リアリティ番組

リアリティー番組から転送)
ファッションデザイナーをテーマとするリアリティ番組『プロジェクト・ランウェイ』の出演者、スタッフ(司会のハイディ・クルムティム・ガン、製作者のハーヴェイ・ワインスタインほか)。第67回ピーボディ賞授賞式の午餐会会場にて(2008年

リアリティ番組(リアリティばんぐみ、リアリティショーReality television)とは、事前の台本や演出のない、現実に起こっている予測不可能で困難な状況に、よく知られたプロの俳優などではない一般人出演者たち(無名の芸能人なども含む)が直面するありさまを、ドキュメンタリードラマのように楽しめると謳ったテレビ番組のジャンル。視聴者が参加する双方向番組の一種で、1990年代末以降、世界各地のテレビを席巻する人気を博している。多くは「演技台本やらせのない出演者の行動をカメラが追う形式のテレビ番組」であるとしているが、演技・台本・やらせのある「リアリティ風番組」であるケースも含まれる。

概要編集

90年代末の世界各地での大ヒット以降、従来型の視聴参加型のクイズ番組やバラエティ番組もリアリティ番組を名乗るようになったため、現在は非常に意味が拡散した言葉となっている。視聴者参加型のクイズ番組・トーク番組恋愛バラエティ番組をはじめ、視聴者から選ばれた代表を孤島や旅先に隔離してカメラで監視したり、毎週課題を与え最後の一人になるまで勝ち抜きさせたりするものまで、さまざまな種類のものがある。これらの番組の多くは、固定カメラや隠しカメラ、手持ちカメラなどといったドキュメンタリー番組の撮影手法を用いて出演者に密着し、独特の臨場感を視聴者に与え、撮影対象となる出演者のドラマを「本物らしく」見せる事を売りとしている。

番組の焦点は、参加している一般人同士のメロドラマ的人間関係や恋愛・苦闘であり、視聴者はこれを楽しむだけでなく電話投票などで彼らに対し審判を下すこともある。

起源編集

その起源は、1948年のアレン・フントによる『キャンディード・カメラ』(en:Candid Camera、『どっきりカメラ』の元祖[1])など、一般人の即興的で意外な反応を楽しむテレビ番組にまでさかのぼる。こうした、練られた脚本や俳優の演技よりも面白い一般人のリアクションに焦点を当てた番組は、1960年代から1980年代にかけてヨーロッパ、日本、アメリカなど世界各地で製作されていた。今日的な愛憎や恋愛を題材にしたリアリティ番組は、PBS1973年に放送された、離婚寸前の核家族に密着した『アメリカン・ファミリー』(An American Family)が最初とされる[1]

一般のテレビドキュメンタリートーク番組にもリアリティ番組的な要素が入るようになった。1960年代から1970年代にかけて、チャック・バリス(Chuck Barris)のプロデュースによる『デート・ゲーム』(The Dating Game)、『新婚ゲーム』(The Newlywed Game)、『ザ・ゴングショー』などの視聴者参加ゲーム番組が全米で人気を博した。1989年放送開始の警官密着型番組『コップス(COPS)』は、警官の日常や、逮捕され抵抗する犯人といったシーンが人気を集めたが、これらは一般人である警官や犯人のインパクトの強さも話題となった。またカムコーダシネマ・ヴェリテ(Cinéma vérité)的な手法を使って、警官たちの日常シーンや逮捕シーンなどの臨場感を高めていた。1991年放送開始のトーク番組、『ジェリー・スプリンガー・ショー』(The Jerry Springer Show)はレッドネックなど貧困家庭の出演者が司会者ジェリー・スプリンガーや視聴者の前で家族の恥部をさらしケンカを始める様が評判を呼び、視聴者に他人の人生を覗き見る衝撃や快感を与えた。

