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ボディアーマー

ボディアーマー(body armor)は、銃弾爆発による破片などから身を守るために使用されるベスト状の身体防護服。フラックジャケット(flak jacket)、バリスティックベスト(ballistic vest)、ブリットプルーフベスト(bulletproof vest)とも呼ばれる。日本では防弾チョッキ防弾ベスト防弾衣などの呼び方がある。

なお、ボディアーマーの防護性能は使われる素材によって異なっており、砲弾片程度しか阻止できないものから、拳銃弾を防護できるものが一般的である。中には装甲を貫通する目的で作られた小銃用のAP弾(ArmourPiercing)を停止させるNIJ規格レベルIVクラスのものまで存在する。

PCボディアーマーを着用したアメリカ軍兵士(左)と、VIRTUSボディアーマーを着用したイギリス軍兵士(右)。ボディアーマーは使用目的によってさまざまな種類がある。 PCボディアーマーを着用したアメリカ軍兵士(左)と、VIRTUSボディアーマーを着用したイギリス軍兵士(右)。ボディアーマーは使用目的によってさまざまな種類がある。
PCボディアーマーを着用したアメリカ軍兵士(左)と、VIRTUSボディアーマーを着用したイギリス軍兵士(右)。ボディアーマーは使用目的によってさまざまな種類がある。

目次

概要編集

銃弾や、手榴弾砲弾などの爆発時に発生する破片から身体を防護し、被害を低減するために着用する。近年では、セラミックプレートを装備するなど、条件によっては小銃弾の阻止が可能なボディアーマーが主流になりつつある。

軍用ボディアーマーは長い歴史を持つが、朝鮮戦争から1980年代までの軍用ボディアーマーは、小銃弾ではなく拳銃弾や砲弾の破片から防護する目的で使用されていた。これは、当時の技術では小銃弾の阻止が困難だったことや、戦場で死傷する原因の大半は銃撃ではなく砲爆撃や擲弾の破片によるものであることなどが原因であった。

日本で着用する職業編集

 
防弾チョッキ3型を着て作業を行う陸上自衛隊

一般に民間ではほとんど広まっていない。あるいは着用については、軽いもの、防刃機能のみの場合も多い。これは、日本では銃器による犯罪がごく少ないことが原因と考えられる。

規格編集

 
ロシア連邦軍の6B45ボディアーマー

一般的に防弾ベストは防御可能な弾薬の種類に応じてランク付けされておりアメリカ合衆国司法省の国家司法研究所の規格 (National Institute of Justice) のNIJ-0101.04が使われている。貫通しないことが絶対条件であるが、被弾インパクトの凹みであるBFS (Back Face Signature) は44mm以下という基準もある。

アメリカの規格なので単位にg/m、グラム/メートル法とgr/ft、グレーン/フィート法が併記されている。

防弾レベル テスト弾丸 弾丸重量 銃身長 弾速(初速) 距離 射撃数 貫通 銃種類
I .22 LRHV
レッド(鉛)
2.6 g
40gr
15 to 16.5 cm
6 to 6.5 in
320 ± 12 m/s
1050 ± 40 ft/s
5 m 6 0 ピストル
.38スペシャル
RN(ラウンドノーズ)レッド
10.2 g
158 gr
15 to 16.5 cm
6 to 6.5 in
259 ± 15 m/s
850 ± 50 ft/s
5 m 6 0 ピストル
II-A .357マグナム
JSP(ジャケテッドソフトポイント)
10.2 g
158 gr
10 to 12 cm
4 to 4.75 in
381 ± 15 m/s
1250 ± 50 ft/s
5 m 6 0 ピストル
9mm
FMJ(フルメタルジャケット)
8.0 g
124 gr
10 to 12cm
4 to 4.75 in
332 ± 12 m/s
1090 ± 40 ft/s
5 m 6 0 ピストル
II .357マグナム
JSP
10.2 g
158 gr
15 to 16.5 cm
6 to 6.5 in
425 ± 15 m/s
1395 ± 50 ft/s
5 m 6 0 ピストル
9 mm
FMJ
8.0 g
124 gr
10 to 12 cm
4 to 4.75 in
358 ± 12 m/s
1175 ± 40 ft/s
5 m 6 0 ピストル
III-A .44マグナム
レッド
SWC(セミワッズカッター)ガスチェックド
15.55 g
240 gr
14 to 16 cm
5.5 to 6.25 in
426 ± 15 m/s
1400 ± 50 ft/s
5 m 6 0 ピストル
9 mm
FMJ
8.0 g
124 gr
24 to 26 cm
9.5 to 10.25 in
426 ± 15 m/s
1400 ± 50 ft/s
5 m 6 0 ピストル
III 7.62 mm(308ウィンチェスター)
FMJ
9.7 g
150 gr
56 cm
22 in
838 ± 15 m/s
2750 ± 50 ft/s
15 m 6 0 ライフル
IV .30-06
AP(徹甲弾)
10.8 g
166 gr
56 cm
22 in
868 ± 15 m/s
2850 ± 50 ft/s
15 m 1 0 ライフル
徹甲弾

