マイク・ムスタカス

アメリカのプロ野球選手 (1988-)

マイク・ムスタカス: Mike Moustakas、本名:マイケル・クリストファー・ムスタカスMichael Christopher Moustakas〉、1988年9月11日 - )は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身のプロ野球選手内野手)。右投左打。MLBシカゴ・ホワイトソックス傘下所属。愛称はムースMoose[1]。代理人はスコット・ボラス

マイク・ムスタカス
Mike Moustakas
シカゴ・ホワイトソックス (マイナー)
ミルウォーキー・ブルワーズ時代
(2019年4月15日)
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 カリフォルニア州ロサンゼルス
生年月日 (1988-09-11) 1988年9月11日(35歳)
身長
体重
6' 0" =約182.9 cm
225 lb =約102.1 kg
選手情報
投球・打席 右投左打
ポジション 三塁手二塁手
プロ入り 2007年 MLBドラフト1巡目(全体2位)
初出場 2011年6月10日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

カンザスシティ・ロイヤルズの球団2位となる個人シーズン本塁打記録を持つ[2]

南海ホークスでプレーし、引退後は千葉ロッテマリーンズの打撃コーチを務めたトム・ロブソン叔父にあたる。

経歴 編集

プロ入り前 編集

ロサンゼルス市内のチャッツワース高等学校英語版時代には遊撃手として通算54本塁打の州記録を樹立し、マット・ドミンゲスと三遊間コンビを組んでいた。また、一方でアメリカンフットボールクォーターバックとしても活躍していた[3][4]

プロ入りとロイヤルズ時代 編集

2007年MLBドラフト1巡目(全体2位)でカンザスシティ・ロイヤルズから指名を受けた[5]が、代理人のスコット・ボラスが高額の契約金を要求したために交渉は難航。ロイヤルズとの交渉が決裂した場合は南カリフォルニア大学への進学を予定していたが、契約期限である8月15日午後11時59分(東部標準時)の11分前に契約金400万ドルで合意した。これは全体1位のデビッド・プライス(560万ドル)、全体5位のマット・ウィータース(600万ドル)に比べると低額であったが、ムスタカス自身がボラスの反対を押し切る形で決断した[6]

2008年はA級バーリントン・ビーズ英語版で22本塁打を記録[5]、16年ぶりに10代でのミッドウェストリーグ本塁打王となった。

2009年の開幕前には「ベースボール・アメリカ」誌の有望株ランキングにおいて、球団内では1位、マイナー全体では13位にランクインされた[7]。しかし、同年は打撃不振で出塁率が3割に満たず、評価を下げた。

2010年は打撃が復活し、AA級ノースウエストアーカンソー・ナチュラルズで5月下旬まで打撃三冠を維持した。シーズン途中にAAA級オマハ・ロイヤルズに昇格し、合計36本塁打、124打点でマイナーリーグ全体での二冠王となった[8]

2011年の開幕はAAA級オマハ・ストームチェイサーズ[9]で迎えたが、6月10日のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム戦でメジャーデビュー[5]。その翌日にジョエル・ピネイロからメジャー初本塁打を記録した[10]。その後は8月の半ばまで打率が1割台に低迷していたが、9月には約3ヵ月ぶりの本塁打を記録するなど打率.352、4本塁打と結果を出した[5]

2012年は前半戦で15本塁打を記録したが、後半戦は失速した。フィールディング・バイブル・アワード三塁手部門ではエイドリアン・ベルトレに次ぐ2位に入り、ゴールドグラブ賞でも最終候補に残ったが受賞はならなかった。

2014年2月21日にロイヤルズと1年契約に合意した[11]。この年は打撃不振に陥り、マイナー降格も経験した。打率はメジャーデビュー以来毎年低下し続け、打率.212まで下がった。ホームランを15本記録したが、シーズンを通じて低打率だった。守備面でも自己ワーストの19失策を喫した。

2015年オールスターゲームの投票では三塁手部門の2位で選出はされなかったが、34人目の選手を決める最終投票で選出された。オールスター後はやや調子を落としたが、それでも打率.284、22本塁打、82打点という打撃成績を記録し、これら4部門全てで自己記録を更新した[5]2015年のワールドシリーズでは5試合で打率.304・3打点などを記録し、優勝に貢献した。

2016年は開幕から25試合に出場し、低打率ながら7本塁打を記録していたが、エンゼルス戦でのクロスプレーで左手親指を骨折し、15日間の故障者リスト入りとなった[12]。その後、一度は復帰したが、今度は5月22日の試合で守備中にチームメイトのアレックス・ゴードンと交錯し、右膝前十字靭帯断裂という大怪我を負って手術を受け、シーズン絶望となった[13]