リアリティ番組のフォーマット編集

完全に一般人に焦点をあわせたリアリティ番組は1990年代に世界各地で放送開始された。アメリカでは、1992年MTVで、視聴者から募った数人の若者が一軒家で共同生活するさまを隠しカメラで数ヶ月にわたり追った『リアル・ワールド』が放送開始された。オーディションで選ばれた視聴者、限られた場所・限られた期間での生活、時々挿入される参加者へのインタビュー(この生活に対する感想、人間関係や他の参加者に対する感想など)、といったフォーマットは後の世界中のリアリティ番組の基礎となり、1990年代末から2000年代にかけてリアリティ番組が山のように生み出されるきっかけとなった。

こうした番組の中にはイギリスやオランダなどヨーロッパで最初に放送され、その後フォーマットがアメリカを経由して世界に販売されたものも多い。

変身・メイクオーバー編集

1996年イギリスで放送された『チェンジング・ルーム』(Changing Rooms)はカップルが互いの部屋を改造するもので、視聴者の容姿や視聴者の部屋をおしゃれに変身(メイクオーバー)させるリアリティ番組のさきがけとなった。

国内ではリアリティ番組と銘打たれていないものの『B.C.ビューティー・コロシアム』などがある。

特殊な環境への隔離編集

1997年スウェーデンで放送された『エクスペディション・ロビンソン(ロビンソン遠征隊)』(Expedition Robinson)は視聴者から選ばれたメンバーが孤島でサバイバルするという内容で、『リアル・ワールド』が完成させたリアリティ番組のフォーマットに「生き残り」(毎回一人ずつ脱落し、最後に一人が勝ち残る)という要素を追加して人気番組となった。また、後に世界各地にこのフォーマットが販売され『サバイバー』として放送された。

1999年オランダで放送された『ビッグ・ブラザー』は完全に外部から隔離され、すべての場所にカメラとマイクが仕掛けられた家に十数人の男女を3ヶ月入れるというもので、彼らの生活はケンカやセックス、互いの脱落させ合いに至るまですべてが収録される極端なものである。これも世界中にフォーマットが販売され、オランダの制作会社エンデモルはこのヒットをきっかけに世界各国でリアリティ番組を制作する大手企業となった。

スター育成編集

2001年にはイギリスで『ポップアイドル』という視聴者勝ち抜き型歌手育成番組が作られた。これは予選を勝ち抜いた参加者に徹底的なトレーニングを施し、視聴者の判断で一人ずつ脱落させつつ最後には一人のスターを生み出すというもので、世界各地にフォーマット販売されたり(アイドルシリーズ)参考にした番組が製作されたりした。たとえばアメリカの『アメリカン・アイドル』、中国の『超級女声』などは国民的関心を集める怪物番組となっている。この派生系として、スーパーモデル育成番組、ファッションデザイナー育成番組、スポーツ選手育成番組、コメディアン育成番組、子役スター育成番組、シェフ育成番組、ドナルド・トランプ指導による経営者育成番組『アプレンティス』なども誕生している。

有名人の生活編集

リアリティ番組は出演料の安い、または不要な一般人が多数出演するものだったが、有名人の生の生活を覗き見る番組も登場した。たとえば2002年にMTVで放送開始された『オズボーンズ』は、オジー・オズボーンとその一家の生活を見せるものだった。2003年のFOXテレビによる『シンプルライフ』では、ハリウッドきってのパーティー好きセレブのパリス・ヒルトンニコール・リッチーがゴージャスな生活とは無縁な農村や荒野へ旅して質素な生活を体験するもので、その奇天烈な反応が人気となった。

日本ではテレビ東京において放送された、俳優・山田孝之の日常を「ドキュメンタリードラマ」という手法で追いかけた『山田孝之の東京都北区赤羽』や『山田孝之のカンヌ映画祭』があげられる。

