ヤマビワ Meliosma rigida Sieb. et Zucc. は、アワブキ科の樹木。葉の形がビワに似る。

ヤマビワ
つぼみを付けた花序
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: ヤマモガシ目 Proteales
: アワブキ科 Sabiaceae
: アワブキ属 Meliosma
: ヤマビワ M. rigida
学名
Meliosma rigida Sieb. & Zucc.1845[1]
シノニム
  • Meliosma glomerulata Rehder & E.H.Wilson
  • Meliosma patens Hemsl.
  • Meliosma rigida var. patens (Hemsl.) Cufod.
  • Meliosma rigida var. rigida
  • Meliosma simplicifolia subsp. rigida (Sieb. & Zucc.) Beusekom[2]
和名
ヤマビワ

特徴 編集

常緑性の小高木で、高さ7mに達する[3]。樹皮は赤褐色でなめらか[4]。若枝、花序、葉柄と葉裏には赤褐色の綿毛を密布する。葉は互生でやや束生し、葉柄は長さ2-4cm、葉身は狭倒披針形ないし倒披針形、時に倒披針状楕円形で先端は急に尖り、基部側は次第に葉柄に流れ、長さ12-22cm、大きい場合は30cm、葉幅は3-7cmになる。葉質は革質、縁は荒い鋸歯があり、鋸歯先端は芒状に突き出すが、時には目立たないこともある。10-16対の側脈があり、表面は無毛でつやがあるが、裏面では細脈まではっきりと隆起する。

花期は6月。茎の先端に大きな円錐花序を出す。花序の長さは10-20cm[4]で、花は白で径4-6mm、花柄は長さ2mm、花柄から萼片までは褐色の毛が生える。萼片は5、大きい花弁よりは小さい。花弁は5、外側の3つは大きく、広卵形で長さ2-3mm、開花時には大きく開く。内側の2つは小さくて痕跡的。雄蘂は2、仮雄蘂は3、長楕円形で長さ2mm。核果は球形で径6-7mm、始めは赤く、後に熟して黒紫になる。

和名は山枇杷の意で、葉の形がビワに似ることによる[5]。また、本種に似るためにその名が付いた植物にヤマビワソウイワタバコ科)がある。

分布 編集

本州の紀伊半島以西、四国、九州、琉球列島に産する。国外では台湾、中国大陸にも分布する。なお、種子の化石は日本各地の鮮新世から発見される[6]

生育環境 編集

山地、常緑広葉樹林に生える。

分類 編集

同じ属の種は日本に5種あるが、葉の形が互いにかなり異なり、混同するものはなさそう。

利用 編集

伊勢神宮ではヒノキと擦り合わせて火を取るのに使う[6]。 赤堀又次郎の『唯心史観』には『火きりぎね、火きりうす』の章の冒頭に「火切り杵は、山枇杷の木でつくる。火切り臼は檜の木で造る。夫を舞錐の方法で摩擦させて火を出し、鋸屑、藁のはかまなどに移して用ゐる。之は我国の最古よりの方法である。(中略)伊勢其他の神社に今も之が伝わっている」とある。

また、その材は淡褐白色で反張割裂性があって靱性に富む。棒材、薪炭材に用いられる他、沖縄ではの側に使用したという[7]

出典 編集

  1. ^ Meliosma rigida Tropicos
  2. ^ 'Meliosma rigida The Plant List
  3. ^ 以下、主として佐竹他(1999),p.24
  4. ^ a b 初島(1975),p.389
  5. ^ 牧野(1961),p.374
  6. ^ a b 北村、村田(1971),p.280
  7. ^ 天野(1977),p.96

参考文献 編集

  • 佐竹義輔他編著、『日本の野生植物 木本 I』、(1989)、平凡社
  • 牧野富太郎、『牧野 新日本植物圖鑑』、(1961)、図鑑の北隆館
  • 初島住彦 『琉球植物誌』 沖縄生物教育研究会、1975年、追加・訂正版
  • 天野鉄夫、『琉球列島有用樹木誌』、(1982)、琉球列島有用樹木誌刊行会