レボリューション9

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レボリューション9」(Revolution 9)は、ビートルズサウンドコラージュ英語版である。1968年に発売された9作目のイギリス盤オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ』に収録された。レノン=マッカートニー名義となっているが、主にジョン・レノンオノ・ヨーコジョージ・ハリスンのサポートを受けて作成した楽曲。本作では、オノの前衛芸術性や、エドガー・ヴァレーズカールハインツ・シュトックハウゼンが手がけたミュジーク・コンクレートに影響を受けている。

レボリューション9
ビートルズ楽曲
収録アルバムザ・ビートルズ
英語名Revolution 9
リリース1968年11月22日
録音
ジャンル
時間8分21秒
レーベルアップル・レコード
作詞者レノン=マッカートニー
作曲者レノン=マッカートニー
プロデュースジョージ・マーティン
ザ・ビートルズ 収録曲
クライ・ベイビー・クライ
(D-4)
レボリューション9
(D-5)
グッド・ナイト
(D-6)

1968年5月にレコーディングされたレノン作の「レボリューション1」のエンディング部分が原型となっており、エンディング部分を再構築して、レノン、ハリスン、オノの3人がボーカルやテープループなどをオーバー・ダビングして完成させた。演奏時間は8分21秒と、ビートルズの公式発表曲の中で最も長い楽曲である[注釈 1]

背景とインスピレーション編集

1966年よりビートルズは、テープループなどを駆使した実験音楽を制作するようになっていた。同年に発売されたアルバム『リボルバー』には、EMIスタジオに備え付けられたテープ・レコーダーを総動員させ、メンバー自ら作成したテープ・ループを主体とした楽曲「トゥモロー・ネバー・ノウズ」が収録され、1967年にはBBCラジオ3で放送された『リア王』の朗読の断片を取り入れた「アイ・アム・ザ・ウォルラス」が発表された[1]。本作もまたテープループを駆使した実験音楽のひとつで、ビートルズ初のミュジーク・コンクレートとなった。

本作はレノンとその妻であるオノ・ヨーコによって生み出された楽曲で、レノンは「あれはある意味ヨーコの影響だった。彼女の作品を聴いた瞬間に俺は魅了されて、自分でも同じようなことをやりたいと思った」と語っている[1]。この年の5月19日にサリー州ウェイブリッジにあるレノンの自宅内のスタジオで、その場で流れた音楽やノイズ、会話などを録音したことをきっかけに2人の交際が始まり、11月29日に共同名義で『未完成作品第1番 トゥー・ヴァージンズ』を発売した[1]

なお、レノンと同時期にポール・マッカートニーも実験音楽に関心を持ち、1967年に開催の芸術祭のために「カーニヴァル・オブ・ライト」を制作したが、本作には一切関与していない。これにより本作の完成時点で、本作をビートルズ名義のアルバムに収録するべきか否かで意見が衝突した[1]

レコーディング編集

この曲の起源は、1968年5月30日の「レボリューション」のレコーディング・セッションに遡る。当時の「レボリューション」はテンポが遅く、完成テイク(テイク18)は演奏時間が10分を超えていた[11]。ジョンは、このテイクをシングル・カットすることを希望していたが、ポール・マッカートニージョージ・ハリスンがテンポが遅すぎることからこれを拒否[12]。その後シングルにはテンポを上げてリメイクした「レボリューション」(『ヘイ・ジュード』のB面)が収録された。これにより、元のスローテンポのものは前半部分が「レボリューション1」、後半部分が「レボリューション9」のベースとして利用された。

6月11日の夜にマッカートニーがスタジオ2で自作の「ブラックバード」をレコーディングしている傍ら、レノンはスタジオ3でサウンド・コラージュ用の効果音を探していた。時折スタジオ2にも顔を出し、マッカートニーに対して楽曲にピアノやギターで伴奏を付けるほか、アレンジに関するアイデアを提案したことも伝えられている[1]

6月20日に本作のためにレノンとオノ、ジョージ・ハリスンジョージ・マーティンの4人が集った[注釈 2]。スタジオ3で集めた効果音でテープ・ループを作成し、これを数台のテープ・レコーダーでを再生しながらライブ・ミックスし、曲の5分11秒の辺りでレノンとハリスンの会話を録音して追加した[1]。レノンは「ジョージとオレは20分ほど適当に喋った」「言葉は全て思いつきで、脚本なんてものは存在しなかった」と語っている[1]。また、「レボリューション」のテイク18のコーダ部分に含まれていたオノの「You become naked」という言葉や、ピアノの伴奏の断片も本作に含まれている。

6月21日に最初のステレオ・ミックスが作成され、25日にステレオ・ミックスが作成された。この段階で曲の長さが53秒短くなった[13]。また8月26日にモノラル・ミックスが作成されたが、これはステレオ・ミックスをフォールド・ダウンしたもの[1]