ちなみにNIJ基準はアメリカ警察のための防弾基準であるため日本国内で問題になっているトカレフ7.62x25mm FMJ 弾,SJLC弾,SLSC弾・弾丸速度480 m/s )に対応していない。7.62x25mm弾は薬莢が25mmと長いことから多くの火薬が入り弾丸速度は480m/sを超えることもある。NIJ-3Aの9mm弾の基準速度の425±15m/sの速度を大きく超えることもあり貫通力は高いといわれている。トカレフ対応として3Aプラスという基準がよく言われるがNIJ基準にはトカレフ7.62x25mmの基準はない。

歴史編集

中世編集

最初期のソフトアーマー類のうちのひとつは中世の日本においてで作られていたものだと言われている[1]。 中世末期にマスケット銃が登場すると鎧が打ち抜かれる事例が多発するようになったため、鎧職人側も対抗するために前面を厚く、背面を薄くしたり、積層装甲などの技術を用いて対抗しようとした。銃が大量に配備されるようになるとマスケット銃の弾が貫通しないことが重要なこととなり、出来上がった鎧を銃で撃つ『試し胴』を行い貫通しないことを証明するようになった。しかし、実際に打ち抜かれないことは稀であり、そのほとんどは火薬を極端に減らした弾を使うか、職人が弾痕に見せかけたへこみを工具で付けていたのが実情であった。

19世紀~編集

 
1923年9月にワシントンD.C.で行われた防弾実験

銃の発達によって装甲の薄い全身鎧は存在価値を失い、鎧は頭と胴体だけを守る物へと変化した。中世のものよりも厚くなり、遠距離からの小銃弾や銃剣に耐えられるようになった。このような鎧を身に着けた胸甲騎兵装甲擲弾兵がエリート部隊として戦場に現れた。しかし、このような鎧も機関銃の登場によって価値を失っていく。

1898年シカゴ市長カーター・ハリソンが自宅にいる際にギャングによって機関銃で撃たれ、命を落とすという事件が起きた。シカゴ市民の間に衝撃が走り早急な対策が必要となった。

神に仕える人も思いは同じだった。カシミール・ゼグレンはシカゴの教会の聖職者だった。市長の死に衝撃を受け、彼は神聖な仕事として防弾ベストを作る事を決意する。しかし15年間、鋼鉄の削りくずや毛髪を利用して実験を繰り返したものの成果は上げられなかった。次に試したのがだった。絹は鋼鉄に比べ弾性があり引っ張ると元の長さよりも30%長くなった。またゼグレンは蜘蛛の巣にも注目。ぶつかった昆虫の運動エネルギーを巣が吸収する原理を応用しようと考えたが、これぞ、といった織り方が見つからなかった。しかしヨーロッパの織物工場を訪れた際、ついに理想的ともいえる四層の織り方を見つけ、防弾ベストを仕上げた。この防弾ベストの効果に疑問を持つシカゴ市民を納得させるため、究極の実証方法を考案する。性能には自信があったため、彼はシカゴ劇場にて自らベストを着用して実演を行なった。人々が見守る中、彼の同僚が彼に銃を向け、発砲した。見事に成功。弾は貫通しなかった。彼は信仰心が篤く、自分の行為を信じていた。そして心の奥底には「これは、神からの使命。神は裏切らない」と心から信じていた。

