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マッチボックス」(Matchbox)は、カール・パーキンスの楽曲である。1956年12月にレコーディングが行われ、1957年にシングル盤『ユア・トゥルー・ラブ』のB面曲として発売された。主要な音楽チャートにはA面曲の「ユア・トゥルー・ラブ」のみがチャートインしたが、本作は1958年にジェリー・リー・ルイス、1964年にビートルズによってカバーされるなど、多数のアーティストによってカバーされたパーキンスの楽曲となっている。

マッチボックス
カール・パーキンス楽曲
収録アルバムダンス・アルバム
英語名Matchbox
リリース1957年
録音
ジャンルロカビリー
時間2分10秒
レーベルサン・レコード
作詞者カール・パーキンス
作曲者カール・パーキンス
プロデュースサム・フィリップス
ダンス・アルバム 収録曲
みんないい娘
(B-3)
マッチボックス
(B-4)
ユア・トゥルー・ラブ
(B-5)

歌詞には、ブラインド・レモン・ジェファーソンが1927年に発売した「マッチ・ボックス・ブルース」と共通のフレーズが含まれている。

背景 編集

マ・レイニー英語版は、1924年3月にイリノイ州シカゴで「Lost Wandering Blues」の録音を行なった[1]。同作の歌詞では、「Matchbox」をスーツケースを表す単語として使用している。

I'm leaving this morning, with my clothes in my hand
I won't stop to wandering, till I find my man
I'm sitting here wondering', will a matchbox hold my clothes
I've got a sun to beat, I'll be farther down the road

その3年後、ブラインド・レモン・ジェファーソンが、1927年3月14日にジョージア州アトランタにあるオケ・レコードで録音した「マッチ・ボックス・ブルース」でこの言葉を使用[1][2]。作家のポール・オリバーは、「レイニーもジェファーソンも、伝統的な使い方から(このフレーズを)取り入れたのではないか」と述べている[3]

オリジナル・バージョン 編集

ある時、スタジオを訪れていたパーキンスの父バックがパーキンスに対し「マッチ・ボックス・ブルース」を演奏するよう提案[4]した。バックは「マッチ・ボックス・ブルース」の歌詞のうちのわずか数行を記憶しているにすぎなかったが、パーキンスは当時サン・スタジオのセッション・ミュージシャンであったジェリー・リー・ルイスが弾き始めたピアノのリフに併せて、ギターの弾き語りで即興演奏を始めた[5]。その後、1956年12月4日にメンフィス・レコーディング・サービスで「マッチボックス」の正式な録音が行なわれた[6]

パーキンスは、マ・レイニーの曲もブラインド・レモン・ジェファーソンの曲を聴いたことがなく[7]、小作人である父バックが何年も前にラジオもしくは畑仕事で聴いていたのではないかと推測している[4]。両者の楽曲では共通のフレーズが見受けられるが、ジェファーソンの「マッチ・ボックス・ブルース」では強健な女性について歌われているのに対して、パーキンスの「マッチボックス」では愛に飢えた前途多難な「貧しい少年」について歌われている[5]

「マッチボックス」は、1957年にシングル盤『ユア・トゥルー・ラブ』のB面曲として発売された[7]。同年2月2日にABCの『Ozark Jubilee』で演奏された後、1957年にテックス・リッターが司会を務める『Ranch Party』でも演奏された。

ビートルズによるカバー 編集

マッチ・ボックス
ビートルズシングル
B面 スロー・ダウン
リリース
規格 7インチシングル
ジャンル ロック
時間
レーベル
作詞・作曲 カール・パーキンス
プロデュース ジョージ・マーティン
チャート最高順位
後述を参照
ビートルズ シングル U.S. 年表
  • マッチ・ボックス
  • (1964年)
ビートルズ シングル 日本 年表
  • マッチ・ボックス
  • (1964年)
パスト・マスターズ Vol.1 収録曲
スロウ・ダウン
(13)
マッチボックス
(14)
アイ・フィール・ファイン
(15)
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パーキンスのファンであったビートルズは、1961年から1962年までに「マッチボックス」を演奏していた[8]。当時のドラマーであるピート・ベストは1962年8月に解雇されるまで本作のリードボーカルを担当していた[9]。当時のライブ音源は、1977年に発売された『デビュー! ビートルズ・ライヴ'62』に収録されている。その後ベストの後任として加入したリンゴ・スターは、1963年7月にBBCラジオの番組『Pop Go The Beatles』[10]からリードボーカルを担当している[11]。この時の演奏は、1994年に発売された『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC』に収録されている[12]

ビートルズは、1964年6月1日にパーキンスをスタジオに迎えて「マッチボックス」のカバー版を録音した[13][14]。当時について、スターは後に「喉の調子が悪くてとても恥ずかしかった」[12]と語っているが、この2日後にスターは急性扁桃炎と咽頭炎で入院し[15]、ツアーへの参加を見合わせることとなった[16]。音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は、ビートルズによるカバー・バージョンについて「平坦な足取り」と評し、パーキンスのギター奏法を研究したジョージ・ハリスンだけが「やる気を見せている」と付け加えている[9]

