ラ・カンパネッラ
『ラ・カンパネラ』(La Campanella)は、フランツ・リストのピアノ曲。ニコロ・パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番第3楽章のロンド『ラ・カンパネラ』の主題を編曲して書かれた。名前の Campanella は、イタリア語で「鐘」という意味である。
リストが「ラ・カンパネラ」を扱った作品は4曲存在するため、以下に作曲された順に紹介する。最終稿の『パガニーニによる大練習曲』第3番は、数多くあるリストの作品の中でも最も有名なものの一つ。
『パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲』編集
(Grande Fantaise de Bravoure sur "La Clochette" de Paganini, S. 420)
『パガニーニの「鐘」によるブラヴーラ風大幻想曲』とも呼ばれる。1831年から1832年にかけて作曲され、1834年に出版された。「ラ・カンパネッラ」を扱った最初の作品である。ニコロ・パガニーニのヴァイオリンの演奏を聴き、大きな衝撃を受けたリストが「僕はピアノのパガニーニになる!」と決意し、自らの技術を磨き上げて作り上げたと伝えられる。
詳しくはパガニーニの「鐘」によるブラヴーラ風大幻想曲を参照。
テレビ番組の企画に出演した小山実稚恵はこの曲について番組内で「即興から生まれているとしか言いようがなく、右手で弾いたらなんでも無いのに左手を交差するように指示していたり、音でも視覚でも魅せるように意識して、わざと難しくなるように楽譜に書き添えていて、(リストは)真のヴィルトゥオーソだったと思う」と語っている。
『パガニーニによる超絶技巧練習曲』第3番 変イ短調編集
(Etudes d'Execution Transcendante d'apres Paganini, S. 140)
1838年に作曲された、全6曲からなるパガニーニによる超絶技巧練習曲の第3番。録音を行っているピアニストは、作曲から170年以上経っている現在においても僅か6名のみである。この版ではパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番第3楽章のロンドの主題(4分の4拍子)も用いており、後半はこの主題が中心になって変イ長調で終結する。なお、2014年8月に出版された『リスト/パガニーニ大練習曲集(原典版)』(全音楽譜出版社)では、巻末に本曲の初版が収録されているが、日本国内での出版はこれが初である。
詳しくはパガニーニによる超絶技巧練習曲を参照。
『パガニーニの「ラ・カンパネラ」と「ヴェニスの謝肉祭」の主題による大幻想曲』編集
(Grande Fantaise (Variations) sur des themes de Paganini - La Clochette et La Carnaval de Venise - First Version S. 700i)
1845年に作曲された。改作版の『パガニーニの主題による大幻想曲』S. 700ⅱが同年に作曲されている。
どちらも演奏の機会は無いに等しい。レスリー・ハワードのリスト全集にのみ収録されている。
『パガニーニによる大練習曲』第3番 嬰ト短調編集
(Grandes Etudes de Paganini, S. 141)
1851年に作曲された、最も有名な版(パガニーニの原曲はこの年になって初めて出版されている)。『パガニーニによる超絶技巧練習曲』を改訂した『パガニーニによる大練習曲』の第3曲にあたり、異名同音の嬰ト短調で書かれている。今日「ラ・カンパネッラ」として演奏されるほぼ全てがこの作品となる。
リストは曲全体の構成を洗練し、ピアノの高音による鐘の音色を全面に押し出した。 全体として、器用さ、大きい跳躍における正確さ、弱い指の機敏さを鍛える練習曲として使うことができる。最大で15度の跳躍があり、この跳躍を16分音符で演奏した後に演奏者に手を移動する時間を与える休止がないまま2オクターブ上で同じ音符が演奏される。ほかにも薬指と小指のトリルなどの難しい技巧を含む。
A(嬰ト短調)-B(ロ長調)-A-B-A-B-A-コーダの簡単なロンド形式で書かれている。用いられる楽想はこれまでの「ラ・カンパネラ」やパガニーニの原曲と比較しても限定されているが、主題が登場する度に様々な装飾を加えることによって単調さを避けている。
冒頭
補足編集
- これらの主題は、パガニーニのオリジナルの主題とは一部変更されている。パガニーニの原曲をイ短調に直すと、E-E'-E'-D'-C'-C'-H-A-G#-A-H-E-E-F-E-D-C-H.-A.-C-H.-A.-E.となるが、リストはS.420以降、E-E'-E'-D'-C'-C'-H-A-G#-A-H-E-E-F-E-D-C-C-H.-A.-G#.-A.-H.と書き換えている。これは、パガニーニのオリジナルが1851年まで出版されず[1]、記憶を元にリストが作ったためとみられる。