第一次世界大戦編集

 
第一次世界大戦のフランス兵、実射テストに供された胸甲を装着している

1914年にゼグレンの開発した絹のボディアーマーは800USドル(現在の価格で1万5,000USドル)程度で高価なものだったが、黒色火薬を用いる初速の低い銃弾を防ぐのには十分な性能であった。これを着用できたのは少数の精鋭部隊のみだった。

この大戦での塹壕戦では、それまでの皮製のヘルメットなどに代わる鉄兜や、一部では昔の胸甲騎兵のような鉄製のボディアーマーも用いられた。前者はその後一般化していったのに対し、後者は小銃弾に耐えられるように分厚くなっており、重量は30kg前後にもなっていた。あまりに重く、行動を阻害してしまう上に防御が不十分なため、特殊用途を除き廃れていった。ナポレオンの頃と大差がなく、撃たれれば貫通する可能性は高く、何の意味もなかった。塹壕での着用も無意味だった。事実上ボディアーマは、軍で活用されず、その代償を払うのは兵士たちだった。

1920年代の後半から1930年代の前半にかけてアメリカでは木綿が詰められた布製の廉価なボディアーマーが犯罪者に用いられるようになった。このボディアーマーは初速が約1,000フィート/秒程度の拳銃弾を防ぐことが可能であったため、法執行機関がそれに対抗する目的で.38スペシャルや.357マグナム弾を装備するようになった。

第二次世界大戦編集

第二次世界大戦ではソビエト赤軍SN-42日本陸軍の九二式防弾具など、一部で鋼鉄製のボディアーマーが使用されていた。金属は銃が開発される以前から防具として使用されてきた素材であり、繊維系の防弾素材に比して劣化しにくい(チタンの場合は海水でも錆びない)という利点があるものの、重量が他の素材よりも重い、跳弾の危険がある、防弾性能が低い、水に浮かないなどの欠点を持つ。また、イギリス軍爆撃機の乗員向けにナイロンを用いた対砲弾片用の"flak jacket" が開発され、以後の軍用ボディアーマーの開発に大きな影響を与えた。

1950~1970年代編集

朝鮮戦争においてアメリカ海兵隊がナイロン製のM1951ボディアーマーを採用して兵士に支給した結果、死傷者が減少したことから、以後アメリカ軍ではボディアーマーが標準的な装備となった。

ベトナム戦争中の1967年には、世界初の小銃弾阻止可能なボディアーマーであるT65-2プレートキャリアが開発された。このボディアーマーには当時チキンプレートと呼ばれていたセラミックプレートが装備されており、低空を飛行する危険な任務に当たるヘリクルーに配備されたが、非常に重かったため戦場では不評であった。

1980年代編集

 
ケブラー繊維

アメリカ軍によって採用されたPASGTボディアーマーではデュポン社が開発したアラミド繊維であるケブラー[2]を防弾材として使用した。帝人社のトワロン[3]が有名である。この素材は、鋼鉄の数倍の引張強度を持ち、なおかつ熱に強い、加工や縫製が容易、安価などの利点を持つが[4]、防弾能力は拳銃弾を止める程度が限界であり(薬量の多いボトルネック型薬莢を持つ高初速の拳銃弾(マウザー7.63mmトカレフ7.62mm弾5.7x28mm弾等)や、細身の刃物弓矢などは通しやすい。防刃目的に使われる場合は、強化樹脂や金属のプレートを使用したり、チェインメイル(鎖帷子)を併用したりする。)、水分を含むと防弾性能が著しく低下するため防水処置が必要なこと、水に浮かないなどの欠点がある[4]。耐摩擦効果の高い繊維で編まれた布を数枚から数十枚重ねることで、銃弾のエネルギーを減衰させることに主眼をおいている。ネットにバレーボールを打ち込むように、繊維が周りにエネルギーを分散させることでダメージを減免するのである。繊維のみを用いたボディアーマーは比較的軽量で動きも束縛しにくいというメリットがある。

