ラストワンマイル (運輸)

ラストワンマイルとは、サプライチェーン・マネジメント及び交通計画において、交通結節点から最終目的地までの人や物の移動を表す用語である[1]

ラストワンマイル問題を緩和する方法として自転車シェアリングなどが挙げられる

物流ネットワークにおけるラストワンマイル編集

ラストワンマイル」という用語は本来は通信分野で使用されていたが、サプライチェーン・マネジメントでも使用されるようになった。 貨物鉄道ネットワークやコンテナ船による輸送はしばしば最も効率的で費用対効果に優れた出荷方法である。しかし、容量の大きい貨物駅 または港に到着した物は、その後最終目的地に輸送しなければならない。サプライチェーンにおいてこの最終区間は効率性に劣ることが多く、物流にかかるコスト全体の28%までを占める。このことが「ラストワンマイル問題」として知られるようになった[2][3]。 ラストワンマイル問題は都市部における配送の課題を含むことがある。中心業務地区の小売店、飲食店、及びその他の業者への配送はしばしば混雑や安全性の問題の原因となる[4]

関連するラストワンマイルの問題に人道支援が必要な地域への物資輸送がある。被災地域の輸送拠点まで救援物資が届いても、自然災害による損害あるいはインフラストラクチャーの欠如が原因で分配できないことがある[5]東日本大震災でも物流の停滞は問題となり[6]ヤマト運輸などがこの問題を解決している[7]

 
北京市海淀区の住宅街に設置された配達用スマートロッカー

電子商取引が成長を続ける中、消費者の家や企業に至る輸送の最終区間はより挑戦的な問題となっている。多くの消費者は配達が一般的に行われる時間に留守であることが多いため、不在配達は UPSFedExUSPSDHLなどの配送業者の間で大きな問題となっている。不在配達された小包を放置することは商品を風雨に晒され、無防備な顧客の玄関や入口付近から荷物を盗み出す(ポーチ・パイレーツ)など盗難のリスクに晒されることになる[8]。世界的なEC需要の伸びに対し小口配送(宅配)のインフラ整備が追い付いておらず、労働人口減や労働環境の悪さから配送ドライバー不足は深刻となっており[9][10][11]、アメリカではドローンを利用したドローン宅配便が発案され[12]、中国では物流崩壊が起こったことでドローンのほかに無人搬送車(AGV)を使用した配送や倉庫の自動化[13]、スマートロッカーの設置などが国策として開始されている[14]。アマゾンやツァイニャオでは荷物を配達する手段として都市部などにスマートロッカーを設置しており、自動運転車による配送も一般的なオプションとなりつつある。ヨーロッパはこれを率先して行っており、ドイツ英国ポーランドがこれらのサービスの最初の市場となっている。

ラストワンマイル配達における主な課題には、コストの最小化、透明性の確保、効率性の向上、企業間の摩擦をなくすこと、インフラストラクチャーの改良が含まれる[15]

日本でも年間1.8億時間、人数にして9万人相当にあたる労働力が再配達に費やされており[16]、配送時の不在(再配達問題)を解決する取り組みが各種行われている[17]。近年ではAIと電力データを用いた在宅判定アルゴリズムを構築し、配送用アプリとして配達員に表示することで不在配送率を20%削減することに成功している[18]

交通ネットワークにおけるラストワンマイル編集

 
スペインの企業Hirikoが開発した折り畳み式の超小型モビリティ電気自動車。駅から目的地に移動する問題を解決するためドイツ鉄道の各駅に設置された[19]

「ラストワンマイル」はまた、交通結節点、特に鉄道駅、バス停、船着き場から最終目的地への移動の困難を指す。出発地点から交通ネットワークへの移動に困難がある場合、この状況は代わりに「ファーストワンマイル問題」と呼ぶことがある[20]。これらの問題は、米国では職場や人が郊外、それもしばしば既存の公共交通機関まで歩いていける距離にない場所に移転するような土地利用形態である場所では特に深刻である。それ故、このような地域での輸送機関の利用は実用的でないことが多い。批評家はこのことがクルマ依存を進め、混雑、公害、スプロール現象を助長すると主張している[21][22]

