ボリス・ジョンソン

アレグザンダー・ボリス・ジョンソンAlexander Boris de Pfeffel Johnson1964年6月19日 - )は、イギリス政治家ジャーナリスト歴史家。現在、同国外務・英連邦大臣庶民院議員を2期務め、前ロンドン市長(2期)、その後再び庶民院議員。

ボリス・ジョンソン
Alexander Boris de Pfeffel Johnson
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ボリス・ジョンソン(2009年)
生年月日 (1964-06-19) 1964年6月19日(53歳)
出生地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市
出身校 オックスフォード大学
前職 ジャーナリスト
所属政党 保守党
配偶者 マリナ・ホイーラー
親族 ジョー・ジョンソン(実弟、庶民院議員)

内閣 テリーザ・メイ内閣
在任期間 2016年7月13日 -

当選回数 2回
在任期間 2008年5月4日 - 2016年5月9日

選挙区 ヘンリー選挙区
当選回数 2回
在任期間 2001年6月9日 - 2008年6月4日

選挙区 Uxbridge and South Ruislip 選挙区
当選回数 1回
在任期間 2015年5月7日 -
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目次

来歴編集

生い立ち編集

ジョンソンは、欧州議会議員スタンレー・ジョンソンと最初の妻シャーロット・フォーセットの長男としてニューヨークで生まれた[1]。のちに家族とともにイギリスに戻った。イートン校オックスフォード大学ベリオール・カレッジを卒業[2]。大学ではブリンドン・クラブに所属[3]

オスマン帝国末期の内務大臣だったアリ・ケマルの子孫である(父方の祖父であるオスマンは、第一次世界大戦中にイギリス国籍を取得、自らの母親の旧姓であるジョンソンを姓に定めた)。父方の先祖にはイギリス王ジョージ2世がいる。ジョージ2世の玄孫であるヴュルテンベルク王子パウルが愛人との間にもうけた庶出の娘が、ジョンソンの玄祖母にあたる(ド・プフェッフェル (de Pfeffel) は玄祖母の嫁いだ男爵家の家名である)。ただし庶子を通じての血筋を引くに過ぎないため、英国王位継承資格は認められない。母方の先祖には、ユダヤ系ロシア人で、アメリカ古文書学者となったイライアス・ロウ英語版がいる[4] 。彼は多国籍にわたる先祖(キリスト教徒ユダヤ教徒、ムスリムからなる)についてふれ、自らを『るつぼからなる人間』(one-man melting pot)と称している[5]

欧州懐疑派のジャーナリスト編集

大学卒業後の1987年、アレグラ・モスティン=オーウェンと最初の結婚をしている。同年L.E.K.コンサルティング就職するが、退屈のあまり1週間で退職[6]、家族のコネで保守系紙『タイムズ』で働き始めるが、考古学関係の記事で学者の発言を改竄したため、すぐ解雇されている[7]。続いてやはり保守系紙の『デイリー・テレグラフ』記者となり[2]、1989年から1994年まで同紙のEC特派員となった。ブリュッセルに駐在していたジョンソンは反EC色の強い記事を書き続け、特に欧州統合の強力な推進者であったジャック・ドロールを厳しく批判、ECの首都たるブリュッセルの地にあって、数少ない欧州懐疑主義のジャーナリストとして知られるようになっていった[8]が、当時の彼を知る記者たちの多くは、彼の記事はECの信用を傷つけるために虚偽の事実や誇張を交えていたと批判的に振り返っている[9]

こうした記事によって、彼は欧州懐疑派の代表的な人物として知られるようになり[10]、また以前は左派によって主張されることが多かった欧州懐疑主義を、右派にとって魅力的なものに変貌させるのに大きく貢献、1990年代前半のイギリス独立党の出現に一役買ったとされている上[11]、保守党内における親欧州派・懐疑派の軋轢を刺激することにもつながったという[12]。首相としては欧州と距離を置きがちであったマーガレット・サッチャーもジョンソンの記事の愛読者であったとされるが、マーストリヒト条約の締結に尽力するなど欧州との関係修復に尽力した後任首相のジョン・メージャーにとっては、ジョンソンは煙たい存在であり、当時の外務・英連邦省ではジョンソンの記事に対応する特別チームが設けられるほどであった[13]。1997年総選挙における保守党大敗・政権転落の大きな原因の一つは党内における欧州懐疑派の台頭に伴う混乱とされているが[14]、ジョンソンの記事はそうした混乱の一因とみなされたため、その後しばらく保守党の政治家たちの不信を買うことになった[15]

