ロバート・フリップRobert Fripp1946年5月16日 - )は、イギリス出身のミュージシャンギタリスト作曲家プログレッシブ・ロックの代表的バンド、キング・クリムゾンギタリスト兼リーダーである。

ロバート・フリップ
Robert Fripp
ロバート・フリップ(2007年11月3日)
基本情報
生誕 (1946-05-16) 1946年5月16日(77歳)
出身地 イングランドの旗 イングランド ドーセット ウィンボーン・ミンスター
ジャンル プログレッシブ・ロック
サイケデリック・ロック
フュージョン
環境音楽
職業 ミュージシャン作曲家音楽プロデューサー
担当楽器 ギターキーボードメロトロンシンセサイザーオルガンピアノ
活動期間 1968年 - 2011年2013年 -
共同作業者 キング・クリムゾン
リーグ・オブ・ジェントルメン
プロジェクト
フリップ&イーノ
ブライアン・イーノ
デヴィッド・ボウイ
ピーター・ガブリエル
デヴィッド・バーン
デヴィッド・シルヴィアン
ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター
トーヤ・ウィルコックス
他多数
公式サイト Robert Fripp's Diary

「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において2003年は第42位、2011年の改訂版では第62位。

来歴 編集

幼少の頃から地元のクラシックギター教室に通っており、同じギター教室には後にキング・クリムゾンを一緒に結成することになるグレッグ・レイクも通っていた。

18歳でボーンマスのマジェスティック・ホテルのジャズバンドの専属ギタリストになり3年間ステージをこなす。前任ギタリストはアンディ・サマーズ[1][2]

1967年、後のキング・クリムゾンのメンバーとなるジャイルズ兄弟(マイケル・ジャイルズピーター・ジャイルズ)との3人で、ジャイルズ・ジャイルズ&フリップを結成して、アルバム1枚を発表する。このバンドを母体に、イアン・マクドナルドとグレッグ・レイクが参加し、キング・クリムゾンへと発展することになった。

1969年のバンド結成から現在に至るまで、ロバート・フリップはキング・クリムゾンにおける主導権を握り続けている。(本人は否定しているが)時に強権的なまでのリーダーシップを執ることがあり、それがバンド内に亀裂を生み出すことがあった。メンバー・チェンジなどの人事的な決定権も握っており、ピート・シンフィールド(作詞担当)やデヴィッド・クロス(ヴァイオリン)の脱退も実質的にはフリップによる解雇だと言われている。

そのリーダーシップと厳格な音楽への取り組みによって1960年代から1970年代のプログレッシブ・ロック・ムーブメントを支え、その語義どおりの音楽スタイルから多くのアーティストに影響を与えてきた。特に、インプロヴィゼーションを主体とした演奏方法で人気を博した。デビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』(1969年)や『レッド』(1974年)における彼のギター・プレイは非常に高く評価されている。しかし本人はそうしたプログレとしてのイメージを刷新するごとく音楽的な変化を求め続けており、キング・クリムゾン自体のサウンドも時代時代によって大胆な変遷をたどった。

キング・クリムゾンでの活動以外にも、様々なアーティストと交流を持ってきた。デヴィッド・ボウイブライアン・イーノピーター・ガブリエルダリル・ホールデヴィッド・バーントーキング・ヘッズ)、アンディ・サマーズ(ポリス)、デヴィッド・シルヴィアンジャパン)と、錚々たる個性派の面々と音楽活動を共にしてきた。1974年のキング・クリムゾン解散後、「もうギターは弾かない」と決心し、半ば音楽業界から引退状態にあったが、デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノの呼び掛けで音楽活動に復帰したという経緯がある。また「フリッパートロニクス」や「サウンドスケイプ」と呼ばれる自身が開発した機材のライブ音源などを収録したソロ・ワークや、リーグ・オブ・ジェントルメンプロジェクトといった外部ユニットの作品も多数発表している。盟友・イーノと同じく、Microsoft Windowsの起動音(イーノはMicrosoft Windows 95、フリップはMicrosoft Windows Vista)の製作を手がけた経験もある。

2012年フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「ユニバーサル・ミュージック社との版権を巡る係争に集中するため」としてミュージシャン活動からは引退したと明かした。しかし翌年9月に係争が決着する目処が立ったとして、ミュージシャン活動への復帰とキング・クリムゾンの再始動を発表した。