アラミド繊維の大きな特徴として難燃性があり、自己消火性を有し、他の有機繊維の様に溶融せず炭化するため、熱によって溶けた繊維が皮膚に付着したりするという二次災害の危険が無いという利点がある[5]。このため車両やヘリコプターのエンジンルーム等の高温部の防御にも使用されている[4]

アラミド繊維に続く第2世代の防弾繊維として、超高分子量ポリエチレンから作られた「超高分子量ポリエチレン繊維」があり、DSM社の「ダイニーマ」やハネウェル社の「スペクトラ」が有名である。アラミド繊維を超える耐衝撃性・耐摩耗性を有し、さらに吸水で劣化しない、軽量で水に浮くなどの利点を持つが、熱に弱く135度で溶解してしまう欠点を持つ[6]

超高分子量ポリエチレン繊維は加工方法によっては「ソフトアーマー」だけでなく「トラウマプレート」としても使用することが出来る。特殊な温度制御式超高圧プレス機で圧着して硬度の高いプラスチックの板状にすることが可能であり、この状態であれば小銃弾の阻止も可能である[7]

一方ソビエト連邦軍においてもアフガニスタン紛争 (1978年-1989年)に参戦し現地で対ゲリラ作戦を経験し苦戦した中で独自設計のボディーアーマーの開発に着手し、6Б1、6Б2、6Б3といった幾つかのタイプが アフガニスタン紛争で前線で戦うスペツナズ空挺軍兵士などに装備され使用された。実戦を経て、ソビエト連邦軍もボディーアーマーを装備に追加した近代化、戦闘能力の強化を図っていた。

また、1991年アメリカ軍特殊部隊で採用されたレンジャーボディアーマーセラミックプレートを前、後部に挿入することで、それまで歩兵用に採用されていたケブラー製のPASGTベストでは不可能だった小銃弾の阻止を可能とした。

2000年代編集

 
インターセプターボディアーマーを着用したアフガニスタン警察の隊員。
 
イラクでの作戦中に敵の銃弾を阻止したSAPIを掲げるアメリカ海兵隊
 
インターセプターボディアーマーの注意書きのラベル。対9mm弾用のソフトアーマーでは、ナイフや鋭利な物体に対して防御力が無いことが書かれている。

PASGTの後継としてアメリカ陸軍と海兵隊で採用されたインターセプターボディアーマーはPASGTと同じくケブラー製のアーマーが装備された(首、上腕部、股間にも増設可能)。さらに、炭化ケイ素炭化ホウ素のセラミックを防弾材としたトラウマプレートも採用された。このトラウマプレートは小銃弾の阻止が可能であり、一般の兵士の生存率向上に貢献した。しかし、繊維系の防弾素材と比べると重いため、ボディアーマー全体をトラウマプレートのみで構成することは兵士が着用して活動する点において現実的ではない。そのため重要部位のみの防護に留めておりこれをハードアーマー、他の部位を防護する維系素防弾材であるソフトアーマーに分化し目的に応じて併用、もしくは使い分けられる場合が多い。アメリカ軍のトラウマプレート「SAPI(Small-Arms Protective Inserts)」はセラミックに「スペクトラ」の裏地を当てた板状のもので、5.56mm弾や7.62mm弾を停止する能力を有している[8]。その改良型である「E-SAPI」はさらに厚さを増したセラミックの裏地に防弾不織布(一方向強化ポリエチレン材料)を当てることで徹甲弾にも対応している[8]

また、インターセプターボディアーマーにはボディアーマーとして初のPALSウェビングが縫い付けられている。これにより任意の位置にポーチ類を装着する事が出来、装備の自由度向上に寄与している。レンジャーボディアーマーで不評だった重量も大幅に軽量化されていた。

