ミッドナイト・ラン
『ミッドナイト・ラン』(Midnight Run)は、1988年のアメリカ合衆国のアクションコメディ映画。監督はマーティン・ブレスト、出演はロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディンなど。タイトルの意味は、「一晩で終わる簡単な仕事」、「仕事は簡単」、「ちょろい仕事」というスラングである[2]。
ミッドナイト・ラン | |
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Midnight Run | |
監督 | マーティン・ブレスト |
脚本 | ジョージ・ギャロ |
製作 | マーティン・ブレスト |
製作総指揮 | ウィリアム・S・ギルモア |
出演者 |
ロバート・デ・ニーロ チャールズ・グローディン |
音楽 | ダニー・エルフマン |
撮影 | ドナルド・E・ソーリン |
編集 |
ビリー・ウェバー マイケル・トロニック クリス・レベンゾン |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 126分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $30,000,000 (概算) |
興行収入 |
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第46回ゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ部門にて作品賞、主演男優賞(ロバート・デ・ニーロ)の候補になっている。
ストーリー編集
世間に裏切られた過去から独善的な態度しかとれなくなった賞金稼ぎ(ロバート・デ・ニーロ)と、運悪く賞金首になってしまった心優しい会計士(チャールズ・グローディン)という対照的な中年男2人が、喧嘩をしながら心を通わせていくロードムービー。
ジャック・ウォルシュ(デ・ニーロ)は、かつてシカゴの警察官だったが仲間に裏切られ妻子とも離れて、今はロサンゼルスの保釈金ローン会社と契約を結び、逃亡した被告人を公判までに連れ戻してくる「賞金稼ぎ」の仕事をしている。
ジョナサン・マデューカス(グローディン)、通称「デューク(公爵様)」は堅気の会計士だが、雇い主がシカゴの麻薬王であるセラノであることを知りギャングの金を横領、慈善事業に寄付をして身を隠すが丁寧に挨拶状をセラノに送りつける変わり者。
裁判までの5日間でマデューカスをロサンゼルスへ連れ戻す仕事を引き受けたウォルシュは、ニューヨークで捕まえたデュークを飛行場まで引き立てていく。しかし、ロサンゼルスまで5時間のフライトで済むはずが、トラブル続きでギャングとFBIに追われながら、車と列車(アムトラック)のアメリカ横断逃避行へ変わっていく。
キャスト編集
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |
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VHS版 | テレビ朝日版 (地上波吹替追録版) | ||
ジャック・ウォルシュ | ロバート・デ・ニーロ | 樋浦勉 | 池田勝 |
ジョナサン・マデューカス | チャールズ・グローディン | 玄田哲章 | 羽佐間道夫 |
アロンゾ・モーズリー | ヤフェット・コットー | 渡部猛 | 郷里大輔 (藤井隼) |
マービン・ドーフラー | ジョン・アシュトン | 村松康雄 | 富田耕生 |
ジミー・セラノ | デニス・ファリーナ | 大宮悌二 | 柴田秀勝 |
エディ・モスコーネ | ジョー・パントリアーノ | 納谷六朗 | 安原義人 |
トニー・ダーボ | リチャード・フォロンジー | 筈見純 | 渡部猛 (宝亀克寿) |
ジョーイ | ロバート・ミランダ | 伊井篤史 | 広瀬正志 (関口雄吾) |
ジェリー・ガイスラー | ジャック・キーホー | 塚田正昭 | 千田光男 |
ゲイル | ウェンディ・フィリップス | 滝沢ロコ | 弥永和子 |
デニース・ウォルシュ | ダニエル・デュクロス | 佐々木るん | |
シドニー | フィリップ・ベイカー・ホール | 辻村真人 | - (山内健嗣) |
ビル・レッドウッド | トム・マクレイスター | 島香裕 | 麦人 |
ウェイトレス | ローズマリー・マーフィ | 安達忍 | |
ペリー | トム・アーウィン | 二又一成 | |
吹き替え版その他 | 達依久子 塩屋浩三 幹本雄之 中田和宏 高宮俊介 こおろぎさとみ 地上波吹替追録版 横田大輔 すずきももこ 五阿弥ルナ |
- VHS版:DVD未収録、Amazonにて配信、民放での再放送にも使用。
- テレビ朝日版:初回放送1992年2月2日 21:02-23:09 『日曜洋画劇場』
- 演出:左近允洋、翻訳:額田やえ子、効果:猪飼和彦・VOX、調整:高橋久義、プロデューサー:猪谷敬二、制作:グロービジョン
- 地上波吹替追録版:初回放送2018年7月8日
