ヴァリオLF
ヴァリオLF(VarioLF)は、チェコの企業グループであるアライアンスTWが製造する部分低床式路面電車車両。チェコやスロバキアを始めとした各国へ向けて製造されている。この項目では、旧型車両から一部機器を流用して製造されるヴァリオLFR(VarioLFR)についても解説する[1][2][4]。
ヴァリオLF VarioLF ヴァリオLFRVarioLFR | |
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基本情報 | |
製造所 | アライアンスTW |
製造年 | 2005年 - |
主要諸元 | |
軸配置 | Bo'Bo' |
軌間 | 1,000 mm、1,435 mm、1,524 mm |
電気方式 |
直流600 V (架空電車線方式) |
最高速度 | 65.0 km/h |
車両定員 |
着席33人 立席58人(乗車密度4人/m2時) 最大149人(乗車密度8人/m2時) |
車両重量 | 21.2 t |
全長 | 16,200 mm(連結器含) |
車体長 | 15,100 mm |
全幅 | 2,480 mm |
全高 | 3,645 mm(集電装置含) |
車体高 | 3,185 mm |
床面高さ |
860 mm(高床部分) 350 mm(低床部分) (低床率36 %) |
車輪径 | 700 mm |
固定軸距 | 1,900 mm |
台車中心間距離 | 7,500 mm |
軸重 | 7.95 t |
主電動機 | 誘導電動機、直流電動機 |
主電動機出力 | 90 kw |
出力 | 360 kw |
制御方式 | VVVFインバータ制御、電機子チョッパ制御 |
制動装置 | 回生ブレーキ、ディスクブレーキ、電磁吸着ブレーキ |
備考 | 主要数値は[1][2][3]に基づく。 |
概要
編集アライアンスTWは、チェコに本社を置く3つの企業(プラゴイメックス、クルノフ修理機械工場、VKVプラハ)によって構成される、路面電車の製造・改造を手掛ける企業グループである。設立当初はチェコスロバキア時代に導入された路面電車車両であるタトラカーの機器更新および台車や機器を流用した車両の製造を行っていたが、2004年に製造認可が下りて以降は台車も含め完全な新造車両の製造を開始した他、後年には電気機器や車体構造をこの車両に合わせた機器流用車両の製造も実施されるようになった。これがヴァリオLF(新造車両)およびヴァリオLFR(機器流用車両)である[1][5][6]。
1両での運行が可能な片運転台の路面電車車両(単車)で、連結器が設置されているため、最大2両編成(付随車連結時は最大3両編成)での運用が可能である。全溶接構造を取り入れた軽量鋼製の車体は中央部が床上高さ350 mmの低床構造になっており、車内全体における36 %に該当する。この低床部分にある乗降扉は両開き式のプラグドアである一方、車体両端の高床部分(床上高さ850 mm)にも2枚引戸式の扉が存在する。座席はクロスシートで、低床部分には車椅子スペースが1箇所設置されている[1]。前面はチェコのインダストリアルデザイナーであるフランティシェク・ペリカーンが手掛けたデザインが用いられている[1][2][7]。
台車はクルノフ修理機械工場が製造するボギー台車の「コンフォート(KOMFORT)」が使用されており、軸ばねにはゴム結合金属ばね(MEGI)が、枕ばねには衝撃吸収材を備えたコイルばねが用いられる。この台車には主電動機が2基搭載されており、自在継手やハイポイドギアを介して車軸に動力が伝わる構造となっている(垂直カルダン駆動方式)。また、コンフォートは従来のタトラカーの車軸を始めとする台車の部品を流用する事も可能な構造であり、ヴァリオLFRの製造時には旧型車両であるタトラT3の車軸などの部品が再利用されている。車体が低床構造である事から、制御装置など主要な電気機器については屋根上に設置されている[8][1][2][9]。
車種
編集電気機器や製造工程の違いにより、ヴァリオLFおよびヴァリオLFRには以下の4種類が存在する[8][10][11][12][13]。
- ヴァリオLF.E(VarioLF.E) - 新造車。電気機器はチェコ・セゲレツ(Cegelec)製の「TVユーロパルス(TV Europulse)」(誘導電動機、VVVFインバータ制御装置)を使用。
- ヴァリオLF.S(VarioLF.S) - 新造車。電気機器はチェコのシュコダ電気製のもの(直流電動機、電機子チョッパ制御装置)を使用。
- ヴァリオLFR.E(VarioLFR.E) - タトラT3からの機器流用車。電気機器は「TVユーロパルス」を使用。
- ヴァリオLFR.S(VarioLFR.S) - タトラT3からの機器流用車。電気機器はシュコダ電気製のものを使用。
導入都市
編集2020年現在、ヴァリオLFの導入が実施されている都市は以下の通りである[4][14]。
ヴァリオLF・ヴァリオLFR 導入都市一覧 | ||||
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形式 | 導入国 | 都市 | 導入車両数 | 備考・参考 |
ヴァリオLF.E | チェコ | オロモウツ (オロモウツ市電) |
3両 | [15][16] |
ヴァリオLF.S | ウズベキスタン | タシュケント (タシュケント市電) |
20両 | 2016年の路線廃止後はサマルカンド市電へ全車譲渡[17][18] |
ヴァリオLFR.E | チェコ | オストラヴァ (オストラヴァ市電) |
47両 | [19] |
ブルノ (ブルノ市電) |
32両 | [20] | ||
オロモウツ (オロモウツ市電) |
7両 | [15] | ||
ロシア連邦 | モスクワ (モスクワ市電) |
1両 | [21] | |
ヴァリオLFR.S | チェコ | オストラヴァ (オストラヴァ市電) |
16両 | [19] |
プルゼニ (プルゼニ市電) |
26両 | [22] | ||
オロモウツ (オロモウツ市電) |
10両 | [15] | ||
モスト リトヴィーノフ (モスト・リトヴィーノフ市電) |
