ポン・ジュノ

韓国の映画監督

ポン・ジュノ: 봉준호、漢字:奉俊昊、: Bong Joon-Ho1969年9月14日 - )は、韓国映画監督脚本家慶尚北道大邱市(現・大邱広域市)出身。母方の祖父は小説家の朴泰遠。韓国のいわゆる386世代の一人である。

ポン・ジュノ
봉준호
봉준호
生年月日 (1969-09-14) 1969年9月14日(50歳)
出生地 大韓民国の旗 韓国慶尚北道大邱市(現・大邱広域市)
職業 映画監督脚本家
ジャンル 映画
活動期間 1993年 - 現在
主な作品
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ポン・ジュノ
各種表記
ハングル 봉준호
漢字 奉俊昊
発音: ポン・ジュノ(ポン・ジュンホ)
英語表記: Bong Joon-ho
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略歴編集

延世大学校社会学科卒業後、韓国映画アカデミーに再入学。1995年の16mm短編のインディペンデント映画『白色人』が初監督作品となった。アカデミー在学中に製作した短編『支離滅裂』と『フレームの中の記憶』がバンクーバー国際映画祭と香港国際映画祭に招待され注目を集めた[1]

元は漫画家志望で、世界の漫画やアニメーションに精通し、日本だと松本大洋古谷実業田良家沖浦啓之などの作品を評価しており、影響も受けているという[2]しかし、右目を失明していることもあり漫画の道は断念した。

パク・キヨンの『モーテルカクタス』で助監督、ミン・ピョンチョンの『ユリョン』で脚本家を担当したのち、『フランダースの犬(邦題『ほえる犬は噛まない)』が初の長編作品となった[3][4]

長編2作目の『殺人の追憶』では実際に起きた事件を基にし、その事件を捜査する刑事達を描いた。本作は韓国内で大ヒットを記録。同国の重要な映画賞である大鐘賞で監督賞・作品賞を受賞した。

続く『グエムル-漢江の怪物-』では、韓国の観客動員記録を更新して[3]アジア・フィルム・アワード作品賞などを受賞し、同国を代表する若手監督とみなされるようになる[1][4]

2009年には、殺人の濡れ衣を着せられた息子を守る母親を描いた『母なる証明』を監督。カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品され、国際的に高い評価を獲得。第82回アカデミー賞外国語映画賞部門の韓国代表にも選出された。その他にも、日仏韓合作のオムニバス映画『TOKYO!』の一部として作られた「シェイキング東京」も国際的に高く評価されている[1]

2013年、グラフィックノベルが原作の『スノーピアサー』で、クリス・エヴァンスティルダ・スウィントンオクタヴィア・スペンサーエド・ハリスなどのハリウッドスターを起用し、ハリウッド進出を果たす。

2017年には、Netflix製作のSF作品である『オクジャ』を発表。再び、ティルダ・スウィントンジェイク・ギレンホールなどのハリウッドスターを起用し、広く注目を集めたが、第70回カンヌ国際映画祭のコンペテション部門に選出された際、記者会見の中で、審査員長のペドロ・アルモドバル監督から「個人的には、劇場公開される予定のない映画は、最高賞パルム・ドールのみならず、他のどんな賞を受賞するべきではないと考える」という発言が飛び出たことにより、議論を巻き起こした。