2017年は前年の右膝前十字靭帯断裂から復帰を果たした[14]。9月20日のトロント・ブルージェイズ戦でシーズン37号本塁打を記録し、1985年スティーブ・バルボニを抜いて当時球団シーズン最多本塁打記録となった[14]。打率.272、38本塁打、85打点を記録。本塁打は自己記録を更新し、初めて30本超えを果たした。打率以外の3部門で自己記録を更新した。オフにはカムバック賞を受賞した[15]。11月2日にFAとなり[16]、球団はクオリファイング・オファーを提示した[17]が、11月16日に拒否した[18]。自己最高の38本塁打を記録した直後ということもあり、「オフの目玉FA選手の1人」と目されていた(このオフは、同じ三塁手のFA選手は、ムスタカス以外ではトッド・フレイジャーくらいしか目立った選手がいない事情もあった)[19][20]

 
カンザスシティ・ロイヤルズ時代
(2018年5月9日)

2018年3月9日、ロイヤルズと「1年550万ドル+出来高」(出来高が上限になった場合だと770万ドル。2年目は相互オプション)で再契約を結んだが、結果的には、クオリファイング・オファー(QO)を拒否したことが裏目になった(QOの半額以下であり、出来高を含めても前年の年俸870万ドルを下回る金額での再契約になった。なお水面下では、エンゼルスから3年4500万ドルの契約提示があったともいわれているが、結局は破談になったという)[19][21][22]

ブルワーズ時代 編集

2018年7月27日にブレット・フィリップスホルヘ・ロペスとのトレードで、ミルウォーキー・ブルワーズへ移籍した[23]。ポストシーズンのディビジョンシリーズ第1戦でサヨナラ安打を記録した、チームのスイープでのシリーズ突破に貢献。オフの10月30日にFAとなった[5]

2019年2月17日にブルワーズと1年1000万ドルで再契約を結んだ[24]。143試合で打率.254、35本塁打、87打点の成績を残した。守備では初めて二塁も守った[25]。オフの11月1日にFAとなった[5]

レッズ時代 編集

2019年12月5日にシンシナティ・レッズと4年6400万ドルで契約した[26]

2020年は44試合の出場で打率.230、8本塁打、27打点を記録。主に二塁手として起用された。

2021年からは三塁手に配置転換された。5月から8月にかけて右足かかとの打撲で2ヶ月半も戦線離脱し、9月22日には右足裏の筋膜炎で3回目の故障者リスト入りとなった[27]。その影響で62試合の出場に留まった。

2022年は78試合の出場で打率.214、7本塁打、25打点に留待った。オフの12月22日にカート・カサリの加入に伴い、DFAとなり、そのまま自由契約となった[28]

ロッキーズ時代 編集

2023年3月5日にコロラド・ロッキーズとマイナー契約を結んだ[29]。3月27日にメジャー契約を結んで[5]、開幕をメジャーで迎えた。ロッキーズでは47試合に出場し、打率.270、4本塁打、17打点、出塁率.360を記録した。

エンゼルス時代 編集

2023年6月25日にコナー・バンスコヨックとのトレードでロサンゼルス・エンゼルスへ移籍し[30]、同日中にアクティブ・ロースター 入りした[5]。6月26日のシカゴ・ホワイトソックス戦で移籍後初出場した。オフの11月3日にFAとなった[31]

ホワイトソックス傘下時代 編集

2024年2月14日にシカゴ・ホワイトソックスとマイナー契約を結び、スプリングトレーニングに招待選手として参加することになった[32]

プレースタイル 編集

身長は5フィート11インチ(約180.3cm)と比較的小柄ながら長打力を持ち、どんなコースの球でも引っ張って長打にすることが出来る。打席では積極的に振っていく傾向にあり、四球数が少ないため、出塁率があまり伸びない傾向がある[33]。実際、例えば2017年シーズンの出塁率は.314(打率は.272)であり、これはFAで競合したフレイジャー(打率は.213だが、出塁率は.344)よりを下回る数字であり、これが2017年オフにFAになった際に「厳しい評価」に映る一因になった[20][34]

高校時代は遊撃手だったが、プロ入り2年目途中から三塁手へ転向。失策がやや多く、将来的には守備の負担が少ないポジションへのコンバートも予想されていた[33]。メジャー昇格後は好守の三塁手として評価されている。2019年には二塁も守り、複数の内野ポジションをこなした[25]