現在編集

このように80年代から大幅に能力が向上した軍用ボディーアーマーであったがアメリカ同時多発テロ事件を契機としたアフガニスタンイラクでの対テロ戦争では接近戦の増加や強力な爆弾による待ち伏せ攻撃(IED)が多発し、ボディアーマーの更なる改善が求められた結果、両側面部にもセラミックプレートを追加したIOTVMTVが採用された。これらの選定時にはまったく新しい概念で作られたドラゴンスキンと呼ばれるボディアーマーも競争相手となったがこちらは採用されることは無かった。

対テロ戦争の結果、アメリカだけではなく世界各国でボディアーマーの改善が行われるようになり、日本の陸上自衛隊でも自衛隊イラク派遣時に、当時採用されていた戦闘防弾チョッキでは危険と判断し防弾チョッキ2型を急遽採用して派遣部隊に装備した。

しかし、これらの防御力を追求したボディアーマーは重量が増大しているため、兵士の機動性が低下したり疲労や腰痛を起こすことが問題となった。特にアフガニスタンの山岳地帯などで戦う兵士にとってはこれは深刻な問題であったため、アメリカ軍では防御範囲を減らすことで軽量化を行ったSPCSPCSを採用した。

耐久性編集

運用年限は3年程度で、製造から5年以上経過すると素材が経年と共に自然劣化して防弾機能が低下してしまう。実際に警察や民間などで更新を怠ったために劣化したボディアーマーが機能せず、メーカーと訴訟に発展したことがある。

一度でも銃弾が命中すると命中した場所の周囲が激しく劣化するため、近い場所に二発以上命中すると繊維が裂けて貫通する。規格上は着弾点が4インチ(10.16cm)以上離れていなければ正規の性能が保証されないことになっている。このため、一度でも被弾したボディーアーマーは交換する必要がある。

使用感編集

元々、アメリカ西部開拓時代保安官が着用していたが当時の製品は衣類にしては重すぎ、活動的ではなかったので改良が幾度となく行われた。現在のものは軽量化・高性能化に富み、活動的なデザインと密着感のあるものとなった。ただし、普段全く着用しない者が簡単に着こなせるほど手軽なものではなく、さらに軽量化されているとはいえやはり普段の服装に比べればはるかに重い。

ケブラー繊維は水に濡れると防御力が低下するため、ケブラーの部分は防水処理が施されている。このため服としては極端に通気性が悪い。

なお、ボディアーマーではないが、ボディーアーマーの一種として、刃物で刺されても影響がないような耐刃防護服(防刃衣・防刃ベスト)が存在する。警視庁は2005年6月27日に新型の耐刃防護服を報道発表し、その後、都内全域にこれを配備した。それまでの耐刃防護服は服の内側に着用する白いものであったが、夏は蒸れるなどの欠点があった。新型は夏でも着やすいように通気性を良くしてあり、出動服の外から着ることもできる、などの特徴がある。

弱点編集

広範囲かつ不規則に破片をばらまく爆発物に対しては、防御されていない部分に命中した破片によって致命傷や重傷に至る事態が多発している。

主な事例として、

  • 首の頸動脈や脊髄が損傷して致命傷になる。
  • 脇の下が空いているためここから侵入した破片が心臓に達すると致命傷となる。日本でも拳銃弾が隙間に進入して警察官が死亡した事例がある。
  • 上腕部にライフル弾などの貫通力の高い物が命中するとそのまま腕を通り抜けて胸部に入り、心臓や大動脈に達して死亡する。

主に首の頸動脈、脇の下、股間部分などの動脈が損傷すると止血が難しく、短時間で失血死する危険が高い。これらの欠点を補うために、首を覆う部分や上腕部を覆うアーマーの追加が行われたりしているが、重量増加とコスト上昇、動きにくくなるといった問題もある。