- テレビ朝日版は吹替ファンの間でも極めて評価が高く、吹替映画史上最高傑作と評されることもある[3]。権利元が音源を紛失してしまったため長らく再放送の機会に恵まれなかったが2018年7月8日に一般から公募した音源を元に放送時にカットされた15分程のシーンを池田、羽佐間、富田、柴田、二又らオリジナルキャストによる追加収録(故人等、諸事情で出演が不可能なキャストには代役が立てられている)を敢行しノーカット化した「地上波吹替追録版」がムービープラスで放送された[4][5]。
※2018年10月11日発売の『ユニバーサル思い出の復刻版BD』には2種類の吹き替えを全て収録[3]。なお、テレビ朝日版はムービープラス放送時にカット部分を追加収録を行なったものを収録。
解説・トリビア編集
- 本作では日本で余り馴染みのない米国の司法制度が描かれている。犯罪大国アメリカでは容疑者の数もとてつもなく多いため全ての人を拘束するとすぐに留置所が一杯になってしまうため、大半は早々に保釈される。そんな人々のために各裁判所の前にはベイルショップ(保釈保証業者)と呼ばれる保釈金専門の金融会社(保釈保証業者)が営業してる。容疑者はそこでお金を借りて保釈保証金を裁判所に納めて保釈されるのだが、容疑者が逃亡して期日までに裁判所に出頭しないと保釈金は裁判所に没収されてしまう。それでは金融会社は大損になるので、賞金稼ぎ(バウンティハンター)と呼ばれる人を雇って雲隠れした容疑者を連れ戻してもらうのだ。
- 池田勝と羽佐間道夫が吹き替えを担当したテレビ朝日版は、現在に至るまで絶大な人気があり、2018年発売のブルーレイに初収録される。テレビ朝日版ではジャックがFBIを騙ってデュークを逮捕するが、身柄拘束直後に「FBIというのは嘘だ」と身分を明かしているのに対し、字幕版ではデュークを連行する車の中でFBIではないと告白しているため、齟齬が生じていた。TV放映当時は、放送時間枠に収めるためにダイアログの編集を行なったと推測される。
- 最初に製作権を持っていたのは、パラマウントスタジオだった。パラマウントは性的意味合いも含めて、デュークの役柄を女性に変更し、尚かつシェールの起用を提案。しかし、監督のマーティン・ブレストは「性転換」を拒否。パラマウントはデニーロとロビン・ウィリアムズのコンビにしてはどうかと提案もし、他の俳優へのデューク役のオーディションも推奨した。その中には、ブレイク前のブルース・ウィリスも含まれていた。デニーロの出演が先に決定していたため、彼と釣り合う相手役の選考が難航したとブレストは述べている。ブレストはデニーロを交えたチャールズ・グローディンのオーディションで、2人にリアルな化学反応と関係性を感じ、グローディンの起用を推し進めようとしたが、商業的成功を危惧したパラマウントは離脱。製作はユニヴァーサルへと移行した。
- タイトルの「ミッドナイト・ラン」は、10万ドルの報酬を要求したジャックに驚いたモスコーネが、セリフで口に出している。
- マーヴィンを演じたジョン・アシュトンは列車のシーンで、デニーロに本当に殴られている。
- 劇中、コミカルなやりとりに利用されるアロンゾ・モーズリーのサングラスは、ポルシェ1978年製のExclusive Sunglassesである。
- 冒頭、賞金首のアジトでジャックが構えるリボルバーはコルト・ディテクティブスペシャル。
- ジャックがヘリコプターを撃ち落とすときに使用したオー
マティックはベレッタM92(92SB)。
- シカゴでアロンゾ・モーズリーがスナイパーを撃つリボルバーはスミス&ウェッソンのモデル66(357コンバット・マグナム)。
- マーヴィンがドジ1号とドジ2号に向けて発砲するショットガンはモスバーグM500。
- ジャックとデュークが川に転落して流されるシーンは、アリゾナ州の設定だが、水が冷たすぎたためニュージーランドで撮影されている。
- 松田優作は本作鑑賞中、ジャックと娘の再会シーンで「涙が止まらなかった」と述べている。これは実生活とシンクロした部分があったからだという。
- ジャッキー・チェンが自身が選ぶオールタイムベスト10映画の中に本作を挙げている。
- 本作はレオナルド・ディカプリオが初めて観たデニーロ作品である。13歳の時、父親と一緒に映画館に行き、「偉大な演技とは何かを知りたければ、このスクリーンに映る男、ロバート・デ・ニーロを見ておくんだ」と教わった。
- シカゴマフィアのボス、ジミー・セラノを演じた故デニス・ファリーナのシーンは全てラスベガスで撮影されている。彼は別作品の撮影と掛け持ちで出演しており、ラスベガスから離れられなかったためである。彼自身は元シカゴ警察の警察官であり、その後俳優に転身したという異色の経歴の持ち主である。
- デュークがレッドの酒場で連邦捜査官になりすまし、千両役者ぶりを発揮するシーンはほとんど即興である。
- ジャックがしきりに腕時計を気にする癖はデニーロのアイデアが採用された。
- ダニー・エルフマンが担当した映画のサウンドトラックは、流通枚数が多くないため、競売市場で比較的高値で取引されている。サントラに収録の「Try to believe」はエルフマン自身がボーカルを担当。劇中エンディングに流れるのは同曲のインストであるが、インスト版はサントラに未収録となっている。