その他編集

その他、欧米におけるリアリティ番組のバリエーションは、

  • 恋愛・結婚・就職など視聴者の人生をかけてデートやスポーツや面接などに挑む勝ちぬきゲーム番組
  • 視聴者や芸能人が本格的なスポーツやダンスなどに挑戦するゲーム番組
  • 視聴者が相談を持ち込むトーク番組
  • 法律相談や法廷対決や法執行を題材にした法廷リアリティ番組
  • 警察・消防・救急ほか特殊な職業に密着した番組(いわゆる『警察24時』など)
  • 少数民族や少数派宗教や障害者などマイノリティ集団に密着した番組
  • 視聴者が夫婦や身分をしばらくの間交換する社会実験番組
  • 視聴者や芸能人に超常現象や心霊スポットを捜索させる超常現象番組
  • 事件や事故に遭遇した被害者や家族本人が出演して事件を再現する実話再現番組
  • 「億万長者とデートし一人だけが結婚できる」という名目で出演者を集めるが、億万長者として登場する人物の正体は貧乏人であったりするなど、番組の真の目的を知らない出演者の悪戦苦闘を司会者や視聴者が笑って楽しむ偽リアリティ番組

などの広がりを見せている。

アメリカ編集

リアリティ後進国だったアメリカでは、出演者のセリフやリアクションなどがあらかじめ一字一句決められ、完全な演出の基に作られた番組が主流を占めていた。しかし1990年代後半頃から急速にキャッチアップを始め、今日では『アメージング・レース』、『アメリカン・アイドル』、『サバイバー』、『シンプルライフ』などの「視聴者参加・勝ち抜き戦」や「視聴者依頼番組」が主流にあり、拡大解釈して視聴者参加のクイズ番組『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア』や投稿ビデオ番組『アメリカズ・ファニエスト・ホーム・ヴィデオズ』(America's Funniest Home Videos) もリアリティ番組のうちに数えるようになった。

サバイバー』、『スター・アカデミー』、『アイドルズ』、『Xファクター』、『ゴット・タレント』、『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』、『トップ・モデル』、『マスターシェフ』といったリアリティ番組の人気シリーズは数十か国にフォーマットが販売され、世界各国版が制作されるなど国際的に成功を収めている。アメリカの場合だと4大ネットワークプライムタイムに放送される番組の主だった部分がリアリティ番組に占められ、MTVVH1ヒストリーE!TLCなどといった音楽チャンネルや教育チャンネルまでもリアリティ番組に力を入れる状況になった[2]

45代目アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプもリアリティ番組に出演していた時期があり、司会者として担当していた『アプレンティス』を視聴率競争の激しい地上波のプライムタイム枠にて14シーズン(約12年)もの間放送し、成功を収め、大統領への道を作った[3][4]

こうした番組が主流になった背景には、リアリティ番組はルールなどの「フォーマット」さえあれば、あとは脚本を練る手間も高いギャラの俳優を集める費用もかからず、一般人による濃い人間模様を見せて高い人気を得ることができることにある[5]。ゲスト出演者は豪華になる傾向にあり、最終的に勝ち残った一般人には巨額の賞金が与えられることもあるが、これでもテレビドラマでの人気俳優の1シーズンあたりの出演料に比べれば安いものといえる。有料ケーブルテレビはCMの出稿減少や解約者の増加で製作費削減の圧力にさらされ、安価なリアリティ番組に頼るようになっている[5]。2010年代に急速に台頭したNetflixなどの定額制動画配信サービスも、高品質なドラマや映画の製作に力を入れて話題を作る一方で、安価なリアリティ番組を多数製作することで契約者を増やすきっかけを作ろうとしている[5]

日本編集

近年の日本ではお笑いブームによって出演料が安く視聴者と同じ地平にある若手タレントが大量に起用されていることや、こうしたタレントのトークを補強するテロップなどの演出・編集技術が頻繁に使われるため、視聴者を出演させるメリットが少なくなり視聴者参加番組の減少が続いている。このため、日本国外のオリジナルのフォーマットそのままではなかなか人気を得づらく、演出方法を変更したり、視聴者ではなくタレントが出演するなど、日本特有の味付けがされている。

