ミラー効果
ミラー効果(ミラーこうか、英: Miller effect)とは、利得が A である反転増幅回路の入出力端子間に静電容量(帰還容量) C が接続されているとき、入力端子からは (1+A) C の容量が接続されているようにみえる作用のこと[1]。この効果を積極的に利用した回路をミラー積分回路(ミラー積分器)という。
概要
編集入力インピーダンスが無限大、出力インピーダンスがゼロ、利得が である反転増幅器において、入出力端子間に静電容量 を接続して帰還回路を構成した場合(回路としての利得は になる)を考える。(右図 (a))
交流入力信号を 、出力信号を 、入力電流を とすると、
したがって、
となり、この回路の入力端子からみたインピーダンス は、
である。つまり、入力端子に (1 + A)倍の容量 C が接続されているのと等価である。(右図 (b))
利得が大きいほどこの効果は大きく現れるため、微少な静電容量であっても等価的な容量は大きくなる[2][3]。また、入力信号が変化の無い一定信号の場合、 であるため、 となるので、ミラー効果は消失する。
回路動作への影響
編集利得 A の増幅回路の入出力端子間に何らかの静電容量 C が存在する場合、入力端子には (1+A) C の容量が接続されていると見なせることから、増幅回路の周波数特性が悪化する。一般に、信号源と接続する増幅回路間には何らかのインピーダンスが存在するため[注 1]、そのインピーダンスとミラー効果容量によりローパスフィルタが構成されるため高周波特性が制限される[4]。
したがって、高周波特性の良い増幅回路とするためには、帰還容量の小さな増幅素子を用いるか、回路構成として帰還容量の影響を小さくする構成とすることが求められる。
考慮する素子
編集以下の増幅機能を持つ素子については影響を考慮する必要がある。
脚注
編集注釈
編集- ^ 例えば、トランジスタに接続するベース抵抗なども含む
出典
編集- ^ 電子情報通信学会編『電子通信用語事典』コロナ社、1984年、ISBN 4-339-00413-8、pp.783-784
- ^ 松澤昭『電気学会大学講座 基礎電子回路工学 -アナログ回路を中心に-』オーム社、2009年、ISBN 978-4-88686-276-1、pp.114-115
- ^ 桜庭一郎ほか『電子回路』森北出版、1986年、ISBN 4-627-70530-1、pp218-219
- ^ 高木相『半導体電子回路』培風館、1984年、ISBN 4-563-03295-6、pp.83-85