公共交通におけるラストワンマイル問題の伝統的な解決法には、フィーダーバスの利用、自転車のためのインフラ、都市計画の修正が含まれる[21][23]。ラストワンマイル問題を軽減する他の方法として自転車シェアリング[20]カーシェアリング[24]個人用高速輸送システム(Pod Car)[25]、電動式ローラーシューズ(Motorized shoes)[26] などが提案されているが、採用具合は様々である。2015年末、フォード・モーターが「乗り物としての利用に堪える自立安定一輪車」の特許を取得した。これはラストワンマイルの通勤ソリューションを意図したものである[27]。しかしながら、自転車シェアリングはヨーロッパとアジアで広く成功を収めており、北米でも大規模に実施され始めている[28][29][30]。2017年末からマイクロモビリティサービスとなる電動キックスクーター(Dockless)[31]および電動アシスト自転車シェアリング[32]が市場に参入し、人気とシェアを獲得している。

脚注編集

  1. ^ Goodman, R W (December 2005). “Whatever You Call It, Just Don’t Think of Last-Mile Logistics, Last”. GLOBAL LOGISTICS & SUPPLY CHAIN STRATEGIES: 84-86. https://www.kn-portal.com/fileadmin/_public/documents/material/KNUCLRP_LastMile_Logistics.pdf. 
  2. ^ Scott, Martia (2009年11月). “Improving Freight Movement in Delaware Central Business Districts”. Institute for Public Administration, University of Delaware. 2011年10月24日閲覧。
  3. ^ Rodrigue, Jean-Paul; Claude Comtois; Brian Slack (2009). “The "Last Mile" in Freight Distribution”. The Geography of Transport Systems (2nd ed.). Routledge. p. 212. ISBN 978-0-415-48323-0 
  4. ^ Allen, Brigitte (2012) Improving freight efficiency within the ‘last mile’: A case study of Wellington’s Central Business District (Thesis, Master of Planning). University of Otago.
  5. ^ Balcik, Burcu; Benita M. Beamon; Karen Smilowitz (2009). “Last Mile Distribution in Humanitarian Relief”. Journal of Intelligent Transportation Systems (Taylor & Francis Group, LLC) 12 (2): 51–63. ISSN 1547-2442. https://ozyegin.academia.edu/BurcuBalcik/Papers/322500/Last_Mile_Distribution_In_Humanitarian_Relief 2011年10月24日閲覧。. 
  6. ^ 東日本大震災と物流…なぜ届かなかったのか?”. Response (2011年9月11日). 2021年3月21日閲覧。
  7. ^ インフラ復旧 危機対応の物語(1)ヤマト運輸”. Wedge Infinity (2011年5月20日). 2021年3月21日閲覧。
  8. ^ Jolly, Jennifer (2016年10月9日). “Protect your online purchases from 'porch pirates'”. USA Today. 2016年12月11日閲覧。
  9. ^ 物流業界の現状と今後:一連のヤマト運輸報道から考える”. SmartDrive Fleet. 2021年3月27日閲覧。
  10. ^ ヤマト運輸の運賃値上げ…物流業界の再配達問題とは?”. excite ニュース (2017年3月11日). 2021年3月27日閲覧。
  11. ^ 物流の現状と課題 (PDF)”. 国土交通省 (2021年1月19日). 2021年3月31日閲覧。
  12. ^ https://news.yahoo.com/alibaba-deploys-drones-deliver-tea-china-094423625.html
  13. ^ 中国郵政のスマート無人配達車、商用運行開始”. AFP (2019年9月10日). 2021年3月27日閲覧。
  14. ^ 物流を制するものが中国ECを制す――火花散る〝再配達ゼロ〟競争”. Wedge Infinity (2018年10月29日). 2021年3月27日閲覧。
  15. ^ 5 Ways to Overcome Last Mile Delivery Challenges”. 2017年9月10日閲覧。
  16. ^ 「再配達がドライバーを苦しめる」は誤解?運送業界の課題の本質とは”. ビジネスIT (2019年4月26日). 2021年3月27日閲覧。
  17. ^ 「こうすれば宅配便の再配達は減る!」55人の関係者と消費者が考えた再配達削減策”. Impress (2018年4月3日). 2021年3月27日閲覧。
  18. ^ 不在配達20%減、佐川と東大など5者が実証”. Logistics Today (2021年3月26日). 2021年3月27日閲覧。