日本のテレビ番組でリアリティ番組と位置づけられるのは、ドキュメントバラエティヒューマンバラエティなどと称される種類のバラエティ番組だろう。本格的な欧米スタイルのリアリティ番組の先駆けとして、『進め!電波少年』(日本テレビ)が挙げられるほか、それ以前にも『アメリカ横断ウルトラクイズ』や『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ)が部分的に欧米スタイルのリアリティ番組の要素を取り入れている。それ以前の『どっきりカメラ』(日本テレビ)、『スターどっきり(秘)報告』(フジテレビ)などもアメリカに元ネタのあるリアリティ番組の一種である[1]

『進め!電波少年』の初期の頃は、番組の主旨が視聴者に完全に理解されず、まったくのドキュメンタリーと思いこむ視聴者も多かった。その後、『進め!電波少年』のヒッチハイク騒動の際に制作者サイドが「バラエティであり、ドキュメンタリーではない。演出は存在する」と公言したことや、『ガチンコ!』(TBS)での台本発覚や出演者の告発などにより、ようやく、リアリティ番組がドキュメンタリーではないことが一般に認知されるようになった。ただし、『ガチンコ!』の場合、制作者サイドは「番組はドキュメンタリーだが、ドキュメンタリーでも多少の演出はある」という言い方をしたため、問題は残った。なお、TBSの番組審議会や、BPOへの苦情に対しては、担当プロデューサーは、事実のドキュメントである旨しか回答していない。

ただし現在も「ドキュメンタリーと誤解されるような演出はすべきではない」と言う批判もあり、一方制作者サイドもドキュメンタリーと誤解されるような表現を使ったり、そのことから視聴者の一部が相変わらずドキュメンタリーと思いこんでいたりと、問題がないわけではない。やらせについては『どっきりカメラ』(日本テレビ)、『スターどっきり(秘)報告』(フジテレビ)と言った、古典的な番組でもしばしば演出が行われていたことは、スタッフや当時の出演者の証言から明らかになっている。

批判と反響編集

2000年代以後、テレビや動画配信サービスの番組の多くがリアリティ番組に占められるようになり人気に衰えを見せないが、一方で、一般人の人生をのぞき見たりかき回したりするようなリアリティ番組は中身がなく低俗だとの批判も浴びている。

リアリティ番組がどこまでが「リアリティ(現実)」なのかについては強い批判がある。多くの番組は日常生活ではなく、秘境や閉鎖された部屋など非日常的な空間、歌手やスポーツ選手・経営者になるトレーニングなど非日常的な状況、巨額の賞金のかかったクイズなど、およそ「リアリティ」とは遠いところを舞台としている。出演者は能力の限界を試され、普段出さない自分の姿を出させられている。こうした姿も「リアリティ」なのかどうかには議論がある。

また、こうした番組は編集の段階で多くの部分がカットされたり、時間を前後させてつなぎ合わされたりしており、実際に起こったこととは違うものを視聴者は見せられていることが多い[6][7]。このため視聴者から叩かれた参加者の中には番組に対し「この編集では私が悪者のように見えてしまう」と抗議・反論する者もいる。

リアリティ番組にはやらせの疑惑も絶えない。視聴者からは、プロデューサーが事前に決めた筋書きに沿って参加者が動いているのではないかという疑念を持たれている[6]。若手ファッションデザイナーに密着し私生活や友人関係を追ったと称する『The Hills』はその最たるものである[8]。例えば若手シェフが勝ち残りを競う『ヘルズ・キッチン〜地獄の厨房』の第2シーズンでは、参加者が作った料理をふるまわれる客は実は役者ではないかという疑念が上がった[9]。西部全米脚本家組合の委員長であるダニエル・ペトリ・ジュニアは2004年に、「リアリティ番組には台本がないといううたい文句だが、私は台本があることを知っている。番組側は、番組の出来事は全部偶然でありこれがリアリティなのだという幻想を殺さないために、脚本家のことを脚本家と呼びたくないのだろう」と語っている[6]。放送局やプロデューサーが番組制作費を抑えるために、リアリティ番組の脚本家に対しては、全米脚本家組合が定めたレベルの報酬も払われていないし組合を介した労使交渉もできていないという[6]