音楽的ルーツ 編集

ビートルズジミ・ヘンドリックスのファンで、ビートルズに関しては『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に感銘を受け、ミュージシャンを志したほどだという。ちなみに、初期のクリムゾンは「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」をカバーしていた。ジミ・ヘンドリックスに対しては「天才だ」と称している。ヘンドリックスも、フリップのギター・プレイに感銘を受け、フリップのライブを観た後に楽屋を訪れた際、「心臓に近いほうの左手で握手してくれ」と頼んだという。(ちなみに、フリップもヘンドリックスも左利きである)

その他の趣向としては、20世紀前半に活躍したクラシック音楽の作曲家バルトークも好んでおり、緻密な構造や旋律主体の楽曲など、作風にも影響が見られると言われる。

プレイスタイル 編集

ロックのギタリストとしては珍しく、常に椅子に腰掛けてプレイすることでも知られる。

いわゆるリードギター的な主張には乏しいものの、バッキングとするにも強烈なパッセージや複雑なリックを機械的正確さで弾きこなす、シーケンシャルなプレイが持ち味である。「Fracture(邦題:「突破口」)」などに代表される激しいアルペジオや、エイドリアン・ブリューのバックに徹する時の独特のエフェクト遣い、ライブにおける奔放なインプロヴィゼーションでも知られている。クロマチックスケールの多用も特徴。

使用機材 編集

ギブソンフェルナンデス東海楽器製造などのレスポール・タイプギター。ギターシンセとしての機能とサスティナーがついたものも使用。80年代はGRギターシンセサイザーを使用していた。レコーディングではストラトキャスター等使い分けている。 使用しているアンプに付いてはアルバム『スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー』の時期にはローランド社製のトランジスタアンプJC-120、デジタルアンプがブレイクした時期にはJOHNSON社のデジタルアンプを使用していた。

使用エフェクトはコルグのA-1、A-2、プログラムできるタイプのサンズアンプ等。

使用機材に関連することであるが、レコーディング時、ギターの音をより豊かにするためあらかじめ録音したギタートラックの音をJC-120で再生しさらにその音を録音するという手法を用いていた(1980年代)。フリップはこの手法を「フリッパートロニクス英語版」と呼んでいる。

2014年頃のツアー時のセッティングは、『Music Radar』誌の記事に詳しい。それによると、Roland GR-1 Guitar Synth/US20 splitter、Fractal Audio Systems Axe FX II XL、Sound Sculpture Switchblade、Eventide H8000H3000/3500Eventide EclipseRocktron MIDI Raider、Boss Expression pedalなどを主として使用しているとのことである。

変則チューニング("ニュー・スタンダード・チューニング英語版"と呼ばれる:C、G、D、A、E、G[3]。使用ゲージは、0.052、0.038、0.024、0.016、0.012、0.010)を常用する。始めたきっかけはNYのサウナに入っていた時に思いついたとギタークラフトのインタビュービデオで述べている(雑誌等の記述によると、変則チューニングを用いるようになったのはまだビギナーだった頃、たまたまギターを弾いているのを聴いた近所の人に演奏が下手だと言われ、その後変則チューニングを用いて演奏するようになったとも述べている)。 フリップが用いている変則チューニングの呼称については、フリップ自らがギタークラフト英語版・チューニングと呼んでいた時期がある。

特記事項 編集

ディスコグラフィ 編集

キング・クリムゾン 編集

ソロ名義のアルバム 編集

スタジオ・アルバム
  • 『エクスポージャー』 - Exposure (1979年)
  • 『ゴッド・セイヴ・ザ・クィーン』 - God Save the Queen/Under Heavy Manners (1980年)
  • 『レット・ザ・パワー・フォール』 - Let the Power Fall: An Album of Frippertronics (1981年)
  • 『ザ・ゲイツ・オブ・パラダイス』 - The Gates of Paradise (1998年)
ライブ・アルバム
  • 『1999』 - 1999 Soundscapes: Live in Argentina (1994年)
  • 『レディオフォニックス1995 サウンドスケイプスVol.1 - ライヴ・イン・アルゼンチン』 - Radiophonics: 1995 Soundscapes, Vol.1 (1995年)
  • 『ア・ブレッシング・オブ・ティアーズ1995 サウンドスケイプスVol.2 - ライヴ・イン・カリフォルニア』 - A Blessing of Tears: 1995 Soundscapes, Vol.2 (1995年)
  • 『ザット・フィッチ・パッスィズ1995 サウンドスケイプスVol.3』 - That Which Passes: 1995 Soundscapes, Vol.3 (1996年)
  • 『ノーヴェンバー・スイート』 - November Suite: Soundscapes Live at Green Park Station 1996, Japan (2000年)
  • 『ラヴ・キャンノット・ベアー (ライヴ・インUSA)』 - Love Cannot Bear: Soundscapes - Live in the USA (2005年)
  • At the End of Time: Churchscapes Live in England and Estonia (2007年)

