ヴァン・オーベルの定理

ヴァン・オーベルの定理(Van Aubel's theorem)とは四角形に関する幾何学の定理である。この定理は1878年に出版された「HH van Aubel」にちなんで命名された。

オーベルの定理ともいう。

定理 編集

任意の四角形の各辺に外接する正方形で、対向する正方形の重心を結んだ2線分は、長さが等しく、直交する。

証明 編集

四角形 ABCD に対して,頂点 A を原点 O とする。ベクトル AB を複素数 2a に、ベクトル BC を複素数 2b に、ベクトル CD を複素数 2c に、ベクトル DA を複素数 2d に対応させる。ここで複素数の係数2は計算上の便宜的なものである。また、正方形の中心については、ベクトル AP を複素数 p に、ベクトル AQ を複素数 q に、ベクトル AR を複素数 r に、ベクトル AS を複素数 s に対応させる。四角形 ABCD は閉じているから、ベクトルを計算すると

 

つまり、

 

となる。この条件で証明することになる。 点 P は点 A から点 B に向かって半分進み、90度方向を変えて半分だけ進むから、複素数 p は、

 

となる。ここに、i は虚数単位で、i²=-1 である。複素数は極形式 (r,θ) でも表現され、

i=cosπ/2+i sinπ/2=eπ/2i

であるから、a に i をかけるということは半径r=1、偏角π/2の複素数をかけるということであり、拡大縮小をともなわない回転移動ということになる。

同様にして、複素数 q,r,s は次のようになる。

 
 
 

点 Q から点 S に向かうベクトルを A 、点 P から点 R に向かうベクトルを B とすると,A は s-q ,B は r-p であるから、

 
 

となる。証明すべきは、線分 QS と線分 PR の長さが等しく、互いに直交していることであるから、複素数 A と B の関係が、

 

を満たすことである。または、この式の両辺に i をかけて整理すると、

 

となり、この式で証明してもよい。実際に計算すると、

 
 
 

となる。

なお、フィンスラー・ハドウィガーの定理を用いた証明もある。

出典 編集