実際にやらせであることを明らかにした番組も存在する。2007年6月、オランダで『De Grote Donorshow』(すばらしいドナーショー、De Grote Donorshow)というリアリティ番組が放送されることが事前に発表された。この番組では3人の腎臓病患者から視聴者投票で1人が選ばれ、余命わずかな女性から提供を受けた腎臓が贈られるというもので、ヨーロッパで放送の是非をめぐる論議を巻き起こした。しかし実際に放送された番組のラストで「これは臓器移植問題に関心を持ってもらうためのやらせであり、患者は本物だがドナーの女性は俳優である」ことが明らかにされた[10]。製作者側も参加者の勝ち抜き過程などを透明化するなどやらせの起こらない状況を作る努力を払っている。

視聴者投票を伴うリアリティ番組が世界各地に広まるにつれ、民主主義的な政治の行われていない権威主義的な国の国民が、生まれて初めて重要な物事を決める投票を体験することになり、その政治的影響も注目されている。『ビッグ・ブラザー』の汎アラブ版は未婚の男女が共同生活することや赤裸々さから社会に衝撃を与えた[11]。また中国版『ポップアイドル』といえる『超級女声』が、2005年のシーズンにおいて4億人の視聴者を得て800万票の投票が殺到するセンセーションを起こした後、政府系英字新聞のペキン・デイリーは「超級女声は民主主義への圧力なのか?」と題する記事を一面に載せている[12]。『超級女声』は低俗であり青少年に悪影響を与えるとの非難が政府関係者からも視聴者からも寄せられ、2006年のシーズンで放送を終了した。

出演者に対する中傷、および出演者の自殺編集

リアリティ番組に出演した参加者の中には、一夜にして人気者になる者もいる一方、視聴者の憎悪や嘲笑を集め悪い意味で有名になってしまう者も多数いる。 中には番組内容を巡るトラブルが出演者の自殺に発展するケースも起きている[13][14][15][16][17]

リアリティ番組の初期の人気作である『サバイバー』シリーズの元祖であり、スウェーデンで放送された『エクスペディション・ロビンソン』の、1997年に放送された第一シーズンですでに自殺者が発生している。第一回目の視聴者投票で退出を宣告された34歳男性は、無人島から帰って1か月後に列車が走る線路に体を横たえて自殺した。未亡人はこの番組のルールが自殺者をもたらしたとして放送中止を訴えたが、第1シリーズは多くの視聴者の抗議や、「ファシスト番組」「いじめ番組」と番組を呼ぶマスコミの批判の中で完走し、参加者から多くの有名人を生み出した[18]。『サバイバー』シリーズは、フランス版の『コー・ランタ』でも2013年に心臓麻痺による死者と自殺者を出しており、出演者をサポートする医師や心理学者などによる医療体制が手薄だったことが指摘された[13]。フランスではこれ以前にもリアリティー番組の出演者が番組終了後に自殺未遂や自殺をした例が複数あり、視聴覚最高評議会のメンバーもリアリティー番組に対する監視体制の強化が必要だと主張している[13]

アメリカ合衆国においては2004年から16年にかけ、少なくとも21人の出演者が自殺したとされている[16]。 2016年から放送されているイギリスの恋愛リアリティ番組『ラブ・アイランド』では、出演者3人と司会者1人が死亡しており、このうち2019年に男性出演者が自殺した際は、リアリティ番組の出演経験者からメンタルヘルスのサポートの義務化を要望する声が寄せられた[19]

