ロイヤル・オードナンス L11

イギリスの戦車砲

ロイヤル・オードナンス L11英語: Royal Ordnance L11)は、イギリスロイヤル・オードナンス(Royal Ordnance Factories)が開発した120mmライフル戦車砲[1]チーフテン及びチャレンジャー1の主砲として搭載された[2]

ロイヤル・オードナンス L11(チャレンジャー1搭載)

概要 編集

ロイヤル・オードナンスが開発したロイヤル・オードナンス L7 51口径ライフル戦車砲は、イギリスのセンチュリオンをはじめとして各国に採用された。その成功を受け、北大西洋条約機構における標準戦車砲を目指し[1]、1950年代より開発が開始された[3]。1961年に初の試射が行われている[3]

同時期に開発されていたチーフテン戦車に主砲として装備され、チーフテンの大幅な改良型ともいえるチャレンジャー1にも装備された。1970年代開発のビッカースMBT Mk.4/バリアント試作戦車にも搭載可能であったが、採用国は無く[4]、同様に1980年代にもL11が搭載可能なビッカースMBT Mk.7が開発されたが、こちらも採用国が無かった[5]。また、他国開発の戦車にもL11を採用した事例はなく、装備されたのはイギリスの2車種に留まった。これを搭載したチーフテン戦車の量産は1963年より開始されており[2]、同じ120mm砲搭載のレオパルト2(1977年西ドイツ軍採用)より[6]、10年以上早い時期であった。

砲身長は55口径と[3]、事実上の西側標準戦車砲となったラインメタル 120 mm L44の44口径より長い。砲弾は、当初、徹甲弾(APDS-T)、粘着榴弾(HESH)及び白燐発煙弾が用意され、後に装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)も開発された[3][7]砲弾と発射薬は分離式となっている[3][7]。その威力は、充分に強力であり、湾岸戦争においてチャレンジャー1は、多数のイラク軍戦車を撃破している[2]

なお、チャレンジャー2搭載のL30もL11からの発展型である[7]

各型 編集

L11A1
初期型[7]
L11A2
砲尾をはじめ、各所を改良[7]
L11A3
砲尾を改良[7]
L11A4
自動装填装置用の試作型[7]
L11A5
主要生産型。砲口照合装置の導入や軽量化などの改良[3][7]
L11A6
A3の改良型。砲口照合装置の導入や排気システムの改良[7]
L11A7
提案のみ[7]

要目 編集

  • 口径:120mm
  • 砲身長:55口径
  • 重量:1.8t[3]
  • 後座長:370mm[3]
  • 装填速度:人力装填 通常6発/分 最大8から10発/分[3][7]
  • 砲身命数:120発[7]
  • 閉鎖機:半自動垂直鎖栓式(下方)[3][7]

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ a b gun 120mm L11,Imperial War Museum
  2. ^ a b c チーフテン 及び チャレンジャー1,世界AFV年間2002-2003,P65-68,アルゴノート社,2002年9月
  3. ^ a b c d e f g h i j 吉村誠「巡航戦車+重戦車のポリシーを持つチーフテン戦車」『ウォーマシンレポート NO.11 第2次大戦後のイギリスMBT』、アルゴノート社、2009年、60-77頁。 
  4. ^ 家持晴夫「輸出用戦車ビッカースMBT その発展とビジネスの消長」『ウォーマシンレポート NO.11 第2次大戦後のイギリスMBT』、アルゴノート社、2009年、46-59頁。 
  5. ^ Vickers Main Battle Tank”. globalsecurity. 2019年6月7日閲覧。
  6. ^ 「レオパルト2」『世界AFV年間2002-2003』アルゴノート社、2002年9月、P23-24頁。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m Forecast International. “L11 AND L30 120 MM TANK GUN”. 2016年8月14日閲覧。