「レボリューション9」の前の会話編集

「レボリューション9」の前にジョージ・マーティンとアリステア・テイラー(アップル社のオフィス・マネージャー)の会話が入る。

Taylor: bottle of claret for you if I'd realized. I'd forgotten all about it George, I'm sorry...
Martin: Well, do next time
Taylor: Will you forgive me?
Martin: Mmmm...yes...
Taylor: Cheeky bitch.[14]

CDのインデックスでは「レボリューション9」に含まれている。

クレジット編集

※出典[1]

社会的影響編集

マンソン・ファミリーを率いたカルト指導者で、テート・ラビアンカ殺人事件を起こしたチャールズ・マンソンは、同じく『ザ・ビートルズ』に収録の「ピッギーズ」「ヘルター・スケルター」等の楽曲を殺人の啓示と解釈した[15][16]。また、楽曲を逆再生した時に「Turn me on, dead man」と聞こえるという声が上がっており、これがポール死亡説の根拠の一つとされている[17]

1968年12月2日にスタッフォードシャー州にあるキール大学に通う学生3人から、レノンとオノは同大学のアート新聞のためのインタビューの依頼を受けた。当時学生や左翼団体の間では革命が話題となっており、政治が話題に挙がったところで本作について話し合われた。レノンは学生達に「『レボリューション9』は具体的に何かを示しているわけではない。通りを歩いている時みたいな音の羅列さ。オレはその一瞬をとらえてレコートしただけ。確か1回でやりきって、あとは少し編集を加えて完成。だからあれは大部分がでたらめだし、その意味だとこの言葉だって全部そうだ」と語っている[1]

カバー・バージョン編集

1994年10月31日、フィッシュニューヨークで『ホワイト・アルバム』を丸ごとカヴァーするライヴを行い、この曲も生演奏された。ただし完全に再現はされておらず、ピアノ伴奏に乗せた奇声やナレーションを、4分にわたって繰り広げるという内容となっている。2002年に発売された4枚組のライブ・アルバム『LIVE PHISH 13 10.31.94』に収録された[18]

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 未発表曲も含めると、13分48秒の「カーニヴァル・オブ・ライト」が最長。
  2. ^ マッカートニーは、同日よりロサンゼルスへ出かけており不在だった[1]

出典編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m White Album 2018, p. 32.
  2. ^ Athitakis, Mark (September–October 2013). “A Beatles Reflection”. Humanities (National Endowment of the Humanities) 34 (5). http://www.neh.gov/humanities/2013/septemberoctober/statement/beatles-reflection. "The Beatles, by contrast, was scruffy and centerless, its thirty songs encompassing mock-Beach Boys vocal harmonies ('Back in the U.S.S.R.'), ... proto-punk ('Helter Skelter'), sound collage ('Revolution 9'), and plenty more besides." 
  3. ^ Kreps, Daniel (2009年2月27日). “The Beatles' Experimental "Revolution 1 (Take 20)" Surfaces”. Rolling Stone. 2021年11月1日閲覧。 “The track makes it clear why seemingly unrelated 'Revolution 1' and the maniacal 'Revolution 9' sound collage share the same name.”
  4. ^ Crackle goes pop: how Stockhausen seduced the Beatles”. The Guardian. Guardian Media Group (2015年12月26日). 2021年11月1日閲覧。 “The Beatles' Revolution 9 brought experimental music to a global audience.”
  5. ^ A Master's in Paul-Is-Definitely-Not-Dead”. The New York Times. The New York Times Company (2009年3月7日). 2021年11月1日閲覧。 “... the freedom they gave themselves to make experimental works like 'Revolution 9.'”
  6. ^ Notes on 'Revolution #9'”. Soundscapes.info. 2021年11月1日閲覧。 “As one of the more infamous achievements of the mid twentieth century avant garde, this form of musical composition challenges the listener on both psychological and philosophical grounds.”
  7. ^ Unterberger 2006, p. 210. "The other Beatles and George Martin probably would have been happy enough to keep 'Revolution 9' under wraps, but John Lennon was probably determined to get at least one of his avant-garde outings on the record."
  8. ^ Everett 1999, p. 174. "The six-minute remainder formed the basis of a musique concrète work, largely a Lennon-Ono collaboration 'painting in sound a revolution,' 'Revolution 9'"
  9. ^ Courrier 2009, p. 226. "Composed as a piece of musique concète by Lennon and Yoko out of various taped pieces, including radio broadcasts, plus outtakes from the outro of 'Revolution 1,' 'Revolution 9' was highly influenced by the pioneers of Dadaist experimentation."
  10. ^ Echard 2017, p. 269.
  11. ^ Lewisohn 1988, pp. 135–136.
  12. ^ MacDonald 1994, p. 220.
  13. ^ Lewisohn 1988, pp. 138–139.
  14. ^ Womack, Kenneth (2018). Sound Pictures: The Life of Beatles Producer George Martin. Chicago Review Press. p. 423. ISBN 0-9127-7777-X 
  15. ^ Schaffner 1978, pp. 115–116.
  16. ^ Doggett 2007, pp. 305–306.
  17. ^ Reeve 2004, pp. 11–13.
  18. ^ Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年9月15日閲覧。

参考文献編集

外部リンク編集