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ミントゥチ(mintuci)またはミントゥチカムイ(mintuci kamuy)は、アイヌに伝わる半人半獣の霊的存在[1][2]河童に類する妖怪ともいわれる[3]

方言によってはミムトゥチ(mimtuci)[4]ミントチ(mintoci)[5]と発音される。日本語の文献では「ミンツチ」と表記されることも多い。

概要編集

伝説によれば、江戸時代に本土の人々がアイヌと交易を行うために船で北海道を訪れたとき、その船に乗って疱瘡神疱瘡を司る疫病神)が北海道へやって来て[6]、多くのアイヌの人々が病死した[3]。当時アイヌの世界を治めていたオキクルミは、61体のチシナプカムイ(ヨモギを十字に組んだ人形)を作り、それらに命を与えて疱瘡神と戦わせた(この人形はオキクルミではなくアイヌの人々が作ったという説もある[6])。この61体の内の60体は戦死したが、最後に残ったチシナプカムイの大将によって、疱瘡神は全滅した。この戦いで水死したチシナプカムイがミントゥチになったという[3]

 
ミントゥチの伝わる北海道の河川の一つ、石狩川

背格好は3歳から12,13歳の人間の子供と同程度で[7]、頭には髪があって河童のような皿はなく、肌の色は紫か赤に近く、足型は鳥か鎌の形に似ている[1]。両腕が体内でつながっており、片腕を引っ張ると両腕ともに抜けてしまうという、河童と同じ身体的特徴もある[2]。土地によって多少の容姿の違いがあるともいい、石狩川では頭が禿げて男女の区別があるもの、十勝平野東部の池田町では小さな老婆だか老爺だかわからない姿で、ときどき「フンッ」という大きな音をたてるという[3]

ミントゥチは魚族を支配する神でもあり、漁師たちに漁運を授けるが、それと引き換えに水死者の犠牲も増えるという[3]石狩地方ではミントゥチが魚をたくさん捕らせてくれたが、その代わり毎年必ず何人かを殺すので、人々が日高静内(現・新ひだか町)のほうへ移って欲しいと頼んだところ、水死者はなくなったが、魚も捕れなくなったという[1]

山の狩猟で獲物をもたらすものとも信じられている[3]。ミントゥチが若者に化けて若い娘のいる家に婿入りし、その家に猟運や幸をもたらすともいうが、怒らせるとその地域一帯の食料の霊を一緒にさらって行ってしまうという、恐ろしい面もある[1]旭川沙流川では、ミントゥチが人を守護するという話もある[3]

本土の河童と同じように悪戯者ともいわれ、人間や牛馬を水中に引き込んだり、人に憑いたり[3]、女に憑いて男を誘惑するという[2]釧路では、濃霧の夜などに不意に前方に人影が現れ、呼びかけにも答えずに前へ歩いていくことがあり、その足跡が鳥のようなので妙だと思っていると、その人影が消えて背後に回り、ミントゥチが隙をついて水中に引きずり込んでしまうという[7]

ミントゥチという呼称は、本土の伝承にある(ミヅチ)が由来といわれる[3]。アイヌの古老によれば、ミントゥチとは本土の人間が河童種として呼ぶ呼称であり[7]、アイヌは「山側の人」の意で「シリシャマイヌ」と呼ぶという[3]。禿頭という特徴や「山側の人」という異名から、山の神の性質も兼ね備えているとの説もある[3]

脚注編集

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  1. ^ a b c d 草野巧、戸部民夫『日本妖怪博物館』新紀元社、1994年、初版、109頁。ISBN 978-4-88317-240-5
  2. ^ a b c 草野巧 『幻想動物事典』 新紀元社、1997年、299頁。ISBN 978-4-88317-283-2
  3. ^ a b c d e f g h i j k 村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、317-318頁。ISBN 978-4-04-883926-6
  4. ^ 中川裕 『アイヌ語千歳方言辞典』 草風館、1995年、ISBN 4-88323-078-3
  5. ^ 白老楽しく・やさしいアイヌ語教室編 『アイヌ語白老方言の研究1』 白老楽しく・やさしいアイヌ語教室、2010年。
  6. ^ a b 多田克己『幻想世界の住人たち IV 日本編』新紀元社〈Truth In Fantasy〉、1990年、117頁。ISBN 978-4-915146-44-2
  7. ^ a b c 水木しげる『妖鬼化 1 関東・北海道・沖縄編』Softgarage、2004年、126頁。ISBN 978-4-86133-004-9

関連項目編集