「マッチボックス」は、イギリスでは6月19日にEP『のっぽのサリー』の最後の楽曲として発売された[17]。アメリカでは、7月にキャピトル・レコードから発売されたアルバム『サムシング・ニュー』に収録された後[18]、8月24日に「スロー・ダウン」をB面に収録したシングル盤として発売された[19]。アメリカのBillboard Hot 100[20]や『キャッシュボックス』誌のチャート[21]、カナダのRPM Top 40チャート[22]では最高位17位を記録した。その後、『ロックン・ロール・ミュージック』や『パスト・マスターズ』、『モノ・マスターズ』などのコンピレーション・アルバムにも収録された[8]

クレジット 編集

※出典[23]

チャート成績 編集

週間チャート
チャート (1964年) 最高位
Canada Top Singles (RPM)[22] 17
US Billboard Hot 100[20] 17
US Cash Box Top 100[21] 17
月間チャート
チャート (1964年) 最高位
日本 (ミュージック・マンスリー洋楽チャート)[24] 4

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ a b Springer 2007, p. 173.
  2. ^ Tosches, Nick (1985). Country: The Twisted Roots of Rock 'n' Roll. New York: Da Capo Press. pp. 203-204. https://books.google.com/books?id=VpeGEPCKsesC&pg=PA204&dq=ma+rainey+lost+wandering+blues+match+box&hl=en&sa=X&ei=R4t6T9K7PIig9QS4z82WBQ&ved=0CFAQ6AEwBQ#v=onepage&q=ma%20rainey%20lost%20wandering%20blues%20match%20box&f=false. "The essence of the song's lyrics did not originate with Blind Lemon Jefferson but with Ma Rainey's 1924 record 'Lost Wandering Blues.' Lord, I stand here wondering, Will a matchbox hold my clothes?"" 
  3. ^ Oliver, Paul (1968). Screening the Blues : Aspects of the Blues Tradition. Cassell, London: Littlehampton Book Services Ltd. ISBN 0-304-93137-3 
  4. ^ a b Perone 2019, p. 198.
  5. ^ a b Perkins & McGee 1996, pp. 221–223.
  6. ^ Cotten, Lee (1989). The Golden Age of American Rock 'n Roll: Reelin' & rockin', 1956-1959. Pierian Press. p. 50. ISBN 1-5607-5039-1 
  7. ^ a b Leszczak 2014, p. 143.
  8. ^ a b Womack 2014, p. 613.
  9. ^ a b MacDonald 1998, p. 104.
  10. ^ Miles 2001, p. 100.
  11. ^ Everett 2001, p. 240.
  12. ^ a b Womack 2014, p. 612.
  13. ^ Dogget, Peter; Humphries, Patrick (2010). The Beatles: The Music And The Myth. Omnibus Press. p. 173. ISBN 0-8571-2361-0 
  14. ^ Lewisohn 2005, p. 44.
  15. ^ Miles 2001, p. 145.
  16. ^ Everett 2001, p. 238.
  17. ^ Lewisohn 2005, p. 46.
  18. ^ Miles 2001, p. 158.
  19. ^ Lewisohn 2005, p. 200.
  20. ^ a b The Hot 100 Chart”. Billboard (1964年10月17日). 2021年8月12日閲覧。
  21. ^ a b Hoffmann 1983, pp. 32–34.
  22. ^ a b Top RPM Singles: Issue 9278”. RPM. Library and Archives Canada. 2022年7月6日閲覧。
  23. ^ Russell, Jeff P. (2006). The Beatles Complete Discography. Universe. p. 265. ISBN 0-7893-1373-1 
  24. ^ 『日経BPムック 大人のロック!特別編集 ザ・ビートルズ 世界制覇50年』日経BP、2015年、97頁。ISBN 978-4-8222-7834-2 

参考文献 編集

  • Everett, Walter (2001). The Beatles as Musicians: The Quarry Men through Rubber Soul. New York, NY: Oxford University Press. ISBN 0-1951-4105-9 
  • Hoffmann, Frank (1983). The Cash Box Singles Charts, 1950-1981. Metuchen, New Jersey: The Scarecrow Press. pp. 32-34 
  • Leszczak, Bob (2014). Who Did It First?: Great Rock and Roll Cover Songs and Their Original Artists. Rowman & Littlefield Publishers. ISBN 1-4422-3322-2 
  • Lewisohn, Mark (2005). The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962?1970. London: Bounty Books. ISBN 978-0-7537-2545-0 
  • MacDonald, Ian. Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties. London: Pimlico. ISBN 978-0-7126-6697-8 
  • Miles, Barry. The Beatles Diary Volume 1: The Beatles Years. London: Omnibus Press. ISBN 0-7119-8308-9 
  • Perkins, Carl; McGee, David (1996). Go, Cat, Go!. Hyperion Press. ISBN 0-7868-6073-1 
  • Perone, James E. (2019). Listen to the Blues! Exploring a Musical Genre. ABC-CLIO. ISBN 1-4408-6615-5 
  • Springer, Robert (2007). Nobody Knows where the Blues Come from: Lyrics and History. University Press of Mississippi. ISBN 1-9341-1029-9 
  • Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four. Santa Barbara, CA: ABC-CLIO. ISBN 978-0-313-39171-2 

外部リンク 編集