ミューレンバーグイシガメ

ミューレンバーグイシガメ学名Glyptemys muhlenbergii)は、ヌマガメ科モリイシガメ属に分類されるカメ

ミューレンバーグイシガメ
ミューレンバーグイシガメ
ミューレンバーグイシガメ
Glyptemys muhlenbergii
保全状況評価
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
亜目 : 潜頸亜目 Cryptodira
上科 : リクガメ上科 Testudinoidea
: ヌマガメ科 Emydidae
亜科 : ヌマガメ亜科 Emydinae
: モリイシガメ属 Glyptemys
: ミューレンバーグイシガメ
G. muhlenbergii
学名
Glyptemys muhlenbergii
Schoepff, 1801
シノニム

Testudo muhlenbergii Schoepff, 1801 Clemmys muhlenbergii
Fitzinger, 1835
Clemmys nuchalis Dunn, 1917

和名
ミューレンバーグイシガメ
英名
Bog turtle

分布 編集

アメリカ合衆国東部[1][2]コネチカット州西部、サウスカロライナ州北西部、ジョージア州北東部、テネシー州北東部、デラウェア州北部、ニュージャージー州ニューヨーク州南部、ノースカロライナ州西部、バージニア州西部、ペンシルベニア州北西部および南東部、マサチューセッツ州西部、メリーランド州北部)[3][4]固有種

模式標本の産地はランカスター郡(ペンシルベニア州)。[4]現在の分布は断続的だが、以前は連続的かつ広範囲に分布していたと考えられている。[2][4]

形態 編集

最大甲長11.5cmとモリイシガメ属のみならずヌマガメ科最小種。[4]メスよりもオスのほうが大型になり、メスは最大甲長9.6cm。[4]背甲はやや扁平かやや盛り上がる。[4]背甲の後部には切れ込みが入らない。[4]成長環は明瞭だが、老齢個体では不明瞭になる。[4]椎甲板にはあまり発達しない筋状の盛り上がり(キール)がある。[2][4]後部縁甲板の外縁は尖らない。[1][2][4]背甲の色彩は暗褐色一色だが、明褐色や黒い個体もいる。[4]腹甲はやや大型。[4]左右の喉甲板の間には切れ込みが入らない。[4]背甲の色彩は黒く、外縁は明色で正中線に沿って黄色やオレンジ色の筋模様が入る。[4]

頭部はやや小型。[4]四肢はやや頑丈。[4]尾はやや長い。[4]頭部や四肢、尾の色彩は褐色や暗褐色、黒。[3][4]鼓膜周辺と後頭部に黄色やオレンジ、赤の斑紋が入り[3]、側頭部や前肢には黄褐色やオレンジ色の斑点が入る。[2][4]四肢基部や四肢腹面はオレンジ色や赤みを帯びる。[4]

オスは前肢の爪が太い。[4]

生態 編集

標高1,200m以下にある主にカヤツリグサ科からなる湿原沼地、湿性草原内を流れる流れの緩やかな小河川などに生息し[2][3]、英名(bog=ボグ、泥炭が蓄積した水質が酸性の湿原)の由来になっている。[4]半陸棲もしくは半水棲で、陸上でも生活するが水場の周辺に限られる。[4]昼行性で、夜間に気温が低い場合には水中や陸上に空いた穴などで休む。[2][4]夏季に乾燥する環境や冬季になると泥中や水中、マスクラットの巣穴で休眠する。[2][4]

食性は雑食で、昆虫果実を食べるが、[2][3]両生類やその幼生、貝類ミミズ、動物の死骸、水生植物、藻類なども食べる。[4]陸上でも水中でも採食を行う。[3][4]

繁殖形態は卵生。3-6月に主に水中で交尾するが[2]、陸上で交尾した例もある。[4]繁殖期になるとオスはメスを発見すると周囲を徘徊したり、総排泄孔に頭部を近づけ性別を確認する。[4]その後にメスを追いかけたりメスの頭部や頸部に噛みついて動きを止め、メスがオスを受け入れると頭部や頸部に噛みついて爪をメスの甲羅にひっかけながらメスの上に乗り交尾を行う。[4]繁殖期には雌雄共に複数の異性と交尾を行う。[4]5-7月に1回に1-6個の卵を年に1回だけ産む。[2][3][4]

人間との関係 編集

種小名muhlenbergiiGotthilf Heinrich Ernst Muhlenbergへの献名[4]

開発による生息地の破壊、水質汚染、ペット用の採集などにより生息数は減少している。[2][4]生息地では法的に採集が規制されているが、密猟されることもある。[2][4]生息地の一部は国立公園や保護区に指定されている。[4]1992年にワシントン条約附属書Iに掲載された。[2][4]

分布 編集

関連項目 編集

参考文献 編集

  1. ^ a b 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド 水棲ガメ1 アメリカ大陸のミズガメ』、誠文堂新光社2005年、11頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社2000年、113、220-221頁。
  3. ^ a b c d e f g 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、209頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak 安川雄一郎 「ヌマガメ亜科の分類と自然史(前編) 〜キボシイシガメ属とモリイシガメ属の分類と自然史〜」『クリーパー』第51号、クリーパー社、2010年、70、108-110頁。

外部リンク 編集