マニラ・ライトレール2000形電車
2000形は、フィリピンの首都・マニラでライト・レール・トランジット・オーソリティ(Light Rail Transit Authority、LRTA)が運営するマニラ・ライトレール・トランジット・システムで使用される電車の1形式。LRT2号線向けに製造された、車体長23m級の大型車両である[1][3]。
マニラ・ライトレール2000形電車 | |
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2000形電車 | |
基本情報 | |
運用者 | ライト・レール・トランジット・オーソリティ(LRTA) |
製造所 | 現代ロテム、東芝(電気機器) |
製造年 | 2002年 - 2003年 |
製造数 | 72両(4両編成18本) |
運用開始 | 2003年4月5日 |
投入先 | マニラLRT2号線(Line 2) |
主要諸元 | |
編成 | 4両編成(Mc1 + M1 + M2 + Mc2) |
軸配置 | 4 × (Bo′Bo′) |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 |
直流1,500 V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 80 km/h |
起動加速度 | 4.68 km/h/s[注釈a 1] |
減速度(常用) | 4.68 km/h/s[注釈a 1] |
減速度(非常) | 5.40 km/h/s[注釈a 1] |
編成定員 | 1,628人(着席232人)[注釈a 1] |
車両定員 |
先頭車 247人(着席54人)[注釈a 2] 最大392人[注釈a 1] 中間車 268人(着席62人)[注釈a 2] 最大422人[注釈a 1] |
車両重量 |
先頭車 41.0 t 中間車 39.05 t |
積車重量 | 最大213.79 t(4両編成) |
編成重量 | 160.1 t |
全長 | 23,800 mm |
車体長 | 22,500 mm |
全幅 | 3,200 mm |
全高 | 4,100 mm(集電装置含) |
床面高さ | 1,100 mm |
車体 | ステンレス鋼 |
台車 | ボルスタレス台車 |
車輪径 | 850 mm |
固定軸距 | 2,200 mm |
台車中心間距離 | 15,800 mm |
軸重 | 16.6 t |
主電動機 | かご形三相誘導電動機(1,100 V、80 A、1,915 rpm) |
主電動機出力 | 120 kW |
駆動方式 | WN駆動方式 |
歯車比 | 111:14 (7.93) |
出力 | 480 kW |
編成出力 | 1,920 kW |
制御方式 | VVVFインバータ制御(IGBT素子、自動空冷方式) |
制動装置 | 電気指令式ブレーキ、回生ブレーキ |
保安装置 | 自動列車保安装置(ATP)、自動列車制御装置(ATC)、自動列車運転装置(ATO) |
備考 | 主要数値は[1][2][3][4][5][6]に基づく。 |
概要
編集"メガトレン"(Megatren)とも呼ばれるMRT-2線(Line 2)は、マニラ首都圏のパシグ(Pasig)、マリキナ(Marikina)、ケソンシティ(Quezon city)、サンファン(San Juan)、マニラを経由し、首都圏を横断する高架通勤鉄道である。1996年から正式に建設プロジェクトが開始されたこの路線は、契約に関する不正の疑いによる中断を経て、2000年に日本の丸紅を中心としたフィリピン国内外の企業によるアジア・ヨーロッパMRTコンソーシアム(Asia-Europe MRT Consortium、ACMC)[注釈 1]によって建設工事が行われる契約が交わされた。その中で、車両については2000年に韓国の機械メーカーである現代ロテムへ向けて発注が実施された。これが2000形電車である[7][8][4]。
1時間あたり24本(2.5分間隔)の運行により最大50,000人を輸送すると言う計画や、高架路線を走る事によるプラットホームの長さ制限により、2000形は車両長23,500 mm、車体幅3,200 mmという、ライトレール規格で導入されたLRT1号線の車両とは異なる大型規格を採用している。編成は4両固定、車体はステンレス製で、両開き式の乗降扉は先頭車(Mc)・中間車(M)とも車体両側に5箇所設置されている。連結面には扉がない貫通路があり、車両間の往来が可能である。また、先頭部右側には非常扉が設置されている[9][6][4]。
前面はライトや貫通扉の位置が違うもののKORAIL311000系2次車、同341000系2次車、同351000系2次車に似ている。
座席は全て6人掛けのロングシートで、FRPを用いて製造されている。車内は冷房が完備されており、ユニットクーラーが各車両の屋根上に2基設置されている他、集電装置であるシングルアーム式パンタグラフもも中間車の屋根上に1基存在する[10]。
台車は先頭車・中間車双方とも動力台車で、軸ばねは円錐積層ゴムを、枕ばねは空気ばねを用いる。1つの台車には2基の三相かご形誘導電動機が搭載されており、IGBT素子のVVVFインバータ制御装置によって制御される。制動は踏面空気ブレーキや回生ブレーキを併用する電気指令式ブレーキによって行われる。これらのうち、電気機器は東芝によって製造されたものである[2][5]。