  19. ^ Danny King (2012年12月21日). “Hiriko 'folding' EV will be produced for German car-sharing project next year”. Autoblog Green. 2012年12月21日閲覧。[リンク切れ]
  20. ^ a b Using Bicycles for the First and Last Mile of a Commute”. Mineta Transportation Institute (2009年9月). 2011年10月24日閲覧。
  21. ^ a b In Focus: The Last Mile and Transit Ridership”. Institute for Local Government (2011年1月). 2018年10月6日閲覧。
  22. ^ First steps toward livable communities”. Fast Lane. U.S. Department of Transportation (2009年3月22日). 2011年10月24日閲覧。
  23. ^ FHWA grant funds East Coast's largest bike center; DC transport hub may crack the "last mile" problem”. Fast Lane. U.S. Department of Transportation (2009年10月5日). 2011年10月24日閲覧。
  24. ^ Kuang, Cliff (2009年4月16日). “Convenience Is King”. GOOD Magazine. 2011年10月24日閲覧。
  25. ^ Zax, David (2011年8月17日). “Can Driverless Pod Cars Solve the 'Last-Mile Problem'?”. Technology Review. Massachusetts Institute of Technology. 2011年10月24日閲覧。
  26. ^ Yvkoff, Liane (2010年7月15日). “Are motorized shoes the last-mile transport answer?”. CNet. 2011年10月24日閲覧。
  27. ^ Read, Richard (2015年12月29日). “Ford Patent Could Transform Your Car Into A Unicycle”. The Car Connection (Internet Brns Automotive Group). http://www.thecarconnection.com/news/1101614_ford-patent-could-transform-your-car-into-a-unicycle 2016年9月10日閲覧。 
  28. ^ DeMaio, Paul (2009). “Bike-sharing: History, Impacts, Models of Provision, and Future”. Journal of Public Transportation 12 (4): 41–56. http://www.nctr.usf.edu/jpt/pdf/JPT12-4DeMaio.pdf 2011年10月24日閲覧。. 
  29. ^ Shaheen, Susan; Guzman, S., and H. Zhang (2010). “Bikesharing in Europe, the Americas, and Asia: Past, Present, and Future”. Transportation Research Record: Journal of the Transportation Research. オリジナルの10 June 2012時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120610155608/http://76.12.4.249/artman2/uploads/1/Bikesharing_in_Europe__the_Americas__and_Asia.pdf. CS1 maint: Multiple names: authors list (link)
  30. ^ Shaheen, Susan; Stacey Guzman (2011). “Worldwide Bikesharing”. Access Magazine. オリジナルの26 March 2012時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120326063609/http://www.uctc.net/access/39/access39_bikesharing.shtml. 
  31. ^ Raphelson, Samantha (2018年8月29日). “Dockless Scooters Gain Popularity And Scorn Across The U.S.” (英語). NPR.org. https://www.npr.org/2018/08/29/643058414/dockless-scooters-gain-popularity-and-scorn-across-the-u-s 2018年9月16日閲覧。 
  32. ^ Greenfield, John (2018年9月11日). “Jump’s Cheaper, Dockless Electric Rides Seem to Be Winning Over Far-South-Siders” (英語). Streetsblog Chicago. https://chi.streetsblog.org/2018/09/11/jumps-cheaper-dockless-electric-rides-seem-to-be-winning-over-far-south-siders/ 2018年9月16日閲覧。 

関連項目編集