2019年には、自身の経験から着想を得たオリジナル脚本の『パラサイト 半地下の家族』を監督。第72回カンヌ国際映画祭のコンペテション部門に選出され、審査員満場一致で最高賞であるパルム・ドールを受賞。韓国映画100年という節目の年で、初の最高賞受賞となった[5]。また、フランスでは公開から観客動員数100万人を突破。アメリカでも公開後から高い評価を獲得し、第77回ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞、並びに監督賞脚本賞のノミネートを皮切りに、第25回放送映画批評家協会賞では、作品賞を始めとする7部門にノミネートされ、監督賞外国語映画賞を受賞。第26回全米映画俳優組合賞では、外国語映画としては初の最高賞であるキャスト賞を受賞。アメリカ国内の映画賞において作品賞、または外国語映画賞を総なめにした。その勢いは全く衰えることなく、英国アカデミー賞では、外国語作品賞オリジナル脚本賞を受賞。第92回アカデミー賞作品賞監督賞など6部門にノミネートされ[6]第73回アカデミー賞台湾映画の『グリーン・デスティニー』を監督し、作品賞にノミネートされたアン・リーに続いて、アジア人二人目となるアカデミー作品賞ノミネートとなった。[6]。そして、外国語映画として史上初めてとなる作品賞の受賞を筆頭に、監督賞脚本賞国際長編映画賞を受賞した。また、フランス版アカデミー賞と呼ばれるセザール賞では、韓国初の外国語映画賞を受賞。イギリスでは、外国語映画としての歴代興行成績で一位を記録した。

保守政権時代のブラックリスト被害編集

  • 保守派・右派の朴槿恵政権(2013年2月25日〜2017年3月10日)によって、ポン・ジュノは、政権に不都合な文化人に不利益を与えるとする「文化芸術界のブラックリスト朝鮮語: 박근혜_정부의_문화예술계_블랙리스트」に入れられていた。朴槿恵が弾劾・罷免され、その後の大統領選挙で進歩(革新)派・左派の文在寅政権が誕生した後の2017年10月に公開された、2013年8月27日に国家情報院が作成した「CJによる左寄りの文化事業の拡張や人物の迎え入れに対する世論」と題する文書によると、朴槿恵政権下の国家情報院は、ポン・ジュノが監督した映画『スノーピアサー』について「市場経済を否定し、抵抗運動を煽る」と大統領府に報告していた[7]。なお、CJはCJグループ、『スノーピアサー』はCJグループの子会社CJエンタテインメント配給。
  • 2017年9月には、朴槿恵政権の前の(朴槿恵と同じく保守派・右派の)李明博政権(2008年2月25日〜2013年2月24日)時代にも、国家情報院によってブラックリストに入れられていたことが発覚した[8]。李明博政権下の国家情報院は2011年10月26日に作成した「文化芸能界の左派の実態および純化策」報告書と題する文書で、ポン・ジュノについて「左傾向の映像制作で政府に対する不信感を注入」していると記していた[9]
  • ポン・ジュノは文在寅政権(2017年5月10日〜)が誕生した直後のAP通信のインタビューで、ブラックリストが存在していた朴槿恵政権時代について、「韓国のアーティストたちに深いトラウマを与えた悪夢のような数年だった」「まだトラウマから抜け出せずにいる人々が多い」と語った[10]
  • 第72回カンヌ国際映画祭で監督作品『パラサイト 半地下の家族』がパルム・ドールを受賞して帰国した後の2019年5月28日、韓国のテレビ局JTBCのインタビューでは、保守政権時代のブラックリストについて、「創作者にとっては消すことができない傷です。二度とこのようなことはあってはなりません」と語った[11]

フィルモグラフィー編集

 
(2010年3月5日)
公開年
  • 邦題
  • 原題
役職 備考
監督 脚本 製作
1994
  • 白人色
  • 백색인
短編
短編
  • フレームの中の記憶
  • 프레임속의 기억들
短編
1997
監督・共同脚本:パク・ギヨン
1999 監督・共同脚本:ミン・ビョンチョン
2000
  • 長編監督デビュー作
  • 共同脚本:ソン・テウン、ソン・ジホ
2003 共同脚本:シム・ソンボ
  • Sink and Rise
  • 싱크 & 라이즈
  • オムニバス映画『20のアイデンティティ/異共』
  • (原題:디지털 단편 옴니버스 프로젝트 이공
2004
オムニバス映画『三人三食』(原題:디지털 삼인삼색 2004
2005
監督・共同脚本:イム・ピルソン
2006
2008
  • シェイキング東京
  • Shaking Tokyo
オムニバス映画『TOKYO!
  • 出演のみ
  • 監督:イ・ギョンミ
2009 共同脚本:パク・ウンギョ
2011 Iki オムニバス映画『3.11 A Sense of Home Films』
2013 共同脚本:ケリー・マスターソン
2014 監督・共同脚本:シム・ソンボ
2017 共同脚本:ジョン・ロンソン
2019 共同脚本:ハン・ジウォン
2020 テレビドラマ版

