メディアアクセスユニット

デバイス

メディアアクセスユニット ( 英:Media Access Unit、MAU )は マルチステーションアクセスユニット (英:Multistation Access Unit、 MAUまたはMSAU )とも呼ばれ、複数のパーソナルコンピュータワークステーショントークンリングネットワーク(IEEE 802.5)に接続するためのポート(端子)を持つ装置である。また、日本語では集線装置(英:concentrator)とも呼ばれる。トークンリングは、論理的にはリング型トポロジーであるが、保守を容易にするために、集線装置を中心としてステーションを接続する物理スター型配置が事実上の標準である。MAUに接続されたステーションは、MAU内部のリレー回路を介してリングを形成する[1][2]

トークンリングネットワークの例。(左)MAU 1台のみの場合、(右)複数のMAUをつなぐ場合

ベーシックなMAUは、使用開始後の操作や設定を必要とせず、電源も不要なパッシブ動作の装置である。後に、集線装置の機能に加えて、ソフトウェアとの組み合わせでネットワーク管理を行えるコントロールドアクセスユニット(CAU:Controlled Access Unit)も登場した[1]

トークンリングはIBMが中心となって策定された規格であり、関連製品の市場シェアにおいても大部分を占めていた。MAUについては、1992年頃の時点でIBMがおよそ66%のシェアを抑えていた[3]

パッシング方式を応用したトークンリングは、1997年頃にはIBMネットワーキング製品の主流であったが、その後スイッチド・ネットワークに置き換えられていった。

MAUの特徴 編集

 
IBM 8228トークンリング集線装置と内部リレーの設定に使用する「Setup Aid」

電源不要のパッシブ動作 編集

トークンリングのMAUにはポートごとのリレーが内蔵されており、ステーションから供給されるDC電源によって各リレーが作動し、ネットワークに接続する。ポートに接続されているステーションの電源がオフになったり、ポートから外されたりした場合には、リレーが閉じてトークンリングから切断される仕組みである[3]

たとえばIBM 8228のように、最も基本的なMAUでは、電源が不要なためコンセントのない場所にも設置でき、「Setup Aid」と呼ばれるスティック状のアクセサリ(9V乾電池を使用する)で所定の初期設定を行った後は特段の操作を必要としなかった。ただし、MAUを移動させたり、大きなショックを与えたりした場合は、内蔵リレーをリセットするために「Setup Aid」で再度初期設定を行う必要があった[4]

 
ステータスLEDを備えたIBM 8226トークンリング集線装置

IBM 8226はステータスLEDを備えたMAUでAC電源を必要とし、その代わりにこの電源を利用してリレーのリセットが可能となったので別途のアクセサリは不要となった。また、集線装置としてだけでなく、スプリッターとしても使える機種であった[5]

リレーをリセットする際の不便を解消するため、マッジネットワークス英語版といったサードパーティベンダー製品にも、リレーのリセットボタンや自動リセット機能を内蔵したものが存在した[3]


拡張性と耐障害性 編集

 
8226 MAUの回路基板のリレー

MAUは、拡張用に用意されているリングイン、リングアウト端子同士を接続してより大きなリングを構成できる。リング型ネットワークでは、いずれかのステーションに障害が発生するとリンクが途切れてネットワーク全体がダウンしてしまうが、MAUを使用すればリレーがすばやく問題のあるステーションをリングから切り離し、ネットワークを維持する。こうして遮断されたステーションは、ネットワーク全体を止めることなく、取り外すことができる[2]

帯域幅 編集

トークンリングネットワークは、理論的にはリング全周数キロメートルにも及ぶ広範囲をサポートした。 ただし、全ステーションが帯域幅を共有するため、実際には狭いエリアを担当する個別のネットワークを構成し、これらをブリッジ接続して使った。こうしたブリッジ手法は、高帯域幅のスイッチド・ネットワークに取って代わられた[6]


脚注 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集