プロジェクト 編集

コラボユニット・アルバム 編集

ジャイルズ・ジャイルズ & フリップ
  • 『チアフル・インサニティ・オブ・ジャイルズ・ジャイルズ & フリップ』 - The Cheerful Insanity of Giles, Giles and Fripp(1968年)
  • 『ザ・ブロンデスベリー・テープス』 - The Brondesbury Tapes (2001年)
  • Metaphormosis (2001年)
フリップ & イーノ
リーグ・オブ・ジェントルメン
  • 『リーグ・オブ・ジェントルメン』 - The League of Gentlemen(1981年) ※ロバート・フリップ名義
  • 『ゴッド・セイブ・ザ・キング』 - God Save the King(1985年) ※ロバート・フリップ/リーグ・オブ・ジェントルメン名義
  • 『スラング・スラング・ゴジンブルクス オフィシャル・ブートレッグ・ライヴ・イン・1980』 - Thrang Thrang Gozinbulx(1996年)
アンディ・サマーズ & ロバート・フリップ
  • 『心象表現』 - I Advance Masked(1982年)
  • 『擬制の映像』 - Bewitched(1984年)
ロバート・フリップ・アンド・ザ・リーグ・オブ・クラフティ・ギタリスツ
  • 『Live!』 - Live!(1986年)
  • The Lady or the Tiger(1986年) ※Toyah & Fripp Featuring The League Of Crafty Guitarists名義
  • Live II(1991年)
  • 『ショウ・オブ・ハンズ』 - Show of Hands(1991年)
  • 『インターギャラクティック・ブギー・エクスプレス ライヴ・イン・ヨーロッパ1991』 - Intergalactic Boogie Express - Live In Europe 1991(1995年)
サンデイ・オール・オーヴァー・ザ・ワールド
  • 『ニーリング・アット・ザ・シュライン』 - Kneeling at the Shrine(1991年)
デヴィッド・シルヴィアン & ロバート・フリップ
ロバート・フリップ・ストリング・クインテット
  • 『ザ・ブリッジ・ビトウィン』 - The Bridge Between(1993年)
FFWD(ロバート・フリップ、Thomas Fehlmann、Kris Weston、Alex Paterson)
  • FFWD(1994年)
ビル・リーフリン/ロバート・フリップ/トレイ・ガン
  • The Repercussions Of Angelic Behavior(1999年)
フェイマン & フリップ
  • A Temple in the Clouds(2000年)
トラヴィス & フリップ
  • 『スレッド』 - Thread(2008年)
  • 『ライヴ・アット・コヴェントリー・カテドラル』 - Live at Coventry Cathedral(2010年)
  • Discretion(2012年)
  • Follow(2012年)
  • 『ビトウィーン・ザ・サイレンス 』 - Between The Silence(2018年)
デヴィッド・クロス & ロバート・フリップ
  • 『スターレス・スターライト』 - Starless Starlight (2015年)

参考文献 編集

  • エリック・タム『ロバート・フリップ ― キング・クリムゾンからギター・クラフトまで』(JICC出版局、塚田千春訳)

脚注 編集

  1. ^ 『アンディ・サマーズ自伝 ポリス全調書』2007年ブルース・インターアクションズ P62~65
  2. ^ https://rodolphepilaert63.files.wordpress.com/2011/07/14283738-eric-tamm-robert-fripp-from-crimson-king-to-crafty-master.pdf Eric TammROBERT FRIPP FROM CRIMSON KING TO CRAFTY MASTER 27ページ
  3. ^ レギュラー・チューニング英語版はE、A、D、G、B、E
  4. ^ http://www.guitarcraft.com/