受賞歴編集

  • 2000年 - 『ほえる犬は噛まない
    • 第19回ミュンヘン国際映画祭新人監督賞
    • 第25回香港国際映画祭国際映画批評家賞
    • 第3回ディレクターズ・カット・アワード今年の新人監督賞
  • 2003年 - 『殺人の追憶
    • サン・セバスティアン国際映画祭国際映画批評家賞・新人監督賞・FIPRESCI賞
    • トリノ映画祭観客賞
    • 第24回青龍映画賞最多観客賞
    • 第40回大鐘賞作品賞・監督賞
    • 大韓民国映画大賞作品賞・監督賞・脚本脚色賞(シム・ソンボと共同受賞)
    • 第23回韓国映画評論家協会賞最優秀作品賞・監督賞
    • 第4回釜山映画評論家協会賞監督賞・脚本賞(シム・ソンボと共同受賞)
    • 第11回椿事映画賞大賞・今年の監督賞・今年の脚本賞(シム・ソンボと共同受賞)
    • CINE21映画賞今年のシナリオ賞(シム・ソンボと共同受賞)
    • 第1回マックスムービー最高の映画賞最高の作品賞・最高の監督賞
    • ソウル芸術大学今年の作家賞
    • 第16回東京国際映画祭アジア映画賞
  • 2006年 - 『グエムル-漢江の怪物-
  • 2009年 - 『母なる証明
    • オンライン映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
    • アメリカ南東部映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
    • アメリカ女性映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
    • ロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀外国映画賞 Runner-Up
    • サンフランシスコ映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
    • ボストン映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
    • カンザスシティ映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
    • 第28回ミュンヘン国際映画祭最優秀作品賞
    • 第25回サンタバーバラ国際映画祭イーストミーツウェストシネマ賞
    • 第24回マール・デル・プラタ国際映画祭最優秀作品賞
    • 第6回ドバイ国際映画祭アジア-アフリカ長編映画部門脚本賞
    • 第5回Asia-Pacific Producers Network Award 監督賞
    • 第4回アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞・最優秀脚本賞
    • 第30回青龍映画賞最優秀作品賞賞
    • 第29回韓国映画評論家協会賞最優秀作品賞・脚本賞
    • 第10回釜山映画評論家協会賞最優秀作品賞
    • 第18回釜日映画賞最優秀作品賞
    • 今年の女性映画賞大賞
    • 第1回今年の映画賞作品賞
    • 第5回大韓民国大学映画祭監督賞
    • 第2回グリーンイメージ国際環境映画祭最優秀外国映画賞・最優秀外国監督賞・最優秀ドラマ賞・最優秀外国文化映画賞
  • 2013年 - 『スノーピアサー
    • ボストン映画批評家協会最優秀監督賞
    • ローマ国際映画祭監督賞
    • 第34回青龍映画賞監督賞
    • 第50回百想芸術大賞監督賞(映画部門)
    • 第14回ディレクターズ・カット・アワード今年の監督賞
    • 第22回釜日映画賞最優秀監督賞
    • 第14回釜山映画評論家協会賞脚本賞
    • 第33回韓国映画批評家協会賞最優秀作品賞・監督賞
    • 第5回今年の映画賞最優秀作品賞・監督賞
    • 韓国映画俳優協会誇らしい映画人賞
    • マックスムービー最高映画賞最高の監督賞
    • ゴールデントマト賞作品賞(Comic-Book部門)
  • 2017年 - 『オクジャ/okja
    • アメリカオースティン映画批評家協会賞最優秀外国映画賞
    • 第17回ディレクターズ・カット・アワード今年の監督賞
    • 第37回韓国映画評論家協会賞国際批評家連盟賞
    • 第27回国際環境メディア協会作品賞
    • マックスムービー最高の映画賞最高の監督賞
    • PETA Person Of The Year
    • ソウル芸術大学今年の作家賞
  • 2019年 - 『パラサイト 半地下の家族
    • 第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞)
    • フランス劇場協会アートハウスシネマ賞
    • 国際シネフィル協会賞監督賞
    • シドニー国際映画祭大賞
    • ユーラシア国際映画祭監督賞
    • 第24回春史大賞映画祭最優秀監督賞・脚本賞
    • ゴールデン・グローブ賞:最優秀外国語映画賞
    • シカゴ映画批評家協会賞:最優秀外国語映画賞
    • ロサンゼルス映画批評家協会賞:最優秀作品賞・監督賞
    • 放送映画批評家協会賞:外国語映画賞・監督賞
    • 全米映画批評家協会賞:最優秀作品賞・脚本賞
    • ニューヨーク映画批評家協会賞:最優秀外国語映画賞
    • サンフランシスコ映画批評家協会賞:最優秀作品賞
    • バンクーバー映画批評家協会賞:最優秀作品賞
    • 英国アカデミー賞:非英語作品賞・オリジナル脚本賞
    • 第92回アカデミー賞:作品賞・監督賞・脚本賞・国際長編映画賞
    • セザール賞:最優秀外国語映画賞

