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一貫性 (単位系)

ジェームズ・クラーク・マクスウェル。一貫性のあるCGS単位系の概念を発展させ、メートル法に電気の単位を含むように拡張する際に主役を演じた。

一貫性(いっかんせい)のある組立単位とは、その単位系における基本単位冪乗の、1以外の比例定数を含まない積である組立単位のことである。基本単位以外の全ての単位が一貫性のある組立単位である単位系を「一貫性のある単位系」と言う[1]。「一貫性のある」は「コヒーレント(coherent)な」とも言い、一貫性のことを「コヒーレンス(coherence)」とも言う。

一貫性の概念は、19世紀中頃にケルヴィン卿ウィリアム・トムソンジェームズ・クラーク・マクスウェルらによって発展し、英国科学振興協会英語版によって奨励された。この概念はまず、1873年と1875年に、CGS単位系メートル法)とFPS単位系ヤード・ポンド法)に導入された。1960年の国際単位系(SI)は、一貫性のある単位系として設計された。

目次

基本概念編集

一貫性のある単位系である国際単位系(SI)では、の単位は「1秒につき1ジュール」と定義される「ワット」である[2]。一貫性のない米国慣用単位(ヤード・ポンド法)では、力の単位は「1秒につき550フィート重量ポンド」と定義される「馬力」であり、550という比例定数が入っている。同様に、ガロンは、1立方ヤードほかいずれの長さの単位の立方とも一致せず、何らかの比例定数を伴う。

メートル法以前編集

人が考案した最も初期の単位は、単位の間で互いに関係を持っていなかった。計測単位が標準化されるようになると、初期の単位のうちのいくつかは共同体をまたがって同じ値を持ち、同じの異なる単位(例えばフィートとインチ)は一定の比率を保つようになった。しかし、容積と質量の単位がに結びつけられていた古代中国は別として、異なる種類の量に関係を持たせた例は、啓蒙時代以前にはほとんど痕跡がない[3]

同じ種類の量編集

長さの計測の歴史は、中東の初期の文明(紀元前10000年 – 紀元前8000年)にまで遡る。考古学者は、メソポタミア英語版インド英語版ユダヤやその他の文化で使用された度量衡を再構築することができた。考古学やその他の分野の証拠により、多くの文明において、同じ量の異なる単位の間の比率が整数になるように調節されたことが示されている。古代エジプト英語版のような多くの初期の文化においては、必ずしも2、3、5の倍数が使われていたわけではない。例えば、エジプトの「王のキュビット(meh niswt)」は28フィンガー(djeba)、7パーム(shesep)である[4]。紀元前2150年、アッカド帝国英語版の皇帝ナラム・シンはバビロニアの度量衡を整理し、多くの単位の間の比率が2、3、5の倍数となるように調整した。例えば、1 shu-siフィンガー)は6 sheバーリーコーン)、1 kushキュビット)は30shu-siである[5]

 
トルコ・イスタンブール考古学博物館に展示されている、紀元前3千年紀にメソポタミアニップルで使われていた物差し英語版。様々な単位の目盛りが刻まれている。

別の種類の量編集

同一規準で計ることのできない(Non-commensurableな)量は、異なる次元を持っている。これは、それらの量の加減算が意味をなさないという意味である。例えば、ある物体の体積質量を加えることは、物理学的には何の意味も持たない。しかし、それらの量やその冪乗を掛けたり割ったりすることで、新しい量(およびその単位)を作り出すことができる。例えば、SIにおける力の単位はニュートンであり、それは「kg m s−2」と定義される。一貫性のある組立単位は、他の単位の掛け算と冪乗だけによって定義され、(1以外の)比例定数を含まない。SIの圧力の単位パスカルは「kg m−1 s−2」と定義される一貫性のある組立単位であるが、「100000 kg m−1 s−2」と定義されるバールはそうではない。

所定の単位の一貫性は基本単位の定義に依存することに注意すべきである。仮にメートルの定義が現行のものの100000倍であったなら、バールの方が一貫性のある組立単位となる。しかし、全ての基本単位を同じ比例定数によって再定義したならば、一貫性のある単位は一貫性のあるままであり、そうでない単位はそうでないままである。

メートル法編集

合理的な単位系と水の利用編集

一貫性の概念は、19世紀の第3四半世紀にメートル法にもたらされた。当初のメートル法には一貫性がなかった。例えばリットルは0.001 m3であり、アールは100 m2である。しかし、質量と長さの単位をの特性を通じて関係づけたのは、一貫性の先駆けと言えるものであった。すなわち、グラムは融点における1立方センチメートルの水の質量として定義された[6]