1993年にアレグラと離婚、同年幼馴染のマリーナ・ホイーラーと結婚し、4子をもうけた。

1994年にロンドンに戻ると政治コラムニストとなり、ユニークなスタイルで評価を得る一方、黒人ゲイへの差別的な記事や植民地支配を賞賛する記事で物議を醸した。『スペクテイター』誌の政治コラムニストを経て、1999年から同誌の編集者となり、政界入り後、2005年に影の内閣の高等教育大臣に任命されるまで務めた。

庶民院議員編集

2001年からは庶民院議員を2期務めた。2004年にはタブロイド紙によって、2000年以来『スペクテイター』の記者と恋愛関係にあり、2度妊娠(1度は流産、1度は中絶)[16]させていたことを暴露された。ジョンソンは当初否定していたが、事実と判明した後、党の役職を解かれた[17]

ロンドン市長編集

2008年にロンドン市長に就任した。市長就任後、ジョンソンは『デイリー・テレグラフ』紙においてウィークリー・コラムを再開することを発表した。『ガーディアン』紙は、彼がコラム執筆を年俸25万ポンドで同意したと報じている(年俸のうち2万5千ポンドずつ、ジャーナリズムを学ぶ学生の奨学金、古典学を学ぶ学生の奨学金に寄付している)[18]

2009年に、芸術コンサルタントのヘレン・マッキンタイヤとの間に女児をもうけていたことが後に暴露された[19]

2012年5月3日に投票が行われたロンドン市長選挙においてケン・リヴィングストンを破り、再選を果たした[20]。2期目在任中の2015年5月7日、再び庶民院議員に当選した。市長は2016年5月9日まで務めた。

再び庶民院議員へ編集

議員としても、かねてから欧州連合の規制で経済的関係が強い中華人民共和国とのFTAが結べない[21][22]と発言するなどEUに批判的な言動で注目を浴びており、2016年6月23日に実施されるEUからの離脱の是非を問う国民投票においてどのような立場に立つか、注目を集めていたが、2月21日に「ずいぶん頭を悩ませたが、他の余地はない」として離脱を支持することを表明、以後は離脱の旗振り役として積極的に活動した[23]アメリカバラク・オバマ大統領が英国のEU残留を求めた際には、「オバマにはケニア人の血が入っており、反英感情がある」と発言、人種差別的であるとして物議を醸した[24]

その国民投票にて離脱派が勝利したことによって、デーヴィッド・キャメロン首相が首相及び保守党党首を辞任することを発表した際にはポスト・キャメロンに期待されたが、ジョンソンは2016年イギリス保守党党首選挙には名乗りを挙げなかった[25]。その後、保守党党首に選出されたテリーザ・メイが新首相に任命されて、新内閣(テリーザ・メイ内閣)を組閣するに当たり、ジョンソンが外務・英連邦大臣に起用された[26] [27]。ジョンソンの外務・英連邦大臣就任を記者会見中に知らされたアメリカのマーク・トナー国務省報道官は失笑した[28]。初の対外公務となったフランス大使館でのレセプションでは招待客からブーイングで迎えられ、さらにフランスのジャン=マルク・エロー外相からは「嘘つき」だと名指しで批判された[29]

人物編集

イギリスにおいてもっとも人気のある政治家の一人である。通常イギリスのマスメディアにおいて政治家は姓で呼ばれるが、ジョンソンのみは親しみを込めて「ボリス」のファーストネームのみが用いられる。ロンドン市長選挙時にイギリス労働党テッサ・ジョウェルはジョンソンの親しみやすさが彼への好感度につながるのを危惧し、自分の陣営の選挙スタッフがジョンソンについて「ボリス」と言ったら罰金を払うとしていた[30] 。ジョウェル自身はこれを否定している。

シンクタンクの調査では回答者の約半数がジョンソンの発言を信用しているという[31]。ジョンソンはしばしば政治風刺の的にされている。隔週で発行される時事雑誌『プライベート・アイ英語版』はジョンソンを4回表紙に選んでいる。