2両 | [23] | ||
スロバキア | コシツェ (コシツェ市電) |
1両 | [24] |
ギャラリー
編集関連形式
編集- タトラT3R.PLF、タトラT3R.SLF - タトラT3の機器流用形式。ヴァリオLFやヴァリオLFRと同型の部分超低床車体である一方、前面形状はT3と同型のデザインが使用されている。ヴァリオLFの車種の1つと見做される場合もある[1][2]。
- ヴァリオLF プラス - 台車を「コンフォート・プラス(KOMFORT plus)」に変更し、高床部分の床上高さをヴァリオLFから下げた改良型車両[25]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c d e f g “Tramvaj VarioLF”. Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ a b c d e “TRAM VARIO” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Vario LF2” (PDF). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ a b “References” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ 「チームで地位の強化を図るチェコのトラムメーカー」『海外鉄道技術情報 (World Railway Technology)』第10巻第1号、鉄道総合技術研究所、2019年1月、8頁、2020年3月4日閲覧。
- ^ “Company Profile” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年3月4日閲覧。
- ^ Libor Hinčica (2019年7月11日). “JEDINOU ČESKOU TRAMVAJ T3R.EV S DESIGNEM „PELIKÁN“ ČEKÁ PŘESTAVBA” (チェコ語). Československý Dopravák. 2020年3月4日閲覧。
- ^ a b Zpráva o výsledcích šetření příčin a okolností vzniku mimořádné události (PDF) (Report). Drážní inspekce. 1 November 2012. p. 29. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “BOGIES” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Pragoimex VarioLF”. VKV Praha s.r.o.. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “В чешском Оломоуце решили модернизировать старый трамвай «Tatra T3»”. Пассажирский Транспорт (2019年5月12日). 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Pragoimex VarioLF” (スロバキア語). imhd.sk.. 2020年3月4日閲覧。
- ^ Libor Hinčica; Jan Šlehofer (2010). “Tramvaje VarioLF v Plzni”. Československý dopravák IX. (4): 34–37.
- ^ “Další nové tramvaje vyjedou do ulic”. Město Olomouc (2016年11月23日). 2020年3月4日閲覧。
- ^ a b c “Olomouc Urban Transport Company” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Trams VarioLF.E” (英語). VKV Praha s.r.o.. 2020年3月4日閲覧。
- ^ Radim Klement (2016年10月20日). “NÁVRAT TRAMVAJÍ DO UZBEKISTÁNU”. Československý Dopravák. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Tashkent - Samarkand Uzbekistan” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ a b “Dopravní podnik Ostrava a.s.” (チェコ語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Brno Urban Transport Company” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “TRZ - Moscow - Russia” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Olomouc Urban Transport Company” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Dopravní podnik měst Mostu Litvínova, a.s” (チェコ語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Kosice Urban Transport Company (Slowakia)” (英語). Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。
- ^ “Tramvaj VarioLFplus”. Pragoimex. 2020年3月4日閲覧。