脚注編集

  1. ^ a b c The Auteurs: Bong Joonn-ho (Cinema Axis, 2015.5.8)
  2. ^ animeanime「『スノーピアサー』 ポン・ジュノ監督インタビュー」(2014年2月6日)、編集者 牧野早菜生の発言(Twitter、2020年2月10日)
  3. ^ a b 日外アソシエーツ『現代外国人名録2012』(2012)
  4. ^ a b The Bong Joon-ho Page”. www.koreanfilm.org. 2019年5月27日閲覧。
  5. ^ GISAENGCHUNG” (英語). Festival de Cannes 2019. 2019年5月27日閲覧。
  6. ^ a b Ugwu, Reggie (2020年1月13日). “‘Parasite’ Director Bong Joon Ho on Making Oscar History” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2020/01/13/movies/bong-joon-ho-oscars.html 2020年1月14日閲覧。 
  7. ^ “国家情報院「映画『スノーピアサー』、市場経済否定し抵抗運動煽る」”. ハンギョレ. (2017年10月31日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/28838.html 2019年5月27日閲覧。 
  8. ^ “李明博政府時代の国情院、「文化界のブラックリスト」作り大統領に報告”. ハンギョレ. (2017年9月11日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/28437.html 2019年5月29日閲覧。 
  9. ^ “ブラックリストの芸能人、国情院の予告どおり追い出し”. ハンギョレ. (2017年9月30日). http://japan.hani.co.kr/arti/politics/28614.html 2019年5月27日閲覧。 
  10. ^ “70회 칸 "악몽같은 몇 년" 블랙리스트 봉준호 佛서 밝힌 속내(70回カンヌ 「悪夢のような数年」ブラックリスト ポン・ジュノ フランスで明らかにした本音)”. 日刊スポーツ(韓国). (2017年5月18日). https://entertain.v.daum.net/v/20170518082517794 2019年5月26日閲覧。 
  11. ^ “블랙리스트 떠돌던 그 시절…영화 '기생충' 구상 꿈틀(ブラックリストがあったあの頃…映画「パラサイト」の構想が生まれた)”. JTBC. (2019年5月28日). http://news.jtbc.joins.com/article/article.aspx?news_id=NB11825016 2019年5月29日閲覧。 

外部リンク編集