詳細情報 編集

年度別打撃成績 編集

















































O
P
S
2011 KC 89 365 338 26 89 18 1 5 124 30 2 0 2 2 22 0 1 51 5 .263 .309 .367 .675
2012 149 614 563 69 136 34 1 20 232 73 5 2 0 5 39 4 7 124 4 .242 .296 .412 .708
2013 136 514 472 42 110 26 0 12 172 42 2 4 1 4 32 1 5 83 13 .233 .287 .364 .651
2014 140 500 457 45 97 21 1 15 165 54 1 0 1 4 35 1 3 74 12 .212 .271 .361 .632
2015 147 614 549 73 156 34 1 22 258 82 1 2 4 5 43 1 13 76 14 .284 .348 .470 .817
2016 27 113 104 12 25 6 0 7 52 13 0 1 0 0 9 0 0 13 5 .240 .301 .500 .801
2017 148 598 555 75 151 24 0 38 289 85 0 0 0 6 34 7 3 94 18 .272 .314 .521 .835
2018 98 417 378 46 94 21 1 20 177 62 3 0 0 4 30 3 5 63 10 .249 .309 .468 .778
MIL 54 218 195 20 50 12 0 8 86 33 1 1 0 2 19 2 2 40 3 .256 .326 .441 .767
'18計 152 635 573 66 144 33 1 28 263 95 4 1 0 6 49 5 7 103 13 .251 .315 .459 .774
2019 143 584 523 80 133 30 1 35 270 87 3 0 0 2 53 5 6 98 12 .254 .329 .516 .845
2020 CIN 44 163 139 13 32 9 0 8 65 27 1 0 0 2 18 1 4 36 5 .230 .331 .468 .799
2021 62 206 183 21 38 12 0 6 68 22 0 0 0 3 18 0 2 46 6 .208 .282 .372 .653
2022 78 285 252 30 54 12 0 7 87 25 2 0 0 3 24 0 6 75 8 .214 .295 .345 .640
2023 COL 47 136 115 21 31 7 0 4 50 17 0 0 0 3 17 1 1 34 1 .270 .360 .435 .795
LAA 65 250 237 22 56 8 0 8 88 31 0 0 0 5 6 0 2 61 6 .236 .256 .371 .627
'23計 112 386 352 43 87 15 0 12 138 48 0 0 0 8 23 1 3 95 7 .247 .293 .392 .685
MLB:13年 1427 5577 5060 595 1252 274 6 215 2183 683 21 10 8 50 399 26 60 968 122 .247 .307 .431 .739
  • 2023年度シーズン終了時

年度別守備成績 編集



一塁(1B) 二塁(2B) 三塁(3B)




































2011 KC - - 89 60 169 11 14 .954
2012 - - 149 127 312 15 41 .967
2013 - - 134 114 210 16 19 .953
2014 - - 138 97 241 19 14 .947
2015 - - 146 112 257 12 21 .969
2016 - - 26 29 40 2 4 .972
2017 - - 127 74 226 12 17 .962
2018 4 31 3 0 8 1.000 - 76 51 171 7 21 .969
MIL - - 52 32 90 5 11 .961
'18計 4 31 3 0 8 1.000 - 128 83 261 12 32 .966
2019 - 47 64 86 1 25 .993 105 67 151 11 17 .952
2020 CIN 10 48 1 1 5 .980 32 38 43 0 7 1.000 2 0 4 0 1 1.000
2021 11 41 4 0 2 1.000 1 0 0 0 0 .--- 44 23 68 5 3 .948
2022 24 167 14 0 10 1.000 - 25 16 28 1 2 .978
2023 COL 24 158 14 0 14 1.000 - 12 6 11 1 0 .944
LAA 26 141 8 0 8 1.000 - 40 24 68 3 11 .968
'23計 50 299 22 0 22 1.000 - 52 30 79 4 11 .965
MLB 99 586 44 1 47 .998 80 102 129 1 32 .996 1165 832 2046 120 196 .960
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

表彰 編集

記録 編集

MiLB
MLB

背番号 編集

  • 8(2011年 - 2018年7月26日、2023年)
  • 18(2018年7月28日 - 同年終了)
  • 11(2019年)
  • 9(2020年 - 2022年)