- 脚本のジョージ・ギャロは、ジャックとデュークのモデルは自分の両親であると、インタビューで答えている。彼の父親は非常に感情的な人物であったのに対し、母親は遥かに計算高く、父親を掌で転がしていたという。
- マーヴィンは当初の脚本では、デュークの引き渡しの時に殺されてしまう予定だったが、ノックアウトされる設定に変更された。彼が生きのびたおかげでクライマックスシーンが緊張感のあるドラマティックな仕上がりとなった。
- ヤフェット・コットーは撮影中、高熱に苦しんでいた。
- クライマックスシーンの直前、空港でマーヴィンに喫煙か禁煙かを訪ねる職員は、監督のマーティン・ブレストである。
- 撮影中、手錠を掛けっぱなしだったチャールズ・グローディンは一生消えない手錠痕が残ってしまった。
- 高額紙幣1000ドル札はかつて存在したが、現在では流通していない。1969年に流通停止。デュークはかなりレアな紙幣で30万ドル分も所有していたことになる。
- 作品と役柄にリアリティを与えるため、マーティン・ブレストとデニーロは、本物のバウンティハンターと行動を共にした。夜通しの張り込みや賞金首の取り押さえ現場にも立ち会った。所謂、「デニーロ・アプローチ」の一環である。
- デニーロ自身が本作を「気に入っている」という根拠は、久米宏がアンカーを務めていたニュースステーションにデニーロが生出演した際のインタビューのようである。他作品のプロモーション目的の来日だったようだが、久米から「今までの出演作で一番好きな作品は何ですか?」と問われ、「ミッドナイト・ランだ」と答えた。
- 二度のアカデミー賞受賞に輝くロバート・デ・ニーロにとって、この映画のジャック・ウォルシュ役は、ヴィト・コルレオーネやジェイク・ラモッタといった、かつて彼が演じた役とは全く異なるコミカルキャラクターという点に魅力を感じたという。「この手の荒っぽい警官くずれの男が、最後に上手くやるストーリーはとても好きなんだ。彼がラストでとる行動は、実に感動的。私にとっては最高の役だった」と述べている。(映画パンフレットより)
作品の評価編集
Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「ロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディンの相反するケミストリーによって盛り上げられた『ミッドナイト・ラン』はたいそう愉快なおかしな二人によるコメディである。」であり、53件の評論のうち高評価は94%にあたる50件で、平均して10点満点中8.01点を得ている[6]。 Metacriticによれば、16件の評論のうち、高評価は13件、賛否混在は3件、低評価はなく、平均して100点満点中78点を得ている[7]。
テレビ映画編集
1994年に本作を基にしたテレビ映画が3作制作されている。キャストは全員交代しているがジャックなどの映画に登場したキャラクターが数名登場する。
- 『ミッドナイト・ラン1 にくめない詐欺師』Another Midnight Run
- 『ミッドナイト・ラン2 好かれる逃亡者』Midnight Runaround
- 『ミッドナイト・ラン3 やけっぱちの美女』Midnight Run for your Life
キャスト編集
- ジャック・ウォルシュ:クリストファー・マクドナルド
- ジェリー・ガイスラー:ジョン・フレック
- エディ・モスコーネ:ダン・ヘダヤ
- マービン・ドーフラー:エド・オロス(1、2作目に出演)
出典編集
- ^ a b “Midnight Run” (英語). Box Office Mojo. 2020年9月4日閲覧。
- ^ ポール・モネット『ミッドナイトラン』岡部宏之訳、新潮社、1988年。ISBN 978-4102276013。
- ^ a b “ミッドナイト・ラン ユニバーサル 思い出の復刻版 ブルーレイ”. ユニバーサル100周年 公式サイト. 2020年9月4日閲覧。
- ^ ムービープラスの2018年5月20日の投稿 - Facebook
- ^ “ミッドナイト・ラン【地上波吹替追録版】 ◆特集:羽佐間道夫◆”. スカパー!. 2018年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月4日閲覧。
- ^ “Midnight Run (1988)” (英語). Rotten Tomatoes. 2020年9月4日閲覧。
- ^ “Midnight Run Reviews” (英語). Metacritic. 2020年9月4日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- ミッドナイト・ラン - allcinema
- ミッドナイト・ラン - KINENOTE
- Midnight Run - オールムービー(英語)
- Midnight Run - インターネット・ムービー・データベース(英語)