2020年5月、フジテレビとイースト・エンタテインメントが制作しNetflixや地上波などで配信・放送されていた日本のリアリティ番組『テラスハウス』に出演していたプロレスラーの木村花が死亡する事件が発生した[16][20]。生前、木村がインターネット上で番組内での言動に対して批判が寄せられていたことから、インターネット上での誹謗中傷の問題とともに、リアリティ番組そのものの危うさにも注目が集まり[16]、他国の類似事例も取り上げられた[17]。精神科医の松本俊彦は朝日新聞の記事の中で、「番組の出演者が非難を浴びると、『素の自分』を否定されていると受け止めやすくなる可能性がある」と指摘し、目立つことに慣れていない人が匿名の人物からの攻撃を「世界中のすべての人からの攻撃」だと考えてしまうと話している[16]。また、ABEMA制作のリアリティ番組『オオカミくんには騙されない』シーズン1のプロデューサーを務めたテレビマンユニオンの津田環も「制作サイドが出演者の感情の起伏を利用して『誘導』し、出演者がそれに応えようとする側面がある。リスクの矢面に立つのは常に出演者だが、多くの現場でケア体制が整っていない」と同じ記事の中で指摘している[16][21]。多くの恋愛リアリティーショーを手掛けるABEMAでは誹謗中傷、風評被害に関する出演者用の窓口を同年5月27日に設置した[22]。なお、フジテレビは同年5月27日に『テラスハウス』について、制作中止(打ち切り)を発表している[20][23][24]

創作物内のリアリティ番組編集

  • 危険の報酬』 - 1958年のロバート・シェクリイの小説。人々が自分を殺そうとするのを1週間回避すれば多額の賞金が得られるというテレビ番組に出演することになった男の話であり、リアリティ番組の出現を予見したものと言える。
  • 48億の妄想』 - 1965年の筒井康隆の小説。日本の至る所にテレビカメラが取り付けられ、人々がみなカメラの向こうで観ているテレビ局や視聴者を意識して振舞う社会を描く。
  • ネットワーク』 - 1976年の映画。視聴率至上主義の放送局で、首を言い渡されたキャスターが番組内で自殺予告をし、逆に人気が上がる様を描く。テレビ局は彼を人気司会者に祭り上げる一方、過激派相手に破壊活動を中継する番組製作を持ちかける。
  • 火の鳥 生命編』 - 1980年手塚治虫の漫画。22世紀の日本が舞台。高視聴率の獲得を目論むテレビプロデューサーが、クローン人間を殺しても罪に問われないという(作品内の)法律の抜け穴を利用し、視聴者参加型の殺人番組を企画する。
  • バトルランナー』(1982年の小説)・『バトルランナー』(1987年の映画) - 独裁政権が支配する未来のアメリカを舞台とし、1ヶ月の間国民の追跡の手を逃れてアメリカ国内を逃げ回ることに成功すれば多額の賞金を手にできるという生死をかけたゲームに平凡な男が挑む。映画版では犯罪者と処刑人たちが殺しあう人気テレビ番組に出演させられた政治犯の主人公が登場する。
  • トゥルーマン・ショー』 - 1998年の映画。生まれてこの方、本人に知らされないままその生活ぶりを24時間生放送され続ける主人公を描いたもの。
  • シリーズ7/ザ・バトル・ロワイアル』 - 2001年の映画。出演者同士が殺しあう架空のリアリティ番組の第7シーズンを舞台としたもの。
  • 世にも奇妙な物語 秋の特別編』「仇討ちショー」 - 2001年のテレビドラマ。家族を殺された遺族が加害者を殺すまでの様子を生中継するというリアリティ番組の体裁をとっている。
  • アメリカン・ドリームズ』 - 2006年の映画。合衆国大統領が『アメリカン・アイドル』風の架空のオーディション番組のゲスト司会者として出ることからおこる騒動を描く。
  • スラムドッグ$ミリオネア』 - 2008年の映画。インド版『フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア』で次々に正解を出して勝ち進んだものの、あまりの勝ちぶりに不正を疑われ取り調べを受けたスラム街育ちの青年が語る半生の話。
  • 美男高校地球防衛部LOVE!』 - 2015年のテレビアニメ。外宇宙生命体の地球征服の理由が『地球滅亡できるかな!?』という番組を作るためでディレクターによって仕組まれていたことがクライマックスで明かされる。

