一本背負投
一本背負投(いっぽんせおいなげ)は、柔道の投技で手技16本の一つ。一本背負い(いっぽんぜおい)は通称。
一本背負投 | |
---|---|
![]() 一本背負投のビデオクリップ | |
分類 | 投技 |
下位分類 | 手技 |
講道館 | 有 |
技名 | |
英語 | One-arm shoulder throw |
概要編集
前もしくは右(左)前隅に崩しながら、前回りさばきで相手の懐に踏み込む、または、後ろ回りさばきで相手を引き出し、体を沈め、右(左)腕、すなわち、釣り手で、相手の右肩をつかむか挟むことで固定し、受けの体を背負い上げて、引き手で引いて投げる技。
引き手は相手の上腕の辺りを持つのが一般的であるが、襟を持ってしまう場合もある。
また、木村政彦が考案したバリエーションで、技を掛ける際に釣り手で相手の膝へ外無双を掛けるというものもある。
昭和では木村政彦、猪熊功および岡野功、平成では古賀稔彦の得意技としても有名。
かつて背負投の一部として分類されていたが、既に分かれていた国際柔道連盟の分類法に合わせる形で1997年(平成9年)に改正され、かつての「背負投」は「背負投」(双手背負)と「一本背負投」に分かれた。
前袖を掴んで、膝のバネを使って、うまく技が掛かれば、片手(片腕)で投げる事も出来る。
投の形編集
投の形の手技の2本目にある「背負投」が、実際には一本背負投の技法である。
上記の名称の改正前に制定されたため、この名称になっている。
受の振り上げた右拳を左手で受け止め、そのまま相手の右腕を取り一本背負投に投げる。
回転一本背負投(逆一本背負投)編集
回転一本背負、逆一本背負ともいう。
左組の場合、相手の右襟を左釣り手で掴んだ状態から、右引き手は相手の釣り手側の奥袖を掴んで、自らの体を右足前回りさばきか左足後ろ回りさばきで右に一回転させながら、釣り手側に投げる。
野村忠宏は、右組でのこの技を背負投の逆技として使っており、谷本歩実に至っては、野村以上に袖釣込腰と共に使うパターンが多かった。
背負落にも、回転(逆)背負落の技術があり、韓国の代表選手が編み出し、それ以降、頻繁に使っていた事から、通称:韓国背負(い)と呼ばれていたが、現在は背負投(逆背負投)として記録される。
この韓国背負(い)の応用として編み出された。
柔道以外での類似の技編集
天神真楊流編集
柔道の基になった、天神真楊流の乱捕技に背負投という全く同じ技が存在する。
相撲編集
大相撲にも「一本背負い」という同様の形の決まり手がある。
相手の懐に入って相手の片腕を両手で抱え、肩に担いで自分の前方に投げ倒す大技であるが、相撲においては相手に背を見せることは送り出しでの負けの可能性が高く、そうでなくても相手を投げる途中にひざなどをついてしまうと即負けとなるため、滅多に成功することはない。また、力士は体重が重く簡単には自分の背中に相手を乗せることができないため、この技を掛けようとすること自体ほとんどない。関取での主なものは以下の通り。
- 1974年11月場所12日目、金城が玉ノ冨士に対して一本背負いを決めて勝利。
- 1986年5月場所11日目、十両の取組で魄龍が栃纒に対して決める。
- 1986年9月場所13日目、十両の取組で魄龍が三杉磯に対して決める。
- 1987年5月場所3日目、十両の取組で魄龍が高道に対して決める。魄龍は1年間で3度決める。
- 2000年11月場所7日目、十両の取組で濵錦が玉ノ国に対して勝利。
- 2000年11月場所14日目、魁皇が武蔵丸相手に不完全な形ながらも決める。幕内では26年ぶり。
- 2003年7月場所4日目、十両の取組で豪風が千代天山に対して決めている
- 2004年5月場所千秋楽、豪風が金開山に対して勝利。
- 2009年9月場所千秋楽、十両の取組で白馬が土佐ノ海に対して決める。
- 2011年9月場所5日目、磋牙司が栃乃若に対して勝利。
- 2014年1月場所12日目、里山が栃乃若に対して勝利。
- 2017年1月場所8日目、豪風が魁聖に対して勝利[1]。
中学時代まで柔道をやっていた豪風はこの技を得意としている。幕内で一本背負いを複数回決めた力士は2017年現在豪風が唯一である[2]。
レスリング編集
レスリングにおいては、アームスローと呼ばれる。類似の技として、サルト(巻き込み一本背負い、巻き投げ)が存在する。
その他の格闘技編集
一本背負いの欠点として、相手に背を向けてしまう点が挙げられる。
このため、相手を投げただけでは勝ちにならず、バックを取られると圧倒的に不利になる総合格闘技、ブラジリアン柔術では一本背負いは、投げに失敗した時のリスクが大きくあまり見られない。
脚注編集
- ^ 『相撲』2014年3月号73頁には「決まり手係の甲山(元幕内・大碇)本人はとったりだと思ったようだが説明できれば一本背負いであるとも取れるので、甲山は会場を盛り上げるために一本背負いと宣告した」と記述されている。
- ^ “豪風13年ぶり一本背負い「柔道でも一本でしょう」”. 日刊スポーツ (2017年1月15日). 2017年1月15日閲覧。
- ^ 醍醐敏郎著 『講道館柔道投技 下 真捨身技・横捨身技』