誤解されやすい事であるが、元々ボディアーマーは「偶然の飛来物の貫通を防ぎ、致命傷を回避する」ことが目的で、「飛来物の効果を打ち消して、怪我を完全に回避する」ことが目的ではない。現実には、たとえ弾丸がボディアーマーでストップしても、人体には着弾時の衝撃がかなり伝わる。これは、厚手のジャンパーを着ている人間を勢い良く指で突けば、指がジャンパーを貫通することはないが、相手は突かれた衝撃を感じるのと同じ理屈である。したがって、かなり低性能の弾丸でも当たった場所にアザが出来たり軽い打撲を負うことはあり、エネルギーの大きい弾丸では肋骨が折れたり内臓が破裂することさえある。ボディアーマーの内側に、衝撃を分散するパッドを装着することで、幾分か衝撃を緩和できるが、性能への過信は禁物である。

なお、ボディアーマーの上に物を付けるのは問題はないが、ボディアーマーの下に堅い物を入れておくのは禁忌である。これは弾丸が命中した時に堅い物が衝撃の分散を妨げて打撲傷骨折を引き起こすためである。そのため、ボディアーマーの下にはボタンやジッパーのない服を着る必要があり、ポケットなどには物を入れてはならない。実際にドイツでは、女性警察官ブラジャーの金具で負傷するという事故が起きたため、金具のないスポーツブラを支給することになった[9]

また、ベトナム戦争時にはヘリコプターの搭乗員用に防弾パンツが採用されていたが、ベトナムの暑さで蒸れてしまうため戦闘に支障をきたしたり、兵士自ら外してしまうことが多かった。

動物用編集

 
ボディアーマーを着用するアメリカ海軍の軍犬
 
ボディアーマーを着用したアメリカ陸軍の軍犬。

人間の兵士だけでなく、軍用犬などの軍用動物用のボディーアーマーも開発されている。大型犬であっても重量によって機動性が落ちるため、胴体を保護する軽い防刃ベストが主流である。またポケットに少量ではあるが医薬品や弾薬などを入れることも出来る。

軍馬などはかなりの重さに耐えられるため、中世ヨーロッパでは狙われやすい胴体と頭部を金属板で覆うなどしていた。


警察等における使用編集

 
ボディアーマーを着用したドイツの警察官

警官が使用する場合はボディアーマーを着用していることが外から分かると、一般市民に威圧感をもたらしたり、銃撃戦時に頭部など保護されていない部位を狙われることがあるため、着用時は外観から着ていると分からないように下着の上に直接装着し、その上から制服を着用してボディアーマーを覆い隠すよう指導される組織もある。ただし組織によっては、アウターのボディアーマーを制服の一部として着用している組織もある。 なお、同じ組織内でもSWAT隊や強制捜査時など、相手からの反撃が予想されるような部隊や任務の場合にはレベル3以上のアウター型を着用するが、このような外に着る場合は『制服』になるので、PoliceやSheriffなど所属団体や着用者の名前などを縫い付けたりベルクロ止めしている。

心臓を拳銃で撃たれたが、大量の紙幣を入れた財布を胸ポケットに入れていたことに救われて無傷だった例がある。これは財布の中に入っていた大量の紙幣がボディーアーマーの幾重にも重なる繊維と同じ効果を発揮するためである。こういった「偶然」に助けられたケースはいくつか残されており、イラクにおいて「胸ポケットに入れたiPod」がAK-47から発射された銃弾を食い止めた事例や、第二次世界大戦における「胸ポケットに入れていたポケット版の聖書ジッポー」が狙撃兵の発射したライフル弾を食い止め、撃たれた本人は助かったという逸話も良く知られたエピソードである(ワールドフォトプレス『ジッポー完全読本』より)。極端な例として、豊胸手術を受けた女性が銃撃された際、手術した胸のシリコンがクッションになり、命拾いしたという例もあり、日本のテレビ番組で紹介されたこともある。 [10]

アメリカのドラマ「24 -TWENTY FOUR-」においても、ジャック・バウアーが仲間に「空になったマガジンは胸ポケットに入れておけ」と指南したことにより、銃撃戦の際に服自体に防弾性はないものの、銃撃を受けた時にその空マガジンが防弾の役割を果たし、結果として仲間が助かるシーンがあるが、実際には空マガジンで9mm弾を止められるとは考えられない。