脚注 編集

  1. ^ Royals Players Weekend nicknames explained MLB.com (英語) (2017年8月24日) 2017年9月29日閲覧
  2. ^ Flanagan, Jeffrey (2019年9月4日). “Jorge Soler sets Royals home run record”. MLB.com. 2019年10月7日閲覧。
  3. ^ Moustakas Bio and Stats”. Wilmington.bluerocks.milb.com. 2010年8月31日閲覧。
  4. ^ [Mike Moustakas Football Stats - Chatsworth 04-05]. MaxPreps(英語). 2011年6月12日閲覧
  5. ^ a b c d e f g h i MLB公式プロフィール参照
  6. ^ “Royals sign No. 2 overall pick 11 minutes before deadline”. ESPN. Associated Press. (2007年8月16日). http://sports.espn.go.com/espn/wire?section=mlb&id=2976787 2007年12月22日閲覧。 
  7. ^ ]Top 100 Prospects: No. 1-20, BaseballAmerica.com(英語), 2011年6月12日閲覧
  8. ^ Kappel, Nick(2011-01-10). 2011 Fantasy Baseball Prospect Report: Kansas City Royals' Mike Moustakas. Bleacher Report(英語). 2011年6月12日閲覧
  9. ^ 2011年より球団名変更
  10. ^ Kaegel, Dick(2011-06-11). Moustakas belts first Major League homer. royals.com(英語). 2011年6月12日閲覧
  11. ^ Royals agree to terms with seven players on one-year contracts for 2014”. MLB.com Royals Press Release (2014年2月21日). 2014年2月22日閲覧。
  12. ^ ロイヤルズ 主軸ムスタカスが15日間のDL入り 左手親指骨折”. スポニチ Sponichi Annex (2016年5月8日). 2016年10月15日閲覧。
  13. ^ ロイヤルズ・ムスタカス今季絶望か 靱帯断裂で手術”. 日刊スポーツ (2016年5月27日). 2016年10月15日閲覧。
  14. ^ a b Slugger 2017年12月号増刊 2017MLB総決算:メジャーリーガー555人&全30球団通信簿 22頁
  15. ^ ホランドとムスタカスがカムバック賞”. 日刊スポーツ (2017年12月2日). 2017年12月2日閲覧。
  16. ^ Key free agents for all 30 MLB teams MLB.com (英語) (2017年11月5日) 2017年12月30日閲覧
  17. ^ Jeffrey Flanagan (2017年11月6日). “Royals give qualifying offer to Eric Hosmer”. MLB.com. 2017年11月17日閲覧。
  18. ^ Jason Beck (2017年11月16日). “Royals' trio turns down qualifying offers”. MLB.com. 2017年11月17日閲覧。
  19. ^ a b マイク・ムスタカスが激安年俸でロイヤルズと再契約した意味”. Yahoo!ニュース. 2018年3月12日閲覧。
  20. ^ a b Free Agent Faceoff: Mike Moustakas Vs. Todd Frazier”. MLB TRADE RUMORS. 2018年3月12日閲覧。
  21. ^ 低調FA市場の悲哀…ムスタカスが18.6億円断った古巣と5.9億円で再契約”. Full-Count. 2018年3月12日閲覧。
  22. ^ Musing on slow-moving market for Moose”. MLB.com. 2018年3月12日閲覧。
  23. ^ Jeffrey Flanagan (2018年7月28日). “Royals send Moose to Brewers for 2 prospects” (英語). MLB.com. 2018年7月29日閲覧。
  24. ^ FA停滞の“被害者”ムスタカス、ブリュワーズ残留も本意ではない? 複数年希望も2年連続の単年契約”. ベースボールチャンネル. 2019年11月12日閲覧。
  25. ^ a b ムスタカスは今季こそ長期契約を勝ち取れるか。 レンドーンら大型三塁手の陰に注目の大砲”. ベースボールチャンネル. 2019年11月12日閲覧。
  26. ^ FAムスタカスが4年70億円でレッズ入り 安定の長距離砲、二塁転向濃厚も念願の複数年契約”. ベースボールチャンネル. 2019年12月3日閲覧。
  27. ^ “プレーオフ争うレッズに痛手、ムスタカスが右足裏の筋膜炎3度目のIL入り”. 日刊スポーツ. (2021年9月23日). https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202109230000165.html 2022年4月19日閲覧。 
  28. ^ Reds Designate Mike Moustakas, Sign Curt Casali” (英語). MLB Trade Rumors. 2022年12月23日閲覧。
  29. ^ Rockies To Sign Mike Moustakas” (英語). MLB Trade Rumors. 2023年3月6日閲覧。
  30. ^ Angels acquire INF Mike Moustakas from Colorado” (英語). MLB.com (2023年6月25日). 2023年6月25日閲覧。
  31. ^ 130 Players Become XX(B) Free Agents” (英語). Home (2023年11月3日). 2023年11月8日閲覧。
  32. ^ “White Sox agree to minor league contract with Mike Moustakas”. ESPN. (2024年2月14日). https://www.espn.com/mlb/story/_/id/39528458/white-sox-agree-minor-league-contract-mike-moustakas 2024年2月15日閲覧。 
  33. ^ a b Sickels, John(2011-06-10). Prospect of the Day: Mike Moustakas, 3B, Kansas City Royals. Minor League Ball(英語). 2011年6月12日閲覧
  34. ^ 『スラッガー』2018年3月号、35頁。

注釈 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集