ヤオ族
ヤオ族(ヤオぞく、瑶族〈ようぞく〉)は中国湖南省から雲南省、東南アジア北部の主に山地に広く住む少数民族である。
瑶族 (中国語) người Dao (ベトナム語) | |
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居住地域 | |
![]() | 3,100,000 |
![]() | 474,000 (1989)[1] |
![]() | 41,700 (1995)[1] |
![]() | 22,600 (1995)[1] |
![]() | 不明[1] |
言語 | |
瑶語派Mienic諸語、布努語Bunu諸語、巴哼語Pa-Hng語、拉珈語Lakkja語、湘南土話、粤北土話、中国語、ベトナム語 | |
宗教 | |
ヤオ道教、仏教 |
ヤオ族 | |||||
中国語 | |||||
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繁体字 | 瑤族 | ||||
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朝鮮語 | |||||
ハングル | 요족 | ||||
漢字 | 瑤族 | ||||
ベトナム語 | |||||
ベトナム語 | người Dao | ||||
チュノム | 𠊛瑤 | ||||
タイ語 | |||||
タイ語 | สัญชาติเย้า |
分布・言語編集
ヤオ族はユーミエン(Iu Mien)もしくはミエン(Mien)、キン・ムン(Kin mun)を民族自称するが、中国では瑶族、タイとラオスではヤオ(Yao)、ベトナムではザオ(Dao / 瑶)と呼ばれている[1]。
中国のヤオ族は、ミャオ・ヤオ語族のヤオ語群に属するミエン語、ミャオ語群に属するプヌ語、タイ・カダイ語族に属するラッキャ語、漢語を話す同一のアイデンティティを持つ諸集団であり、半数以上の人口はミエン語話者である。
東南アジアのヤオ族は主に中国との国境地帯に居住している。日常はミエン語を話すが、儀礼の場では特殊な語彙を持つミエン歌謡語や、雲南漢語、広東語が使われる。
歴史・伝承編集
中国では、ヤオ族は武陵蛮・五渓蛮と称された古代湖南の山地住民の子孫であるという説が有力である[1]。ヤオ族の言語の多様性から、ヤオ族が南嶺山脈を南下す (過程で他の民族を吸収し現在の分布に至ったと考えられ、シェ族と系統的に近いと見られている[1]。
ヤオ族の多くは、槃瓠(ばんこ)という竜犬が敵の王を討ち取る手柄を立て、漢族の王女と夫婦になり、その間に生まれた6男6女がヤオ族の12姓の始祖となったとする「槃瓠神話」を有する。槃瓠神話は『後漢書南蛮伝』に同型の記載があり、『過山榜』『評皇券牒』という山地民の権利文書によって伝わっている[1]。 この伝承が史記に取り入れられ、後に日本に伝わって南総里見八犬伝に取り入れられたとされている。
また、タイのヤオ族には、南京にいた12姓の祖先が干魃を逃れて海に乗り出したところ難破しそうになるが、盤皇という神に救助されたという「飄遙過海(ビウユーキアコイ)」神話が伝わっており、槃瓠神話よりもよく知られている[1]。
また、太古、ミエン族と日本族(kyan yipun)はともに中国におり、ミエンは南へ、日本族は東へ移動したと伝わっている。
南京いた12姓の始祖は、異系統の評皇券牒ではその姓が多少異なっているものがほとんどである。例えば、湖南省城歩県で収集された評皇券牒では、長男盤其余沈、鄭、黄、李、鄧、周、趙、胡、馮、危(包)、蒲の12姓とし又、タイ国のヤオ族では長男盤、沈、鄭、黄、李、鄧、周、趙、胡、馮、雷、蔣としている。ヤオ族を調査した胡 耐安は、現地調査の成果として、過山ヤオ族の姓は、盤、趙、鄧、黄、李、周、祝、唐、房、馮、陳、張、成、戴、劭、王、鄺であるとし、そのうちで盤、趙、鄧の3姓がもっとも古いとしている。
文化編集
ヤオ族は主に山地で自給作物と換金作物を栽培する焼畑農業を生業とし、地味が衰えるごとに移住を繰り返してきたが、各国での焼畑の制限と定住化政策によって、第二次世界大戦後は村落を形成するようになっている[1]。親族組織は父系の姓を引き継ぐ父系出自を理念としており、どの国のヤオ族も漢字の姓名を持つ。タイのヤオ族では慣習法として一夫多妻も認められており、他民族との養子縁組もしばしば行われる。
ヤオ族の宗教は固有のアニミズムと道教が習合したもので、人類学者のジャック・ルモワンは「ヤオ道教」と称した[1]。道教的色彩が強く、道教研究者からは正一教系と見られている。
主な瑶族編集
遺伝子編集
ヤオ族は遺伝子Y染色体ハプログループO系統が83.6%『O1a(M119)=13.1%、O1b1a1(PK4)=8.2%、O1b2(M176)=1.6%、O2a1*(KL1)=8.2%、O2a1b(IMS-JST002611)=18.0%、O2a2a1a2(M7)=16.4%、O2a2b1a1(M117)=6.6%、O2a2b1a2(F444)=6.6%、O2a2b2(F3223)=1.6%、O2b(F742)=3.3%』の非常に高頻度で観察される他にC2b(F1067)=4.9%、D1a1a(M15)=1.6%、N(M231)=3.3%、Q*(M242)=1.6%、Q1a1a1(M120)=4.9%で構成されており遺伝子の多様性からも他の民族を吸収し現在の分布に至ったと考えられる。
中国におけるヤオ族の自治地域編集
行政区分 | 地域名 |
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雲南省 | 河口ヤオ族自治県 |
金平ミャオ族ヤオ族タイ族自治県 | |
湖南省 | 江華ヤオ族自治県 |
広西チワン族自治区 | 恭城ヤオ族自治県 |
富川ヤオ族自治県 | |
巴馬ヤオ族自治県 | |
都安ヤオ族自治県 | |
大化ヤオ族自治県 | |
金秀ヤオ族自治県 | |
竜勝各族自治県 | |
広東省 | 乳源ヤオ族自治県 |
連山チワン族ヤオ族自治県 | |
連南ヤオ族自治県 |
脚注編集
参考文献編集
- 吉野晃 著「ユーミエン(ヤオ)」、綾部恒雄(編) 編 『ファーストピープルズの現在:東南アジア』 2巻、明石書店〈世界の先住民族〉、2005年。ISBN 475032082X。
関連項目編集
外部リンク編集
- ヤオ族(写真と概要) - レコードチャイナ
- ヤオ族文化研究所
- 吉野晃「焼畑に伴う移住と祖先の移住 : タイのミエン・ヤオ族における移住とエスニシティ(<特集>東南アジア大陸部における民族間関係と「地域」の生成)」『東南アジア研究』第35巻第4号、京都大学東南アジア研究センター、1998年、 759-776頁、 doi:10.20495/tak.35.4_759、 ISSN 0563-8682、 NAID 110000200777。
- 源基因 (漢民族・少数民族/Y染色体ハプログループ)