特に本のような紙の厚い束は高い抗切削性を示すが、これは漫画週刊誌程度でも簡易の防刃ボディアーマーとして十分に利用できる程で、日本では60年安保の際にデモ参加の大学生がハードカバーの本を胸や背中の下に入れたり、暴力団の抗争が盛んになった時期などにやくざが、あるいは抗争に明け暮れた1970年代の暴走族などが胴体に何冊もの漫画雑誌を巻き付けていたという話も漏れ聞かれる。ただ当然のことながら巻きつけた胴体以外は守れないため、日本国内でも防弾・防刃ボディアーマーが入手できるようになると、こういった用法は廃れていった。

また、1999年に起きた能登半島沖不審船事件においては、護衛艦「みょうこう」の船員である海上自衛官が防弾チョッキ代わりに分厚いマンガ本をガムテープでぐるぐる巻きにして臨時検査の際の銃撃に備えていたという事例がある。これは、近接戦闘に対する備えができておらず、船内に防弾チョッキが装備されていなかったためである。

これらの例は、あくまで角度や距離(および運)に左右される部分が大きく、実際に最小口径である22口径の拳銃弾で厚さ7cmほどの電話帳を10mほどの距離から撃つと、いとも簡単に貫通するので札束やジッポーで命拾いした例は、非常に確率の低い稀な例として捉えた方が確実である。ただ、空のマガジンやライターなども、「弾を止める」効果としてではなく着弾後に「Re-Direct」して、体内の急所以外を通過させる効果は考慮出来るが逆にRedirectして急所へ向ってしまうリスクも抱える事になる。

自動車の車体も38口径程度の弾でベニア板並みに簡単に貫通するので(距離によっては22口径でも可)、映画や実際のニュースなど見る『パトカーのドアを盾にした銃撃戦』というのは、あくまでアメリカのパトカーの前部両ドアの内部には防弾材が内装されているという前提がある(一般の自動車でドアを盾にしてもほとんど効果はない)。しかし防弾チョッキもパトカードアの防弾材もライフル弾には効果は無く、実際にバンクオブアメリカ・ノースハリウッド支店強盗事件では、警察官達は犯人が乱射するAK-47から身を守るためにパトカーのホイールキャップの陰に身を隠した(パトカーのホイールキャップは有事に身を隠すためにアルミニウムやマグネシウム合金ではなく鉄製が標準装備)。

脚注編集

  1. ^ NIJ100-01 / Update to NIJ Guide 100–98, p.3 (アメリカ司法省の配布書類)
  2. ^ 東レ・デュポン株式会社 ケブラー® パラ系アラミド繊維 2014年9月6日閲覧
  3. ^ TEIJIN WEBカタログ パラアラミド繊維・トワロン® 2014年9月6日閲覧
  4. ^ a b c セキュリコ アラミド系超軽量防弾パネル 2014年9月6日閲覧
  5. ^ 株式会社HAMANI アラミドとは 2014年9月7日閲覧
  6. ^ 日本防弾工学研究所 防弾素材の基礎知識 2014年9月6日閲覧
  7. ^ セキュリコ ARTEX-(P) (アーテックス-P) 2014年9月7日閲覧
  8. ^ a b OLIVE-DRAB SAPI and ESAPI 2014年9月12日閲覧
  9. ^ [1] ニュースではドイツの警察が防弾ブラジャーを採用と報道されたが、実際には金具などの堅い部分がないブラジャーを採用しただけであり、ブラジャーそのものには防弾性能はない。
  10. ^ 要出典元。 紙幣やジッポー、シリコンが拳銃弾を止められるとは信じ難く、他に何らかの要素があった事が推測される。

参考資料編集

  • 『ミリタリー大百科‐ボディアーマー‐』ディスカバリーチャンネル[見のがせナイト] 番組内のエピソードを参考。

関連項目編集