(パガニーニによる原曲、冒頭)
- S.141は他の作曲家・演奏家によって再編曲されることもある。フェルッチョ・ブゾーニによるものが有名であり、またマルカンドレ・アムランの《短調のための12の練習曲》第3番は「ラ・カンパネッラ」の再編曲である。
メディアファイル編集
関連項目編集
《パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲》を演奏したピアニスト編集
- レスリー・ハワード
- ブルーノ・メッツェナ
- セルジオ・フィオレンティーノ
- ジョン・オグドン
- マルコ・パシーニ
- 碇山典子
- ケマル・ゲキチ
- 小山実稚恵(テレビ番組内において一部のみ演奏)
《パガニーニによる超絶技巧練習曲》第3番を演奏したピアニスト編集
- ジョン・オグドン
- ニコライ・ペトロフ
- レスリー・ハワード
- 大井和郎
- ジャンヌ=マリー・ダルレ
- ゴラン・フィリペツ
- ヴォイチェフ・ヴァレチェク
- 阪田知樹
- Elisa Tomellini[1]
《パガニーニによる大練習曲》第3番の演奏者として名高いピアニスト編集
日本以外編集
- あ行
- か行
- さ行
- た行
- は行
- ら行
- わ行
日本編集
- あ行
- か行
- さ行
- た行
- な行
この曲をCMに使用編集
- 富士ゼロックス(現:富士フイルムビジネスイノベーション)
この曲を劇中曲に使用編集
- アニメ世紀末オカルト学院(第3話 - 第5話、第10話、第12話)
この曲をゲームに使用編集
- DJMAX Portable 3 - アレンジを加えて「La Campanella Nu Rave」として収録。フランツ・リストがコンポーサーとしてクレジットされている。
- beatmania IIDX 20 tricoro - アレンジを加えて「Thor's Hammer」として収録。「ユニバーサル度胸兄弟」(角田利之と脇田潤による共作)のアレンジによる。
- ノスタルジア - アレンジを加えて「ラ・カンパネラ」として収録。リストがコンポーザーとしてクレジットされている。
参考文献、脚注編集
- Leslie Howard: "The complete music for solo piano, Vol. 48 – The Complete Paganini Études" (S.140, S.141を収録)のCD解説書(Leslie Howard, 1998)
- Leslie Howard: "The complete music for solo piano, Vol. 55 – Grande Fantaisie" (S.420, S.700を収録)のCD解説書 (Leslie Howard, 1998)
- ^ 福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』p.185。音楽之友社、2005。
外部リンク編集
- Grande fantaisie de bravoure sur La clochette, S.420の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト。PDFとして無料で入手可能。
- Études d'exécution transcendante d'après Paganini(1838, S.140)の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト。PDFとして無料で入手可能。
- Grandes Études de Paganini (revised version, 1851, S.141)の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト。PDFとして無料で入手可能。
- リスト:パガニーニ大練習曲集 - ピティナ・ピアノ曲事典
- La Campanella by Yundi Li - YouTube (by ユンディ・リ uploaded on 2006年08月26日)
- Evgeny Kissin La Campanella - YouTube (by Evgeny Kissin (エフゲニー・キーシン) uploaded on 2007年04月29日)
- Liszt - La Campanyella (Gekic) - YouTube (by Kemal Gekic, uploaded on 2007年06月23日)
- 後藤正孝 リスト:ラ・カンパネラ - YouTube (by 後藤正孝 uploaded on 2011年09月20日)
- Ingrid Fujiko Hemming - La Campanella - YouTube (by フジ子・ヘミング uploaded on 2008年09月22日)