人種差別、ホモセクシュアル差別、排外主義的なコメントを繰り返したきた。2016年5月には、トルコレジェップ・タイイップ・エルドアン首相ヤギ性行為を行う詩を「most offensive Erdoğan poem」賞に投稿した。これはドイツ裁判所において、コメディアンのエルドアン批判スキャットを差し止める法的決定が下されたことに抗議して雑誌が主催したもので、ジョンソンは優勝し1000ポンドを手に入れた。

ジョンソンはサイクリング好きで知られ、自ら自転車通勤している。彼は数回自転車盗難にあっており、『イズリントン中におとりの自転車を配置し、窃盗犯にはネイビー・シールズを送り込んでほしい』と希望を表明している[32]。2010年7月、彼はヴェリブをモデルとした自転車共有システムをロンドンに導入した[33]

妹のレイチェルはジャーナリスト、弟ジョーは国会議員、弟レオは起業家である。幼少時代から家族ぐるみの付き合いがあったマリナ・ホイーラー(法廷弁護士。父はBBC特派員チャールズ・ホイーラー)と、1993年に再婚し4子がある[34][35]

2016年3月下旬の世論調査によれば、ジョンソンはポスト・キャメロンの保守党の次期党首の筆頭候補であった[36]。ORBの調査では回答者の約4割がジョンソンが保守党の次期党首になることを望んでいる。YouGovの調査でも約4割がジョンソンの党首就任を支持しており、ジョージ・オズボーン(22パーセント)やその他の議員を大きく引き離していた[36]

脚注編集

  1. ^ About Boris”. Boris Johnson. 2008年5月8日閲覧。
  2. ^ a b Who is Boris Johnson? A profile of Britain's new Foreign Secretary The Daily Telegraph, 13 Jul 2016
  3. ^ 「大学前」で決まる超・学歴社会ニューズウィーク日本版
  4. ^ “So you think you know who you are Boris Johnson”. The Daily Mail. (2010年6月12日). http://www.thefreelibrary.com/So+you+think+you+know+who+you+are+Boris+Johnson-a0228704016 2010年9月27日閲覧。 
  5. ^ Will Woodward, chief political correspondent (2007年7月17日). “Phooey! One-man melting pot ready to take on King Newt”. London: Guardian. http://www.guardian.co.uk/politics/2007/jul/17/localgovernment.london 2010年7月7日閲覧。 
  6. ^ Edwards & Isaby 2008, p. 46; Purnell 2011, pp. 94–95; Gimson 2012, pp. 87–88.
  7. ^ Purnell 2011, pp. 100–102; Gimson 2012, pp. 90–96.
  8. ^ Purnell 2011, pp. 115–116.
  9. ^ Purnell 2011, pp. 121, 126; Gimson 2012, pp. 98–99, 100–101.
  10. ^ Gimson 2012, p. 102.
  11. ^ Purnell 2011, p. 115.
  12. ^ Purnell 2011, pp. 118, 124.
  13. ^ Boris Johnson: Super ambassador?James Landale,BBC,2016年7月15日
  14. ^ 苦しむキャメロン首相菊川智文、British Politics Today第3巻9号 2014年9月1日
  15. ^ Purnell 2011, p. 124.
  16. ^ SIMON WALTERS (2016年5月15日). “The Boris I know: Tory Brexit darling's 'first female friend' gives amazing character reading”. London: Mail online. 2017年2月7日閲覧。
  17. ^ Edwards & Isaby 2008, p. 47; Purnell 2011, pp. 265–267; Gimson 2012, pp. 222–223.
  18. ^ Stephen Brook, press correspondent (2008年5月15日). “Boris to return to Telegraph column”. London: The Guardian. http://www.guardian.co.uk/media/2008/may/15/dailytelegraph.pressandpublishing 2010年7月7日閲覧。 
  19. ^ “Public has right to know about Boris Johnson's secret lovechild, court rules”. The Daily Telegraph (London). (2013年5月21日). http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/10070055/Public-has-right-to-know-about-Boris-Johnsons-secret-lovechild-court-rules.html 2016年3月6日閲覧。 
  20. ^ ロンドン市長選で現職再選時事ドットコム、2012年5月5日閲覧
  21. ^ “Boris's Brexit Gamble With China”. (2016年6月17日). http://www.huffingtonpost.co.uk/paul-reza-afshar/brexit-eu-referendum_b_10501664.html 2016年6月26日閲覧。 
  22. ^ “Boris Johnson: UK should have its own free-trade agreement with China”. (2013年10月18日). http://www.theguardian.com/politics/2013/oct/18/boris-johnson-china-trade-agreement-uk 2016年6月26日閲覧。 
  23. ^ “Boris Johnson says UK is better off outside the EU”. (2012年2月21日). http://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-eu-referendum-35626621 2012年2月21日閲覧。 
  24. ^ Stone, Jon (2016年4月22日). “Barack Obama hits back at Boris Johnson and explains why he moved Winston Churchill bust in the Oval Office”. London. オリジナル2016年4月24日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160424074304/http://www.independent.co.uk/news/uk/politics/barack-obama-hits-back-at-boris-johnson-and-explains-why-he-moved-winston-churchill-bust-in-the-oval-a6997026.html 2016年6月30日閲覧。 
  25. ^ “前ロンドン市長予想外の不出馬、英保守党首選に現職閣僚ら名乗り”. (2016年7月1日). http://jp.reuters.com/article/johnson-not-run-pm-idJPKCN0ZG1G0 2016年7月14日閲覧。 
  26. ^ “新英外相にジョンソン前ロンドン市長 ハモンド氏、財務相に”. (2016年7月14日). http://www.afpbb.com/articles/-/3093872?cx_part=topstory 2016年7月14日閲覧。 
  27. ^ Boris Johnson appointed UK foreign secretary by new PM Theresa May RT, 13 Jul 2016
  28. ^ http://www.theatlantic.com/international/archive/2016/07/the-world-reacts-to-boris/491381/
  29. ^ http://www.bbc.com/japanese/36802115
  30. ^ Philip Hensher "Banning Boris-ing is a waste of time", The Independent, 7 April 2008. Retrieved on 15 April 2008.
  31. ^ Boris Johnson could change the EU referendum result. Here's whyA. Bennett, The Daily Telegraph, 22 Feb 2016
  32. ^ Islington Tribune- News: Boris Johnson
  33. ^ “London saddles up for new bike hire scheme”. BBC News Website (London). (2010年7月30日). http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-10810869 2010年9月17日閲覧。 
  34. ^ Gimson, Andrew (2006 [2007]). Boris: The Rise of Boris Johnson. Pocket Books [Simon & Schuster]. pp. 11-12, 26-27, 71, 118, 119, 254. ISBN 0-7432-7584-5.
  35. ^ Wheeler, Brian (2008年5月4日). “The Boris Johnson story”. BBC News. http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/7376621.stm 2008年5月13日閲覧。 
  36. ^ a b Boris Johnson sweeps ahead as the voters' favourite to become the next Tory leaderL. Hughes, The Daily Telegraph, 31 Mar 2016

