ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 (メンデルスゾーン)

ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲ドイツ語Konzert für Violine, Klavier und Streicherニ短調MWV. O4は、フェリックス・メンデルスゾーン1823年に作曲したヴァイオリンピアノのための協奏曲(二重協奏曲)である。伴奏は弦楽合奏であるが、管弦楽版も存在している。滅多に演奏されないがために知名度もかなり少ない作品であるが、近年では録音がいくつか出ており、演奏動画を見ることもできる。1960年に初めて出版された。

音楽・音声外部リンク
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Mendelssohn - Concerto for Violin, Piano and String Orchestra - Liya Yakupovaの独奏Vn、Sona Barseghyanの独奏P、セルゲイ・スムバチャン(Sergey Smbatyan)指揮アルメニア国立ユース管弦楽団(State Youth Orchestra of Armenia)による演奏。アルメニア国立ユース管弦楽団公式YouTube。
Felix Mendelssohn-Bartholdy:Double Concerto For Violin And Piano - Alexi Kenneyの独奏Vn、Constantin von Knebel Doeberitzの独奏P、 Hans-Georg Dechange指揮Orchester der Hofheimer Akademieによるフルオーケストラ版の演奏。当該P独奏者自身の公式YouTube。

概要 編集

メンデルスゾーンが作曲した唯一、2つの独奏楽器が伴う協奏曲(2台のピアノのための協奏曲2曲を除けば)であるが、作曲の経緯については不明な点が多く、1823年5月6日に完成されたことしか知られていない。ベルリンのメンデルスゾーンの自宅でのサロン・コンサートで演奏するために作曲された作品で、友人でヴァイオリニストエドゥアルト・リッツドイツ語版のヴァイオリンと、メンデルスゾーンか姉のファニーのピアノ・ソロ(またはクラヴィーア)を想定して書かれたと推定される。同年5月25日にリッツと共に自宅で本曲を初演した後、メンデルスゾーンは管楽器とティンパニを追加したフルオーケストラ版を作製した。公式初演は同年7月3日にベルリンのシャウシュピールハウス(ベルリン・コンツェルトハウス)で行われた[1]

本作を作曲した背景には、1821年にメンデルスゾーンが短期間学習したヨハン・ネポムク・フンメル同じ編成の協奏曲の影響が指摘されている[2]。その他にも、愛奏していたカール・マリア・フォン・ウェーバーピアノ小協奏曲ヴィオッティロードロドルフ・クレゼールなどのヴァイオリニストから学んだヴァイオリン技法(ポルタ―トスタッカートポルタメント)も指摘されている[3]

自筆譜はベルリン国立図書館に所蔵されている。

編成 編集

独奏ヴァイオリン、独奏ピアノ、弦五部。任意でフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ[4]

なお、管弦楽版は1997年になってブライトコプフ・ウント・ヘルテルからメンデルスゾーン全集に収録される形で出版され、1999年2月27日ダルムシュタットでLatica Honda-Rosenbergのヴァイオリン独奏、Beatrice Bertholdのピアノ独奏、クリスティアン・ルドルフ・リーデル指揮のKammerphilharmonie Merckにより世界初演された[2]。このバージョンは上記の外部リンクで聞くことができる。

構成 編集

3楽章から構成され、演奏時間は約36分。

音楽・音声外部リンク
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  第1楽章 アレグロ
  第2楽章 アダージョ
  第3楽章 アレグロ・モルト
Anna Savkinaの独奏Vn、Anna Denisovaの独奏P、ミッシャ・ラフレフスキー(Misha Rachlevsky)指揮クレムリン室内管弦楽団(Chamber Orchestra Kremlin)による演奏。当該Vn独奏者自身の公式YouTube。
第1楽章 アレグロ

ニ短調、4分の4拍子。トゥッティの提示部からソロの提示部へと続く協奏ソナタ形式楽章で、全曲中最も長い(全529小節)。対位法が駆使され、すでに書き終えていた弦楽のための交響曲を思わせる書法。展開部はピアノに支えられたヴァイオリンのレチタティーヴォ風のパッセージから始まる。曲の終わりには作曲者によるカデンツァが付けられている。フルオーケストラ版はティンパニが追加されているため、弦楽版とは印象が変化する。

第2楽章 アダージョ

イ長調、4分の3拍子。冒頭の主題が三部形式的に転調・展開され、細やかなピアノに支えられてヴァイオリンが歌を詠う。

第3楽章 アレグロ・モルト

ニ短調、4分の4拍子。ロンドないしロンド・ソナタ形式とも考えられるが、形式的にはより自由な発想が目立つ楽章。途中でヨハン・ゼバスティアン・バッハコラールが引用されている。

脚注 編集

  1. ^ Todd, R. Larry (2003). Mendelssohn – A Life in Music. New York: Oxford University Press. p. 112. ISBN 0-19-511043-9 
  2. ^ Todd, R. Larry (2008). Mendelssohn Essays. New York: Routledge. p. 169. ISBN 978-0-415-97814-9 
  3. ^ Brown, Clive (2008). Mendelssohn in Performance. Bloomington, Indiana: Indiana University Press. p. 68. ISBN 978-0-253-35199-9 
  4. ^ [1]

外部リンク 編集