CGS単位系には、エネルギーの単位が2つあった。力学に関連したエルグと、熱エネルギー英語版に関連したカロリーである。エルグのみ、基本単位との一貫性のある関係を持っていた(g·cm2/s2)。

対照的に、国際単位系は当初から一貫性を持った単位系として設計された。その結果、SIのエネルギーの単位はジュールだけとなった[7]

次元に関連した一貫性編集

ジェームズ・クラーク・マクスウェルらによる業績である。

メートル法の各々の変種はいずれも一貫性がある単位系である。各種の組立単位は比例定数を伴わずに基本単位に直接関係がある[1]。一貫性のある単位系では、例えば力・エネルギー・仕事に関する以下の方程式に定数の因数を含める必要がない。

力 = 質量 × 加速度
エネルギー = 力 × 距離
仕事率 = エネルギー / 時間

一旦一組の一貫性のある単位系が定められたら、それらの単位を使う物理学の他の関係は自動的に真である。一貫性のある単位で表されるとき、アインシュタインの質量とエネルギーの方程式(E = mc2)は無関係な定数を必要としない[8]

アイザック・アシモフは「CGS単位系では、力の単位は、1 gm(グラム)の質量に1 cm/sec2の加速をもたらすと記述される。従って、力の単位は1 cm/sec2に1 gmを掛けた物である」と書いた[9]。この文章の2つの文は、それぞれ独立した声明である。1文目は定義であるが、2文目はそうではない。1文目は、運動の法則の比例定数が1であるということを意味する。2文目は、それが無次元であることを意味する。アシモフは、それが純粋な「数字の1」であるということを証明するために、両方の文章を一緒に使用している。

一貫性のある単位の一覧編集

SI編集

SIの一貫性のある単位の一例

CGS編集

CGS単位系の一貫性のある単位の一例

  • 加速度ガル) = 長さ(センチメートル) ÷ 時間2(s2)
  • 力(ダイン) = 質量(グラム) × 加速度(m/s2)
  • エネルギー(エルグ) = 力(ダイン) × 長さ(センチメートル)
  • 圧力(バリ) = 力(ダイン) ÷ 面積(cm2)
  • 粘度ポアズ) = 質量(グラム) ÷ (長さ(センチメートル) × 時間(秒))
  • 動粘度ストークス) = 面積(cm2)÷ 時間(秒)

FPS編集

FPS単位系の一貫性のある単位

関連項目編集

出典編集

  1. ^ a b Working Group 2 of the Joint Committee for Guides in Metrology (JCGM/WG 2). (2008), International vocabulary of metrology — Basic and general concepts and associated terms (VIM) (3rd ed.), 国際度量衡局 (BIPM) on behalf of the Joint Committee for Guides in Metrology, 1.12, http://www.bipm.org/utils/common/documents/jcgm/JCGM_200_2008.pdf 2012年4月12日閲覧。 
  2. ^ SI Brochure, Table 4, pg 118
  3. ^ McGreevy, Thomas (1995). Cunningham, Peter. ed. The Basis of Measurement: Volume 1—Historical Aspects. Chippenham: Picton Publishing. Chapter 1: Some Ancient Units. ISBN 0 948251 82 4. 
  4. ^ Clagett, Marshall (1999). Ancient Egyptian science, a Source Book. Volume Three: Ancient Egyptian Mathematics.. Philadelphia: アメリカ哲学協会英語版. p. 7. ISBN 978-0-87169-232-0. http://books.google.com/books?id=8c10QYoGa4UC 2013年5月2日閲覧。. 
  5. ^ Old Babylonian Weights and Measures”. セント・ローレンス大学英語版 (2001年). 2013年5月2日閲覧。
  6. ^ La loi du 18 Germinal an 3 la mesure [républicaine de superficie pour les terrains, égale à un carré de dix mètres de côté]” [The law of 18 Germanial year 3 "The republican measures of land area equal to a square with sides of ten metres"] (French). Le CIV (Centre d'Instruction de Vilgénis) - Forum des Anciens. 2010年3月2日閲覧。
  7. ^ SI brochure - §1.2 Two classes of SI Units - p92
  8. ^ Michael Good. “Some Derivations of E = mc2”. 2011年11月7日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年3月18日閲覧。
  9. ^ Asimov, Isaac (1966). Understanding Physics. New York: New American Library. Vol. I, p. 32.