保安装置として自動列車停止装置(ATS)、自動列車保護装置(ATP)、自動列車制御装置(ATC)が設置されている他、自動列車運転装置(ATO)も搭載し、自動運転が行われている[1][11]。
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先頭車
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中間車
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車内
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機器更新車のVVVFインバータ装置(宇進産電製)
運用
編集2003年4月5日に一部区間が先行開業し、グロリア・アロヨ大統領(当時)を招いた開通式典も実施された。それに合わせて2000形の営業運転も始まり、翌2004年以降はLRT2号’線の全線で使用されている[7][12]。
4両編成18本(72両)が導入されたが、2018年の時点で営業運転に使用されていたのは10本であった。これらの車両について、老朽化のため冷却能力が50%に低下していた冷房装置の交換が2018年から翌2019年4月まで行われた。運用から離脱していた8本に関しても、MRT-2線の延伸による輸送力増強計画に合わせ2019年までに機器の修繕や冷房装置の交換を実施し、営業運転に復帰させる予定となっている[13][14][15]。
2021年には休車だった3編成のVVVFインバータ装置は宇進産電製のものに更新され、営業運転に復帰している[16]。
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駅に停車する2000形電車
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全面広告が施された編成
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白色を主体とした全面広告塗装
脚注
編集注釈
編集- ^ 参加企業は丸紅、東芝、大宇重工業、バルフォア・ビーティー、D.M.コンスンジ(D.M. Consunji Incorporated、DMCI)。
出典
編集- ^ a b c JICA 2011, p. 3-47.
- ^ a b JICA 2011, p. 3-46.
- ^ a b Tomas U. Ganiron Jr 2015, p. 95-96.
- ^ a b c “Project Record - Philippins Manila Line 2 EMU”. Hyundai Rotem. 2019年12月4日閲覧。
- ^ a b “納入実績”. 東芝インフラシステムズ. 2019年12月4日閲覧。
- ^ a b “Railway Operations”. LRTA. 2015年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年12月4日閲覧。
- ^ a b Tomas U. Ganiron Jr 2015, p. 94.
- ^ Tomas U. Ganiron Jr 2015, p. 95.
- ^ JICA 2011, p. 3-42-3-43.
- ^ JICA 2011, p. 3-43.
- ^ Tomas U. Ganiron Jr 2015, p. 96.
- ^ JICA 2011, p. 1-59.
- ^ “LRTA gives Meralco joint venture P350-M air-con contract”. GMA News Online (2018年4月18日). 2019年12月4日閲覧。
- ^ “Replacing LRT2 air con units may take up to 12 months —LRTA”. GMA News Online (2018年5月17日). 2019年12月4日閲覧。
- ^ Aerol John Pateña (2019年5月7日). “Expect more comfortable LRT-2 trains by April: LRTA”. Philippine News Agency. 2019年12月4日閲覧。
- ^ “LRT2 to add more running trains by April, says LRTA”. GMA News Online. 2022年4月22日閲覧。
参考資料
編集- 国際協力機構、オリエンタルコンサルタンツ、片平エンジニアリング・インターナショナル、トーニチコンサルタント『フィリピン国LRT2号線延伸計画準備調査 ファイナル・レポート (PDF)』(レポート)、2011年10月。2019年12月4日閲覧。
- Tomas U. Ganiron Jr (2015年8月1日). "The Influence of Megatren System on Ridership in Metro Manila" (PDF). International Journal of u- and e- Service, Science and Technology. 8 (1): 91–104. 2019年12月4日閲覧。