ポゴストベラルーシ語: пагостロシア語: погостウクライナ語: погост)とはルーシの行政・領土の単位である。キエフ・ルーシ期のポゴストはウロク(諸税)を徴収する役割を担った。日本語文献では「貢物納入所」という訳が当てられている[1]

ポゴストはキエフ大公国の公女・オリガがウロクの徴収のために、947年にノヴゴロドの地(ru)ドレヴリャーネ族に対して制定したのが始まりである[1]。ポゴスト設置以前は、徴税には、公がドルジーナ(従士)を率いて徴収に回るパリューヂェ(巡回徴貢)[注 1]という形式が採られていた[2]。しかし945年、ドレヴリャーネ族がダーニ(貢税)の徴収に抵抗し、徴収に赴いたオリガの夫のイーゴリ1世を殺害したことが、ポゴスト設置の発端となった[3]

ただしポゴストの概念はのちに変化し、以降の時代には、いくつかの集落からなる行政・領土の単位をポゴストと呼ぶようになった。キリスト教の普及の後、ポゴストには教会が建てられた。時と共にポゴストは、教会と墓地のある村を意味するようになった。また、小教区であると共に、交易や移住の中心地の役割も担い、共同の祝宴も行われた。18世紀 - 19世紀の中央ロシア(ru)では、ポゴストとは教会・墓地と、ポープ・プリーチト[注 2]の住居のある、小規模な移住地を指した。また、北部ロシア(ru)では行政区分名としてポゴストという名称が、1775年に廃止されるまで存続していた。さらに18世紀始めからは、ポゴストとは村の墓地を指す言葉としても使用された。このように、ポゴストという言葉にはいくつかの概念が含まれている。

現在は、多くの集落や地名にポゴストの名が残っている。

脚注 編集

注釈

  1. ^ 「パリューヂェ」はロシア語: полюдье音写による。音写と日本語訳は「和田春樹『ロシア史』34頁」による。
  2. ^ 「ポープ」はロシア語: попの転写、「プリーチト」はロシア語: причтの転写。聖職者階級を指す言葉。

出典

  1. ^ a b 和田春樹『ロシア史』40頁
  2. ^ 和田春樹『ロシア史』34頁
  3. ^ 和田春樹『ロシア史』36頁

参考文献 編集

  • Дьяченко, Григорий, протоиерей. Полный церковно-славянский словарь. — М., 1993. (репринт) — С.438.
  • 和田春樹編 『ロシア史』 (世界各国史22)、山川出版社、2002年