脚注編集

  1. ^ a b c 日刊スポーツ新聞社『日刊スポーツ』2020年6月21日関東6版26面
  2. ^ Levin, Gary (2007年5月8日). “'Simple economics': More reality TV”. USA Today. http://www.usatoday.com/life/television/news/2007-05-07-reality-TV_N.htm?csp=34 6.26.2013閲覧。 
  3. ^ 「リアリティー・ショー」のプロ、トランプが仕掛ける虚実ない混ぜの演出”. Newsweek日本版. p. 2 (2020年5月28日). 2020年6月6日閲覧。
  4. ^ 「危険なリアリティ番組」量産するTV局側の事情 | テレビ”. 東洋経済新報. p. 2 (2020年5月30日). 2020年6月6日閲覧。
  5. ^ a b c テレビの未来は、大量の「リアリティ番組」とともにある | DIGIDAY 日本版
  6. ^ a b c d Booth, William (2004年8月10日). “Reality Is Only An Illusion, Writers Say - Hollywood Scribes Want a Cut Of Not-So-Unscripted Series”. The Washington Post. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A53032-2004Aug9.html 2009年4月26日閲覧。 
  7. ^ Just how real are reality TV shows? - Shows may exist in a middle ground – not fully scripted nor completely true”. MSNBC (2009年4月14日). 6.26 2013閲覧。
  8. ^ クリスティン・カヴァラリが暴露、「The Hills」はヤラセ ELLE, 2012/12/05
  9. ^ Holland, Roger (June 19, 2006). “Hell's Kitchen review”. PopMatters. http://www.popmatters.com/tv/reviews/h/hells-kitchen-060619.shtml. 
  10. ^ オランダのテレビ局、臓器移植への関心喚起のため視聴者を1年間欺く - AFP BB, 2007年06月02日
  11. ^ 'Realityis Not Enough':The Politics of Arab Reality TV
  12. ^ A television show challenges the authorities/Economist.com
  13. ^ a b c 仏人気リアリティー番組で2人目の死者、国内に衝撃広がる”. AFP通信 (2013年4月3日). 2020年5月26日閲覧。
  14. ^ 英トーク番組でうそ発見器にかけられた男性が死亡 高まる番組批判”. BBC News (2019年5月15日). 2020年5月26日閲覧。
  15. ^ 海外でも30名以上が自殺 木村花を追い詰めた「リアリティショー」番組作りに問題はなかったのか”. 週刊新潮 (2020年5月25日). 2020年5月26日閲覧。
  16. ^ a b c d e f 切り売りされる「素の自分」 リアリティー番組の危うさ”. 朝日新聞 (2020年5月25日). 2020年5月26日閲覧。
  17. ^ a b SNS中傷 イギリスの番組でも出演者自殺相次ぐ”. NHKニュース (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。
  18. ^ Frithiof, Lotta (2010年12月14日). “Livet efter dokusåpan”. Upsala Nya Tidning. 2020年6月7日閲覧。
  19. ^ 3人が自死した英リアリティ番組参加者、誹謗中傷への苦悩と制作側へのサポート求めていた”. フロントロウ (2020年5月26日). 2020年5月26日閲覧。
  20. ^ a b 木村花さん出演の「テラスハウス」打ち切り、公式サイトで発表「制作を中止する事を決定」”. スポーツニッポン (2020年5月27日). 2020年5月29日閲覧。
  21. ^ テラハ・木村花さん急逝、現場に問う不幸の元凶”. 東洋経済新報. p. 3 (2020年5月25日). 2020年5月28日閲覧。
  22. ^ ABEMA、出演者向け相談窓口を設置 SNSでの誹謗中傷に調査・法的手続き”. 福島民友新聞 (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。
  23. ^ フジテレビ、「テラスハウス」打ち切り 木村花さん急死で”. 毎日新聞 (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。
  24. ^ 「テラスハウス」打ち切り フジ、木村さん死去受け決定”. 朝日新聞 (2020年5月27日). 2020年5月27日閲覧。

関連項目編集