ミトコンドリアDNAハプログループ

ミトコンドリアDNAハプログループ(ミトコンドリアDNAハプログループ)とは、母系で遺伝するミトコンドリアDNA(mtDNA)のハプログループ(=ハプロタイプ集団)のことである。mtDNAハプログループとも。本項目ではヒトのミトコンドリアDNAハプログループについて述べる。

ミトコンドリアDNAハプログループ拡散モデル

命名法編集

ヒトのミトコンドリアDNAハプログループの体系は、ネイティブ・アメリカンの研究でA, B, C, Dの4つが命名された[1]ことに始まっており、それを踏襲してラテンアルファベットの大文字で大分類を行っている。それぞれの内部は1~2ケタの数字を使って細分されており、その内部は小文字のアルファベットで細分されている。以降、必要に応じて数字と小文字を交互に用い、たとえばD5a2a1a1aという具合である[2]

ハプログループの命名はなるべく系統関係を階層的に反映するようにされているが、歴史的経緯により例外が多数存在している。とくに最初のアルファベットは入れ子になっているものが多く、例えばハプログループCはハプログループMに内包されているし、ハプログループMはハプログループL3に内包されている[2]

最初のアルファベットが連続している場合は、それら全てのハプログループを内包する最小の単系統群を意味する。たとえばHVには、少なくともハプログループHとハプログループVが含まれることを意味している。ここにはこの2つ以外にも様々な系統が含まれており、それらはHV1やHV2などのように命名されている[2]

系統樹編集

 
mtDNAハプログループを基に人類移動を推定した世界地図。
 
ユーラシアでのL3ハプログループの移動。

人類のmtDNAハプログループの大まかな系統樹[3]を示す。

  • L (ミトコンドリア・イヴ) - 20万年前
    • L0 - アフリカ東部、15万年前
    • L1-L6 - アフリカ東部、17万年前
      • L1 - アフリカ中央部、14万年前
      • L2-L6 - アフリカ東部、15万年前
        • L2 - 9万年前
        • L5 - 12万年前
        • L3,L4,L6 - 13万年前
          • L6
          • L3,L4
            • L4
            • L3 - アフリカ東部、7万年前
              • M - アフリカ東部 or 西アジア or 南アジア、6万年前
              • N - アフリカ東部 or 西アジア、7万年前
                • N1: I - 2.6万年前
                • N2: W - 2万年前
                • N9: Y
                • A
                • S
                • X - 3万年前
                  • X1 - 1万年前
                  • X2 - 2万年前
                    • X2a - 北アメリカ、1.3万年前
                • R - 6万年前
                  • R0 (FMKA pre-HV)
                    • HV - 西アジア、2.7万年前
                      • H - アジア西部、2万年前
                        • H1 - 1.2万年前
                        • H3 - 1.2万年前
                      • V - 1.4万年前
                  • pre-JT or R2、JT - 中東、5.5万年前
                    • JT - 中東、5万年前
                      • J - 3.5万年前
                        • J1 - 西アジア、2.4万年前
                          • J1a - 西アジア、2.7万年前
                          • J1b - 1.1万年前
                      • T - メソポタミア、2.7万年前
                  • R9 - 4.7万年前
                    • F - 4.3万年前
                  • R11
                    • B - 4.4万年前(B4)
                  • P
                  • U (formerly UK) - アフリカ北西部 or 南アジア、5.5万年前
                    • U4 - 中央アジア、2万年前
                    • U5 - アジア西部、3.5万年前
                      • U5a - 2.7万年前
                        • U5a1 - ヨーロッパ、1.8万年前
                    • U6 - アフリカ北部、3.5万年前
                    • U8 - アジア西部、5万年前
                    • U9 - 中央アジア、4.2万年前
                  • K - 3万年前
                    • K1 - 2.7万年前
              • O

移動ルート編集

Y染色体ハプログループ同様、ミトコンドリアDNAハプログループも出アフリカ後の移動ルートとして南ルート、北ルート、西ルートに3分できる[4][5]。これはそれぞれ、オーストラロイドモンゴロイドコーカソイドに相当する。

  • 非出アフリカ(ネグロイド):L0,L1,L2,L4,L5,L6,M1
  • 南ルート(オーストラロイド):M29'Q,O,P など
  • 北ルート(モンゴロイド):M7,A,B,C,D,E,F,G,N9 など
  • 西ルート(コーカソイド):S,H,V,J,T,I,W,X など

脚注編集

  1. ^ Torroni et al. (1993). “Asian affinities and continental radiation of the four founding Native American mtDNAs”. Am. J. Hum. Genet. 53 (3): 563-590. 
  2. ^ a b c Richards et al. (1998). “Phylogeography of mitochondrial DNA in western Europe”. Ann. Hum. Genet. 62 (3): 241-260. doi:10.1046/j.1469-1809.1998.6230241.x. 
  3. ^ van Oven M, Kayser M (February 2009). "Updated comprehensive phylogenetic tree of global human mitochondrial DNA variation". Human Mutation 30 (2): E386–94. doi:10.1002/humu.20921. PMID 18853457.
  4. ^ 崎谷満(2009)『新日本人の起源』勉誠出版
  5. ^ 崎谷満(2009)『DNA・考古・言語の学際研究が示す 新・日本列島史』勉誠出版

ヒトミトコンドリアDNAハプログループ系統樹

  ミトコンドリア・イブ (L)    
L0 L1 L5 L2 L6 L4 L3  
  M   N  
M7   M8   M9   D G Q N1   N2   N9   A O S X   R  
M7a C Z E I W Y R0   R9   B JT P  U
HV F J T K
H V