である。物質名は、3-フェノキシベンジル=(1RS,3RS)–(1RS,3SR)–3–(2,2–ジクロロビニル)-2,2–ジメチルシクロプロパンカルボキシラートである[1]。つまり、有機塩素化合物の1つである。ピレスロイドの元化合物の部分構造の菊酸と類似した部分構造を有するものの、菊酸とは異なり、メチル基が塩素に置換されている。

化学的危険性 編集

ペルメトリンは可燃性を有し、有機溶剤を含む液体製剤は引火性がある。また、有機塩素化合物であるため、火災などで燃焼すると、刺激性もしくは有毒なフュームやガスを放出する。

生物学的毒性 編集

ペルメトリンのヒトや家畜に対する毒性は、低い。これに対して、ネコに対しては比較的毒性が高く出る[注 1]。さらに、魚類に対しては毒性が高い[1]

用途 編集

農薬・殺虫剤 編集

ペルメトリンは1977年にアメリカ合衆国のEPAに登録された。日本における初回登録は1985年である[1]ゴキブリに卓抜した効果が見られた殺虫剤であり、昆虫ダニに対して広く忌避効果を示す物質であるため、衛生害虫駆除(家庭用蒸散殺虫剤)[3][4]農薬[5]防虫剤などとして用いられる。なお、農薬の製剤として、水和剤(20%)、乳剤(20%)、フロアブル剤(10%)、マイクロカプセル剤(10%)などが有る。

医薬用途 編集

ペルメトリンはヒトを含めた動物に対して、外用薬として用いられる。

医薬用途ではシラミなどの外部寄生虫の駆除用や、疥癬の治療を目的に疥癬の原因寄生生物であるヒゼンダニの駆除に用いられる[6]。特に疥癬治療薬としては世界的に広く用いられているが、日本ではヒト用医薬品として認可されていない[7]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ネコは肝臓でのグルクロン酸抱合の能力が遺伝的に低いので、ペルメトリンの代謝産物の蓄積が起こり易い。体内蓄積量が多くなると、肝臓から流出した代謝産物が血液脳関門を通過し、中毒症状が発現する可能性があるため注意が必要である[2]

出典 編集

  1. ^ a b c 水産動植物の被害防止に係わる農薬登録保留基準値の設定に関する資料 (環境省/日本)
  2. ^ フォートレオン 小動物獣医療関係者向け情報 バイエル薬品株式会社 動物用薬品事業部
  3. ^ 安富 和男 (1980). “衛生害虫分野における薬剤利用”. Journal of Pesticide Science 5 (1): 111-117. doi:10.1584/jpestics.5.111. https://doi.org/10.1584/jpestics.5.111. 
  4. ^ 福原 克治、勝村 利恵子、高坂 典子 ほか (1994). 食品衛生学雑誌 35 (5): 504-509. doi:10.3358/shokueishi.35.504. https://doi.org/10.3358/shokueishi.35.504. 
  5. ^ 羽田 厚 (2013). “リンゴ樹体内に食入したヒメボクトウ幼虫に対するペルメトリンエアゾルの防除効果”. 北日本病害虫研究会報 2013 (64): 200-202. doi:10.11455/kitanihon.2013.64_200. https://doi.org/10.11455/kitanihon.2013.64_200. 
  6. ^ 松尾 典子; 谷口 裕子; 森下 綾子 (2015). “【原著】ペルメトリンクリームを用いて治療した疥癬患者106例の検討”. dermatol 125 (13): 2441-2445. doi:10.14924/dermatol.125.2441. https://doi.org/10.14924/dermatol.125.2441. 
  7. ^ 未承認薬・適応外薬の要望 (PDF) 厚生労働省

外部リンク 編集