文献編集

Crines, Andrew S. (2013). “Why did Boris Johnson win the 2012 mayoral election?”. Public Policy and Administration Research 3 (9): 1–7. 
Edwards, Giles; Isaby, Jonathan (2008). Boris v. Ken: How Boris Johnson Won London. London: Politico's. ISBN 978-1842752258. 
Gimson, Andrew (2012). Boris: The Rise of Boris Johnson (second ed.). Simon & Schuster. 
Hosken, Andrew (2008). Ken: The Ups and Downs of Ken Livingstone. Arcadia Books. ISBN 978-1-905147-72-4. 
Johnson, Stanley (2009). Stanley I Presume. London: Fourth Estate. ISBN 978-0007296736. 
Purnell, Sonia (2011). Just Boris: Boris Johnson: The Irresistible Rise of a Political Celebrity. London: Aurum Press Ltd. ISBN 1-84513-665-9. 
Ruddock, Andy (2006). “Invisible Centers: Boris Johnson, Authenticity, Cultural Citizenship and a Centrifugal Model of Media Power”. Social Semiotics 16 (2): 263–282. 
Yates, Candida (2010). “Turning to Flirting: Politics and the Pleasures of Boris Johnson”. Rising East Essays 2 (1). 

外部リンク編集

公職
先代:
フィリップ・ハモンド
  外務・英連邦大臣
2016年 -
現職
先代:
ケン・リヴィングストン
  ロンドン市長
第2代:2008年 - 2016年
次代:
サディク・カーン
グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国議会
先代:
Michael Heseltine
庶民院 Henley 選挙区
2001年 - 2008年
次代:
John Howell
先代:
John Randall
庶民院 Uxbridge and South Ruislip 選挙区
2015年 -
現職
メディア
先代:
Frank Johnson
Editor (The Spectator)
1999年 - 2005年
次代:
Matthew d'Ancona