一ノ関 圭(いちのせき けい、1950年 - )は、日本漫画家秋田県大館市出身[1]。女性。秋田県立大館鳳鳴高等学校東京藝術大学油絵科卒。大学在学中に投稿した「らんぷの下」が第14回ビッグコミック賞を受賞(夢屋日の市名義)。一関圭名義をへて一ノ関圭名義に。

作風 編集

江戸明治を舞台に、歴史の波に埋もれた人物の懸命な生き様を描く骨太な作風が特徴である。

また非常に絵の上手い漫画家としても知られ、吾妻ひでおは『DEATH NOTE』での小畑健の絵について「幻の漫画家・一ノ関圭のような自在さはない」[2]との感想を述べ、竹熊健太郎は「美術をテーマにした漫画で納得行く漫画内絵画を描けていたのは、俺の知る範囲では一ノ関圭が筆頭」[3]と語るなど、その画力の高さは現在でも伝説となっている。

作品リスト 編集

  • らんぷの下 - 1975年、ビッグコミック掲載
  • だんぶりの家 - 1975年、ビッグコミック掲載
  • ドライフラワー - 1976年、ビッグコミック掲載
  • 寒雷 - 1976年、ビッグコミック掲載
  • 俺が愛した女 - 1976年、ビッグコミック掲載
  • 黒まんとの死 - 1976年、ビッグコミック掲載
  • すがの幸福 - 1977年、ビッグコミック掲載
  • 縦走路 - 1977年、ビッグコミック掲載
  • 女傑往来 - 1977年、ビッグコミック掲載
  • 裸のお百 - 1978年、ビッグゴールド掲載
  • 女傑走る - 1978年、ビッグコミック掲載
  • 陽炎街 - 1979年、ビッグコミック掲載
  • 美食三昧 - 1979年、ビッグゴールド4掲載
  • 舞茸 - 1980年、ビッグゴールド6掲載(原作:白土三平)
  • 茶箱広重 - 1981年、ビッグコミック掲載
  • 水茎 - 1982年、ビッグコミック掲載
  • ほっぺたの時間 - 1986年、ビッグコミック掲載
  • クレソン - 1992年、ビッグコミック
  • クレソン(完全版) 1997年、ビッグコミックエクストラ掲載
  • 牡丹芍薬 - 2002年、ビッグコミックスペシャル増刊掲載[4]
  • 鼻紙写楽 - 2003年〜2009年、ビッグコミック1掲載(全8話/未完)

書誌情報 編集

  • らんぷの下 小学館ビッグコミックス〉 1980年6月初版発行
    • 収録作品 らんぷの下、だんぶりの家、女傑往来、すがの幸福、ドライフラワー
  • 裸のお百 小学館〈ビッグコミックス〉 1980年7月初版発行、ISBN 4-09-180262-1
    • 収録作品 裸のお百、寒雷、女傑走る、縦走路、黒まんとの死
  • 茶箱広重 小学館〈ビッグコミックス〉 1983年4月初版発行、ISBN 4-09-180265-6
    • 収録作品 茶箱広重、俺が愛した女、陽炎街
  • 江戸のあかり ナタネ油の旅と都市の夜 歴史を旅する絵本(著:塚本学岩波書店 1990年2月初版発行、ISBN 4-00-110646-9
  • 作品集『らんぷの下』 小学館叢書 1992年2月初版発行、ISBN 4-09-197281-0
    • 小学館文庫 2000年6月初版発行、ISBN 4-09-192461-1
      • 収録作品 - らんぷの下、だんぶりの家、ドライフラワー、寒雷、すがの幸福、女傑往来、裸のお百、女傑走る
  • 作品集『茶箱広重』 小学館叢書 1992年3月初版発行、ISBN 4-09-197282-9
    • 収録作品 - 茶箱広重、俺が愛した女、黒まんとの死、縦走路、陽炎街、水茎、ほっぺたの時間、舞茸
    • 小学館文庫 2000年7月初版発行、ISBN 4-09-192462-X
      • 収録作品 - 茶箱広重、俺が愛した女、黒まんとの死、縦走路、陽炎街、水茎、ほっぺたの時間
  • 絵本 夢の江戸歌舞伎(著:服部幸雄) 岩波書店 2001年4月初版発行、ISBN 4-00-110648-5
  • 月刊たくさんのふしぎ 2002年5月号 おおふじひっこし大作戦(塚本こなみ:文 一ノ関圭:絵) 福音館書店
    • おおふじひっこし大作戦 (たくさんのふしぎ傑作集) 単行本 福音館書店 2016年3月
  • 月刊たくさんのふしぎ 2012年5月号 琉球という国があった(上里隆史:文/富山義則:写真/一ノ関圭:絵) 福音館書店
  • 鼻紙写楽 小学館〈ビッグコミックススペシャル〉 2015年3月20日初版発行、ISBN 4091870805
    • 収録作品 - 鼻紙写楽(8話+書き下ろし1話)、初鰹(「牡丹芍薬」改題)

影響 編集

漫画家の沙村広明は『無限の住人』連載開始後に、一ノ関圭の漫画を読み「自分が『漫画の理想』と思っていることを見た」[5]と語るなど、心の師として一ノ関の名前を挙げている[6]

唐沢なをきは『電脳なをさん』にて「きゅーぶの下」[7]という題の回を描いており、これは一ノ関の『らんぷの下』が雑誌掲載された当時の形式を模したパロディとなっている。

受賞歴 編集

脚注 編集

  1. ^ 「大館出身の漫画家 一ノ関さんのコーナー設置 栗盛図書館 友人が作品寄贈」(北麓新聞2023年5月5日記事)
  2. ^ 吾妻ひでお『うつうつひでお日記』角川書店、2006年、ISBN 978-4048539777、123頁
  3. ^ 竹熊健太郎『Twitter / 竹熊健太郎(京都): 美術をテーマにした漫画で納得行く漫画内絵画を描けてい ...』ツイッター、2011年8月5日
  4. ^ 2001年夏の雑誌では「みぢか夜の夢」というタイトルで作品掲載が予告されていた。
  5. ^ こじままさき「『無限の住人』沙村広明インタビュー」『Quick Japan』vol.38、120頁、太田出版、2001年
  6. ^ 「沙村広明 筆記インタビュー」『ぱふ』1995年6月号、雑草社
  7. ^ 唐沢なをき『電脳なをさん』第269回 「きゅーぶの下」、アスキー、2002年、ISBN 978-4756142177
  8. ^ “手塚治虫文化賞大賞は「鼻紙写楽」&「よつばと!」、新生賞に安藤ゆき”. コミックナタリー. (2016年4月27日). https://natalie.mu/comic/news/185186 2016年4月27日閲覧。 
  9. ^ “一ノ関圭「鼻紙写楽」が第45回日本漫画家協会賞の大賞に、「かりあげクン」も”. コミックナタリー. (2016年5月9日). https://natalie.mu/comic/news/186431 2016年5月9日閲覧。